第2回 妊娠・出産するときは退職?それとも仕事と両立?

藤井佐和子 女性のためのライフワークバランス講座

結婚、妊娠、出産を機に揺れる女性の気持ち

 
仕事内容や人間関係、社風が合わない、会社の業績が悪い、将来性が低い会社である、もっとキャリアアップしたいなど、転職や退職のきっかけは男女共に様々です。

しかし、女性ならではのきっかけとして多いものは、ライフイベントによる変化ではないでしょうか。

退職理由の割合をまとめているデータは世の中に数多く存在します。平成23年度厚生労働省の雇用動向調査によると、「(3)転職入職者が前職を辞めた理由」では、結婚・出産・育児・介護を理由に辞めている人は他の項目に比べて、圧倒的に女性の比率が高くなっています。

では、妊娠・出産を機に女性が退職する場合と仕事を続ける場合では、生涯賃金にどれだけの差が出るのでしょうか?

OCNマネーのコラム内容を引用すると、

総務省の「労働力調査」によると、男女の働き方による平均生涯賃金(現役時代の賃金収入と老後の公的な年金の合計)は、女性が子育てのために30歳で退職し、その後は再就職せず専業主婦で過ごした場合の生涯賃金は3000万円です。

しかし、30歳で子育てのために退職しても、40歳から定年まで週40時間程度の非正社員として働くなら、生涯賃金は8200万円になります。

そして、夫の協力もあり、子育て期間中も産休程度だけで定年まで正社員として働ければ、生涯収入は1億7800万円と大きな収入が得られます。

出典:OCNマネー

とのことです。

生涯収入の差がこれだけ開くことが薄々わかっている人も多いはずなのに、キャリア相談では「妊娠・出産を機に会社を辞めた方がよいのでは?」とご相談に来られる方が少なくありません。

相談を受ける際には、将来のことをじっくり考えていただく時間を設けています。すると、最初は辞めようか悩んでいた方でも「辞めないで続ける」ことを選択する場合がほとんどなのです。多くの人が一度は「続けるか、辞めるか」気持ちが揺れるのだと思います。

 

どんな制度があるか確認してみましょう

それでは、なぜ女性の気持ちは揺れるのでしょうか?
過去の相談事例から女性たちの本音をいくつかご紹介したいと思います。

「子供が小さいうちは、なるべく多くの時間を一緒にいてあげたいと思う。自分が子供の頃、両親が働いていて寂しい思いをしたから」

「私は器用ではないから、一つずつ集中しないと仕事も家族もダメになりそうな気がする」

「ちゃんと家事をしたいから。子供のためにも旦那さんのためにも」

「今はつわりがひどくて両立なんて考えられない。仕事でも迷惑をかけているし、一度会社を辞めてゆっくり考えたい」

これらの気持ちの裏側には、その人の様々な価値観、大事にしたいこと、不安などが混ざっているのです。

そのような状態の時、人は「今」しか見えなくなります。しかし、行き当たりばったりではなく、「もし続けるんだったら」と、少し先のことも冷静に考えてみることも大事です。

私がキャリア相談に乗っている際の感覚ですが、「仕事を辞めたい」、「リセットしたい」という女性は、真面目で責任感の強い人が多いです。もちろん、続けようとしている人がそうではないという意味ではありません。こういった人たちの特徴は「一人ですべてを抱え込む癖」を持っているということです。

藤井佐和子そこで、「辞める」決断する前に、まずは続ける可能性を探るために以下のことを調べてみてほしいとお伝えしています。

・今の組織の産休育休支援制度
・時短がどの程度利用できるか

そして、逆の方向から考えてみてほしいのは、

・どんな支援があれば、続けられるか

ということです。

 

まだまだ浸透していない各種制度を活用しましょう

次世代育成支援対策推進法というものが定められ、国から企業に対して「くるみんマーク」の取得が促されるようになりました。これによって、従業員の仕事と育児の両立支援の基準を満たしている企業がくるみんマークの認定を受けるようになりました。

これは2005年度からの10年間の時限立法だったのですが、いまだ両立支援が浸透していない組織も存在していることを受けて、更に10年、「プラチナくるみん」認定ができました。

そんな時代の流れの中、今の会社には一体どんな制度がありますか?

実は、制度の利用対象者となる本人もその上司もこの制度についてよく知らないことが多く、制度を理解しないまま悩んでいる方を多くお見かけします。そんな時には、不安になる前に制度の使い方を理解することをおすすめしています。

また、すでに仕事と両立している女性に相談してみたり、お子さんのいるワーキングマザー同士のネットワークに参加して情報交換できる環境に入ってみたり、あるいはそういった環境を自分で作ってみたりすると不安が解消されるものです。

さらに、会社にそのような制度が整っていなかったり、制度はあるのに利用者が少なかったりする場合は、まずは実績を残すことも大事なこと。何事にも第一号がいるものです。

制度を使いながらきちんと両立していく姿は自分のためだけでなく、周囲のためにも良いモデルケースになります。この一歩一歩が欠かせません。その中で、「もっとこういう支援があった方が働きやすい」というものがあれば、相談してみることです。

ただ、この際気を付けたいことは「権利の主張」のみに取られないようにすることです。発信の根底には「会社や周囲に貢献するために」、「キャリアを失速させずに将来も活躍するために」の意識があるのだということを伝えるのを忘れないでください。

ワーキングマザー同士で情報交換するなど色々と手を尽くし、不安は払しょくできたがそれでも「やっぱり自分は、専業主婦として生きたいと思った。」

こういう結論が出ることもあります。その時は、きっとその道で生きていく腹はくくれているはず。

キャリア相談では、「あの時の一時の焦りや不安で退職してしまったが、今考えると辞めなければよかった・・・」と再就職の相談を受けることがあります。このように、どちらを選ぶのが正解だったかを後になって後悔しないためにも、きちんと丁寧に調べ、辞めるのか両立して続けるのかを決めることが大事なのです。

ひとりで決めないこと、色んな体験者の意見を聞いてみることです。

 

>> 第3回「出産後の女性の再就職事情」 へ続く

 

藤井佐和子 女性のためのワークライフバランス講座

 

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講師プロフィール

  • 著者写真
  • 藤井 佐和子(ふじい さわこ)
  • キャリアカウンセラー

  • 実績、経歴

    大学卒業後、カメラメーカー海外営業部のOL経験を経て、大手総合人材サービス企業にて派遣事業部、人材紹介事業部の立上げに携わる。

    主に女性を対象とした転職支援チームを立上げ、数多くの転職を支援。その後、独立。

    延べ13,000人以上のキャリアカウンセリングを行う一方、数多くの企業に対し、研修やスキーム作りなど人材育成支援を行う。大学の非常勤講師、講演、キャリアセミナー、執筆など幅広く活動。


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