昨今、IT技術の発展により、一般の家庭でも手軽にインターネットを利用できるようになりました。スマホやタブレットの普及により、今や一人一台Webに接続できるハードウェアを携帯する時代です。
そこで問題になるのが『知的財産の不正利用』。スマホなどのカメラで日常的に写真を撮り、SNSなどでボタン一つでWeb上に情報を公開できるようになったことで、誰でも犯しかねない犯罪となりつつあります。
知的財産を保護するということに注目され始めている現代の風潮に合った資格とも言える、『知的財産管理技能検定』。合格率と難易度、また資格を取ることで得られるメリットや将来性など、一緒に見ていきましょう。
『知的財産管理技能検定』は、国家技能試験です。元は『日本弁理士会』が行っていた民間資格でしたが、2008年から国家試験の一つになりました。
試験の主旨としては、昨今注目されてきている『知的財産(知財)』をどのように管理(マネジメント)していくか、それらに対する知識や技能を測り、評価する事となっています。
試験は3級から1級まであり、累計受験者数は約38万人、合格者は延べ10万人ほどの人気がある資格です。
そもそも『知的財産管理技能検定』を受験する前に、『知的財産管理技能士』が守るべき『知的財産』とはどんなものなのかを知っておく必要があります。
知財は、著作権、商標、意匠、発明(特許)、実用新案などに分けられます。それぞれどのようなものがあるのか、詳細を書き出すと以下のようなものが該当します。
以上に該当する知的財産権は、法人・個人の区別なくすべてのものに発生します。法律でこの権利は犯してはならないと定められているため、企業でも個人でも創作を行う際に必ず知っておかなければならず、また侵害すれば罰せられることを認識しておかなければいけません。
試験内容
試験方法
3級〜1級まで、学科試験(マークシート方式)と実技試験(筆記試験。1級のみ口頭試問もあり)
試験日程
年3回(3月・7月・11月)
受験資格
(一定の要件を満たすことで、2級と1級の実務経験は短縮されたり不要となることもあり)
(また一定要件で各級の学科試験免除制度などもあり)
受験手数料
知的財産管理技能検定HP:http://www.kentei-info-ip-edu.org
『知的財産管理技能検定』の過去の級別の合格率推移は以下の通りになります。
20年11月 | 20年7月 | 19年11月 | 19年7月 | 19年3月 | 18年11月 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1級 | 特許学科 | 4.7% | - | 8.5% | - | - | 8.4% |
特許実技 | - | 81.1% | - | - | 95.3% | - | |
コンテンツ学科 | - | 11.1% | - | 11.5% | - | - | |
コンテンツ実技 | 87.5% | - | 54.7% | - | - | 72.9% | |
ブランド学科 | - | 8.3% | - | - | 5.1% | - | ブランド実技 | 90.4% | - | - | 78.3% | - | - |
2級 | 学科 | 37.0% | 35.2% | 43.5% | 42.1% | 44.7% | 53.8% |
実技 | 42.0% | 31.28% | 39.8% | 48.9% | 38.5% | 40.5% | |
1級 | 学科 | 67.8% | 66.34% | 69.8% | 67.1% | 63.7% | 63.6% |
実技 | 65.0% | 69.16% | 78.3% | 71.2% | 74.5% | 71.3% |
上記の合格率は『知的財産管理技能検定』のHPにある『実施データ』の受験者数と合格者数から割り出しています。こちらのページでは2008年まで遡って受験者・合格者数だけでなく、受験した方の傾向なども見ることができます。
(http://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_kekka.html)
合格率を見る限りでは、3級は学科・実技合わせて70%くらい、2級は40〜45%くらいになるでしょうか。1級にかなりのバラつきがあり、中には90%台の年もあるようですが、実際のところよく見てみると、合格率が高めになっているのは3種合わせて『実技試験』であることがわかります。
逆に合格率が軒並み10%前後となるのは『学科試験』の方です。2020年11月の特許学科試験に至っては、5%を切っています。(なお2020年3月については新型コロナの影響で中止のためデータなし)『知的財産管理技能検定』では3級と2級は難易度が低く、独学で合格可能と言われるほどですが、1級から難易度が段違いに高くなると言われる理由は、学科試験にあると分かるのではないでしょうか。
