働き方改革の推進により、在宅勤務やコワーキングスペースでの仕事など、新たなワークスタイルの普及が進んでいます。特に最近では、新型コロナウイルスによる外出自粛から、テレワークが推奨されているためその動きも顕著です。
フリーランスや転職を目指すエンジニアの中には、社会の変化を機にクラウドエンジニアを目指そうと考えている方もいるでしょう。クラウドコンピューティングサービスを利用した働き方の導入は、コロナ禍で需要が急成長しており、将来的な年収アップが期待できます。
ただしクラウドエンジニアの経験がない方は、仕事内容や勉強法について分からない場合もあるでしょう。そこで今回の記事では、未経験の方がクラウドエンジニアのキャリアパスを描くための方法について、取得すべき資格を中心に解説していきます。
クラウドエンジニアとは、クラウドコンピューティングサービスを利用してシステム設計や構築、運用を担当するエンジニアを指します。そのためクラウドエンジニアを理解するには、最初にクラウドコンピューティングサービスについて知っておく必要があるでしょう。
クラウドコンピューティングサービスとは、インターネットを通じて高性能なハードウェアやソフトウェアを利用できる仕組みを指します。クラウドコンピューティングサービスを利用すると、社内外を問わず同じ環境にアクセスできるようになり、テレワークがスムーズに導入できるでしょう。また、利用した分だけ料金を支払う方式なので、導入や運用のコストを抑えられる点も魅力的です。
クラウドコンピューティングサービスがテレワークに適していることが分かっていても、導入するためには知識や経験のある人材が必要不可欠です。そこで、活躍が期待される職種がクラウドエンジニアとなります。
クラウドエンジニアは、クラウドコンピューティングサービスを利用してそれぞれの企業に適したシステムを構築します。企業はクラウドコンピューティングサービスを導入したシステムを利用することで、堅牢性の高いセキュリティを維持しながら、必要に応じて拡張していけるメリットがあるのです。
企業に適切なクラウドシステムを導入するためには、優秀なクラウドエンジニアが必要不可欠です。ただし、未経験からクラウドエンジニアになってもすぐには仕事を得られないでしょう。本章では、企業に必要とされるクラウドエンジニアになるための方法について解説します。
テレワーク導入は、将来的な企業の成長を左右すると言っても過言ではありません。働き方改革を成功させるため、企業は実績のあるクラウドエンジニアを求めるはずです。
そこで重要なポイントがクラウドエンジニア資格の取得になります。クラウドエンジニアの資格を取得することで自分の知識や技術をアピールでき、最初の仕事を得られる可能性が高まるでしょう。
そして受注した仕事はたとえ小さな案件でも全力で取り組むことが大切です。少しずつ実績を増やすことによりクラウドエンジニアとしての信頼度が高まり、次の仕事の獲得に繋がっていきます。
では、クラウドエンジニアの資格にはどのような種類があるのでしょうか。クラウドエンジニアとしての評価を高める資格としては、以下の4つの試験が挙げられます。
次章からはそれぞれの資格について、概要や勉強法を解説していきます。
AWSはAmazonが提供する「Amazon Web Services」の略です。日本にあるデータセンターの数が3か所と、大手クラウドコンピューティングサービスの中で最も多いため、通信の遅延が少なく快適なサービスと言えるでしょう。本章ではAWSが認定する資格の概要や、クラウドエンジニアが取得すべきカテゴリー、合格に向けた勉強法について解説します。
AWS認定資格は、AWSを利用するクラウドエンジニアの専門知識やスキルレベルを評価する試験です。2020年8月現在、全部で12種類のカテゴリーがあり、その一覧は以下の通りになります。
・クラウドプラクティショナー
・ソリューションアーキテクト(アソシエイト)
・SysOpsアドミニストレーター
・デベロッパー
・ソリューションアーキテクト(プロフェッショナル)
・DevOpsエンジニア
・高度なネットワーキング
・セキュリティ
・機械学習
・Alexaスキルビルダー
・データアナリティクス
・データベース
AWSは導入する企業が多いため、クラウドエンジニアに向けた資格の中でも評価されやすい資格と言えます。どのクラウドコンピューティングサービスを選択するか迷っている方は、まずAWP認定資格の取得を目指すことをおすすめします。
AWS認定資格は受験するレベルにもよりますが、基本的にAWSの実務経験が求められるため難易度は高いと言えるでしょう。最も入門的なカテゴリーはベーシックレベルである「クラウドプラクティショナー」ですが、クラウドエンジニアの資格としては物足りません。
