新型コロナウィルスの影響は健康上の被害だけにとどまらず、世界各地の経済を直撃しました。コロナによる感染が拡大すると同時に株価は大暴落。その被害状況はかつての大不況リーマン・ショックやブラックマンデーに迫る勢いです。
コロナによる経済への打撃は「コロナ不況」と呼ばれ、世界中で企業の倒産や労働者の解雇が続出しています。
この記事では、新型コロナウィルスによる不況で仕事がなくなってしまった職種やその背景を紹介しています。
また仕事がなくなった時どのように動いたらよいのかという対処法についても提示していきますので、今後の参考にしていただければ幸いです。
新型コロナは急激に体調が悪化し死亡する人もいるという恐ろしいウィルスですが、感染者の中には軽症・もしくは全く症状が出ないという人がたくさんいます。
日本での死亡率は5月7日時点で約3.8%(感染者15,463人死亡者数591人より)となっており、数字上は感染者の9割以上が助かるのです。
(WHO 感染者数出典:https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200507covid-19-sitrep-108.pdf?sfvrsn=44cc8ed8_2)
それにもかかわらず、仕事が減ってしまった、ずっと仕事が休みになっている、解雇通知を受け取った、職を失った…多くの仕事がコロナの影響を受けています。
この影響の大きな要因はコロナを広げないための「外出自粛」政策にあります。
いままで当たり前のように仕事・旅行・外食をしていた人々が外に出なくなったため、家の外でサービスを提供する職種が軒並み仕事減、収入減に陥ってしまったのです。
3月の有効求人倍率は1.39倍と3年半ぶりに1.4倍を割り込んでおり、飲食サービス業、宿泊業での新規求人数が激減していることが分かります。
(厚生労働省有効求人倍率:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00034.html)
人が集まる環境を避けるため、政府は企業に「テレワーク」を推奨しました。
しかし対面での対応を避けられないサービス業はテレワークには向かず、雇用を維持するのが大変困難になっています。
新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、強く呼びかけられているのが「人の移動制限」。特に「不要不急の外出」をする人がバッシングを受けるような雰囲気になっています。
「不要不急の外出」の最たるものと言えば、旅行でしょう。
東京オリンピック需要で活気づいていたインバウンド市場は、入国制限の影響をまともに受けてしまいました。外国の宿泊客のキャンセルが相次いだのです。
またコロナの感染者が広がるにつれ、日本国内でも自治体を越えた移動を控えるよう呼びかけが始まりました。観光産業が目玉の沖縄県では都知事が「連休中に沖縄に来る予定の人が6万人いる。沖縄への旅行をキャンセルしてほしい」、と異例の呼びかけをして話題になりました。
例年多くの観光客が見込まれるゴールデンウィークは緊急事態宣言の期間に含まれてしまい、どの観光地も閑散としている状態です。旅行業関係の職種にとって、これほどの大打撃はありません。
負債金額160億円で倒産したWBFホテル&リゾーツを筆頭に全国各地で宿泊業の倒産が相次いでいます。5月9日時点での宿泊業の倒産件数は28社に上っている状態です。
消費税増税により大打撃を受けた外食産業がさらなる危機に直面しています。
外出自粛によって、食事を外に食べに行く人の数がめっきり減ってしまったのです。テレワークが推進されたためサラリーマンによる昼食需要も減少しています。
このような状況の中、飲食店スタッフの雇用は非常に不安定なものとなっています。
飲食店の多くは賃貸物件です。つまり、全く仕事がない状態でも家賃だけは必ず発生してきます。また家賃以外にも水道代、光熱費、料理の材料費といった様々なコストがかかります。
さらに従業員を雇い続けることになれば、ランニングコストの額がどんどん膨れ上がってしまうのは目に見えています。
そのため、飲食店の従業員は経営者から「お店に来なくていい」と言われ、仕事がなくなってしまう…という負のスパイラルに陥っているのです。
