2021年度に大学を中退された方は、全体の約2%と報告されています。
大学中退をする理由は様々ですが、「辞めた理由を就活の面接でどう伝えるか」「履歴書にどう書くか」は、中退者にとって大きな悩みのひとつではないでしょうか。
大学の中退理由は、面接で聞かれることが多い質問ですが、ネガティブなイメージをもたれやすく、中退したことで不利になる可能性も少なくありません。
この記事では、大学を辞めてしまった人々が多く抱える理由と、辞めた理由を面接でどう伝えるかについて、例文もあわせて説明します。
大学を中退された方、中退理由の伝え方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
文部科学省が行った「大学等における令和4年度前期の授業の実施方針等に関する調査及び学生の修学状況(中退・休学)等に関する調査の結果について」によると、2021年度の大学中退者の内訳は以下のとおりです。
ここでは上位5位までの理由と具体的な内容について、ランキング形式でみていきましょう。
参照:文部科学省『大学等における令和4年度前期の授業の実施方針等に関する調査及び学生の修学状況(中退・休学)等に関する調査の結果について』
大学を辞めた理由で多いものは「転学等」です。
例えば、大学在籍中に進路を変更し、別の大学や専門学校に編入したり、再入学したりといったケースです。
入学当初は夢や目標を抱いて頑張っていても、ほかにやりたいことや就きたい職業ができることもあるでしょう。
このように在学中に進路が変更された方は、新しい学びや資格取得のために転学する人もいます。
近年増加傾向にある中退理由が「学生生活不適応・就学意欲低下」で、10年前の倍以上という報告もあります。
大学での人間関係のトラブルや周りに相談できる人がいなかった、友達ができず孤独だったなどが背景にありますが、コロナ禍のオンライン化もきっかけのひとつとされています。
大学は学ぶために通うだけでなく、社会交流や人脈作りの場でもあります。
人間関係が良好でないと、大学生活に楽しみを感じず、精神的にしんどくなることもあるでしょう。
大学中退者の中には、就職や起業のために辞めたという方もいらっしゃいます。
就学意欲の低下ややりたいことがあった等の理由から、大学在学中に就職活動を行い、中退して就職先を決めるケースです。
中には、実家の家業を継ぐことになったり、自ら起業したり、経済的な理由から就職せざるを得ない方も少なくありません。
この場合は、中退の理由が明確であり企業も納得する場合が多いでしょう。
2021年度の大学中退者の内訳のうち、コロナを理由とした内訳の第2位になっている中隊理由が「経済的困窮」です。
コロナ禍では多くの企業が経営難に陥り、家庭の収入状況が悪化したケースが増えました。
また、学費の支払いを支えていた家族の介護や療養が必要になった場合や、親の他界により自分が働かなくてはいけなくなったなど、経済的困窮の背景は様々です。
入学したものの大学の学費を払い続けることが難しくなった場合、自分だけの力ではどうすることもできず、中退せざるを得ない状況となってしまうでしょう。
大学を中退した方の理由の第5位は「学力不振」です。
大学は専門的な学びを深める場ですが、サークルや友人との交流、アルバイトなど誘惑が多い場所でもあります。
このような理由から、単位を落とし留年してしまった方の中には、中退される方もいらっしゃいます。
大学生活は視野が広がり楽しみも多いですが、勉強以外を優先しすぎない・学業を疎かにしないことなど自己管理する必要があるでしょう。
ここまで大学中退の理由についてお伝えしましたが、大学中退は就活で不利になるのでしょうか?
