衛生管理者は、大規模な職場に必須のポジションです。仕事で衛生管理者の資格取得が必要になったものの、衛生管理者試験は国家試験。いつから勉強すれば合格できるのか、どのように勉強したらよいのか、不安を覚えている人もいるのではないでしょうか。
衛生管理者試験は超難関試験ではありませんが、曖昧な勉強で合格できるわけではありません。過去問を使ったしっかりした対策が必要です。
この記事では衛生管理者試験の合格率から、試験に合格するための具体的な勉強方法まで詳しく解説していきます。これから衛生管理者試験を受験しようと考えている方は、参考にしてみてください。
衛生管理者は、職場環境の衛生と安全を守る役割を担うポジションです。
労働安全衛生法によって常時従業員50人以上200人以下の労働者が働いている職場では、衛生管理者を1人選出する必要があります。従業員数が多い職場ほど必要な衛生管理者の数も増えていきます。
衛生管理者になれる人材には、医師や労働衛生コンサルタント等があります。また衛生管理者の資格試験に合格し、衛生管理者免許を取得することでも衛生管理者になることができます。
このように一口に衛生管理者といっても、職場のポジションを指すときと、衛生管理者という資格名を指すときがあります。
令和元年度における衛生管理者試験の合格率は、次のようになっています。
試験種類 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第一種衛生管理者 | 68,498人 | 32,026人 | 46.8% |
第二種衛生管理者 | 33,559人 | 18,511人 | 55.2% |
参考元「安全衛生技術試験協会」:https://www.exam.or.jp/exmn/H_gokakuritsu.htm
衛生管理者免許には、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の2種類があります。第一種衛生管理者免許を取得している場合は、衛生管理者になる上での業種の制限がありません。一方第二種衛生管理者免許を取得している人は、農林畜水産業や製造業等の現場では衛生管理者になることができません。このような背景もあり、第一種衛生管理者試験の方が第二種衛生管理者試験よりも受験者数が多くなっていると考えられます。
第一種衛生管理者の合格率は40%台~50%台を推移していましたが、ここ4年は40%中盤の合格率にとどまることが多く、やや難易度が上がっている印象です。
一方第二種衛生管理者の合格率は、50%台~60%台を推移しています。こちらもここ4年は50%前半から中盤にとどまることが多く、合格率の低下傾向がみられます。
近年合格率が下がっているとはいえ、数字上はどちらの試験も2,3人に1人は受かる計算になります。同じ国家試験でも合格率5%未満の司法書士等と比べれば、衛生管理者は比較的難易度が低い試験といえるでしょう。
衛生管理者の試験は国家試験ながら合格率は高く、一発合格もしやすい内容になっています。
衛生管理者試験の対策を立てるためには、試験概要についてしっかり確認しておく必要があります。
衛生管理者の試験内容は以下のようになります。
第一種衛生管理者試験科目
有害業務に係るもの10問+有害業務に係るもの以外のもの7問:計2科目
有害業務に係るもの10問+有害業務に係るもの以外のもの7問:計2科目
10問
第二種衛生管理者試験科目
有害業務に係るものを除く10問
有害業務に係るものを除く10問
10問
参考元「安全衛生技術試験協会」:https://www.exam.or.jp/exmn/H_shikaku502.htm
合格基準
第一種、第二種ともに全体6割以上の得点+各科目ごとに4割以上の得点で合格となります。
試験形式
マークシート形式
それでは独学で衛生管理者試験に合格するための勉強方法について、具体例を見ていきましょう。
まず第一種試験か、第二種試験かどちらを受験するのかを決定します。次に、どの日程の試験を受験するか選択します。衛生管理者試験は月1~5回行われているので、都合の良い日程を選びやすくなっています。試験までの期間が短すぎるのはもちろんよくありませんが、長すぎてもだれてしまいます。程よい日程の試験を選ぶようにしてください。
なお、試験は全国7つのセンターで行われます。年に一回出張特別試験があり、各都道府県で試験を受けることもできます。ただし、それぞれの日程には定員があり、早めに申し込まないと締め切られてしまうので注意しましょう。
試験日が決まったら、そこから逆算して勉強の計画を立てていきます。
衛生管理者の試験範囲は広いので、全範囲を完璧にしようとすると勉強時間が足りなくなってしまいます。そこで過去問を中心とした勉強をして、試験にでそうな部分に学習範囲を絞ることが大事になります。
衛生管理者試験は過去問に似た問題が出題される傾向があるので、過去問の知識をしっかりつけることが合格に繋がってきます。