政府の用意した支援策の中には雇用調整助成金の制度があり、従業員を雇い続ければ休業手当の支給金を補助してもらえます。
しかし、雇用調整助成金の制度は申請が複雑で支給開始時期も非常にあいまいです。助成金が実際振り込まれるまで休業手当は雇用主が立て替えなければならず、今日明日の生活が苦しい雇用主にとってこれは大きな負担になってしまいます。
また、新型コロナウィルスは人の心にも大きな影響をもたらしています。自粛ムードの中で店を開けていると、どんなに感染防止対策に勤めていても「不謹慎だ」「警察に通報する」といった悪質な嫌がらせを受けるケースも出てきました。
政府は家賃補助対策など様々な支援を行っていますが、雇用主が「こんなに大変な思いをするぐらいならいっそ店をたたもう」という決断をしてしまえば、飲食店スタッフは自動的に失業してしまいます。
タクシー業界も仕事がなく、大幅な収入減少や解雇の危機にさらされている人が増えています。
タクシードライバーの売上が落ち込んでいる要因はいくつかあります。
1つは観光客の減少です。道慣れない観光地では経路がイマイチわからないバスより、タクシーの方が便利なことは多いです。タクシードライバーに観光案内を頼んだ経験がある人もいるでしょう。
ところが、外出自粛・旅行自粛の影響からタクシーを利用する観光客がめっきり減ってしまったのです。
2つ目に夜の繁華街に全く活気がないことです。深夜まで飲んだ客の送迎や夜の店で働くスタッフの利用など、夜の繁華街でのタクシー需要は大きく、ドライバーの売上を支えていました。
しかしコロナの拡大で宴会が次々中止になり、飲み歩くサラリーマンの姿は繁華街から消えてしまいます。仕事がなければ居酒屋のスタッフも出勤してきませんから、タクシーが利用される機会は大きく減ることになります。
3つ目にはタクシーという密室空間を避ける乗客の心理です。コロナ対策として「密室空間を避ける」ことは有名ですが、個室にドライバーと閉じ込められるタクシー車内はまさに密室。
実際、京都・熊本・佐賀・沖縄・東京と各地でタクシードライバーがコロナに感染したというニュースがながれました。これが恐怖感に拍車をかけ「タクシーは危ないのでは?」と考える利用者が増えているのでしょう。
中には不特定多数と一緒になるバスなど公共交通に比べれば「タクシーの方が安全」と積極的に利用する方もいるのですが、タクシー業界全体の売上を支えるには厳しいものがあります。
新型コロナウィルスの感染拡大を抑制するためには、人が多い密閉された場所を避けることが重要とされています。
演劇、ライブ、コンサートなどは1つの密室に多くの観客が集まる状態を避けられません。
2月中旬、大阪のライブハウスで開かれたイベントの参加者がコロナウィルスに感染していたことが判明します。このライブハウスから感染が一気に広がり、「ライブハウスは危険」という印象が世間に広まりました。テレビに出演するような大物アーティスト達も、次々にライブやコンサートを自粛していきます。
自粛と言えば「自主的に」行うものではありますが、世間のムードに逆らってイベントを開催すると誹謗中傷を受ける場合もあり、実質強制的にイベントを中止せざるを得ないという状況です。
あの世界的有名サーカス劇団「シルク・ド・ソレイユ」が、従業員の95%を解雇し、約9億ドルの負債を抱えて破産申請も検討中…と聞けば、芸術関係の仕事が今いかに苦境に立たされているのかが分かると思います。
芸術関係の仕事に携わる多くの人たちは自営業・フリーランスです。公的な給付金や生活補償は一般的な労働者に比べ、かなり貧弱です。
日本では芸術関係は、「生活に必ずしも必要な物ではない」とみなされがちで、緊急時には後回しにされる傾向があります。政府の支援はなかなか行き届きません。
またリモートワークができるサラリーマンとは違い、イベントが中止になれば出演料や講演料は一切入って来ません。
コンサルティング会社ケイスリーが文化芸術関係者を対象に行った調査では、約8割の人が「収入が低下している」と答えています。
(※参照 東京新聞Web :https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041602000126.html)
