キャリアコンサルタントは、就職・転職希望者へのアドバイスを行い、無事に就職に至るまでサポートする専門職です。新卒者向けに就職活動の相談に乗ったり、本番を想定した面接を行ったり、履歴書の添削を行ったりするやりがいのある仕事です。
キャリアコンサルタントは国家資格の1つでもあり、高いカウンセリング力を持つことから、労働人口の減少しつつある日本においては必要とされています。
今回は、キャリアコンサルタントとはどのような資格か、試験の難易度と合格率、学習のポイントを詳しく解説していきます。
キャリアコンサルタントとは、就職・転職希望者の活動をサポートし、相談に乗ったり、対策のアドバイスをしたりするカウンセラーの資格です。
2016年4月に施行された「職業能力開発促進法」によって、国家資格として定められた新しい資格です。キャリアコンサルタントは名称独占資格にも認定されており、無資格者が勝手にキャリアコンサルタントを名乗ることはできません。
資格を取得するには、学科試験と実技試験の2科目で合格点に達する必要があります。資格取得後は就職・転職に関係する企業や機関で働けます。
国家資格のキャリアコンサルタントは、どのような仕事をしており、将来性はどうなるのかを解説します。
キャリアコンサルタントの仕事は、就職・転職をサポートすることです。より具体的に紹介するなら、次のような仕事があります。
あくまで一部の業務ですが、上記がキャリアコンサルタントの仕事内容となります。
人とのコミュニケーションを通して、就職・転職希望者の悩みや不安を傾聴し、最適な方向へと導くのがキャリアコンサルタントの役割と言えます。
キャリアコンサルタントの資格が活かせるのは、就職・転職に関係する以下の場所です。
他にも、社労士資格を取得してダブルライセンスで独立し、キャリアコンサルタント事務所を設立する人もいます。キャリアコンサルタントは企業から公的機関まで、幅広い場所で活躍できる資格です。
キャリアコンサルタントが国家資格になった背景には、日本の労働人口が減少する中で、厚生労働省がキャリアコンサルタントの有資格者を2024年末までに、10万人にするという計画があるからです。
民間資格で2万5,000人ほどが資格を持っていたキャリアコンサルタントですが、2016年の国家資格化を皮切りに、2023年5月末時点で3倍弱の6万8,000人まで有資格者が増加しています。
目標とする10万人には及びませんが、今後も有資格者の確保に力を入れていくと予想され、国内での需要は高くなるでしょう。
*参照:国家資格 キャリアコンサルタントWebサイト登録センター『キャリアコンサルタント登録者数』
キャリアコンサルタントになるには、試験に合格しなければなりません。
試験は年3回3月・7月・11月に、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡・広島・沖縄で行われています。
そして、キャリアコンサルタント試験を受けるには、次の条件のいずれかを満たす必要があります。
コンサルティング業務未経験者の場合は、「キャリアコンサルタント養成講座」を受講する必要があります。
キャリアコンサルタント試験の難易度・合格率についてもご紹介します。
キャリアコンサルタント試験には、学科と実技の2種類があります。
まず、学科試験の出題範囲は次の5つの分野で構成されています。
実技試験では、CCC(キャリアコンサルティング協議会)とJCDA(日本キャリア開発協会)で募集要項内容が変わりますが、試験内容は同じです。
評価の基準には違いがあるため、それぞれの実施団体による特徴は理解しておきましょう。
キャリアコンサルタント試験の実施団体には、CCCとJCDAの2団体があり、団体に関係なく取得できる資格は同じです。
試験内容も同じですが、違いがあるとすれば学科試験における評価基準だけです。
合格率についても、CCCとJCDAで差はほとんどありません。また、それぞれ受講した養成講座によって受験できる団体が変わるため、その点には注意しましょう。
2023年3月に行われた第22回試験の試験結果は次の通りです。
CCCの試験合格率 | JCDAの試験合格率 | |
学科のみ | 82.2% | 82.3% |
実技のみ | 65.3% | 63.0% |
学科・実技同時受験 | 59.3% | 59.3% |
同時受験での合格率はどちらも59.3%となっており、合格率の差は全くありません。
そして、合格率からもわかるとおり、キャリアコンサルタント試験は国家資格の中では難易度が低い部類です。
事前の対策をきちんと行っていれば、難なく合格できると考えてよいでしょう。
*参照:キャリアコンサルティング協議会『第22回 キャリアコンサルタント試験 試験結果』
*参照:日本キャリア開発協会『第22回 キャリアコンサルタント試験 試験結果』
キャリアコンサルタント試験に合格するために、代表的な勉強方法と勉強時間の目安を解説します。
キャリアコンサルタントが、他の国家資格に比べて難易度が低いとされる理由には、独学でも合格しやすいという点があります。
実務経験を3年以上経験している人なら、いつでも受験できます。
参考書や問題集も書店で販売されているため、独学でもやる気さえあれば問題なく合格できるでしょう。
ただし、独学で課題となるのが、実技の面接試験です。
独学の場合は、ロールプレイングでの面接練習が難しいため、キャリアコンサルタント試験合格者の協力も得て、面接対策を行いましょう。
中には、面接対策のために通信講座や予備校に通う人もいるため、自分なりに面接対策をしておくことが大切です。
コンサルタント業務に従事した経験がなく、未経験からキャリアコンサルタントを目指す場合には、厚生労働大臣が認定したキャリアコンサルタント養成講座を受講することが必須条件です。
