未経験だとハードルが高い!?フロントエンドエンジニアに必要なスキル

SNSやスマホゲーム、Webサイトなどの設計・構築に携わるフロントエンドエンジニアは、ITエンジニアの中でも人気の高い職業です。ITエンジニアは未経験者を積極的に採用する企業が多いため、「フロントエンドエンジニアは狙い目かも?」と思う人もいるでしょう。

フロントエンドエンジニアの転職事情や仕事内容、関連職種との違い、仕事のやりがいやつらさ、将来性、転職する際に必要なスキルなどをとことん調べてみました。フロントエンドエンジニアになりたい人、漠然と興味を持っている人は、参考にしてみてください。

未経験でもOK?フロントエンドエンジニアの転職事情

フロントエンドエンジニアは、未経験者でも比較的なりやすい職業です。ただ、未経験者といっても、ITの知識がない素人ではありません。「未経験者歓迎」とは実務経験がないだけで、ポートフォリオと呼ばれる作品集を作成できるレベルのプログラム言語の知識のある人を指します。実際、多くの企業は、未経験者のスキルを知るために、応募書類と一緒にポートフォリオやGitHubの提出を義務付けています。プログラム言語の基本構文が学べる動画コンテンツで学習した程度の知識では、応募すら不可とする企業も。

ただ、「経験者歓迎」と書かれた求人でも、実務経験がなくても募集要項に書かれたスキルを持つ未経験者の応募は歓迎されます。フロントエンドエンジニアは、経験年数よりも実力が重視されるからです。そういう意味では、スキルさえあれば未経験者も活躍できる職種と考えてよいでしょう。

プログラミング経験のない未経験者を採用し、数か月程度の研修期間を設ける企業もあります。研修制度がある会社は、採用人数も5人以上と多いため、未経験者には狙い目と言えますが、残念ながら数はそれほど多くありません。

こうした背景から、フロントエンドエンジニアは、プログラミングやITの基礎知識がない人が、いきなり目指すにはハードルが高い職業です。書籍や動画教材、スクールなどで勉強し、ポートフォリオを作成できるレベルのスキルを身につけてからチャレンジしましょう。

フロントエンドエンジニアの仕事内容

フロントエンドエンジニアとは、プログラム言語を使ってWebサイトやアプリの画面の設計、構築を担当するエンジニアです。パソコンやスマホで操作したり、目にしたりする画面部分を担う技術者だと思ってください。会社や開発プロジェクトで担当範囲は異なりますが、主に下記業務を担当します。

  • デザイナーが設計したデザインをもとにHTMLやCSSで画面を作成
  • JavaScriptやPHPなどでWebサイトの動きをつける
  • マルチデバイスで表示可能な画面を実装(レスポンシブ対応)
  • Webサイトの高速化・軽量化対策
  • SEO対策

上記業務に加え、Webサイトのディレクションやデザインを兼務することも珍しくありません。実は、フロントエンドエンジニアは近年できた新しい職種です。ひと昔前まで、これらの業務はコーダーやマークアップエンジニア、Webデザイナーが担当していました。

しかし、技術の発達により、画面部分で担当する領域が増え、高度なスキルを持つ技術者が必要となりました。こうした背景からフロントエンドエンジニアと呼ばれる職種が誕生したのです。フロントエンドエンジニアは、コーダーやマークアップエンジニアなどの上のレイヤーに位置する職種で、「Webサイトやアプリの画面周りをすべて担当する技術者」と覚えておきましょう。

コーダーやマークアップエンジニア、Webデザイナーとの違い

フロントエンドエンジニアは、コーダーやマークアップエンジニアなどの関連職種と勘違いされることもしばしば。関連職種の仕事内容を説明するので、これを機にフロントエンドエンジニアとこれらの違いを理解しましょう。

コーダー

コーダーとは、Webデザイナーが設計したデザインをHTMLやCSSでコーディングし、Web上で表示させる職種です。HTMLやCSSを使ったコーディングが主な業務。フロントエンドエンジニアのようにCMSやAPI実装、SEO対策、Webサイトの動作軽量化など高度なスキルを必要とされません。

フロントエンドエンジニアとコーダーを兼務する企業も多く、経験の浅いうちはコーディングを担当します。

マークアップエンジニア

マークアップエンジニアは、HTMLやCSSなどを使い、文章構造やレイアウト、装飾、画像配置などを行います。コーダーがHTMLやCSSで表現したWebサイトを、マークアップエンジニアがユーザーが使いやすくするために改良していると思ってください。使う言語はコーダーと同じでも、マークアップエンジニアはSEOやリッチコンテンツ制作などより高度なスキルが必要とされます。