人との距離が近い場所の1つが美容室です。顔の近くで作業をするため、美容師・客ともに濃厚接触を避けがたい環境にならざるを得ません。
福岡県では美容室でコロナのクラスターが確認されています。不特定多数の人が入れ代わり立ち代わり出入りするので、美容師は感染リスクを恐れながら現場に立つ日々です。また、感染を恐れる人は美容室から足が遠のいており、店を開けていても売上はなかなか上がりません。
感染者の数が多い地域を対象にした調査では、2月の売り上げが減少したと回答した美容業は72.4%。3月の売上見込みについては実に96.6%が減少としています。
(※ 参考 理美容ニュース :http://ribiyo-news.jp/?p=28669)
美容室や理容室は「日常生活に必要な業種」とされ、東京都等では休業要請の対象になっていません。
しかし休業要請の対象外になったことで、逆に「自主休業か、客が来ないままの営業継続か」を自分で判断しなければならないという非常に苦しい状態になっています。
東京都では大型連休中に自主休業した理美容室に給付金を出す方針ですが、自治体によっては「自主休業では給付金がもらえない」など格差も出ています。理美容室に行くのを控える人がたくさんいる現状では、店を休むのも、店を開くのもどちらも大きなリスクになっています。
密室で不特定多数の人間とトレーニング機器を共有するスポーツジム。
コロナによる感染者が増える中、各地のスポーツジムでクラスターが確認され問題となりました。そのような状況でもポーツジムでは換気を徹底したり、器具の消毒を行ったりと新型コロナ対策に腐心してきました。
しかし休業要請の対象となったことで結局はジムを閉めせざるを得ない立場に。新規入会の会員が増える新年度にスポーツジムを開けないことは経営上の大きな痛手です。
緊急事態宣言の延長が発表された5月4日、政府は「新しい生活様式」を今後日常に取り入れてほしい生活モデルとして発表します。
その中には「筋トレやヨガは自宅で動画を活用」という項目がありました。確かに今までステイホームを促す行動の一環として、筋トレの動画を公開していたスポーツジムは存在します。
しかしその動画は無料公開されているものです。社会貢献あるいはジムの知名度をあげるのには役立ちますが、実際の収益に結び付くわけではありません。「新しい生活様式」の要請が長期におよべば、スポーツジムの仕事はどんどんなくなってしまうでしょう。
営業職もまた、外出自粛の影響を受ける職業の1つです。
コロナの影響を受け、大手生命保険会社は次々にテレワークを導入し、対面での営業活動を禁止していきました。ちょうど新社会人の入社時期。生活環境が変わる人が多く、保険の新規開拓には絶好の機会です。その期間に見込み顧客とコンタクトが取れなくなるのは保険会社にとって大きな痛手です。
実は前年度から保険業界全体の業績は落ち込んでおり、コロナによる自粛が長引けば、保険営業職にとってはより厳しい状態となるでしょう。
しかし営業の仕方というのは対面がすべてではありません。現在はオンラインツールを使えば、顧客とコミュニケーションをとることができます。また営業戦略やマーケティングは、人同士の会議だけではなく、コンピューター分析によって有益な情報が得られる時代です。
今後は対面によるその場限りの営業活動や、しがらみによる強引な販売しかできない営業職は淘汰されていく可能性があります。そしてオンラインツールやコンピューター分析を使いこなし、商品のアフターフォローができる営業の専門家が残っていく時代がやってくるかもしれません。新型コロナウィルスが営業職の世界をよりシビアな新しいものに変えるのです。
新型コロナウィルスの影響で仕事が減ってしまった場合の対処法は2つあります。
1つは今の仕事を続けながら、業績の改善を待つことです。
緊急事態宣言の延長こそ行われたものの、2020年5月9日現在新型コロナウィルスの勢いが減少に転じている地域も見られます。そのような地域では公共施設の再開、自粛要請の緩和など、通常の経済活動を再開させる動きが出ています。雇用状態が続いている・まだ事業を継続させているならコロナの終息をじっと待つのも1つの手です。
