どんな業界、企業でも、花形の仕事として一目を置かれる営業職。現在営業職でキャリアアップをしたいと考えている方、また営業転職を検討している方も多くいらっしゃることでしょう。
しかし、いざキャリアアップ、スキルアップをしようと思っても、具体的にどのようなことをすれば良いかわからない、という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方は、”資格取得”を検討してみてはいかがでしょうか。
営業職は人対人のコミュニケーション力が重要な仕事ですが、近年では営業スキルだけでなく専門分野の知識や高い洞察力が求められています。資格を持つことで顧客や会社からの評価が上がり、最終的には給料アップに繋がることも稀ではありません。
今回は営業職全般に役立つ資格と業界別のおすすめ資格をご紹介いたします。ぜひ、ご自身に合った資格探しの参考にしてください。
営業職に限らず、資格保持者とそうでない者の専門知識というものは、やはり信頼度に大きく影響を及ぼします。やはり顧客からしてみれば、資格を持っている人の方が信頼をいだきやすいですし、名刺に一文”資格名”が書いてあるだけで、第一印象にも深みが出ますよね。
また、自分自身も専門分野を勉強することで相手への伝え方がより良くなることもあるでしょう。資格は必ず、仕事面であなたに自信をつけてくれます。
必ずしも資格を保有していることが転職に有利になるとは限りませんが、「資格の有無」はひとつの物差しになります。求人情報で例え“無資格者、歓迎!”とうたわれていたとしても、最終選考に同レベルの方が残った場合などは、「やはり資格を持っている人を採用しよう」と考えるのは人間の常。
さらにその業界に関する資格であれば、即戦力とみなされプラスポイントになるだけでなく、無資格者よりも給与が高く設定される可能性もあります。転職を検討している方は、資格を取得することで転職活動を有利に進めることができたり、好条件で採用してもらえる可能があるのです。
受験資格 | 受験費用 | 開催スケジュール | その他費用 | |
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営業士検定 | 特になし | 各級8,800円 | 6月・11月 |
登録費用:初年度24,200円(初回資格登録料11,000円、年間登録料13,200円)、 次年度以降13,200円 |
セールスレップ資格 | 特になし | 各級8,800円 | 6月・11月 | 公式学習教材:セールスレップ3級公式テキスト3,740円など |
営業力強化検定 | 特になし | 1,000円 | 常時 | 特になし |
ビジネスキャリア検定 | 特になし |
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前期(10月頃)・ 後期(2月頃) |
公式テキスト:2,200円~4,000円(税別) |
MOS | 特になし |
9,800円(税別) または11,800円(税別) |
ほぼ毎日 (各試験会場が設定) |
対策教材:2,000円前後(税込) 通信講座:16,000円(税込 ※ユーキャン) |
営業士とは、日本営業士会が認定する“マーケティング・セールスのスペシャリスト”に与えられる資格です。「営業士初級」、「営業士上級」、「営業士マスター」の3段階あります。
小売業を対象とする販売士とは異なり、営業士は、製造業、メーカー企業、サービス企業を中心に、商業系、工業系、IT系、金融系、情報系など、ありとあらゆる商材やサービスが対象となります。
初級は営業担当者として基本的なスキルや方向性に関する内容が主で、合格率は60%~80%と比較的取得しやすい資格といえるでしょう。上級は、コンサルタント営業など企画型営業の応用知識を習得している中堅幹部クラス、マスターは経営に関する高度の専門的知識を身につけた幹部クラスが対象となっています。初級合格後、上級・マスターへ挑戦することができますが、初級と上級は併願受験が可能です。
試験は6月、11月の年2回開催されていて、一般社団法人日本販路コーディネータ協会が発行するテキストをもとに勉強します。短期集中型の研修プログラム(研修と最後の試験で認定)や、上級を目指す方には認定講師による公式の通信講座が用意されています。