衛生管理者試験では、第一種なら5科目、第二種なら3科目から問題が出題されます。最初に過去問を解くときは1回分の試験を全部解くのではなく、分野別に解いていく方が頭に入りやすいです。前提知識がほとんどない状態で勉強する場合は、1つ1つの分野を集中的に仕上げていくのがポイントです。同じ分野の問題を繰り返し解くことで、その分野に対し集中した学習が可能になるからです。
過去問を解いて答え合わせをしたら、間違えた問題にチェックを付けていきましょう。また、仮に正解したとしてもマークシート形式の問題では「まぐれ当たり」を起こすこともしばしばあります。「別の選択肢とかなり迷った」上での正解は本物の正解とは違います。このように選択肢に迷ったときは、正解を見る前にチェックを付けておくと便利です。「解答を迷った問題」は「解答自体を間違えた問題」と区別するため、チェックマークや色を変えると見やすくなります。
このようにして、過去問を何回も繰り返し解いていきます。復習をする時は、チェックマークがついている問題を重点的に復習していくと効率が良くなります。
知識が身についてきたら、分野分けせずに過去問一回分を解くようにします。これは全体知識の確認と、実際の試験形式に慣れるための練習になります。
過去問を使う勉強方法には2つのパターンがあります。
テキストを先に読む
1つはテキストを読んで試験内容を大雑把に理解した後に、過去問を解いていくという方法です。
ただし受験日が迫っている中で、テキストを読むことに時間をかけすぎるのはよくありません。短期間でも通読しやすいよう、テキストはなるべく薄いものを1冊用意します。最初にテキストを読むときは軽く読み流し、全体の内容を把握しましょう。衛生管理者試験では数値や用語が重要になるので、テキストを読んでいる時点で覚えられるものは覚えておきます。語呂合わせを自分で作って覚えやすくするのもよいでしょう。
テキストでどのような内容が出題されるのが分かったら、次は過去問を解いていきます。過去問で間違ったところはテキストで再度確認し、勉強を進めていきます。
この方法なら全く知識がない状態で過去問に挑むより正解率も高くなり、解答へのモチベーションも維持しやすくなります。また過去問で分からないところがあっても、テキストの該当箇所を探しやすくなります。
過去問を先に解く
もう1つは、いきなり過去問を解いていくパターンです。そして答え合わせの後、解説を読んでもイメージが良くつかめないところをテキストで確認します。
最初に紹介した「テキストで全体知識を得てから過去問に取り組む」という方法は、学校での勉強方法と同じでスタンダードな勉強方法といえます。
ただしよっぽど内容に興味がない限り、未学習の内容をテキストで読むという行為は面白みがないものです。集中力が得られず、なかなかテキストが進まない可能性もあります。一方過去問を先に解いておけば、どのようなところが問題で問われるのかを意識することができます。つまりこれは「試験に出る部分」に自然に意識が向くという勉強方法なのです。ただしテキストで全体を抑えていない分、「今どの部分を勉強しているのか」分からないというデメリットもあります。全く知識がない状態で問題を解くのが苦痛という人もいるでしょう。
どちらの勉強方法が良い?
受験者によって向いている勉強方法が違うので、どちらの方法が正解というわけではありません。
まずは過去問集にざっと目を通してみてください。
過去問で使われている言葉がよく分からない、知識がないと解く気にならない人は前者の勉強方法が向いているといえます。
逆に勘でもよいから問題をどんどん解いていく方が効率的だと感じたなら、後者の勉強方法があっているでしょう。
独学で合格するためには、まず書店でテキストや問題集などの教材を揃える必要があります。教材を選ぶ際は、最新の試験に対応しているものを選びましょう。
最低限必要なのは、過去問集です。衛生管理者試験対策として、以下のような過去問が出版されています。
中央労働災害防止協会
秀和システム
成美堂出版
収録されている過去問数については、1が10回分と最も多くなります。過去問集は解説の丁寧さ・相性の良さも選択のポイントになります(解説がしっかりしている過去問集ならテキストの代わりに使うこともできます)。
書店で実物を読んで、自分にとって分かりやすい解説を行っている過去問集を選ぶと良いでしょう。
テキストとしては、以下のような物が出版されています。
成美堂出版
KADOKAWA
どちらもテキストと一緒に〇×式の問題が収録されており、知識を1つ1つ確認していくことができる構成になっています。
※ここでは第一種試験バージョンのタイトルで紹介しましたが、各過去問集、テキストともに第二種試験バージョンも発売されています。
衛生管理者試験では過去問を繰り返し解いて、重要な用語や数字を覚えていくことが大事です。しかし仕事をしながらでは、なかなかまとまった勉強時間が取れないのも事実です。
アプリを使った勉強なら、通勤時間や会社の昼休みなどスキマ時間を使った勉強が可能です。
衛生管理者試験対策ができるアプリには、次のようなものがあります。
第一種試験、第二種試験に対応している無料アプリ。基本問題と過去問題を解くことができます。Androidのみ対応しています。
