CCNAは、ネットワーク機器の分野において世界的シェアを誇るCisco社が認定している資格です。ネットワークエンジニアの業界では、知名度が高い資格といわれています。
CCNAは、最新の技術を反映した試験内容とするため改定がたびたび行われてきました。2020年2月に行われた改定では複雑だった試験の種類が一本化し、制度としてはシンプルになりました。
一方多方面に分かれていた試験分野がCCNAに統合されたため、試験範囲が広くなり難易度は上がったと考えられます。また、最新試験に参考書や問題集の発売が追い付いていない現状もあります。
この記事では、最新の試験バージョンであるCCNA(200-301)について勉強方法を調べた結果をまとめています。
最新試験に対応した教材や勉強サイト、ネットワークの勉強に有益な実機演習をどうするかなど、様々な側面からCCNAの勉強方法を解説していきます。
CCNAとは、簡単に言えばネットワークエンジニアの技能認定資格です。
コンピューターとコンピューターをつなぐネットワークを構築するためには、ルーターやスイッチなどの機器が必要です。
このようなネットワーク機器を全世界に向けて発売している大手企業Cisco Systems(シスコシステムズ合同会社)が認定しているのが、このCCNAという資格なのです。
CCNAは正式名称Cisco Certified Network Associateと言います。シスコ技術者認定試験のインフラ系資格には2020年3月の時点で4種類の資格が存在しますが、CCNAはその中で一番下のレベルです。CCNAは初心者がネットワークエンジニアを目指す上での、第一歩となる資格といえます。
シスコシステムズが認定している技術資格はたびたび改定が行われてきました。直近では2020年2月に大規模な改定が行われ、試験の仕組みががらりと変わっています。
以前の試験では、CCNAは9種類に分かれていました。
その中でも実務に役立つといわれ、世界中で人気が高かったのが「CCNA Routing & Switching(ルーティング&スイッチング)」です。エンジニア業界でCCNAと言えば、9種類の資格の中のRouting & Switchingを指していたのです。
しかし、現在のネットワークエンジニアは限定的な技術の専門家ではなく、複合的・総合的な知識が求められるようになっています。
このような背景から、細分化されていた9種類の資格は統合され、新しいCCNAとなったのです。
ITの世界は、目まぐるしく技術が進化します。その進化に追いつくため、CCNAも頻繁に改定が行われています。CCNAについて調べる時は、必ずシスコ公式サイトを確認し、最新の試験情報を得るようにしましょう。
特になし
※「1 年以上のシスコソリューションの実装および管理経験」などの推奨条件は有り
随時(ピアソンvueのサイトからオンライン申込)
※2020年12月14日より、オンラインで受験可能
120分
ネットワークの基礎
ネットワークアクセス
IPコネクティビティ
IPサービス
セキュリティの基礎
自動化とプログラマビリテ
非公開
3年間
参考元:「試験概要」https://www.cisco.com/c/dam/global/ja_jp/training-events/training-certifications/exam-topics/200-301-CCNA.pdf
ここからは、CCNAの勉強方法について調査した結果をまとめています。新試験移行後の注意点なども、勉強の参考にしてください。
CCNAはシスコ技術者認定資格の中では初心者向けですが、出題問題の変更が頻繁に起こるため対策が立てづらい試験でした。さらに今回の改定で、出題範囲自体が大幅に変わっています。
前述したとおり、CCNAは2020年2月に改定が行われました。細分化していた資格が1つに統一されたことで、試験範囲は拡大しました。
勉強すべき事柄が増え、試験は難化したと考えられます。勉強する項目が増えたことは、旧試験が90分の試験時間であったのに対し、新試験が120分をかけて回答する形式になったことからも見てとれます。
また、以前のCCNAは ICND 1(CCENT)とICND2という2つの範囲に分かれていました。そのため、広い出題範囲を勉強する時間がない人はICND1とICND2を別々に受験することもできました。両方の試験に合格することで、CCNAを取得するという方法が可能だったからです。
しかし、新試験のCCNAでは試験範囲を分割して受験する方法は使えなくなってしまいました。
これからのCCNA対策には、広い範囲を一度に勉強するためのまとまった勉強時間が必要になります。
