電験三種取得者の年収・需要・将来性はどれぐらい期待できる?

近年では再生可能エネルギー発電所の増加、都市開発による事業用電気設備を持つ建物の建築等により、電気主任技術者の活躍が期待される場は増えています。にもかかわらず、電験三種取得者については、高齢化が進んでいます。電験三種に対する需要に対し、供給が追い付いていない状態です。

電験三種は、電気主任技術者試験の中でも入門的な立場にある試験です。とはいえ、合格すれば独占業務を持つ国家士資格を取得することとなり、難易度は決して低くありません。この記事では電験三種取得者の年収や需要、AI台頭時代における将来性について、調べた結果をまとめています。これから電験三種試験を受験しようか迷っている人は参考にしてみてください。

電験三種についての基礎知識

電験の正式名称は、電気主任技術者試験と言います。発電所・変電所はもちろん、ビル、工場等、現代の建物には高圧電気設備が備わっています。これら電気設備の保安、監督を行うのが、電気主任技術者です。

電験三種=電気主任技術者試験第三種

電気主任技術者試験は第一種~第三種に分かれています。一般的に、電験三種という呼称は電気主任技術者試験第三種のことを指します。第一種、第二種、第三種をまとめて「電験三種」と呼んでいるわけではないことに注意しましょう。

※電験三種という言い方は、資格試験だけではなく第三種電気主任技術者の資格そのものを指す場合もあります。
3つの資格試験の違いは、電気主任技術者として保安・監督ができる電気設備(電気工作物)の規模に現れてきます。

・第一種 制限なし
・第二種 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
・第三種 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物

このような区分を見ればわかるように、電験の中でも第三種は入門的な位置づけになっています。

電験三種の試験概要

●受験資格
特になし

●受験日程
年1回(令和3年度は8月22日)

●試験方式
マークシート

●試験内容と試験時間
・理論(90分)
・電力(90分)
・機械(90分)
・法規(65分)
※科目別合格制度あり。トータル4つの科目に合格すれば資格取得が可能。

●合格基準
おおむね60点以上(試験によって合格基準の変動あり)
※試験合格以外に、学歴と実務経験で資格を取得できる制度もあります。

電験三種の難易度

電気主任技術者としては入り口にあたる試験ですが、電験三種は他の種別に比べて試験の難易度が極端に低いとは言えません。

例として、令和2年度の試験を見てみましょう。電験三種の合格率は9.8%、第二種(2次試験)の合格率は27.9%となっています。第2種試験は1次試験免除制度があったり、基礎知識を持った第三種有資格者が受験していたりするので、合格率だけで一概に「三種の方が難しい」ということはできません。

しかし、電験三種の難易度がかなり高いということはできるでしょう。その分、合格者が少なく市場価値が高い資格と考えることができます。

電験三種取得で期待できるメリット

電験三種は難易度が高めですが、その分需要もある資格といわれています。電験三種を取得することで期待できるメリットをみていきましょう。

独占業務ができる国家資格だから需要が高い

電気主任技術者は国家資格です。さらに、電験有資格者だけが行える独占業務が法律で定められています。事業用電気設備の工事や維持に関する保安監督の仕事については、電験有資格者以外が行ってはいけないことになっているのです。電気事業法では、ビルや工場の電気設備は定期的に点検しなければならないと定められています。

つまり、ビルのメンテナンスを請け負っている会社や電気工事を行う会社にとっては、電験取得者は必ず必要な人材となってくるのです。
法律で定められた電気設備に関わる専門家であり、必要とされる現場が増えていることが電験有資格者の需要を支えているといえます。

なお電気設備に関しては、電気工事を行う「電気工事士」という資格もあります。電気工事士が現場で工事を行う立場なのに対し、電気主任技術者はその電気工事の現場監督という位置づけです。電気工事士の資格は難易度が低く、取りやすい資格です。

一方で、電気設備の保守監督業務を行うことはできません(※ただし、最大電力が500kW未満の設備の場合は、電気工事士免状取得者を電気主任技術者に選任できる特別な制度があります)。

深刻な人手不足による高需要

電気工事に関わる人材は、常に人手不足の状態です。その背景にあるのは、高圧電気設備をもつ施設の増加です。現代の日本では、エネルギーをいかに安定的に確保するかは非常に重要な課題になっています。

再生可能エネルギーに注目が集まっている近年、太陽光などの再生可能エネルギー設備が急増しています。これに加え、自家用電気工作物を持つ施設も増加しています。このような設備の保安・監督ができる電験三種の資格所持者は、需要が高いと考えられます。

経験無しでも、電験三種取得の価値はある?