日本セールスレップ協会が主催する、民間検定制度です。セールスレップとは、セールス・レプリゼンタティブ(Sales Representative)の略で、効率的かつ効果的な販売支援を行う営業のプロフェッショナルのことを指します。具体的には、メーカーと販売先を結ぶコーディネータ職に有利な資格になるので、メーカー営業の方には特におすすめの資格です。
資格レベルは3級、2級、マイスターの3段階あり、営業士検定同様、3級と2級の併願受験が可能です。試験は6月、11月の年2回開催。資格認定研修プログラムが用意されており、公的機関と連携した本格カリキュラムと小試験により認定が行なわれています。プログラムはeラーニング(オンライン)があり、働きながら自宅学習が可能です。
試験料1,000円で、自分の営業力を簡単に測ることができるWEBテストです。50分間で50問の選択問題を解くと、その場で結果が表示されます。
「基本知識」「マーケティング」「顧客対応」「営業提案」「情報管理」の5分野に対する自分のスキルと、全国レベルを知ることができるので、「今の営業力に足りないものを知りたい」「他の営業マンとの比較を知りたい」という方におすすめです。合格率も70〜80%と、比較的取得しやすい資格といえるでしょう。
ネットで常時開催されているので、ちょっとした隙間時間にスマートフォンやタブレットから気軽に受験することが可能です。
厚生労働省が後援しているビジネスキャリア検定は、8分野43試験の中から自分の職種に合った内容を勉強することができます。具体的には人事・経理・ 営業・マーケティングなど多岐にわたる分野から1級、2級、3級、BASIC級の4段階を選択して受験します。
営業職として知見を広げるのであれば、「営業」「マーケティング」の分野の受験が一般的ですが、働いている業界や仕事内容に応じて「労務管理」や「生産管理」「経営戦略」など、自分に合った分野の資格も合わせて取得するのもおすすめです。ただしBASIC級は現在、生産管理とロジスティクスの分野しか展開されていません。
ビジネスキャリア検定は、取り組みやすい仕組みと、厚生労働省による基準に基づいた試験内容であることが特徴です。前期と後期の年2回試験が行われており、検定料もBASIC級3,300円〜と比較的安価です。平均合格率は分野によって開きがありますが、BASIC級が85%前後、3級は40〜70%ほどありますが、2級は分野によっては30%を切ることもあり、上級ほど取得は難しくなります。
しかしそれだけの資格を取得したとあれば、キャリアの向上はもちろん、ご自身の自信にも大きく繋がることでしょう。
学習方法としては、書店や公式HPで販売されている公式テキストで独学する他、公式HPに掲載されいている過去問で予習することも可能です。
また、検定を主催する中央職業能力開発協会では、各分野に対応した教育訓練講座も認定されています。
各分野によって対応している教育訓練機関が異なるので、受講したい場合は各教育機関に問い合わせる必要があります。
MOSとはマイクロソフト オフィススペシャリストのことで、マイクロソフトオフィス社の提供するソフト(Excel、Wordなど)の利用スキルを証明できる資格です。営業には直接関係ないように感じるかもしれませんが、営業職は見積書や契約書、プレゼン資料などの作成も重要な業務の一つ。様々な資料や書類を作りあげるためには、有益な資格といえます。営業事務でも活かせる資格です。
またパソコンスキルは、今後どの職種に就いても損はないといえるほど社会人には必須のスキル。特にマイクロソフトオフィスは世界中で使われている共通のソフトウェアでもあるため、MOS資格は世界に知識とスキルを証明できるグローバル資格として海外営業でも役立つでしょう。
試験科目は、Word(文書作成ソフト)、Excel(表計算ソフト)、PowerPoint(プレゼンテーション ソフト)など5種類あり、各科目で一般レベルの“エキスパート”と上級レベルの”スペシャリスト”、2つのレベルが設定されています。受験資格がないため、いきなりエキスパートレベルに挑戦することも可能で、3項目まで併願受験もできます。試験は全国で開催されており、都合の良い日程・会場へ自分で直接申し込みます。
