昨今、少子高齢化やグローバル化、情報技術の高度化にともない、個々のキャリア形成が多様化しています。昔と違い、転職はそれほど珍しいことではなくなりました。
また、それに伴い「キャリアコンサルタント」という職種が注目を浴びるように。それまで民間資格だった「キャリアコンサルタント」資格は、2016年4月より国家資格に認定されるほど、需要や必要性は高まりをみせています。
皆さんも一度は「キャリコン」という呼び名を聞いたことがあるのではないでしょうか?今回はそんな「キャリアコンサルタント」の資格難易度、勉強方法、そして働き方についてご紹介します。
「キャリアコンサルタント」は、その名の通り「キャリアをコンサルティングする」資格です。労働者が自身に合った仕事やキャリアプランを見つけるための支援や、将来設計、能力向上などの相談に応じ、アドバイスすることが主な役割です。
また労働者に限らず、大学生や高校生などの就活生の就活サポートもおこないます。大学での就職支援やハローワークで相談経験がある方は「キャリコン」の存在に出会ったことがあるのではないでしょうか。
当事者の話を丁寧に聞いてキャリア形成の手助けしてくれる、キャリアカウンセラーは労働者や求職者、就活生にとても心強い存在!
この「キャリアコンサルタント」資格は、先述した通り2016年に国家資格となり、登録者数は実に53,172名(2020年7月末現在)を誇ります。「キャリアコンサルタント」でないものはキャリアコンサルタントやそれに近しい名称を名乗ってはいけないという名称独占資格で、信用を損なったり、不名誉な行為の禁止、守秘義務の責任が課せられるのです。
また晴れて「キャリアコンサルタント」となり十分な実績を積んだ方には、さらなるキャリアアップとして「キャリアコンサルティング技能士」という上級資格もあります。
こちらも国家資格で2級と1級の2段階があり、「2級」は熟練レベルとして原則実務経験5年以上で挑戦することができ、「1級」は実務経験10年以上でキャリアコンサルタントの指導者になることができます。
参照元:国家資格キャリアコンサルタントWebサイト登録センター(https://careerconsultant.mhlw.go.jp/n/index.html)
国家資格に認定されたことで注目度が上がり、年々登録者数は右肩上がりの「キャリアコンサルタント」。今後も増加の一途を辿ることが予想されます。
その理由は、国家が推進する「キャリアコンサルタントの10万人養成計画」。厚生労働省は、2024年度末までにキャリアコンサルタント、及びキャリアコンサルティング技能士を合わせて“10万人”養成するという計画目標を掲げています。さらに5年ごとの登録更新制度が設けられ、キャリアコンサルタントの資質が保たれるよう国全体が支援しているのです。
働き方改革や自分の時間を重視する社会傾向などを踏まえ、労働者一人ひとりが個々でキャリア形成を考えなければならないでしょう。
キャリアコンサルタントは、これから特に需要のある職種と言えるでしょう
「キャリアコンサルタント」という呼称で活動するためには、①受験資格を満たし、②学科・実技試験の両方に合格し、③キャリアコンサルタント名簿に登録する必要があります。試験は通例年3回、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡・広島・沖縄などの主要都市で開催されています。
下記のいずれかの条件を満たした方が試験を受けることができます。
試験は「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(以下、CC協議会)」と「特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(以下、JCDA)」という2つの団体が実施しています。 「どちらの団体で受験しても同じでは?」と思うかもしれませんが、実は“実技試験の合格基準が違う”ため、自身の得意不得意によってどちらの団体で受験するか選択することをおすすめします。
・筆記試験…マークシート方式で50問、試験時間100分。
・実技試験…論述問題50分と、実際のコンサルティング場面を想定したロールプレイング方式の面接が20分。
筆記試験は共通ですが、実技試験における“面接での評価基準”が、2団体で異なるのがポイントです。
・CC協議会…“態度、展開、自己評価”。
・JCDA…“主訴・問題の把握、具体的展開、傾聴”。
それぞれの合否基準と自身の得意不得意を鑑み、受験団体を選択しましょう。
自身の面接技術の傾向は、実技訓練を積み重ねるうちにわかってきます。養成講座やカリキュラムを修了したときに選択すれば問題ありません。
また試験の合格ラインは、筆記試験(100点満点)が70点以上、実技試験(論述50点・面接100点)が90点以上です。
ここで2020年3月に実施された最新試験の結果を見てみましょう。
・CC協議会の結果…学科試験が65.1%、実技試験が66.6%、学科と実技の同時受験者が54.8%
・JCDAの結果…学科試験が69.1%、実技試験が65.3%、学科と実技の同時受験者が55.8%
国家資格としてはいずれも合格率は高めで、講習を受けしっかり準備をしていれば難しくない難易度と言えます。最近のデータでは各団体の差もそれほど見受けられません。
図1)キャリアコンサルタント資格試験 合格率
回 | 学科試験 | 実技試験 | 同時受験者 |
---|---|---|---|
第一回 | 77.8% | 60.0% | 47.6% |
第二回 | 75.7% | 64.4% | 55.6% |
第三回 | 64.3% | 63.2% | 49.3% |
第四回 | 21.3% | 68.9% | 20.5% |
第五回 | 50.3% | 68.1% | 43.1% |
第六回 | 62.7% | 70.7% | 53.6% |
第七回 | 54.3% | 72.7% | 51.2% |
第八回 | 63.3% | 69.5% | 54.3% |
第九回 | 30.5% | 67.8% | 30.1% |
第十回 | 64.2% | 70.1% | 54.8% |
第十一回 | 64.2% | 70.1% | 54.8% |
第十二回 | 62.6% | 74.7% | 57.4% |
第十三回 | 75.5% | 65.5% | 58.5% |
第十四回 | 71.1% | 61.3% | 54.0% |