クラウドエンジニアとして評価されるためには、まず「ソリューションアーキテクト(アソシエイト)」の合格を目指すと良いでしょう。「ソリューションアーキテクト(アソシエイト)」の試験時間は130分、受験料金は15,000円となります。
独学で勉強する場合は、まず「AWS認定資格試験テキスト AWS認定ソリューションアーキテクト-アソシエイト」を読みこむことをおすすめします。認定試験に向けた学習の進め方が解説されているため、初心者の方でも合格を目指しやすいはずです。
さらにUdemy等の動画によるオンライン学習プラットフォームを利用することで、AWSを利用したことがない方でも実際の画面を見ながら理解を進められます。そうして資格受験へのモチベーションを高めてから書籍の勉強に進むことで、効率よく学習を進められるはずです。
GCPはGoogleが提供する「Google Cloud Platform」の略です。大手クラウドコンピューティングサービスの中でも特にAI(人工知能)に強く、データ解析で力を発揮するでしょう。本章ではGoogle Cloudが認定する資格の概要や、クラウドエンジニアが取得すべきカテゴリー、合格に向けた勉強法について解説します。
Google Cloud認定資格は、GCPを利用するクラウドエンジニアの専門知識やスキルレベルを評価する試験です。2020年8月現在、全部で10種類のカテゴリーがあり、その一覧は以下の通りになります。
・Associate Cloud Engineer
・Professional Cloud Architect
・Professional Cloud Developer
・Professional Data Engineer
・Professional Cloud DevOps Engineer
・Professional Cloud Security Engineer
・Professional Cloud Network Engineer
・Professional Collaboration Engineer
・Professional Machine Learning Engineer
・G Suite
GCPはクラウドコンピューティングサービスの中でも、特にAI活用を推進する企業に人気があります。Google Cloud認定資格は、クラウドエンジニアの中でもデータの分析や解析を行うデータサイエンティストとして活躍する方におすすめしたい資格と言えるでしょう。
Google Cloud認定資格は、GCP独自のサービスというよりクラウド技術の全般的な知識が求められる傾向にあります。受験するカテゴリーにもよりますが、全体的にAWS認定資格より易しい傾向にあるようです。
最も簡単なカテゴリーである「G Suite」は、GmailやGoogleドライブなどGoogleが提供するサービスの利用方法を問う資格でクラウドエンジニア向けではありません。
クラウドエンジニアを目指す方は、まず「Associate Cloud Engineer」を受験することをおすすめします。「Associate Cloud Engineer」の試験時間は2時間、受験料金は125ドルです。
まずは、実際にGCPを操作してみてクラウドコンピューティングサービスに慣れ親しむことから始めましょう。とは言っても初心者の方は何から始めてよいのか分からないかもしれません。UdemyやCourseraなど動画によるオンライン講座を利用することでスムーズに学習を始められるはずです。
GCPについて一通り理解したら、試験対策の学習へと進みましょう。Google Cloudには、各カテゴリーの模擬試験が用意されており無料で受けられます。模擬試験で合格レベルに達していると判断してから、本番の受験に臨むと良いでしょう。
Microsoft Azureはマイクロソフトが提供するクラウドコンピューティングサービスです。マイクロソフトはWindowsやOffice製品を開発しており、これらを利用している企業にとって使いやすいサービスと言えるでしょう。本章ではMicrosoft Azureが認定する資格の概要や、クラウドエンジニアが取得すべきカテゴリー、合格に向けた勉強法について解説します。
Microsoft Azure認定資格は、Microsoft Azureを利用するクラウドエンジニアの専門知識やスキルレベルを評価する試験です。2020年8月現在、全部で14種類のカテゴリーがあり、その一覧は以下の通りになります。
