第二新卒は新卒で入社して3年以内の転職者を指し、日本では採用するにはリスクがある人材と思われてきました。
しかし、キャリア志向で仕事や経験を考える人が増え、第二新卒への認識は大きく変わってきています。
そこで今回は 第二新卒のメリット・デメリット、転職が成功しやすい人の特徴、転職市場で人気の理由などをご紹介します。転職後に「やばい」「使えない」と言われないためにも、ぜひ本記事を転職活動の参考にしてください。
第二新卒がやばいと言われる理由についてご紹介します。
第二新卒は新卒で就職後、おおむね3年以内に転職活動をする人を指します。日本では長らく終身雇用が常識になっており、早期離職にマイナスイメージを抱く企業も一部みられます。
そのため、第二新卒についても忍耐力や根性がない人と見られやすく、やばいと思われるようになりました。
しかし、日本でもアメリカ同様のキャリア志向を持つ人が増えてきたことで、今後は第二新卒への抵抗感は以前より薄れていくでしょう。
第二新卒がやばいと言われてきた2つ目の理由には、実務経験の少なさから知識とスキルが身に付いていないと思われてきた点もあります。
第二新卒は中途採用と同じ扱いになるため、即戦力としてある程度の知識とスキルが求められる傾向があります。
戦力として未熟なまま転職していると思われたことが、やばいと言われた一因です。しかし、前職で一定の知識と経験を身に付けたうえで、次のキャリアを選ぶ若手も増えています。
そのため、第二新卒でも知識、スキルが身に付いていることを証明すれば、マイナスイメージもなくなるでしょう。
実際に若手を積極的に採用している企業では、第二新卒に対する偏見はほとんどなくなっています。
3つ目の理由が、一度就職した会社を早期離職することで、責任感がないと思われてしまうことです。
しかし、この点については主観的な捉え方が含まれており、正しいとは言えません。
前職での自分の仕事をすべて完了し、引き継ぎも行ったうえで転職する人が大半だからです。
第二新卒への先入観で責任感がないと思い込まれれば、自由なキャリアプランを描けなくなります。
転職活動をする際は、前職での実績と引き継ぎも行ったことを説明すれば、企業側の思い込みを覆せるでしょう。
第二新卒者が前職を辞めた4つの主な理由をご紹介します。
第二新卒者の前職の退職理由について、厚生労働省の令和3年雇用動向調査のデータから見ていきましょう。
日本ではサービス残業や長時間労働を行う企業も多く、労働条件のミスマッチは労働者の代表的退職理由になっています。
労働時間・休日などの条件の悪さを退職理由に挙げた方は、以下の表のとおりです。
年齢区分目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 14.2% | 14.3% |
25~29歳 | 7.2% | 14.8% |
参照:厚生労働省『「令和3年雇用動向調査結果の概要」P17』
20代前半の割合がわずかに高い理由として、新卒で初めて働く職場であり、理想と現実のギャップが大きいことが原因にあります。
日本でもワークライフバランスが意識され、個人の時間や価値観を重視する企業も増えてきました。多様な価値観が重視される社会で、若手が働きやすい職場を探すために退職することも多様性の1つと言えるでしょう。
給料の少なさは生活に直結する問題ですから、退職理由の中でも代表的なものです。
給料の少なさを退職理由に挙げている割合は、次の表のとおりです。
年齢区分目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 9.7% | 9.2% |
25~29歳 | 14.8% | 6.3% |
参照:厚生労働省『「令和3年雇用動向調査結果の概要」P17』
参照:厚生労働省『「2021年人口動態調査 結果の概要」P3』
社会人として経験を積むことで、給料の安さや昇給率の低さを感じ、退職する方も少なくありません。また、20代後半は男女ともに結婚する方も多く、家計を支えるために給料の高い職場を探す方もいます。
家族と生きていくため、給与の高い職場を探して退職を決断する人も少なくありません。
職場の人間関係も退職には多い理由です。男女それぞれの年代別の割合は次の通りです。
年齢区分目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 12.8% | 9.3% |
25~29歳 | 6.3% | 7.9% |
参照:厚生労働省『「令和3年雇用動向調査結果の概要」P17』
新卒社員は学校卒業後、初めて幅広い年代の方と仕事をすることになります。様々な価値観やキャリアを持つ人と関わることになり、人間関係が広がることでトラブルを抱えやすいです。
そのため、人間関係によって退職を決断するケースも珍しくなく、第二新卒者が前職を辞める代表的な理由の1つにもなっています。
新卒者の中には、他に就職先の選択肢がなく前職についたケースも珍しくありません。
年齢区分目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 3.6% | 4.2% |