電験三種の資格試験には、受験資格が必要ありません。つまり誰でも受験し、有資格者になれるということです。学生や全く別の仕事をしている人が、実務経験無しの状態で有資格者になることもあるでしょう。

一方で実務経験がない状態でも、電験三種を取得することに価値があるのか気になる人もいるのではないでしょうか。

実は、転職や就職の入り口において実務経験が採用の必須条件になるとは限りません。実務経験がないことが採用のネックになる場合はもちろんありますが、一方で採用後に実務経験を積ませて人材を育てていこうという会社も見られます。このような場合「電験三種の資格はあるが、実務は未経験」でも採用される可能性が高いです。求人情報に「実務経験問わず」と書いてある求人を探してみましょう。

ただし企業側が人材を育てようとするからには、20代、30代の若手が優先されることは想定しておきましょう。40代以降の場合は、電験三種に加え、ある程度の実務経験が求められる傾向にあります。電気工事とは関係がない職場で働いている場合は、できるだけ若いうちに実務経験が積める職場に移動しておくことが大事と考えられます。

資格手当が貰える可能性がある

電験三種を取得することで、資格手当が貰える可能性があります。ただし、すべての電気関係の職場に資格手当があるとは限りませんし、会社の制度によって貰える金額も様々です。

求人情報に資格手当を設けていることが明記されている会社もありますから、資格手当が欲しい人はよく探してみましょう。

独立開業の道も見えてくる

電気主任技術者の働き方には、企業に雇われてサラリーマンとして働く方法と、独立開業して個人事業主になる方法の2つがあります。独立開業すれば、定年とは無縁なので体力が続く限り仕事ができます。また、やり方次第では高額な年収を得ることもできるでしょう。電験三種は、独立開業への第一歩です。

独立開業には実務経験が必須

独立開業が目指せるとはいっても、電験三種の資格だけで独立開業をすることはできません。個人事業主として開業したいなら、電気管理技術者の免許が必要です。電気管理技術者になるためには、電験三種取得者の場合5年の実務経験が条件になります(特定の条件を満たす工事に従事した場合は4年)。

また、他に特定の機械器具を所有していること等の条件もあります。

将来独立開業をしたいなら、じっくり実務経験を積むことが大事です。まずは電験三種の資格を取得し、現場に出ることです。顧客から信頼され、仕事を頼まれるだけの実力を身に着けていきましょう。

電験取得者の年収は?

電験三種の需要があることが分かったところで、取得者の年収についてみていきましょう。

電験三種の資格を生かす道は、2つあります。1つは電気主任技術者を必要としている企業(ビルの管理会社等)に就職する道です。もう1つは個人事業主として独立し、自ら顧客を取得する道です。

個人事業主としての平均年収は、事業主の実力によってかなり左右されるということができるでしょう。また前述したように一定の実務経験なしには、電気主任技術者として個人事業主になり、仕事することはできません。これから電験三種取得を目指す人にとっては、独立開業はまだ身近な働き方ではないでしょう。

これらの理由から、この項では電験取得者が就職する場合においての平均年収を考えていきます。

電験三種取得で目指せる平均年収は?

