「大学中退すると将来が不安」と不安を覚えながら、就職活動を進めている方も多いかと思います。
しかし、大学を中退しても、それだけで就職できなくなり、人生のすべてが決まるわけではありません。
今回は大学中退後の進路や就職の実態、就職に関する体験談をご紹介します。
大学中退後に成功を収めた有名人や正社員就職のポイントも解説しますから、就活を成功させたい方はぜひご覧ください。
大学中退者が選べる進路のうち、代表的な3つをご紹介します。
大学中退後、アルバイトやパートで働く人も多くいますが、安定した生活を求めるなら正社員就職を目指しましょう。
アルバイト・パートの労働期間は、履歴書では空白期間になるため、長引くほど将来不利になります。
自分の趣味や興味を持っている分野があれば、それに関連した業界に就職するのがおすすめです。
仕事は生きていくために必要ですが、興味のない仕事を数十年続けるのは難しいからです。
大学中退後に正社員就職するなら、若さを武器にできるうちに行動しましょう。
大学中退後、別の大学や専門学校に編入する道もあります。
以前の大学が自分に合わなかった方や授業に出られない事情のある方、学び直したい方におすすめの進路です。
ただし、編入すると学年が1つ下がる、以前の学校と同じことを学ぶ、学費が余計にかかるなどのデメリットもあります。
日本は大学・大学院卒のほうが就職とキャリアアップがしやすいため、編入するかどうかはメリットとデメリットのバランスで判断しましょう。
そのまま就職するより編入に魅力を感じるなら、編入もおすすめです。
就職するだけが将来の進路ではありません。在学中から起業する人もいるように、大学中退後に資金を貯めて起業する道もあります。
日本の有名企業の創業者には、大学中退後に起業した方が何人もいるため、選択肢の1つになります。
ただし、起業しても成功するには相当な努力が必要ですから、正社員就職以上に険しい道のりになるでしょう。
安定した正社員就職の道を選ぶか、将来の成功を目指して起業するか、後悔しない進路を選びましょう。
大学中退後、正社員就職を目指すのは本当に難しいのでしょうか。就職率や生涯年収から実態を解説します。
大学中退者は正社員就職が難しいと言われますが、実際にはどれほど難しいのでしょうか。
労働政策研究・研修機構の調査によると、20代の大学中退者692名の正社員就業までの期間と割合は次のようになっています。
正社員就業までの期間 | 割合(%) |
---|---|
離学前 | 0.9 |
離学~3カ月以内 | 10.4 |
3年以内 | 11.8 |
3年超 | 2.7 |
正社員時期不明 | 8.1 |
正社員移行なし | 45.7 |
就業形態不明 | 6.5 |
未就業 | 13.9 |
参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構『大学等中退者の就労と意識に関する研究 P21』
参照:厚生労働省 『令和5年3月大学等卒業者の就職状況(4月1日現在)を公表します』
参照:文部科学省 『令和5年3月高等学校卒業予定者の就職内定状況(令和4年10月末現在)に関する調査について』
調査結果から大学中退者の33.9%が正社員として就職しています。一方、厚生労働省は令和5年3月末での大卒者の就職率について、97.3%と発表しました。
つまり、大学中退者は大卒者にくらべて正社員就職が難しいのは間違いありません。
しかし、文部科学省発表の高卒者の就職内定率は76.1%ですから、学歴上は高卒と同じであると考えれば、正社員就職にも期待がもてます。
大学中退者の学歴は高卒になるため、大卒者にくらべて就職できる企業が少なくなります。就職先は給与に大きく関係するため、大学中退者と大卒にどのくらい生涯賃金の差が出るのか解説します。
労働政策研究・研修機構が毎年発表する「ユースフル労働統計 2022」によると、60歳を定年とした場合、学歴別生涯賃金は次の通りです。
学歴 | 男性の生涯賃金(円) | 女性の生涯賃金(円) |
---|---|---|
中学卒 | 1億9,000万 | 1億5,000万 |
高校卒 | 2億1,000万 | 1億5,000万 |
高専・短大卒 | 2億1,000万 | 1億7,000万 |
大学・大学院卒 | 2億6,000万 | 2億1,000万 |
参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構『「ユースフル労働統計 2022」P317』
男女ともに高卒と大学卒では、5,000~6,000万円の差があり、生涯賃金の差は非常に大きいです。大学卒は大手企業への就職も多く、賃金が高いことから生涯賃金にも差が生まれているようです。