25~29歳 | 10.1% | 7.5% |
参照:厚生労働省『「令和3年雇用動向調査結果の概要」P17』
入社から間もない頃は気にならなくても、仕事を続けていくうちに興味を失うことはあります。調査結果でも20代後半から30代前半にかけて、退職理由に挙げる人の割合が高くなっています。
第二新卒になるメリットについてご紹介します。
第二新卒は教育や研修を受け、ある程度社会人としての基礎が身に付いています。
そのため、転職活動でも社会人らしい振る舞いができ、入社後もスムーズに職場へと馴染めるでしょう。
企業としても基礎教育に時間とコストをかける必要がなく、採用しやすい点も第二新卒のメリットです。
ただし、社会人らしいマナーや言葉遣いができないと逆効果になるため、しっかりとした人材であることをアピールすることがポイントです。
第二新卒を含む中途採用では、将来性や成長性といったポテンシャルは重要なポイントです。
第二新卒は20代半ばが多いため、30代以降の方に比べて高い成長性が期待できます。
そのため、企業は成長性と長期的な働きを期待して、第二新卒を採用する可能性が高いです。
ポテンシャルだけでなく知識、スキル、人間性のポイントをアピールすれば、採用率は大幅に高まります。
新卒と第二新卒では、社会人としての経験の有無に大きな差があります。
新卒当時にはわからなかったことも、経験のおかげで見えてくることもあるでしょう。
また、働いた経験があれば、前職と比較して自分が転職先に求める条件も明確になります。
転職後のミスマッチを防ぐ意味でも、転職先に求める条件を決めることが重要です。
第二新卒として転職するデメリットもご紹介します。
第二新卒の一番のデメリットは、志望企業から「すぐ辞めてしまうのでは」と不安視されることです。
第二新卒が必ず不安に思われるわけではありませんが、不安視されて採用を控える企業もみられます。
デメリットを解消するには、前職でどんな経験があるか、実績、意欲をアピールしましょう。仕事への意欲をしっかりと伝えれば、第二新卒でも不安視はされません。
上手く自己アピールを行い、志望企業の懸念を払拭しましょう。
転職後の話になりますが、新卒のように教育を受けられない点がデメリットです。
企業は通常、時間とコストを抑えるために新人をまとめて教育する一方、第二新卒に対しては個別の教育をあまり行いません。
中途採用の枠でもあるため、仕事に必要な知識やスキルは自己学習が求められます。
転職後の教育体制が不安なら、面接の段階で教育体制について確認しましょう。
教育体制の有無はキャリアプランの重要ポイントですから、事前の確認が大切です。
基本的に転職直後は、ほとんどの方で年収が下がります。
日本は経験年数で昇給する企業が多く、経験年数がリセットされるからです。
そのため、一部の大企業に転職するケースを除けば、年収が下がると想定して転職活動を進めましょう。
また、中長期の年収やキャリアプランも検討し、転職後の未来図を具体的に考えることも大事です。
第二新卒で転職を成功させやすい人の特徴、傾向をご紹介します。
前職を退職する理由が、志望先を選んだ動機とつながっている人は転職も成功しやすいです。
例えば、プログラマーに関心があったが、前職ではアナログ作業中心の事務職だったため、IT企業への転職を希望するケースです。
前職では自分の希望を叶えられないため、転職を希望したのなら動機として十分です。
付け加えるなら、なぜその企業を選んだのかを具体的に提示できれば、転職は成功しやすいでしょう。
自分の目標と行動に一貫性があれば、第二新卒の転職成功率が大きく上がります。
どの職場でも共通して言えることですが、自分から人とコミュニケーションをとれる人は転職も成功しやすいです。
特に第二新卒はネガティブイメージを持たれやすいため、人との交流で自分のことを知ってもらう意義は大きいです。
人間関係が代表的な退職理由に挙げられているように、コミュニケーション能力は転職成功の鍵になります。
人と話すのが苦手な方でも、最低限のコミュニケーションができるように意識的に訓練しましょう。
企業が第二新卒を採用する際、前提として最低限のマナーを身に付けていると期待しています。
特に中小企業やベンチャー企業は少数精鋭で運営しているため、マナーのない人材は敬遠されます。
コスト面でもビジネスマナー研修を用意するのは難しく、基本的なマナーを身に付けている人ほど採用される可能性が高いです。
履歴書の内容や面接でもビジネスマナーは評価されているため、転職活動前に社会人の基礎知識が身に付いているか振り返りましょう。
自分の失敗やトラブルの原因を他人のせいにするのが他責思考です。社会人になるとどんな仕事にも責任が伴うため、他責思考では大きな問題を起こす危険があります。
また、転職活動では自分のことだけを考える人も敬遠されやすいです。自分の行動に責任をもち、他者のために頑張れる人はどこに行っても高く評価されます。
そして、自分の失敗を受け入れ、何が悪かったのか自分なりの答えを導ける人になれば、転職活動も成功しやすくなります。
他責思考を改め、志望企業から頼りになる人材と認められるようになりましょう。
