第8回「履歴書の書き方~自営業・フリーランス、特殊事情など~」

著者が教える、中高年の転職必勝法

実務経験が乏しい場合の効果的な書き方とは?

今回も前回、前々回に続いて、ハンデやネガティブ要因がある場合の履歴書の書き方について説明していきます。

まずは実務経験が乏しい、たとえば経理職から営業職へといった異職種への転職のように、明らかに自分の進みたい方向に関する経験やスキルが不足している場合、今までのキャリアの軸であった経験を詳細に記述しても、採用人事から見たら全くもって的外れで、何にも響かないことになります。

この例でいうと、積み重ねてきた経理経験の中でも、営業業務に役立つであろう、交渉力・調整力やプレゼン資料作成スキル、コストパフォーマンスを見極める計数感覚といったビジネススキルを感じ取ってもらえるか、が最大のポイント。

しかし職歴欄についてこれをPRするのは、本筋から外れますから、ここは一般的な書き方で表現するしかありません。


職歴
平成11 4 株式会社富山薬品工業 入社(正社員)
事業内容:医薬品の製造 資本金:20億円 従業員数:5,000人
財務経理部にて原価計算や収支計算書作成などの会計業務に従事
平成16年3月課長代理に昇格
平成17 3 一身上の都合により同社退職
平成17 12 四井ケミカル株式会社入社(正社員)
事業内容:化学製品の製造 資本金:14億円 従業員数:2,000人
本社財務部にて主に連結決算等の経理業務に従事
現在に至る
以上

なお、昇進・昇格は、この世代に求められるマネジメント能力を示すことができますので、経験職種が異なっても本例のように盛り込むことが肝要です。

職歴欄の記述よりも大事なのは、志望の動機、アピールポイント欄や退職理由欄の使い方です。

採用人事が一番知りたい点である、この年齢になっても、なぜ実務経験が乏しい職種に挑むのか?異職種で活躍が期待できそうか?というところを、これらの欄を使ってきちんとフォロー&アピールしておかなければなりません。

志望の動機、アピールポイント
営業については全くの未経験ですが、貴社説明会にて保険営業の魅力を改めて知ることができ、ぜひ挑戦してみたいと思いに駆られ、志望いたしました。経理経験で培った複数の要因から損益を算出し、これをわかりやすく説明するスキルは長けていると自負しております。このスキルを営業向けに転用して、着実に数字を積み上げられる営業社員になりたいと思います。

この年代ですから異職種であっても、何かしら応募職種に対して役立つスキルや経験があるはずで、そこに焦点を合わせて書くのがベストです。

志望の動機、アピールポイント
営業職は20代の前半に1年ほど経験しただけで、冴えたる実績も残せませんでしたが、アポ取りからクロージングまでの基本的な営業の流れや各工程でのポイントは会得しているつもりです。経理業務において一番大変だった融資交渉での高度な折衝・調整の経験が本営業職でも役立つと確信しています。

以前に少しでも応募職種を経験していたなら、軽く触れておくのも一手でしょう。なお、短期間での経験なのに、さも大業績を成し遂げたように書くと、疎ましく思われますから注意してください。

退職理由
経理畑で約13年強のキャリアがありますが、この度、心機一転して受動的な業務ではなく自ら主体的に活動できる保険営業職に就きたく転職活動を行っております。今の会社を定年まで継続勤務することは可能ですが、敢えて結果が全ての世界に身を投じて、勝負をしてみたいというのが現在の心境です。

退職理由欄においては、このようになぜ今のキャリアを捨てて、わざわざ経験の乏しいところに挑むのか、を説明しておきます。
この2つの欄をうまく連動させて書くのが、一番効果的です。

転職にハンデとなる特殊事情があった場合の効果的な書き方とは?

続いて、特殊事情があった場合、たとえば博士課程への進学や司法試験や公認会計士試験浪人といった自身の夢を追い続けた場合。

また自身の長期間による病気療養、親の介護等のために、業務ブランクが長くなってしまった場合などの業務ブランクが大きく空いてしまったケースは、キャリア形成の観点から見ると、ハンデと見られることがあるでしょう。

だからこれをフォローしておかないと、そのままでは書類選考において間違いなく不利に働いてしまいます。

この場合のポイントは、後ろめたいからと言って事実を絶対に隠さないこと、そして今は勤務しても何ら問題がなく、継続勤務が可能であることをきちんと釈明することです。

またこのブランクが十数年前ならば、採用人事もその影響を少ないと見るので、過去の話と割り切って堂々とフォローを書いておけば大丈夫です。

通常は通信欄などのフリー記載欄を活用してこのフォローをしますが、この欄には他に書くことがある、もしくは選択した履歴書フォームにはこの欄がない、または小さい場合などは、苦肉の策で職歴欄を活用するのも一手です。

職歴
平成6 4 旧司法試験受験に専念
平成11 11 旧司法試験受験を断念
平成12 4 株式会社受験ゼミナール 入社(契約社員)
事業内容:進学塾の運営 資本金:1千万円 従業員数:30人
高校受験の指導、授業計画策定、講師の労務管理などに従事
平成13 3 正社員に登用

この司法試験に没頭していた経歴を書かないと、大学を卒業してから約5年半の経歴が全くわからなくなりますので、他の欄が手狭な場合は本例のように書いておきます。

また通信欄等のフリー記載欄を活用して、

通信欄
大学時代在籍中から平成11年11月までの間、司法試験の勉強に明け暮れておりました。5度のチャレンジでも結果が出ず、自身の力の限界を自覚し、弁護士になる夢を断念しました。結果として社会に出るのに、ブランクが空きましたが、後悔はありません。