大学中退後から就職に成功した人の体験談について、実際の声をご紹介します。
実際に大学中退した本人ではありませんが、先輩や後輩が留年の末、地元で起業したり、公務員になったりした体験談です。大学生活ではさまざまな誘惑があり、学業に集中できない方も少なくありません。
卒業に必要な単位が足りず、中退の道を選んだとしても、それだけで人生は決まらないという好例です。
正社員就職も起業も、最終的には自分自身のやる気次第です。
大学中退をどん底と感じていても、そこから這い上がる気持ちを大事にしましょう。(*)
*参照:YAHOO!知恵袋より
続いての体験談は、金銭的理由で中退した方です。学歴不問の求人に応募し、中退理由も正直に伝えたうえで、過去のアルバイト経験を評価されて正社員採用されています。
スーパーのような販売業、技術を求められる製造業などは、学歴よりもやる気と経験を重視する傾向があります。大手商社や銀行は学歴やスキルを重視しますが、学歴を重視しない業界は大学中退者にとっても狙い目です。(*)
*参照:YAHOO!知恵袋より
大学中退後、4年半のニート生活を送り、20代半ばで就職に成功した方の体験談です。自動車免許を取得し、ハローワークに通って1年半の就活で採用が決まったようです。
ニートやフリーターは経歴に空白ができますが、若い人なら諦めなければ採用の可能性があります。体験談からわかることとして、ニートの期間があっても諦めない気持ちが何よりも大切ということです。
正社員就職のハードルが高いことは確かですが、「なんとかなる」の精神で諦めずに活動を続けましょう。(*)
*参照:YAHOO!知恵袋より
大学中退で就職に成功する人がいる一方、失敗する人もいます。どのような失敗談があるのかご紹介します。
大学中退後、ニート生活を送ったのちに就職した方の失敗の声です。就職はできたものの、1カ月後にニート生活に戻ってしまったケースです。
大学中退者に限った話ではありませんが、就職後に働くことがつらくなり、離職してしまう方は一定数います。興味のある仕事であればやりがいにもなりますが、そうでないとモチベーションが低下することも影響していると考えられます。
引用:Twitterより
セリナさん、せっかく大学院中退からニートを経て就職したのにまた1ヶ月後ニート確定しました。
推しちゃん可愛いとか言っている場合ではない。助けて推しちゃん。(秒で矛盾)— セリナナ ʕ✩•( ᴥ )- ʔ (@SERIyuripon) July 31, 2023
家庭の事情によって大学を中退せざるをえなかった方の体験談です。持病もある影響で、就職活動が難航しているようです。
大学中退者は、人事担当者から「学習意欲のない人」「根気のない人」とみなされることがあります。また、持病の種類次第で会社の勤務体制や環境整備が追いつかず、正社員として就職しにくい可能性も考えられます。
家庭の事情で大学を中退した場合、正直に理由を伝えれば面接官も理解を示してくれるでしょう。
引用:Twitterより
私は男尊女卑長男教の家庭に生まれたから最終学歴が大学中退なんだけど、中退の理由が「長男(弟)が大学に行きたいと言っているが、家に金がないのでお前が大学辞めろ」という親の決定で辞めさせられたんだよね🥹
だから私は高卒です!いい会社に就職できません!持病持ちで人生詰みです!😂— 社畜で身体壊したこるちゃん (@stopsyatiku) July 25, 2023
大学中退でも意欲と行動力次第で、成功のチャンスはつかめます。日本の有名人で大学を中退しながらも、各分野で有名になった方をご紹介します。
松下幸之助氏は言わずと知れたパナソニック、旧名松下電器の創業者です。正確には大学中退ではなく、当時の小学校を中退し、松下電器を成功へと導いた伝説の人物です。
松下氏は学歴もお金もない状態から創業し、這い上がってきました。働いてお金を得る喜びを力に変え、地道に働き続けた末、パナソニックを世界的な企業にまで成長させた実績があります。
現代の日本と環境は大きく違いますが、松下氏の仕事への理念は学ぶべきところが多いです。
片桐孝憲氏は、イラストコミュニケーションサービスの「pixiv」を運営するピクシブ株式会社の創業者です。もともとは映像作家を目指していましたが、大学入学5年目に中退してWeb制作会社を創業しました。
その後、pixivの運営を引き継ぎ、現在のピクシブ株式会社に社名を変更しています。2017年にはDMM.comの社長にも就任しており、インターネット事業の分野では非常に有名な人物です。