なお以前の試験では、CCNA合格者が費やした勉強時間は約1~5ヶ月程度となっていました。
しかし新試験の難易度が上昇したことを加味すれば、これ以上の勉強時間が必要であると推察されます。
すでにCCNAに合格している旧試験受験者の体験では、現状に合わないという可能性があります。特にネットワーク技術初心者の場合は、基礎知識を得るのに時間がかかるでしょう。
試験勉強に必要な時間は個人差があります。旧試験に必要な勉強時間を参考にしつつ、以下に紹介する問題集や勉強サイトを眺め、自分にとって必要な勉強時間を考えていくことが必要です。
一般的な検定試験とは違い、CCNAは特別な受験日程が決まっていません。日付を自由に選んで受験をすることができるのです。
特に2020年12月からは自宅や職場においてオンラインでの受験が可能になり、試験会場へ出向く必要もなくなりました(使用するパソコンがシステムチェックに合格していることなど条件はあります)。
いつでも好きな場所でテストを受験できるのは便利ですが、目標があいまいになってしまうというデメリットもあります。いつでも受験できるから、と試験日を伸ばし伸ばしにしていると集中力が途切れてしまいます。CCNAの勉強を始める前に、目標となる試験日をあらかじめ決めておくと良いですね。
次に、CCNA対策として使える教材についてご紹介します。
現時点でCCNAの対策本飲ついては、旧試験対応のものと新試験対応のものが混在している状態です。購入するときは、対応試験のバージョンを確認して購入するようにしましょう。
谷本 篤民 (著)
CCNA勉強の元となる「ネットワークの基礎(の基礎)」について、分かりやすく説明してくれている本です。「ネットワークとは」から始まり、1日2章ずつ話が進みます。7日間続ければ、CCNAの基礎知識が学べるという構成です。
ただし発売日が2016年と古いこと、基礎的な内容で終わることなどからこの本だけで合格するのは難しいと言えます。一方で「普段一般ユーザーとしてインターネットを使用しているだけ」というネットワーク学習初心者が、CCNAの勉強に踏み出すための最初の本としては利用できる教材です。
林口 裕志,浦川 晃 (著), 中道 賢 (監修)
CCNA受験者の間では「白本」と呼ばれている定番参考書兼問題集です。現時点(2021年3月)で発売されている新試験対応の日本語版参考書は、これだけです。日本人がCCNA対策をする上では貴重な存在と言えるでしょう。
章末には確認問題がついていること、模擬試験が2回分ついていることが特徴で、この本一冊で総合的な学習を行うことができそうです。 ただし888ページと辞書並みに分厚いのがデメリット。外出先のスキマ時間で勉強したい場合は、電子書籍版の利用を検討してみてください。
※なお、CCNA対策用参考書の定番としては、「黒本」と呼ばれるインプレス社のものもあります。こちらは残念ながら現時点で新試験対応版が発売されていないようです。
Wendell Odom (著)
シスコ出版から発売されているCCNAの新形式対応の参考書です。英語での学習が可能な人向けです。
Gene , 松田 千賀 (著)
CNNA受験生の間では「赤本」と呼ばれている定番問題集です。現時点(2021年3月)で新試験に対応済みの日本語問題集としては、これ以外に発見できませんでした。テキストとしても利用できる丁寧な解説がウリの問題集となっています。
CCNAに関する勉強サイトは、非常に充実しています。勉強サイトの多くは無料で利用できるため、学習費用を抑えたいという人にはありがたい存在です。また紙に書かれている参考書や問題集とは違い、スマホやタブレットなどでどこでも勉強が進められるという利点もあります。
一方書き込みができないなどのデメリットもあるので、自分に合った使い方を考えてみると良いでしょう。
https://www.infraexpert.com/info/ccnaz7.html
ユーザー登録なし、無料
「ネットワークエンジニアとして」というネットワークエンジニア全般について紹介しているサイト中の一コーナーです。個人が運営しているサイトながら、CNNAの試験範囲全般についての解説がされています。また各章に対して模擬試験・練習問題が付いており、基礎知識を身に着けるための参考書的な使い方ができるようになっています。2021年3月時点で、新試験のバージョン(200-301)に対応済みです。
CCNAの試験範囲や試験内容、参考書、勉強方法などについても解説があるので、CCNA受験者にとっては非常に役立つサイトなのではないでしょうか。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%257eaji/3min/