ここでは、大学中退が就活で不利になると思われている理由について紹介します。
大学中退が就活で不利になるといわれている理由のひとつが、「中退」というイメージの低さです。
転学や病気、親の介護、経済的な事情など客観的にみて明確な理由があった場合以外では、残念ながらネガティブな印象をもたれがちです。
など、就職しても嫌なことがあったらすぐに退職してしまうのではないか?と、企業側から懸念を抱かれてしまいます。
また、「サークルに夢中になり単位を落として辞めた」「アルバイトを優先してしまい、学業に専念できなかった」などの理由は、特にマイナスイメージにつながる可能性があるため伝え方を工夫しなければいけません。
大学中退が就活で最も影響することといえば、就職の選択肢が狭まることではないでしょうか。
一般的に「大卒」採用は、多くの企業が取り入れ、幅広い業界や職種の選択肢があります。
しかし大学中退は「高卒」扱いとなるため、学歴を重視する企業への就職が厳しくなり、「高卒可」の求人にしか応募できません。
やりたい仕事に就けなかったり、そもそもの求人に応募できる範囲が狭まってしまうことになるでしょう。
就活に不利だと知って大学中退を後悔する方も多いですが、中退をした事実よりも中退をした理由や中退した後の行動が重要です。
大学中退での就活を有利に進める方法には、以下のようなものがあります。
大学中退での就活を有利に進める方法
中でも、多くの方が悩む「大学中退の理由の伝え方」が重要なポイントです。
辞めた理由を面接や履歴書で伝える際、ネガティブな中退理由であってもポジティブに伝えられるようにすることで、企業側にマイナスイメージをもたれにくい可能性が高まります。
でも「どう伝えたらいいか分からない!」という方のために、次項で大学中退理由の伝え方について紹介します。
大学を中退した理由は、就活ではよく問われる質問です。
では、辞めた理由をどう伝えるか、例文もあわせて理由別に詳しくみていきましょう。
大学在籍中に、違う分野を学びたくなったり将来の方向性が変わったりと、別の大学や専門学校に転学するために中退するケースです。
そもそも転学を理由に大学を中退することは、前向きな理由がありますのでマイナスイメージをもつ企業は少ない傾向です。
ただし、「大学の勉強が面白くなかった」といったネガティブな理由を伝えてしまうと、「逃げの中退」と思われてしまいます。
「なぜ違う分野を学びたいと思ったのか」と、転学を考えたきっかけやエピソードを説明することでポジティブに受け入れてもらえる可能性が高いでしょう。
【例文】 |
「私が大学を中退し、専門学校に転学をしたきっかけは祖母の介護です。 大学在学中に祖母が骨折し、自宅で介護が必要な状況になり、介護サービスを受けながら自宅で介護を手伝っていました。 訪問介護の介護士の仕事を見て、私も誰かの役にたつ仕事がしたいと思い、転学し介護福祉士を目指しました。 介護現場での実習や介護施設などのアルバイトで実務経験を積みながら、介護福祉士合格を目指すのは大変でしたが、経験やスキルを生かし、御社に貢献できればと考えております。」 |
転学を理由に大学を中退した場合、やりたいことを実行するため中退後に取り組んだことを伝えましょう。
中退した理由が志望動機とつながれば、前向きな理由として評価される可能性が高いです。
「大学生活に馴染めなかった」「友達ができず孤立感が強かった」「面白くなかった」などを理由に中退した場合、そのまま伝えてしまうと「積極性に欠ける人材」「すぐに退職するのでは」と、マイナスな印象を与えてしまいます。
学生生活や就学意欲は、自分の行動ややる気次第で前向きになれた可能性もあるからです。
まずは学生生活で行動を起こさなかったことを反省し、この経験をきっかけに感じたことや今後どうしていくかを伝えるとよいでしょう。
【例文】 |
「私は、将来のことを考えず、十分なリサーチをしないまま大学を選んでしまい、大学での勉強に関心を持てず、モチベーションが低いまま過ごしていました。 そしてアルバイトを優先してしまい、学業への意欲を失ってしまい中退という選択をしました。 自分のリサーチ不足や大学生活を充実させる努力不足であったと深く反省しております。 私はこの経験から、自己分析の徹底と自己成長に向けた意欲を持つこと、そして積極的に人間関係を築いていきたいと思っております。」 |
過去の失敗について嘘や言い訳をするのではなく、素直に反省し、その経験や気づいたことを踏まえた就活をしている、と説明することが大切です。
就職や起業を理由に大学を中退した場合、企業は「大学を辞めてまで就職する理由」を疑問に感じます。
「家庭の事情で就職する必要があった」「実家の家業を継ぐことになった」と、やむを得ない明確な事情があれば素直に伝えましょう。
また、大学に通うよりも中退してやりたい仕事があった場合に「早くチャレンジしたい」と、中退する方もいます。
この場合は、仕事に対する熱意や入社意欲をアピールすることが大切です。
【例文】 |
