「知らなくていいコト」や「校閲ガール」「舟を編む」「重版出来!」など出版業界を舞台とした映画やドラマを見て、大変そうだけど楽しそう、やりがいのある仕事だろうな‥と出版業界の仕事に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。
元々、本や漫画、雑誌が好きな人などは“自分が好きなものに携われる仕事がしたい”と出版業界への就職を希望することもあるでしょう。
しかし、インターネットの普及から「出版不況」が続いているとも言われている中、出版業界への就職・転職は将来的に考えてどうなのか気になっている人もいるのでは?
ここでは、出版業界の動向をはじめ、出版社の仕事内容、出版社で働くことのメリット・デメリット、出版社に転職するには?未経験でも可能?‥など、【出版×転職】をキーワードに詳しく紹介していきたいと思います。
※参照:公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所「2019年の出版市場」
https://www.ajpea.or.jp/information/20200124/index.html
出版業界の調査・研究機関である出版科学研究所が2019年の出版市場規模を発表しました。
紙出版+電子出版を合算した出版市場は2015年から年々減少傾向にありましたが、2019年は前年比0.2%増の1兆5,432億円となっています。
紙出版だけをみると前年比4.3%減の1兆2,360億円であり15年連続のマイナス、電子出版は前年比23.9%増の3,072億円と電子出版市場の拡大が前年比0.2%増のプラス成長をもたらす結果となりました。
紙出版物の売上減少は今後も避けられないことが予想されますが、電子書籍やデジタルメディアの強化、インターネット・動画コンテンツとの融合を進めていける企業、売上が好調な電子コミック、固定需要がある児童書・専門書、ネットや映像との融合やデジタルめメディアの強化などを拡充させていける企業が出版不況と言われている中でも生き残っていけるのではないでしょうか。
出版社の職種・仕事内容を紹介する前に、出版物が私たち消費者に届くまでの商品の流れを簡単に説明します。
作家(原稿)⇒出版社(本の企画・制作)⇒取次会社(配本)⇒書店(販売)
出版社の仕事は本の企画・制作をする「出版部門」と制作した本を売り込む「営業・販売部門」、委託先の選定、経営・経理・財務など「管理部門」の大きく3つに分けられます。
ここでは、出版社特有の職種を紹介します。
企画の立ち上げ、制作に必要な予算取り、仕事の発注、出版物に合わせた取材(外部に依頼することもある)、スケジュール管理、原稿のチェック・編集などを行う仕事です。
「雑誌編集者」「書籍編集者」「漫画編集者」「ファッション誌編集者」など担当する媒体により細かな業務内容が異なります。
原稿が出版される前に、誤字・脱字、文章欠け、文法間違い、誤った表現がないのか、ページ内容とページの不備がないのか‥などをチェックし修正・訂正する仕事です。
編集者が校正を行う場合もありますが、規模の大きな出版社では校正者を専任として抱えています。校正者は出版物の品質を保つ大事な役割があります。
出版社の営業は「取次営業」と「広告営業」に分けられます。
・取次営業‥出版物を書店に卸す取次会社や書店に対して、本の売り込みをして発注を増やしてもらうことや、販売促進(配置提案、宣伝、イベント企画など)を行います。
・広告営業‥雑誌や書籍などに掲載される広告枠を各企業に宣伝し、広告主(掲載企業)を探してくる仕事です。
規模の大きな出版社では専任としてそれぞれの業務を行うことがありますが、規模の小さな出版社では社員数も少なく様々な業務を兼任して行うことも少なくはありません。
出版社を舞台としたドラマや映画を見たことがある人であれば、出版社のイメージとして慌ただしい、忙しそう、大変そう‥と感じる反面、やりがいを感じられそうと思いませんか?
では、具体的に出版社で働くことでどのようなことにやりがいを感じられるのでしょうか?
自らが企画し生み出した作品が完成したときは大きな達成感と共にやりがいを感じられます。書店に並ぶ光景は大きな喜びとなるでしょう。
出版不況と言われている中でもヒット作は生まれます。自分が担当した書籍がベストセラーになる、話題になったときは嬉しさ、感動を味わえます。
ベストセラーとならなくても、書籍や雑誌記事の内容が読者の心に響くもの、強く印象に残るものであったことを知ったとき「出版業界で働いている意味」を再認識しやりがいを感じられる瞬間です。
取材を通して、その道の専門家や有名人と会う機会が多い仕事です。様々な人と出会い、話を聞くことで刺激を受け人生のヒントとなること、次の仕事に活かせることもあるでしょう。「この仕事をしていなかったら出会えなかった」と感じると共にやりがいを感じられます。
このように他の仕事では味わうことができない、出版社で働いているからこそ感じられるやりがいがあります。
一方で、出版社の大変なことには「ハードワーク」であることが挙げられます。
雑誌や書籍の締め切り間近では残業、休日出勤の覚悟が必要かもしれません。
※参照:doda「残業の多い職業・少ない職業は?」
https://doda.jp/guide/ranking/073.html
求人情報・転職サイトdodaが行った2013年の調査では、残業時間が多い職種の2位に「編集、デスク(残業時間:52.8時間)」がランクインしています。
少し前の調査なので現在では残業時間に変化が見られているかもしれませんが、「編集、デスク」以外でもクリエイティブ系職種が多くランクインしています。
クリエイティブ系職種である編集者の場合は残業が多く激務となる可能性も頭に入れて置いた方がいいでしょう。
しかし、dodaの調査結果内容でも述べられていましたがクリエイティブ系職種として働く人の満足度が高いことから、激務も苦にならないほどの大きなやりがいのある仕事と感じている人が多いようです。
出版社の中でも花形とも言える編集者など、出版社特有の職種で働くことを目指している場合はどのような特徴・適性を持った人が出版社の仕事に向いているのでしょうか?