第二新卒が転職市場で人気が高い背景、理由をご紹介します。
第二新卒の多くは年齢が25歳前後の若手です。転職市場では30歳未満の需要が以前から高く、第二新卒とはマッチしています。
さらに、厚生労働省東京労働局発表の関東市場圏有効求人・有効求職年齢別バランスシートによると、令和5年6月の有効求人は約45%が34歳以下になっています。
年代と有効求人の年齢が合致しており、転職市場における第二新卒の需要が高い状況です。そのため、第二新卒はやばいのではなく、転職市場で有利な立場にあります。
参考:厚生労働省 「令和5年6月 関東労働市場圏有効求人・有効求職 年齢別バランスシート(一般常用)」
日本の企業の99%は中小企業やベンチャー企業とされており、どの企業も若手人材が不足しています。
新卒は安定を求めて大企業や公務員を目指すパターンが多く、中小企業には人材が集まりにくいからです。
逆に、第二新卒として中小企業とベンチャー企業にアプローチすれば、採用のチャンスは多くなります。
第二新卒はポテンシャル採用を狙いやすく、若手を採用したい中小企業・ベンチャー企業のニーズともマッチしています。
そのため、第二新卒の転職市場での需要は高く、興味・関心のある分野は積極的に狙ってよいでしょう。
企業側から見た第二新卒の大きなメリットは、新人教育のようなコストと時間がかからないことです。
前職でのやり方や企業文化に染まりきっておらず、基礎教育の必要がない第二新卒は、企業にとって獲得したい人材です。
経験年数の多いベテランに比べて柔軟性と素直さもあり、長期間企業に貢献してくれるという期待感もあります。
そのため、企業にとって第二新卒は非常に価値のある人材と言えます。
第二新卒はほとんどが20代半ばですから、転職後は10年単位で働いてくれるという思惑が企業にはあります。
一方、40・50代の採用は数年後には定年退職が控えており、長期的な雇用はあまり期待できません。
そのため、企業が第二新卒の採用にかける思いは強く、好条件での採用を提案してくれることもあります。
どの企業も若手人材確保に必死であり、長く働いてくれる第二新卒は転職市場において宝のような存在です。
第二新卒が転職活動で「やばい・使えない」と言われないために、できることを5つご紹介します。
第二新卒の転職活動を左右するのが、転職理由の内容です。
転職理由は正直に書くことが大事ですが、ネガティブな理由まで書くのは逆効果です。
そのため、転職を決めた理由はポジティブに、かつ具体的なエピソードも添えましょう。
例えば、カフェでスタッフとして働くうちに、食品衛生への関心が高まり、食品メーカーへの転職を希望したという流れです。
前職に関連した疑問から新しい分野へ興味を抱き、転職を希望するのは自然なことです。
具体的なエピソードがあると、より印象に残りやすいため、2つのポイントを両立させてください。
転職活動では、自分の強みやアピールポイントをどれだけ正確に伝えるかという点も大切です。
面接では面接官と直接話す機会があり、強みや弱みを尋ねられることも多いからです。
強みやアピールポイントが不明確なままでは、自己分析が不十分で、自分の適性を把握していないことになります。
そのまま企業にアピールしても、自分を売り込む材料として不十分です。
第二新卒は一定の社会人経験がありますから、働く中で理解した強みを企業の仕事とも関連付けて打ち出しましょう。
第二新卒がやばいと言われないために、中長期のキャリアプランも設計しておくのがおすすめです。
できれば5~10年ほどのキャリアを考え、転職後にどんな自分になりたいか伝えましょう。
キャリアプランがあれば、企業側も長期的な働きを期待してくれるため、高い評価を獲得しやすくなります。
また、企業の業務内容への理解度も高いと評価され、採用率が大幅に上がります。
第二新卒がやばいと言われないためには、志望企業に仕事への意欲を伝えることも欠かせないポイントです。
第二新卒は根気や意欲がないと判断されやすいため、仕事への意欲を言葉にすることは大事です。
企業側は真面目に働いてくれる人材を雇いたいと考えています。そのためには熱意のある人材を採用することで、将来企業に貢献してほしいからです。
企業情報を細かくチェックし、入社後にどんな働き方で貢献したいか伝え、仕事への意欲をアピールしてください。
志望動機、転職理由を伝える際は、前職の悪口とネガティブな言葉は口にしないよう注意しましょう。
悪口やネガティブな感情を口にすると、転職先に「この人は企業の悪口を言いふらす人」という印象を与えます。
転職後に会社の悪評を外部に漏らす人物と思われれば、採用では不利になるだけです。前職への不満を抱えていたとしても、自分の将来のためにも口に出すのは控えましょう。
かつては第二新卒へのマイナスイメージが強く、第二新卒はやばいと言われることもありました。
しかし、今や第二新卒も貴重な若手戦力であり、企業の将来を引っ張っていく大切な人材と考えられています。
第二新卒という立場を不利に捉えず、若手として期待に応えることを第一に考えましょう。
若さを武器にするためには、キャリアビジョンも重要ですから、将来の自分がどうなりたいかも考えて転職活動を進めてください。