「大学在学中は、アパレルでのアルバイトでお客様への提案やコミュニケーションを通じてやりがいを感じ、早く仕事についてスキルアップしたいという気持ちが高まり大学中退を選択しました。 コロナ禍での接客は、慣れないオンラインを使ったりお客様との距離感の取り方など大変なこともありましたが、お客様の気持ちに寄り添い、丁寧な対応を心がけて行っていたところ、接客コンテストで入賞をいただきました。 このスキルを活かしてお客様に笑顔を届け、チームの一員として貢献したいと考えています。」 |
「高卒可」の求人を募集している企業では、ポテンシャルの高い若手人材のニーズが高いため、就職に成功できる可能性が高くなる傾向です。
家庭の事情や親の経済的な事情で学費を捻出することが難しくなったなど、経済的な困窮で大学を中退した場合は、企業から納得されやすい理由になります。
しかし「経済面で大学を中退しました」と伝えるだけでは、深く理解されないでしょう。
経済的な理由で大学を中退したけれど、前向きに頑張っている姿勢をアピールすることが大切です。
【例文】 |
「大学を中退した理由は、家庭の経済的な事情です。アルバイトをしながら学生生活を続けていましたが、学費や生活費の負担が重く、学業に専念することが難しくなり、苦しい決断をせざるを得ませんでした。
しかし、この経験から私はお金の大切さや経済管理の重要性を学び、成長のチャンスだと前向きに感じています。 |
大学を中退した理由を素直に伝えてポジティブな言葉を付け加えることで、好印象に受け入れてもらいやすいでしょう。
学力不振を理由に中退した場合は、「すぐに逃げ出す人材」「忍耐力が不足している」と判断される可能性があります。
そのため、中退の原因になった問題点を反省する姿勢をアピールしましょう。
【例文】 |
「大学を中退した理由には、学力不振もありました。学業に対して授業についていけなくなり成績が低下した結果、中退してしまいました。 大学を選ぶ際に、英語が好きだという理由で安易に〇〇学部を選んでしまいましたが、学部へのリサーチや情報収集不足が影響していると考えております。 就職活動では、自己分析と企業研究を徹底し、自身の適性や御社の方針を見極めて応募させていただきました。 学業においては不十分な結果でしたが、この経験を自らの成長の糧として捉え、新たなステージで力を発揮したいという意欲を持っています。」 |
中退後の反省点から、努力したことや新たに学んだことがあれば説明することが大切です。
病気やけがなど健康上の理由で、大学に通うことができなくなってしまった場合は、やむを得ない事情として、隠すことなく伝えることが大切です。
ただし、「働いて大丈夫なの?」「フルで働くことはできるの?」と企業側が心配するため、大学を中退して治療に専念し、現在はよくなっているなら、それもあわせて伝えてください。
【例文】 |
「大学在学中に〇〇を患ってしまいました。大学に通いたい気持ちは強かったのですが、長期入院が必要だったため、退学となりました。 現在は順調に回復し、働くことには問題ないとお医者様からもいわれ、体力的にも問題はありません。 病気をしたことで悔しい思いもしましたが、入院中はたくさんの人に支えられ励ましていただき、前向きな気持ちで治療に取り組むことができました。 |
通院や検査などで定期的に休む必要がある場合、あとからトラブルになるのを避けるために正直に伝えておきましょう。
大学中退の理由を伝える例文をお伝えしました。
重要なことはネガティブな理由をポジティブに言い換えて伝える、という点です。
ネガティブな理由だけを伝えてしまうと、マイナスイメージだけで判断されてしまいますが、前向きな言葉をプラスするだけで好印象を持ってもらいやすくなります。
また、大学中退について隠したり嘘をついてしまうのはNG!
後からばれたときに不信感を抱かれてしまうため、嘘をつかずポジティブな言葉に転換するなど工夫して伝えることを意識することが大切です。
そして大学中退の経験から学んだことや成長したことなどエピソードを交えて、具体的に伝えると、企業側にも意欲が伝わりやすいでしょう。
と悩んでいる方は、大学中退者専門の就職支援サービスを利用するのがおすすめです。
専任のキャリアアドバイザーとのキャリアカウンセリングを通じて、大学中退の理由や面接でのアピール方法をアドバイスしてもらえたり、自己分析のサポートを受けることができます。
大学中退者専門の就職支援サービスでは、大学中退やフリーター、ニートなど学歴や職歴に不安のある方のサポートのノウハウが豊富。
また、若手人材の採用に積極的な求人も充実しているので、一人で就活を進めるよりもスムーズに採用される可能性が高いでしょう。
大学を辞めてしまった人々が多く抱える理由と、辞めた理由を面接や履歴書でどう伝えるかについて、例文もあわせて説明しました。
大学を中退した理由は人によって様々ですが、企業からマイナスにとらえられやすい理由であれば、ポジティブに伝え、志望動機につなげてアピールすることが大切です。
企業は、「大学中退の過去よりもどんな経験を積んで成長してきたか」、そして「入社後に貢献してくれる人材か」ということについて注目しています。
中退したことを後悔して悩むよりも、自分の強みやスキルを棚卸し、面接官に対して自らの成長や前向きな姿勢をアピールするとともに、経験から学んだ教訓や成長への意欲、貢献したいという思いを伝えましょう。
一人で不安な方や失敗した経験から自身の強みを生かして就職したい方は、ぜひ就職支援サービスの利用を検討してみてくださいね。