対策用テキストを使って独学で勉強するか、パソコンスクールを探して通信講座で勉強する方法があります。個人差はありますが、独学であれば60時間ほど、通信講座では45時間ほどが平均的な勉強時間といわれています。
受験資格 | 受験費用 | 開催スケジュール | その他費用 | |
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FP技能士3級 | FP業務に従事しているものまたは従事しようとしている者 | 6,000円(非課税) | 年3回(1月・5月・9月) | 対策教材:2,000円前後(税込) |
FP技能士2級 |
以下のいずれかに該当
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8,700円(非課税) | 年3回(1月・5月・9月) |
対策教材:2,000円前後(税込) 通信講座:3級が組み込まれている講座が多く、費用は数万円前後 |
FP技能士1級 | ※受験資格には細かい規定があります。HPをご確認ください。 | 20,000円(非課税) | 年1回(9月) | 通信講座:10万円前後 |
宅地建物取引士 | 特になし | 7,000円(非課税) | 年1回(10月) | |
不動産鑑定士 | 特になし | (電子申請の場合12,800円) |
年1回 (短答式試験:5月、 論文式試験:8月) |
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住宅ローンアドバイザー | 特になし |
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年2回 |
登録料:11,000円(税込) ※登録有効期間:登録日から3年間 ※登録更新:3年ごとに登録更新手続きが必要 ※登録校更新料:11,000円(税込) |
ITパスポート(iパス) | 特になし | 5,700円(税込) | 随時 | |
中小企業診断士 | 特になし ※保有資格によって、科目免除あり |
13,000円(非課税) | 年1回(8月) |
保険業界で営業職に就いている方、また保険業界での営業職を目指している方は多くいらっしゃると思いますが、前提として保険の募集・営業を行うには、まず「生命保険募集人(生保一般課程試験)」の資格保持が必須となります。この資格を持っていない者は保険営業ができないという基礎資格ですので、保険業界の営業職に転職を希望する方は、まずこちらの資格取得を目指す必要があります。
更にスキルアップしたいという方は、「FP(ファイナンシャルプランナー)」の資格が有益です。”お金のプロ”と言われるFPは世間の知名度も高く、資産運用や税金、住宅ローンなど、将来誰にでも関係するお金の知識を習得することが可能です。また保険に限らず、顧客へのコンサルティング業務に役立つでしょう。
FPの資格は2種類あります。まず1つ目は国家資格である「FP技能士」です。1級~3級まであり、1級の取得は非常に難しいともいわれています。
もう一つは日本FP協会が認定する民間資格「AFP、CFP」です。AFPはFP2級相当、CFPはFP1級相当の資格となりますが、AFP資格は日本FP協会認定の教育機関が実施するFP講座(AFP認定研修)を修了し、指定試験に合格するなど、どちらも一定の要件を満たした者が取得できる資格です。また、有効期限があり年会費が発生する点には注意が必要です。
各資格試験とも対策テキストが豊富に販売されており、3級レベルは独学でも十分勉強できる内容です。しかし法改正が定期的に見込まれる業界のため最新の情報収集が必要となり、そのためには通信講座が便利です。試験は年3回行われています。
不動産営業職の方におすすめの資格は「宅地建物取引士」、一般的に「宅建(たっけん)」と言われる国家資格です。土地・建物の取引を安全かつスムーズに進めることを目的に設けられており、不動産業では一事務所において5人につき1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士がいなくてはならないと義務付けられています。不動産売買する上で「重要事項の説明」、「重要事項の説明書面への記名・押印」、「契約書への記名・押印」は宅建士にのみ許可された業務です。持っていると営業所から重宝されたり別途手当が支給されることがあります。試験合格後、所属の都道府県にて登録申請が必要です。