『知的財産管理技能検定』に合格するには、どれくらいの勉強時間をこなせば合格できるでしょうか?目標もなくただ闇雲に勉強していてはモチベーションを保つのにも難しいですよね。
3級用の勉強時間では、だいたい50〜100時間くらいで合格ラインまでの勉強ができると言われています。合格率は70%前後と高めで、試験も基礎的な内容なので、難易度としてはさほど難しくないと言われています。
級が上がるごとに倍の時間をかけるくらいでOKとも言われているので、2級では100〜200時間、1級では300〜400時間は必要と言うことになるでしょうか。
ただし、合格率の表でも分かる通り、1級の学科試験の難易度はかなり高いです。単純に2級・3級と同様の勉強法で時間を増やすだけでは厳しいと思われます。1級を受験したいという方は、過去受験した方のレビューなども研究しつつ、勉強法もしっかり見直したほうが良いでしょう。
2級・3級の受験を経験した方の経験談を見る限りでは、「独学で十分」合格可能なようです。『知的財産管理技能検定』のHPには過去問が公開されていますし、また公式のテキストも販売しています。
http://www.kentei-info-ip-edu.org/gakushujoho.html
合格者の声も上がっており、社会人と学生など立場の違いによるアドバイスも見ることができるので、参考にしてみてください。
しかし1級は受験者数自体がそもそも少なく、公式ですらテキストが発行されていません。市販のテキスト自体がないため、代わりとして著作権法などの法律の面からアプローチしたという声が多く聞かれます。
『知的財産管理技能検定』1級用のテキストがなくとも、知財に関する法律を学ぶテキストなら弁理士や弁護士、行政書士などの法律を扱う職業向けのものがあるので、それらを上手く利用できるといいでしょう。
『知的財産管理技能検定』の類似資格…というよりは上位資格といって差し支えないものに『弁理士』があります。『知的財産管理技能士』は国家試験とはいえ技能検定なので、資格を取ったからと言って、この資格を肩書として行える独占業務があるわけではありません。
対して弁理士は国家資格であり、商標・意匠・特許・実用新案といった知的財産権の出願の代理業務を行うことができ、また知財に関する相談を受けたり、訴訟関係に携わることもあります。
知的財産管理技能士よりも、より深く突っ込んだところまで知財に関する業務を行うことを許されているのが弁理士なのです。
弁理士になるには、まず国家資格である『弁理士試験』に合格しなければ始まりません。
短答式試験、論文式試験、口述試験それぞれ合格しなければ次のステップに進めない)
特許庁HP:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/index.html
弁理士の合格率推移を見ると、平成29年度6.5%、平成30年度7.2%、令和元年8.1%とかなり低い値です。国家資格であり、また試験内容も4段階ありかなりの難関資格と言っていいでしょう。
知的財産管理技能士は、先にも言ったように独占業務を行える資格ではありません。そのため、この資格を取ったからといって業界で引く手あまたになるかというと、残念ながらそこまでの資格ではないと言わざるを得ません。
しかし、未経験で知財に関わる仕事に就きたいという方にとってはアピールの一つとして利用することはできます。
また、昨今ではインターネットやSNSなどが一般の方にも広く普及されることになって、ことさら知的財産権に過敏になり、メーカーやIT・Web・デザイン系といったクリエイティブな業界、ものづくりに関しては、知財の知識に詳しい人が居ることが強みにもなるでしょう。
一般の企業においても、『知的財産管理技能士』としての知識は決定的な武器としては弱いかもしれませんが、アピールとしてはきっと一助となるでしょう。
実際、『知的財産管理技能検定』の1級はかなりの難関資格です。そもそもテキストがなく、どうやって勉強すれば…?という壁に誰もが最初にぶつかることになりそうです。それでも1級を目指すのであれば、頼りになるのは経験者の体験談になるでしょう。
身近に経験者が居れば最高に恵まれては居るでしょうが、そうでなければまずはインターネットなど駆使して情報収集を。法律の観点から勉強するのはかなり効果的なようですね。
また、もし知的財産権に対してもっと深く関わる仕事がしたい。 知財をもって人を助ける仕事がしたいと考える方がいるなら、『弁理士』がおすすめです。国家資格なので超難関資格ではありますが、そのぶん独占業務に関わる特権を得