『ユーキャンの第1種・第2種衛生管理者 これだけ!一問一答&要点まとめ』をアプリ内で購入できます。○×問題596問を解くことができるボリューミーなアプリです。Android、iOSの両方に対応しています。
541問を収録した「オンスク.jp」のアプリです(初級問題のみ無料)。テーマ別モードやミス問題機能など便利な機能が付いています。Android、iOSの両方に対応しています。
日本法令がリリースする衛生管理者試験対策の有料アプリです。収録問題数は1100問以上と非常に多く、付箋機能やパス機能なども充実しています。iOSのみ対応しています。
この他にもたくさんの衛生管理者試験に対応したアプリがリリースされています。アプリにはミスをした問題をまとめて出題できる機能など、紙の本にはない便利さがあります。ただしアプリの中には、解答にミスがあるもの、収録問題集が不十分なものなどもあります。アプリは手軽にインストールできるからこそ、使うものを厳選することが必要です。自分に合ったしっかり勉強できるアプリを選びましょう。
裏ワザというと非公式な物を思わせるかもしれません。しかしここで紹介するのはそういった意味での裏ワザではなく、労働基準協会主催の「衛生管理者免許試験 受験準備講習」に参加するという方法です。講習は各都道府県の労働基準協会が開催しており、日程は3日間となっています。講習会の有無、内容詳細についてはお住いの労働基準協会へ問い合わせてみてください。
また労働基準協会以外に、資格取得支援を行っている会社で事前講習会が開催されることもあります。いろいろなタイプの事前講習会があり、中には1日で得点アップを目指せるものもあります。
事前講習会を利用すれば、短期間で対策を行うことができます。独学でなかなか効率的な勉強ができないと悩んでいる場合は、一度受講を検討してみてはどうでしょうか。
衛生管理者試験に合格するための勉強時間は、第一種試験を受験する場合で1~6ヶ月、第二種試験を受験する場合で1~2か月程度となります。
必要な勉強時間は受験生が持っている基礎知識や実務経験、また勉強自体に対する慣れによって左右されます。中には一夜漬けのような短期間の勉強で取得できる人もいるようですが、逆にあまり勉強せずに試験を受けて後悔する人もいます。できるだけ勉強時間は余裕をもって取っておくようにしましょう。
衛生管理者試験には、特例第一種衛生管理者試験というものもあります。これは既に第二種衛生管理者の免許を持っている人が、第一種衛生管理者を目指すための試験です。
試験内容は以下の通りです。
特例第一種衛生管理者試験
有害業務に係るもの限定で10問
有害業務に係るもの限定で10問
第一種試験の内容を、第二種試験と特例第一種試験に分けたような形になっていることが分かります。
一発合格で第一種衛生管理者を目指すのは厳しいと感じている人は、まず第二種衛生管理者の免許を取得してみましょう。その後特例第一種衛生管理者試験に合格すれば、一種免許を手に入れることができます。
この方法では第一種免許取得までに時間がかかるというデメリットはありますが、勉強しなければならない科目数を2回に分けられるというメリットもあります。衛生管理者試験は毎月試験が行われているため(特に関東センター実施の試験は月に5回も試験が行われることがあります)、次の試験日を長期間待たなくてはならないということもありません。
特例第一種試験の対策に使うテキストや問題集は、第一種試験の物と同じで大丈夫です。
試験日まで勉強時間に余裕がない場合は「第二種を取得してから特例第一種試験を受験する」2段構えの作戦も検討してみてください。
衛生管理者の試験は独学で合格を目指すことができます。
しかしモチベーションが保ちにくい、どの教材で学んだらよいか分からないという独学が不向きな人もいるでしょう。そんな人は、スクールの利用を検討してみてください。
例えば、アガルートアカデミーではオンラインの衛生管理者試験対策講座を開講しています。第一種対策講座、第二種対策講座に加え、特例第一種対策講座も用意されているので、第二種から第一種を目指す人にも向いています。第一種、第二種講座を受講して見事試験に合格した人は、Amazonギフト券を受け取ることができるという特典も付いています。
オンライン講義にテキストと過去問集の教材付で、各講座の価格は以下のようになっています。
衛生管理者試験には第一種、第二種試験があります。どちらの試験も国家試験としては、合格率が高く独学で合格を目指すことができます。
試験勉強に最低限必要な教材は過去問集です。衛生管理者の試験では、過去問と類似の問題が出題される傾向があります。過去問を繰り返し解いて、知識を身に着けることが合格への道です。また、過去問と合わせて使いたいのがテキストです。テキストを先に読んでから過去問に取り組む方法、先に過去問に挑戦してから分からない部分をテキストで調べる方法、どちらか自分に合った勉強方法を選んでください。
第一種衛生管理者は働ける業種に制限がないので、できれば第一種免許を取得したいところです。勉強期間に余裕がなければ、まず難易度が低めの第二種試験に合格してから、特例第一種試験を受験する方法も検討してみましょう。