教材や通信講座が充実しているので自分に合った勉強方法で取得を目指しましょう。宅建は難易度が高いと言われていて、独学でも可能ですが業界経験なく一から勉強をする場合にはかなりの勉強時間が必要です。試験は毎年10月に全国で開催されますが、原則居住している都道府県の会場で受験することになります。
宅建やFPも不動産営業に関連した資格ですが、もうひとつ「不動産鑑定士」も不動産業界でスキルアップするにはおすすめの資格です。これは不動産を鑑定し金銭的評価を行うことができる国家資格で、不動産に関しての高度な知識が求められます。試験の合格者も5%未満という狭き門ですが、持っていると将来転職・独立の際に有利となるでしょう。
試験は毎年5月・8月に短答式、論文式の二段階選抜で行われます。2段階ともに合格した者が実務修習を経て、認定を受けることができます。かなりの勉強量が必要となること、論文対策が必要なことから独学よりも通信講座などを利用するほうが賢明かもしれません。少し時間はかかりますが仕事と掛け持ちして専門学校へ通うという手段もあります。
住宅メーカーで勤務している営業職向けに、住宅金融普及協会が認定する「住宅ローンアドバイザー」という資格があります。
家を購入する際、消費者が頭を抱える「住宅ローン」の壁。銀行、信用組合等金融機関から様々な商品が販売されていて「どれが良いのか?」簡単に比較検討するのが難しい状況です。住宅ローンについての正確な商品知識、リスク、情報をアドバイスすることで、消費者の心強い味方となり、より良い信頼関係につながるでしょう。
資格取得には、住宅ローンアドバイザー養成講座(基礎編・応用編)を受講する必要があります。年2回、不定期で開催されています。講座修了後証明書が発行され、晴れてアドバイザーに認定となります。実際の会場で受講またはオンラインで受講が可能です。
アプリケーションソフトなどの製品、システム開発やWebサイト制作などを販売するIT営業では、IT全般の知識が求められます。そこでIT系営業職の方には、ITの基礎知識を持っていることを証明できる国家資格「ITパスポート」の取得がおすすめです。
専門的な知識だけでなく情報モラル、経営戦略、コンプライアンス等と非常に幅広く、企業内のIT戦略担当者が必要な情報が一通り習得でき、実務でも役立つ内容となっています。
独学のための参考書や問題アプリがたくさん販売されているので、初心者向け・経験者向けなど、自分に合った教材選びが重要です。試験はCBT(Computer Based Testing)方式で全国47都道府県の会場にて随時開催されているため、自分の好きなタイミングで受験することが可能です。
企業の悩みをサポート・解決するコンサルタント業務といっても、「顧客の新規開拓」「営業組織の構築」「広告戦略」などなど、業務内容は非常に多岐にわたります。コンサルタントをおこなうにあたり資格は必須ではありませんが、企業にとって良いコンサルタントとして認識してもらうという点では、肩書は効果的です。
数ある中でも特に注目が集まっているのが、「中小企業診断士」。「中小企業支援法」第11条に基づき経済産業大臣が登録を行う国家資格で、中小企業に融資を行う金融機関にて診断士の配置を奨励するという国の方針が発表されています。知名度も高く、業務を行う上で信頼関係につながるでしょう。
平均してストレート合格者は5%未満という難易度の高い資格ですので、相当な勉強時間を要します。また試験内容が広範囲にわたるため、やみくもに取り組むのではなく計画的な勉強法も必要でしょう。
通学、通信、独学と様々な方法がありますが、スケジュールを組むのが苦手という方は費用をかけてでも講座の活用を推奨します。毎年8月の年1回試験が開催されています。第1次試験、第2試験をパスしたのち、実務補習・実務従事を経て登録となります。5年ごとの有効期限があります。
今回、様々な業界で活躍する営業職の方におすすめしたい資格10選をご紹介しました。コミュニケーション力重視の営業職であっても、資格は様々な場面で役立つスキルのひとつです。
また資格取得のために勉強した内容は、必ず自身のスキルとして身につき、キャリアアップにも繋がります。働きながら取得できるものもあるので、将来を見据えてご自身に合った資格をぜひ見つけてはいかがでしょうか。