そのため、未経験からキャリアコンサルタントを目指すなら、資格関連の予備校が開催しているキャリアコンサルタント養成講座を受講しましょう。
キャリアコンサルタント養成講座の金銭的なメリットとしては、「教育訓練給付金」の対象にもなっているため、受講費用の自己負担額が大幅に減額される点です。
また、キャリアコンサルタント養成講座は、学科・実技試験の対策はもちろん、専任の講師が常駐しているため、疑問や質問にもすぐ答えてもらえます。
ただし、最初に費用を支払う必要があることと、決まった時間に受講する必要もあるため、仕事で多忙な方はスケジュール調整が大変というのが難点です。
金銭面とスケジュール調整が厳しい方の場合は、通信講座での受講もおすすめです。こちらも厚生労働大臣が認可した養成講座があるため、予備校よりも費用が抑えられます。
何よりも、通信講座はPCやスマホで、すき間時間に学習できる点がメリットです。
大手の資格予備校も通信講座に参入しているため、カリキュラムは予備校のものとほとんど変わりません。
ライフスタイルに合わせて学習したい方や、近くに予備校がない方は、通信講座で学習するのがおすすめです。
キャリアコンサルタントに合格するためには、しっかりとした勉強時間を確保することも重要です。
キャリアコンサルタントの勉強時間は、養成講座のカリキュラムも含めて、総勉強時間で150時間が目安とされています。
1日2時間勉強すると仮定すれば、2カ月半で合格できる計算です。
試験は毎年3月・7月・11月に開催されますから、4月・8月・12月には勉強を開始する必要があります。
合格までに必要な勉強時間と、試験の開催日を計算して、勉強スケジュールを計画してください。
キャリアコンサルタント試験に合格するために、対策と学習ポイントを5つご紹介します。
基本的なことですが、キャリアコンサルタントの学習をする際は、参考書や講座で使用するテキストで学習するはずです。そして、学習する際は、参考書を読むだけでなく、声に出して読んだり、重要なポイントを自分なりのノートにまとめたりすることが大切です。
人間は勉強しても1日で大半のことを忘れてしまうため、繰り返し学習しなければなりません。
しかし、教科書をそのまま読んでも記憶に残りにくく、学習効率が落ちてしまいます。
そのため、自分なりに重要なポイントをノートにまとめて、翌日声に出して振り返れば、「これはこうだった」「この部分はどうだっただろう」という風に記憶に残ります。
わからない部分だけを参考書を読み返せば、無駄な学習時間を減らし、最大効率で勉強できるはずです。知識を自分の中で定着させるためにも、ノートに残して読む・書く・聞くという三拍子を意識しましょう。
学習した内容を本当の意味で身に付けるには、インプットだけでなく、アウトプットも重要です。特に学科試験では、100分間に50問を解く必要があり、計算上は1問2分で解くことになります。
しかし、問題文を読み、最後の見直し時間まで含めれば、実際に問題を解く時間は1分程度しかありません。素早く問題文を読み、即座に答えを導き出すには、過去問で徹底的にアウトプット能力を磨くことが重要です。
また、学科試験の問題は過去問とほぼ同じ内容が出ることも多く、過去問を繰り返し解かなければ、試験で本来の力を発揮することは難しいでしょう。
ただ過去問を丸暗記するのではなく、問題文の何が正しく、どこが間違っているのかまで即座に回答できるようになれば、十分に合格レベルまで到達しているはずです。
論述試験では、過去の出題形式や事例、設問をインターネットで検索し、模範解答を学ぶことが大切です。
インターネット上では、過去の問題を紹介したうえで、動画やブログで模範解答をわかりやすく説明してくれている方もいます。
実際にキャリアコンサルタント試験に合格した方の説明を聞くことで、次のポイントがわかります。
キャリアコンサルタントは人を相手にする仕事ですから、全てを鵜呑みにする必要はありません。
しかし、事例に対して自分がどう考えるのかを導き出したうえで、模範解答との違いを比較すれば、新しい視点が見えてきます。
キャリアコンサルタント試験の面接試験では、実施団体によって評価区分が異なります。
同じように受け答えしたとしても、実施団体によって点数に増減することもあります。
それぞれの評価区分を理解したうえで、受験する団体に応じた対策を行いましょう。
2つの団体の評価で重要になるのは、CCCは「相談者が将来のキャリアを客観的評価できるように導くこと」で、JCDAは「キャリアコンサルタントが相談者の問題の本質を把握できるか」という点にあります。
人の話を聴くのが好きで、傾聴を得意にしている人はJCDAの試験を受けると、合格に一歩近づけるでしょう。
学科試験は自分だけで学習できますが、ロールプレイではそうはいきません。
実際に体験する中でブラッシュアップするのが効果的ですから、ロールプレイ対策に特化した講座を受講しましょう。
ロールプレイ講座なら言葉遣いや態度、キャリアコンサルタントの心構えを講師から学べるため、面接試験にも強くなります。
また、独学と違って学習する同期もいるため、悩みを相談しやすい点も特徴です。
試験を受けるのは自分一人でも、一緒に頑張る仲間の存在は心の支えになります。
効率的な学習を進めるためにも、自分の目的に合わせた講座を受講してください。
キャリアコンサルタント資格について、試験の難易度や勉強方法、学習のポイントを解説しました。
国家資格になって日が浅い資格ですが、これからの社会で必要とされるのがキャリアコンサルタントです。
コンサルタント業務未経験者でも、特定のカリキュラムを受講すれば受験でき、合格率も高い国家資格です。学科と面接という2つを突破する必要はありますが、取得できればコンサルタントとしてやりがいを持って働けるでしょう。
社会的な信用も高い資格として、キャリアコンサルタントの取得を目指してみてはいかがでしょうか。