出典:厚生労働省HP (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consultant01.html)
国家資格となってからの試験回数が少なく、まだ合格率にばらつきが見られますが、平均して50%前後の合格率です。一度試験に落ちてしまっても学科・実技のどちらかが合格していれば次回は免除されますので、2回目の受験合格率はさらに高くなるでしょう。
資格習得のためには、まず厚生労働大臣認可の「キャリアコンサルタント養成講座」のカリキュラムを受講する必要があります。実際に職務経験として3年以上の経験を有していない場合は、この講習修了が資格試験受験の条件にもなるため、受講は必須といえるでしょう。学科のみであれば独学も可能ですが、実技試験はロールプレイを行うため独学で勉強する方は多くありません。
講習は株式会社日本マンパワー、LEC、リクルートなど様々なスクールで開催されており、かかる費用は約27万円~40万円程度。期間は、2~4ヶ月間かかることケースが多いです。
受験日を定め、その半年前くらいから勉強を始めると良いでしょう。
スクールには通信制・通学制とありますが、実技試験を考慮すると通学して面接対策をおこなう方が合格への可能性が高まります。スクールによって試験団体(CC協議会またはJCDA)を推奨している場合もあります。各スクールのメリットやスケジュールを確認して、自身に合ったものを選ぶことが大切です。また各団体で過去問が公表されているので、試験前は過去問対策を忘れずに行いましょう。
講習のほとんどが“教育訓練給付金”の対象とです。これを利用すれば受講に関して支払った費用の最大70%が国から支給されるので、是非活用してみてください。
インターネットでも口コミ評価の高い、日本マンパワーが開催する「キャリアコンサルタント養成講座(総合)」を例にスクール受講の流れをご紹介します。こちらの講座は厚生労働省認定講座のため、給付金対象となり、修了時に受験資格を習得することができます。
・通信教育…キャリアコンサルタントとして身につけておくべき知識を動画やテキストを用いて学びます。学習ガイド、テキスト(全6冊)、資料集(2冊)、添削問題(全3回、Web提出)、総合問題(Web答案練習)、質問票、適職診断テストCPS-J(Web版)、テキスト解説講義(Web視聴)があります。
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・スクーリング(通学)…カウンセリング技法を習ったり面接のロールプレイングを行ったり、実践的なプログラムで学習を進めていきます。同じ資格を目指す者同士でグループワークをおこなえるのがメリットのひとつです。
通信学習目安約3か月とスクーリングは12日間。
・入学金 0円
・受講料 374,000円(税込・教材費込み)
試験スケジュールに合わせて年に複数回、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡等の全国主要都市20ヶ所以上でスクーリングを開催しているため、居住地に関わらず比較的通いやすいです。また都合の悪い日は別クラスへ振替受講が可能です。
日本マンパワーの他にも、厚生労働大臣が認定する講習は全部で21講習あります。
予算やスケジュール、各実施機関の特徴などから比較検討すると良いでしょう。
以下に、国家資格となる以前から養成講座を実施している歴史のある実施機関から、2020年に新たに認定された実施機関5選をご紹介します。
図2)キャリアコンサルタント養成講座一覧
講習名 | 実施機関 | 実施形態・時間 | 料金(税込) | ホームページ |
---|---|---|---|---|
CMCAキャリアコンサルタント養成講習 | 特定非営利活動法人日 本キャリア・マネージメント・カウンセラー協会 |
通学110時間(15回) 通信40時間 | 352,000円 | 公式サイト |
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム | 特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会 | 通学96時間(12回) 通信54時間 | 396,000円※受講料・テキスト代含む | 公式サイト |
GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム | パーソルテンプスタッフ株式会社 | 通学:12日間※総学習時間:150時間(通学96時間+WEB学習54時間) | 396,000円※受講料・テキスト代含む | 公式サイト |
一般社団法人日本産業カウンセラー協会キャリアコンサルタント養成講習 | 一般社団法人日本産業カウンセラー協会 | 通学84時間 通信69時間 | 330,000円※テキスト・資料代含む | 公式サイト |
キャリアコンサルタント養成講習 | 株式会社グローバルテクノ | 通学90時間 通信68時間 | 246,400円(税込)初年度特別価格※2020年新規認定 | 公式サイト |
参照:厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000631721.pdf)
「キャリアコンサルタント」は、他人の話を聞くことが得意な方、相談に乗ることが好きな方、人のために役立ちたいと思っている方が向いています。近年では企業内にもキャリアコンサルタントを常設する企業も増え、業界・業種にとらわれず仕事に就くことができるという点では、長期的に働きやすい職種といえます。
・企業内の人事部、人材開発部で社内カウンセリングやキャリアプランニング
・大学内キャリアセンターでの就職支援
・就労支援機関でのコーディネーター(ハローワークや人材派遣会社等)
・企業や学校での研修・講演
・社会保険労務士、中小企業診断士、FPなどとWライセンスによる業務拡大
また昨今の在宅ワークブームにより、フリーのキャリアカウンセラーとして複数の人材紹介企業と業務委託契約を結び、個人でコーディネーター業務を行う方が増えているのも特徴です。
「キャリアコンサルタント」は、2016年に国家資格となり10万人計画が進められていることから、今後ますます発展していくと考えられます。社会的信用も厚く、更新を続ければ一生ものの資格です。
土日のみの通学講座や通信教育であれば、働きながら勉強することも可能ですので、資格取得を検討されている方は、一度お近くの学校やスクールへ問い合わせてみてはいかがでしょうか。