電験三種資格取得者全体に対する平均年収調査のデータはありませんので、ここでは「建職バンク」という求人サイトの調査結果を参考にさせていただきます。このサイトによると、電験三種取得者の年収期待値は450万円とされています。

(数値引用元:https://kenshoku-bank.com/column/3500/)

次に大手転職サイト「リクナビNEXT」での検索結果(2021年3月10日現在)を見てみましょう。まず「第三種電気主任技術者」をキーワードに、年収条件を変化させて検索を行いました。そしてそれぞれの年収帯においてヒットした求人数をもとに、どの年収帯にどれだけの求人数があるかを割り出してみました。

年収指定なし(278件)を100%としたときの各年収に占める求人数の割合は、以下のようになりました。

・年収300万円以下 11件 3.9%
・年収301万円以上500万円以下 101件 36.3%
・年収501万円以上700万円以下 108件 38.8%
・年収701万円以上1000万以下 58件 20.1%
・年収1,001万円以上 2件 0.7%

このデータを見れば、電験三種取得者として最も期待できる平均年収は501万円以上700万円未満と考えることができるでしょう。この結果と年収301万円以上500万円以下の層も多いこと、先に引用した年収期待値450万円の数字を合わせて考えます。すると平均年収として期待できるのは大体300万円~700万円代と推察することができます。

雇用される会社の規模や雇用条件によって、かなり幅があるのが分かります。未経験・経験が浅い場合は年収も抑えられ気味ですが、実務経験を積むことで期待できる平均年収は上がってくると言われています。

電験三種で年収1000万は目指せる?

会社員、個人事業主どちらの道も、電験三種の資格のみで年収1000万を目指すのは無理があるといえるでしょう。

会社員として就職した場合は、電験二種以上の資格や実務経験、そして役職といった条件が年収アップにつながってくると考えられます。年収を上げるには、よりレベルの高い資格の取得、そして同じ会社に長く勤め実績を積んでいくことが必要ということでしょう。

また、会社の規模によっても年収はかなり変わってくるようです。大手企業の中には電験三種の資格者に対して、年収1000万の求人を提示する会社もあるといいます。

※なお前述の「リクナビNEXT」検索結果でも、電験三種有資格者が年収1000万円以上を期待できる求人が存在しました。東証一部の大企業が募集を行っている求人です。ただし電験三種の資格だけでなく、業務に関する幅広い経験や語学などが必要となる「難易度の高い求人」でもありました。

また個人事業主として活躍する場合は、金額の大きい仕事を多数契約すれば年収1000万は不可能ではないと言われています。とはいえ前述したように個人事業主として仕事をするには、電験三種に加え実務経験などの条件を満たす必要があります。

それに加え、顧客を集めるための信頼性や営業力も試されるでしょう。個人事業主は実力を試されるシビアな世界です。まずは、電験三種を取得し、現場で実務経験を積みましょう。

電気主任技術者の将来性

現代のAI技術は急速に進化しています。オックスフォード大学でAI等の研究を行っているオズボーン准教授とフレイ博士は「10~20年以内には米国において労働人口の47%を機械に代えることができる」という研究結果を発表しています。例えばレジ係や集金人、電話オペレーターなどは、機械にとって代わられる可能性が高い職業と言われています。

また日本では、野村総合研究所がオズボーン准教授・フレイ博士との共同研究を行いました。その結果、日本においては約49%の人間の職業について機械に代えることができるとしています。

一方、電気主任技術者はAI技術が発展しても将来性はあるといわれています。その根拠について、調べてみました。

法律で配置義務が定められている間は安心と考えられる

現在電気事業法において、事業用電気工作物の所有者には電気主任技術者を配置する義務が課されています。つまり、ビルや工場、発電所などでは電気工事主任者がいなければ、保守点検業務が滞ってしまうのが現状なのです。

例えAI技術が驚異的に進化したとしても、法律が「AIによる保守点検を認め、電気主任技術者の配置はAIによって代えることができる」という内容にでも改正されない限り、電気主任技術者の需要がいきなり無くなることは考えられないでしょう。

保守点検は電気設備の安全運用を守るために重要な業務です。もしAIが電気主任技術者に代えられるほど高度な機能を備えたとしましょう。しかし、万が一AIの誤作動によって電気設備の事故が起きたとき、責任の所在がどこに求められるのかという問題も残ります。