その期間の説明を入れながら、後に引きずらずに、やり切った感をPRするのも効果的です。

通信欄
大学院の後期博士課程に進学して、新素材開発の研究に励んでおり、そのまま大学に残り研究を継続することを目指しておりましたが、当時はポストの空きも見込めなかったため、研究内容が活かせる株式会社ケミカル・プロダクトに就職した次第です。

最終学歴しか書かない履歴書フォームの場合、年齢と最終学歴年度の詳細が見えないので、このようにフォローしておく必要が出てきます。

通信欄
平成19年4月から平成20年3月までの間、自身の病気のため、長期入院をしておりました。入院期間中は焦りや不安でいっぱいでしたが、病院を始め周りのサポートがあり、無事根治することができました。こうして完全復調した今、働ける喜びを噛みしめております。

私傷病の場合応募先で働く上において、健康上何ら問題がということをフォローしておかなければなりません。

通信欄
平成20年4月から平成21年3月までの間は、母親が他界しており、身寄りは私だけでしたので、当時の勤務先を退職せざるを得ずに、父親の介護に専念しておりました。その後まもなく父親も他界したため、現在働く上で支障になることはありません。

介護の場合も同じで、応募先で働く上で介護が足かせにならないことをフォローしておかなければなりません。

フリーランスや自営業で働いていた場合の効果的な書き方とは?

最後に、サラリーマン勤めが長い人にとっては特別な事例かもしれませんが、自ら独立起業してフリーランスや会社社長として働いていた場合です。

このケースでは採用人事は「今更なぜ雇われ人になるのか?」という点を知りたいと思っています。だから書きっ放しではなく、これをきちんと説明しておく必要があるのです。

もちろん、雇用されない働き方であっても職歴ですから、ここは職歴欄に通常どおり書いておきます。


職歴
平成7 4 株式会社テクノサービス 入社(正社員)
事業内容:ソフトウェア開発 資本金:5千万円 従業員数:80人
中小企業向けパッケージソフト開発に従事
平成12 10 一身上の都合により同社退職
平成12 11 システムエンジニアとして独立
フリーランスとして、前職の関連会社の下請けとして働く
平成16 4 個人事業を法人化するため、株式会社ITテクノを設立
代表取締役に就任し、主にWEB開発事業を展開
平成23 6 アプリ開発部門を新規立ち上げ(部員数:5名)
現在に至る
以上

このケースのように、個人事業主で働いていようが、自分一人しかいない会社を経営していた場合であろうが、何ら臆する必要はなく、通常の会社勤めと同じように記述して構いません。

しかし、本例の職歴欄だけ見ると、順風満帆で業務が拡大しているように見えます。このような良い状況に見えるからこそ、「なぜ再就職する必要があるのか?何かあったのではないか?」という懸念材料を他の項目で説明しておく必要があります。

退職理由
自ら独立起業して今年で12年目に入りましたが、2年前に社運をかけて開発したWEB入札システムの販売実績が事業計画を大幅に下回り、先行した開発コストが経営を圧迫し、不本意ながらも大怪我をしないうちに会社清算に踏み切ることを決心しました。

ここはネガティブな内容が含まれていても、構いません。
下記の記述例のように、マイナス印象を避けるために、差し障りのないような抽象的な記述ならば、懸念材料は払しょくされないと考えておいてください。

退職理由
自ら独立起業して今年で12年目に入り、業務系システム開発からWEB制作、スマートフォン向けアプリ開発まで、幅広い業務経験があり、この力をもっと大きなフィールドで活かしたいと思い、今の会社を辞める決意を固めた次第です。

これではなぜ自分が立ち上げて育ててきた会社を投げ出す理由が、はっきりしません。ここでは核心に触れておくことが大事です。

また次のように他の項目でフォローするのも効果的です。

通信欄
経営の見通しの甘さから、自身の会社を傾かせてしまいましたが、これも自分に課せられた精神修行の一環ととらえ、この貴重な経験を次に活かせるようにしていきたいと思います。

フリーランスの場合は次のように、個人事業主を辞める理由と今後の企業での働き方を宣言してフォローする方法もあります。

退職理由
開発技術やノウハウ、経験には他のエンジニアには引けを取らない自信がありますが、仕事の獲得から開発、請求などの全ての工程をたった一人で負っているために、この先も個人で戦っていくには限界を感じるようになりました。今後はチームの中に身を置き、メンバーと相互研鑽して働いていきたいと思い、再就職を決断した次第です。

今回で履歴書の書き方は終わりになります。ご拝読ありがとうございました。
次回からは、いよいよ応募書類の本丸である職務経歴書の書き方を解説していきます。

>> 第9回「中高年・職務経歴書の書き方~職務経歴書の3パターンとは?~」 へ続く



 

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講師プロフィール

  • 著者写真
  • 中谷 充宏(なかや みつひろ)
  • キャリアカウンセラー、社会保険労務士

  • 実績、経歴

    同志社大学法学部法律学科卒。NTT(日本電信電話株式会社)勤務後、キャリアカウンセラーとして独立。

  • ●マンツーマンで転職を支援する日本トップクラスの「転職のパーソナルコーチ」。
    ●一流企業社員や米国MBAホルダーからハンデ層まで、幅広い方々の転職支援の実績あり
    ●社会保険労務士としての経験から企業側の採用心理や実情も熟知。

  • 運営サイト

    ●運営サイト:中高年の転職の悩み相談室http://www.chuukounen.com/


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