元谷外志雄氏は、アパホテルで有名なアパグループ社長の元谷芙美子氏の夫です。芙美子氏のほうがメディア露出が多い印象ですが、アパホテルの母体となったのは外志雄氏が創業した住宅販売会社です。
外志雄氏は慶応義塾大学経済学部通院教育部を中退後、33歳でマンション事業を起業し、そこからホテル事業へと移行しています。芙美子氏をアパホテルの社長に抜擢したのも、外志雄氏の判断です。
「結果にコミットする」で有名なライザップグループの社長瀬戸健氏は、高校時代の彼女のダイエットをきっかけにRIZAPを立ち上げたと話しています。
在学中にパソコン教材販売代行事業からスタートし、その後健康事業で上場したものの一度は失敗しています。
瀬戸氏自身もトレーナーの指導でダイエットに成功したことから、エビデンスに基づいたトレーニング理論を重視し、生活改善によるダイエットを目指す「RIZAP」が設立されました。
さらに、2022年7月にはコンビニジム「chocoZAP」をスタートし、わずか1年で会員数55万人、店舗数は572店にまで増加しています。
大学中退後に正社員就職を目指す方のために、就活におけるポイントをご紹介します。「きっとなんとかなる」という気持ちで、就活を乗り切りましょう。
大学中退者の就活の重要ポイントは、空白期間をいかに短くできるかです。労働政策研究・研修機構の調査結果によると、正社員就業までの期間が3年超の方は2.7%です。
多くの方は3年以内に正社員就職を決めていることから、空白期間が長くなるほど就職が難しくなると考えられます。そのため、体調や精神面の不調などがなければ、1日も早く就職活動を始めましょう。
空白期間が長くなると、面接官に空白期間の理由を質問されたときに答えにくくなります。中退後に休みたくなる気持ちを奮い立たせ、積極的に活動して正社員就職を実現しましょう。(*)
*参照:機独立行政法人 労働政策研究・研修機構『大学等中退者の就労と意識に関する研究 P21』
大学中退者にとっての大きな武器が若さです。正社員採用の判断基準では、若さは重要なポイントになります。
若い人に対しては、企業も将来の成長への期待をもち、知識とスキルの吸収力が高いと考えるからです。若い方はどの業界でも採用率が高いため、仕事への意欲を積極的にアピールしましょう。
将来はどんな仕事を任されるようになりたいか、志望企業でどんなことを学びたいかをアピールすれば、面接官にも好印象を与えられます。
就活を有利に進めるには、汎用性のある資格と専門性の高い資格の取得もポイントです。たとえば、事務職なら簿記検定やMOSがあると有利ですが、秘書へのキャリアアップなら秘書検定や英語検定、TOEICなどを取得すると武器になります。
また、学歴があまり関係のないIT系企業なら、ITパスポートや基本・応用情報技術者試験のほか、プログラミングスキルもあると有利です。志望する業界にあった資格を取得すれば、正社員就職に大きく近づきます。
大学中退の理由は人それぞれですが、どのような理由でもポジティブに伝えることがポイントです。たとえば、「勉強よりも仕事に関心が高かった」や「夢のために一日も早く社会に出たかった」、「家族の助けになりたい」などです。
中退自体はネガティブな行動ですが、明確な理由があって選んだことが伝われば、面接官も理解してくれます。ただし、本当は勉強についていけず中退したにもかかわらず、理由を誤魔化したり、嘘をついたりするのはいけません。
中退理由は正直に伝えつつ、面接官に良い印象を与えることが大切です。
就活で学歴や空白期間がネックになり、正社員就職が厳しいとお考えなら、就職エージェントを利用しましょう。就職エージェントは若手や大学中退者向けのサービスが多く、豊富な求人から自分にあった企業が探せます。
大学中退者の履歴書の書き方や面接対策に強い就職エージェントもあるため、就活の不安を緩和できます。1人で就活を進めるのが不安な方には、アドバイザーのサポートがあるため安心です。
また、利用する際は1つのサービスだけでなく、複数のサービスに登録しましょう。サービスの質を比較し、利用しやすいものを選ぶためです。
就職エージェントを上手く利用すれば、就活では大きな力になります。
今回は大学中退者の就職実態、体験談などを詳しく解説しました。大学中退でも正社員就職は問題なくできますから、大切なことは就活の戦略を立てて進めることです。
若さが武器になるため、成長性や意欲を見せつつ、自分のキャリアプランも計画しましょう。若い方がキャリアプランを設計していれば、それだけでも面接官から評価されやすくなります。
正社員就職までの行動計画を考え、空白期間を少なくすることを心がけましょう。