このような問題にまだ明確な答えが出ないうちは、AIの技術向上だけで法律ががらりと変わってしまうことは考えにくいのではないでしょうか。

電気設備保守需要の高まりは今後も続く

電気設備にかかわる人材不足は、今後も加速していくと予想されています。

経済産業省による「電気保安体制を巡る現状と課題」(令和元年)という報告書では、ビルや工場といった自家用電気工作物は毎年0.6%の割合で増加し(都市開発やビルの老朽化による建て替えなどを背景に、ビルがもっとも増加割合が高くなっています)、この傾向は2030年まで続くと推測されています。

これら電気設備の保安監督を行うことができる電気主任技術者が活躍できる場は、今後とも増えていくと予想されます。ところが電気主任技術者は年々高齢化しており、深刻な人材不足が続いています。

前述の経済産業省による報告では、電験三種免状取得者として最も多い年齢層は60~69歳、次に来るのが70歳以上という現状が示されています。同報告にて、2030年には電験三種を持つ技術者は2,000人も不足する可能性が高い(全体の1割超)といわれているのも衝撃的です。

この結果からは、今後とも電験三種取得者の需要は高まっていくことが予想できます。

(参考元:経済産業省「電気保安体制を巡る現状と課題」https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_jinzai/pdf/001_03_00.pdf)

AI技術の浸透で、電気工事の知識はより重視される時代に

AI技術の元になっているのは、実は電気です。新しいロボットや機械の需要は高まっていますが、それを製作できる電気専門家人材の確保はなかなか難しい状態です。AI技術の浸透によって、将来確一部の職業はロボットにとって代わられるといわれています。一方で以下の総務省の文章にあるように、AIを導入、運用するために必要な業務については増加することが予想されています。

「まず、AIの導入によって業務効率や生産性が向上する結果、定型的な業務などの機械化が進むであろう職業についてはタスク量が減少する。他方で、AIを導入・運用するために必要なシステム開発やシステム運用などの業務量の増加や、AIを活用したサービスなどの新たな職業の登場によりタスク量が増加する。」

(引用元:総務省「ICTの進化によるこれからのしごと」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n4500000.pdf)

電気主任技術者や電気工事士の資格試験で学ぶ内容は、ロボット産業にも通じる電気の知識です。AI技術のニーズが高まることは、電気工事知識の需要が高まることに繋がると考えられます。

ロボットと連携することで、逆に業務がスムーズになる可能性も

人手不足が深刻な電気工事の現場ですが、AI技術を搭載したロボットを導入することで業務がスムーズになる可能性もあります。
例えば、危険な現場、重労働、単純作業はロボットに任せておき、管理・監督は電気主任技術者が行うといった未来も見えてきます。

一般財団法人電気技術者試験センター(電気主任技術者試験を実施している機関)が主催したトークセッションでは、以下のような未来が語られています。

「主は電気工事技術者で、副はロボットという関係性の中で、人間をサポートするロボットもアイデアの一つではないでしょうか。例えば自立型のパートナーロボットが重たいケーブルを天井裏に引き回す作業を行うなどです。そしてケーブルの導通チェックはロボットが行い、技術者はその結果を管理することでロボットの作業精度や品質を上げていくことができるのではないかと考えます」

(引用元:「一般財団法人電気技術者試験センター」https://www.shiken.or.jp/engineer/engineer_21.html)

現代でも既に鉄道電気設備の保守や発電所の不良個所の解析など、電気主任技術者の補助としてAIを活躍させようとする試みが出てきています。電気主任技術者には、AI技術を利用することでもっと効率的に業務を行える未来が待っているかもしれません。

まとめ 電験三種は将来性が期待できる資格

電験三種は国家資格であり、有資格者だけが従事できる独占業務もあります。再生可能エネルギー発電所の増加や、ビル等の事業用電気設備を備えた建物が増えている影響から活躍の場は今後とも広がっていくでしょう。

需要に対し供給が追い付いていない状態が続いている点、法律で設置義務が定められている点などから、AIが台頭してきている現代においても将来性は期待できる資格といえます。

電験三種資格取得者の年収は、300万円~700万円台とかなり幅があります。未経験や経験が少ないと、どうしても平均年収が下がってきてしまいます。一方で独立開業も目指せる実務経験5年以上を超えることで、年収アップが期待できるでしょう。

参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