以下に幾つか挙げていきたいと思います。
様々なことに興味・関心を持ち、それらを探求していける人は面白いもの・売れる本を生み出す素質があります。
本を読むことが好き!文章を書くのが好き!と思う気持ちを持っていることはもちろんのこと、編集者や校正者をはじめとして“文字”と向き合う仕事であるため文章が好きであることが大切です。
黙々と作業をしていくイメージもあるかもしれませんが、出版社の仕事はさまざまな部門が協力しチームで作り上げていくものです。
自分の意見を上手く伝えること、相手の話をしっかり理解すること、チームをまとめる力‥様々な人達と関わる仕事であるためコミュニケーション能力は欠かせません。
トレンドを察知する、新しいもの流行っているものを上手く取り込む、新鮮な情報をいち早く届ける‥といったように、時代の流れを敏感に捉えて行ける人も出版社で働くことに向いています。
発想力が豊かであり、固定観念に囚われず「面白いこと」「楽しいこと」「興味深いこと」を企画し形にしていける力が求められます。
読者が面白い・楽しいと感じるものを作るためには、出版の企画・制作など出版に携わる側が楽しんで仕事をしていることが大事です。
好奇心旺盛でチャレンジ精神旺盛な人が作り出すものは、きっと面白い本になるはずです。
本への想い、熱い気持ちも大切にしてみましょう。
では、出版社⇒出版社の転職ではなく未経験から出版社への転職はできるのでしょうか?
出版社の採用事情からお話しすると、出版社は新卒を大量に採用するのではなく経験者を中途で採用する傾向にあります。
そう考えると未経験から出版社への転職は厳しいのでは?と思いますが、職種によっては未経験からでも転職が可能です。
営業 |
出版社に限らず営業職は未経験OKの募集が多い職種です。 コミュニケーション能力や対人スキルに自信がある人であれば出版社の営業職として採用される可能性が大いにあります。 |
編集者 |
編集者の募集は未経験OKが少なく、編集者として3~5年の実務経験が必要な場合もあります。 現在の仕事が編集者の業務に近いところがあり経験を活かせるようであれば少なからずチャンスはありますが、全くの異職種・未経験となると編集者としての採用は難しいでしょう。 |
出版社と言えば編集者として働くことに憧れる人も多いと思います。
未経験からでは編集者になることが難しいとなると道が閉ざされてしまったように感じますが、編集者になれる可能性は幾つか考えられます。
出版業界は人の入れ替わりが激しい業界であるため、求人情報を常にチェックしておき「中途採用」や「未経験可」の求人に目を光らせておきましょう。
運とタイミングが良ければ出版社への転職をスムーズに進めていけるかもしれません。
また、出版社では今後更に電子書籍やデジタルメディアの強化などIT/デジタル化が進んでいくことが予想されます。
異業種であってもこれらの分野に強みを持つ人はアピール材料となるでしょう。
転職活動では「なぜ転職をしたいのか?」「なぜ出版社なのか?」「どのような仕事をしたいのか?」「転職後に実現したいこと」「現職から活かせる経験・スキル」など、転職に関する考えを明確にしておくことが大切ですが、肝心な求人を見つけることができなければ前に進むことすらできません。
出版業界の求人は他業界よりも少なめであるため、いくら求人情報に目を光らせていても希望条件にマッチした求人というと出会えるチャンスは限られてしまいます。
個人での転職活動に限界を感じてしまう前に活用するべきなのが転職エージェントです。
転職エージェントでは転職活動全般をサポートしてくれるので、他業界・他職種への転職でも安心してスムーズに進めていくことができます。
また、転職エージェントを利用することで一般には公開されていない非公開求人からの紹介を受けることもできるので、少なめである出版業界の求人情報も効率良く集めていくことが可能です。
転職エージェントのサポート
これらのサポートがあれば、在職中からでも計画的に進めて行くことができるだけでなく、転職活動を効率良く有利に進めていけます。
求人数の多さと豊富な転職支援実績が魅力な総合型転職エージェントである「リクルートエージェント」や「doda」「マイナビエージェント」などでは出版業界の転職にも精通しているので相談をしてみる価値があります。
また、出版業界の転職に特化した「出版.com」なども併せて利用してみるとより効率良く進めていけるでしょう。
いかがでしたか?
出版業界への転職に少しでも役立つ情報をお届けできたでしょうか?
出版業界に限らずですが、年齢が上がれば上がるほど転職のハードルは高くなります。
憧れている仕事、興味のある仕事があるのなら早めに行動に移すことが大切です。
そして、転職エージェントを上手く活用し出版業界で働くことを夢から現実に変えるお手伝いをしてもらいましょう。
転職エージェントは1社だけに登録するのではなく、最低でも2~3社に登録をして比較検討をしながら転職活動を進めて行くことをおすすめします。