・Azure Fundamentals
・Azure AI Fundamentals
・Azure Data Fundamentals
・Azure Developer Associate
・Azure Administrator Associate
・Azure Data Scientist Associate
・Azure Database Administrator Associate
・Azure Data Engineer Associate
・Azure AI Engineer Associate
・Azure IoT Developer Specialty
・Azure Security Engineer Associate
・Azure DevOps Engineer Expert
・Azure for SAP Workloads Specialty
・Azure Solutions Architect Expert
Microsoft Azureはクラウドコンピューティングサービスの中でも、マイクロソフト製品を利用する企業に人気があります。マイクロソフト製品とMicrosoft Azureの連携を得意とするクラウドエンジニアにおすすめしたい資格です。
初心者の方は、まず「Azure Fundamentals」を受験することをおすすめします。クラウドコンピューティングサービスの基礎的な知識を確認する資格であり、Microsoft Azureを利用したことがない場合でも合格を目指せるでしょう。「Azure Fundamentals」の試験時間は60分、受験料金は12,500円です。
Microsoft Azure認定資格は、マイクロソフトが「オンラインラーニング」と「講師による指導」、2つの学習方法を設けています。まずは無料の「オンラインラーニング」を受講しながら、実際にMicrosoft Azureを使用してみましょう。
その後「Azure Fundamentals」合格に向けて、書籍での学習へと進みます。購入する書籍は試験対策に特化した「合格対策 Microsoft認定 AZ-900:Microsoft Azure Fundamentalsテキスト&問題集」がおすすめです。
「CompTIA Cloud +」は、非営利のIT業界団体「CompTIA」が認定するクラウドエンジニアの資格です。CompTIA認定資格は世界共通の国際認定資格であり、グローバルに活躍する企業にアピールできる資格と言えるでしょう。本章では「CompTIA Cloud +」の概要や、合格に向けた勉強法について解説します。
「CompTIA」は、IT業務に必要なスキルを有しているか判断するための試験を実施しています。2020年8月現在、「CompTIA」では13業務の分野の認定資格が提供されています。その中でも「CompTIA Cloud +」は、企業で運用するシステムにクラウドコンピューティングサービスを導入するスキルが必要です。
「CompTIA Cloud +」の試験時間は90分、受験料金は41,173円です。既にクラウドエンジニアとして仕事をしている方や、これからクラウドエンジニアを目指す方に向けた資格と言えるでしょう。
「CompTIA Cloud +」は、クラウドに関する知識や技術を幅広く身に付けられるため、クラウドエンジニアになりたい方におすすめしたい資格です。しかし試験の難易度は高く、独学による勉強では苦労するかもしれません。
「CompTIA Cloud +」は、大手パソコンスクールによる通信講座が開講されています。パソコンスクールの講座は、クラウドコンピューティングサービスを利用したことがない初心者でも理解できるように工夫されているため、スムーズに技術を習得できるメリットがあるでしょう。
クラウドエンジニアに向けた数多くの資格について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。未経験からクラウドエンジニアとしての実績を積む方法や、クラウドエンジニアが取得すべき資格について理解して頂けたかと思います。
三大クラウドコンピューティングサービスの中でも、日本ではAWSのシェアが高いため、まずは「AWS認定ソリューションアーキテクト」を取得することをおすすめします。実際にクラウドエンジニアとして仕事をしている方も、まずはAWS認定資格を取得する方が多いようです。
そしてクラウドエンジニアを目指すためには、資格を取得するだけでなく仕事の実績を積むことが重要です。ぜひ資格取得をクラウド技術学習のモチベーションとして、クラウドエンジニアとしてのキャリアパスを描いていきましょう。