ユーザー登録なし、無料
ネットワーク知識について基礎知識を学べるサイトです。インター博士とネット助手の掛け合いで、ネットワーク知識についてさくさく学習ができる構成になっています。ユーモアたっぷりの内容になっているので、①よりも敷居が低く感じられるでしょう。
1つ1つのセクションが短くシンプルにまとまっており、最後に「ネット君の今日のポイント」で全体内容が振り返れるのも分かりやすいです。3分間のタイトル通り、スキマ時間の学習に有益なのではないでしょうか。
なお「3分間ネットワーク」書籍版も発売されているので、興味がある人は探してみてください。
https://ping-t.com/
(モバイル版:https://m.ping-t.com/?_fsi=0TzWndAj)
ユーザー登録、一部有料
CCNA受験者の間で、大人気の勉強サイトがPing-tです。
1、2がCCNAの知識を身に着けるテキスト的役割を果たす勉強サイトだとしたら、Ping-tは問題集として使えるサイトといえます。
Ping-tを使うにはまず、無料のユーザー登録が必要です。
ユーザー登録をすると、CCNA WEB問題集(400問)、学習日記、助け合いフォーラムを利用できるようになります。
Ping-tの問題は金銀銅というカテゴリに分類されます。未挑戦、間違えた問題は銅のボックスに入ります。1回正解すると銀に、2回正解すると金に分類されるため、勉強の進捗具合が分かりやすくなっています。
また、CCNA合格者の声を集めた掲示板「おめでとう♪合格体験記」も充実しています。かなりの頻度で更新されており、新試験の合格体験も豊富に見つかります。勉強期間や使用テキストなども書き込まれていますので、受験勉強を始める前に目を通しておくと良いでしょう。
なお、Ping-tはCCNA以外にも、CCNP(CCNAの上位資格)、HTML5プロフェッショナル認定資格、ITパスポート検定などにも対応した勉強サイトです。IT系資格取得を目指すなら、ブックマークしておきたいサイトですね。
有料版について
さらに勉強を進めたい人向けに、有料のプレミアムコンテンツも用意されています。1ヶ月355~2,400円(税込)で、以下のようなサービスが利用できます。
「ルーティング」以降の問題を含んだ追加のWEB問題集(約450問)
コマ問プレミアムCCNA(200-301)(コマンド練習)
Cisco簡易シミュレータ
https://learningnetwork.cisco.com/s/jp-ccna-practice
最後にCisco公式の練習問題が閲覧できるサイトを紹介します。ただし、問題数は少ないです。実際の認定試験で出題される設問とは異なる点にも注意してください。
また、以下では試験問題のデモ画面(チュートリアル)を見ることができます。
https://www.cisco.com/c/ja_jp/training-events/training-certifications/exam-tutorial.html
Cisco公式ページは和訳が怪しいところがあったり、メニューの導線が分かりにくい部分もありますが、本試験の形式を掴むためには目を通しておいたほうが良いでしょう。
CCNA勉強方法の基本は、次のような流れです。
先に紹介した参考書や勉強サイトで基礎知識を付けていきます。
問題集を解いて、身に着けた知識を確実にしていきます。Ping-tを何周も回して、合格した人も多いです。
間違えた問題は、参考書や勉強サイトに戻って、基礎を確認しましょう。
ネットワーク機器を使って、実際のネットワーク構築について学びます。
なお、CCNAの試験範囲は広いので、1のインプット途中で挫折しそうになる人もいるかもしれません。そんな時は最初にPing-t等の問題を一回解いてみて、試験の概観を知るという勉強方法も試してみてください。試験の概要が頭に入った後、参考書や勉強サイトで体形的な知識を身に着けていきます。
CCNAの暗記問題は、知識のインプット→問題を解いてアプトプットを繰り返すことで対応できます。
一方CCNAには、単純な暗記では解くのが難しいシナリオ問題、シュミレーション問題と呼ばれる分野があります。この2つは難易度も配点も高いため、特にしっかり対策を行いたい分野となっています。
この問題対策には、実際にCiscoの実機(Ciscoルータ、Catalystスイッチ等)を触ってイメージをつかむのが良いとされています。もともとネットワークというのは目に見えない存在でイメージがしづらいものです。ネットワークの勉強をするには、実際にネットワークの構築をするのが一番ということになります。