ただ待っている間にも仕事減による家計の苦しさはのしかかってくるでしょう。そんな時は副業を探してみるという方法があります。例えば、クラウドワーキングサイトを利用すれば在宅でできるデータ入力やブログ記事の作成など単発でできる求人を探せます。また、飲食店の宅配を請け負える「UberEATS」というサービスもあります。現在の仕事と併用しながら、少しでも現金収入を増やしていきましょう。※ただし、副業の際は本業の就業規則に違反しないよう確認を撮ってください。
会社を休むよう言われている場合は、休業手当支給の有無や金額を確かめてみることも大切です。政府は企業が雇用を継続できるよう、雇用調整助成金の制度をどんどん手厚くしています。労働者の権利として保障されている制度はしっかり利用しましょう。
また、個人事業主の場合は持続可能給付金を申請し、コロナが去るまで持ちこたえられないか検討してみましょう。この給付金はフリーランスも支給対象者に含まれます。
2つ目は新しい仕事を見つけるため転職活動をすることです。コロナの勢いは繰り返しやってくるといわれています。コロナの影響を受けやすい職種を続けるのは不安という人は、本業の仕事が減って時間がある今が転職のチャンスかもしれません。
新型コロナウィルスの影響で解雇通知を受けてしまったという場合の対処法も2つあります。
1つは雇用を継続できるのではないかという訴えを起こすことです。実際東京のタクシー会社「ロイヤルリムジン」では、コロナによる業績悪化で解雇された従業員が裁判所に訴え、解雇が取り消されました。労働組合を持っている会社なら一度組合に相談してみてはどうでしょうか。
2つ目はやはり転職活動です。会社都合による解雇の場合、失業保険は待期期間の7日後からすぐ支給され、支給額や支給期間も長くなります。雇用継続の見込みがないなら、今の会社を見切って失業保険の手続きを急ぎましょう。
転職活動と言っても新型コロナウィルスの影響で求人数も激減しているのではないか、と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
巣ごもり需要でデリバリーフードやスーパー業界では人手不足から求人が増えているところもあるのです。例えば、ビザドミノ・ピザジャパンは4月から6月にかけて店長候補、フランチャイズオーナー候補を200人、店舗アルバイトを5000人、計5200人の新規求人を行っています
(※参照 食品産業新聞社 :https://www.ssnp.co.jp/news/foodservice/2020/04/2020-0408-1315-15.html)。
全体の求人数は今後も厳しい推移が続くでしょうが、コロナによって需要がのび、売り上げが増加している業種を探せば転職は不可能ではありません。新型コロナウィルスの影響化では会社を訪問して面接するといった通常の転職活動は制限されますが、ハローワークや転職エージェントでは電話相談、・オンラインでの求人応募制度を整えてきています。
外出自粛をしながらでも転職活動はできますので、リモートでの転職サービスを上手に使いこなしてください。
また、転職活動の合間にスキルアップの勉強に励むのも良い気分転換になります。新型コロナの影響を受けた後の世界では、様々なビジネスの仕組みが新しく生まれ変わるといわれています。オンラインツールの使い方など今後のビジネスに必要とされる知識を学んで、自身をつけてみてはどうでしょうか。
新型コロナの影響を受ける職種は多岐にわたります。
自粛で感染拡大は防げますが、経済的に追い込まれる人が多数出るのも事実です。休業要請が出ていない業界でも、利用者が減ることで大きなダメージを受けているのです。
しかし、仕事が減ったりなくなったりしても人生を諦めないでください。
まだ雇用関係が続いている場合は休業手当を要請することができます。収入が減っている場合は副業をして少しでもお金を増やすことをかんがえましょう。
また最悪解雇通知を受け取ってしまった場合には、失業保険を受け取りながら転職活動をする方法があります。コロナ不況は日本経済全体に影響を及ぼしていますが、スーパーやデリバリーフードなど、コロナを追い風に売り上げを伸ばしている業界もあります。あなたを必要としている場所もきっとあるはずです。
政府の支援制度は紆余曲折していますが、日に日に手厚くなってもいます。公的補助を最大限利用して、この苦境を乗り切ってください。