しかし、ネットワーク構築のためにCiscoの実機を揃えるとしても、その費用は高額です。ただでさえ高いCCNAの受験料(新試験では1回33,600円(税抜))に加え、これらネットワーク構築の費用まで掛かってくるとなるとかなりの負担になってしまいます。
そこで、できるだけ費用を抑えながら実機の演習ができる方法をいくつかご紹介します。
CCNA対策の勉強会・セミナーでは、実機を触って演習を行うことができるものがあります。通常の資格スクールを受講するより費用は比較的安いです。
また、CCNA対策を手掛けるスクールの中には、学校側が用意している実機を触れる自習室を開放しているところもあります。
例えば、日本キャリアアップスクールの実機操作自習室は、登録料1000円+2時間3000円でciscoルータ/ciscoスイッチを触ることができます。
参考元:「日本キャリアアップスクール」https://www.ncus.jp/school/ccna_studyroom/index.html
ただし、開催地やスクールが近くにないと参加しづらいです。
Ciscoの実機を使わず、パソコン上で実行できるシュミレーターを利用するという方法もあります。Ping-tのプレミアムコンテンツに含まれている「Cisco簡易シミュレータ」では、シュミレーション問題の対策ができます。
他には、以下のようなシュミレーターがあります。
ソフトウェア上でCisco製ネットワーク機器を操作できるシュミレーターです。無料でインストールすることができます。実機とは違い、現実世界では危険な設定の検証なども可能です。
ネットワークの勉強をするなら、やはり本物をじっくり触りたい。そんな時は実機を中古で購入することも考えてみましょう。Cisco実機はオークションサイトなどで数千円で手に入れることができます。
最後にCCNA独特の注意点について、書いておきます。CCNAを認定しているCiscoはアメリカの企業であり、CCNA試験は英語がベースとなっています。
CCNAの公式ページは日本語での表示もできるようになっていますが、読んでいると不自然な日本語が多いと感じませんか?このような変な日本語はCCNA試験内でも登場し、受験生を困らせているようです。
俗に「Cisco語」と呼ばれているこの独特の言葉遣い、何が言いたいのか読み解いていかなければなりません。CCNAの勉強をする時は繰り返し問題を解いて、言い回しに惑わされないように知識を付けていくことが重要と言われています。
CCNAの取得を目指すにあたって、気を付けておきたいのがCCNAの有効期限です。CCNAの有効期限は3年と短くなっています。短い有効期限を設定することで、受験者に対し最新の技術について知識を持っているかどうか何度も問うことができるというわけですね。
せっかく取得したCCNAですから、有効期限が切れる前に有効に使いたいところです。有効期限内に上位資格であるCCNPを目指すなど、次の目標を考えておくと良いでしょう。
またネットワークエンジニアに転職するためにCCNA取得を目指すのであれば、有効期限内に転職活動を行うことが大事です。自分一人での就職活動が難しいと感じたら、就職支援サービスを利用するという手もあります。
例えば、ネットビジョンアカデミーというサービスではCCNAの合格とネットワークエンジニアとしての就職支援を同時にサポートしてくれます。
https://www.netvisionacademy.com/lp/?fil=%7B%22pr%22%3A%7B%22U12310T%22%3A%7B%22clk%22%3A%22ea1d6301a3bc7820cff0cf2809c73f13%22%2C%22ym%22%3A%22202102%22%7D%7D%7D
2020年2月の改定により、CCNAの試験形式は刷新されました。受験勉強を始めるなら、まず教材が新試験のバージョンにあっているかどうかを確かめることが大事です。参考書や問題集においては、新試験に対応しているものはまだ数が少ないです。購入時は、対応バージョンの表記に注意してください。
CCNAに対応している勉強サイトには、CCNAイージスやPing-tなどかなり充実しているものがあります。スマホやタブレットがあればどこでも利用できる勉強サイトは、広い試験範囲をカバーするのにとても便利です。スマホやタブレットをもっていれば、どこでもいつでも勉強できるからです。メジャーな勉強サイトは新しい試験形式にも迅速に対応しています。
CCNAを受験するなら、利用を検討してみましょう。