フロントエンドエンジニアと違い、JavaScriptやPHPなどのプログラム言語やフレームワークの知識は求められません。せいぜいJavaScriptの基礎知識ぐらいです。フロントエンドエンジニアとマークアップエンジニアの違いを厳密に区別しない企業も多く、マークアップエンジニアをフロントエンドエンジニアと呼ぶ場合もあります。

Webデザイナー

Webデザイナーは、クライアントの要望をもと、Webサイトの構成やレイアウトなど全体のデザインを担当します。illustratorやPhotoshopなどのデザインソフトで、ロゴやバナー、背景などWebサイトの素材を作成するのが主な業務。HTMLやCSSなどの基礎知識は必要とされるものの、フロントエンドエンジニアほど高度なプログラミングの知識を身につける必要はありません。

フロントエンドエンジニアの仕事のやりがい

ITエンジニアの中でも最新の技術やトレンドに触れる機会が多いため、好奇心が旺盛な人にはぴったりな職種です。ユーザーに一番近いWebサイトの画面部分の設計・構築に携わるため、成果物の反響が得られやすいメリットも。「使いやすい」「オシャレでカッコイイ」などの評価を得られれば、仕事のモチベーションも上がるでしょう。

近年、モバイルデバイスの普及が進んだことで、スマホアプリの企画から開発まで担当できるフロントエンドエンジニアの需要が増えつつあります。自分の個性やアイディアを形にできる点も、フロントエンジニアならではの仕事のやりがいです。

プログラマーやWebデザイナーと比較し、フロントエンドエンジニアはWeb系職種の中でも、人と接する機会の多い仕事です。お客さんやWebディレクター、Webデザイナー、コーダーなど様々な立場の人との協力なしで、Webサイトやスマホアプリの設計・構築は実現しません。複数の関係者と一緒に成果物を作り上げていく楽しさもあります。

フロントエンドエンジニアの仕事のつらさ

Webサイトやアプリの画面は、ユーザーが使いやすいよう常に最新のトレンドを取りなければなりません。最先端の技術やトレンドに触れられるメリットは、裏を返せば常に勉強が必要といえます。学んだ技術やトレンドがすぐに陳腐化し、常に最新の技術を学び続けなければならない点がつらいと感じる人も。

フロントエンドエンジニアが担当する画面部分は、ブラウザに表示させるデータや裏で連携するシステムが完成していなければテストができません。納期が決まった案件は、他の工程に遅れが生じると、その分、後工程を担当するフロントエンドエンジニアの作業スケジュールがタイトになります。連日残業が続くことをつらいと思う人も少なくありません。

10年後も食べていける?フロントエンドエンジニアの将来性

10年後もフロントエンドエンジニアの需要があるか、現時点では将来性がわかりません。AIの発達によりフロントエンドエンジニアの役割を自動化させる技術が少しずつ増えているからです。「FRONT-END.AI」と呼ばれるHTMLやCSSのコーディングをAIに自動化させるサービスがすでに商用利用されています。FRONT-END.AIは、小規模なWebサイトであれば、フロントエンドエンジニアの業務を98%も削減できるのです。今後、FRONT-END.AIのようなサービスが増えると、フロントエンドエンジニアの仕事は減っていくでしょう。

ただ、AIによる開発の自動化が一般的な技術となるには、しばらく時間がかかると予測されています。スマホ、タブレット、ウェブラル端末とモバイルデバイスの利用拡大に伴い、Webサイトの数自体は毎年増え続けているため、今から3~5年程度はフロントエンジニアの需要はあるでしょう。

未経験者が勉強すると転職活動で有利になるスキル4選

冒頭の「未経験でもOK?フロントエンドエンジニアの転職事情」でも触れたように、「未経験OK」の求人の多くは職種未経験者であり、ITの知識がゼロな人ではありません。フロントエンドエンジニアの転職活動では、経験年数よりもスキルが重視されます。実務経験がなくても、スキルの高い人を採用するため、転職前の勉強は必要不可欠です。未経験者が持っていると歓迎されるスキルを一緒に確認しましょう。

HTML、CSS、JavaScript

HTMLやCSS、JavaScriptは、Webサイトやアプリの画面開発で必要不可欠なプログラム言語。全くの未経験者は、Progateやpaizaラーニングなどの動画学習コンテンツで、基本的な構文を覚えることから始めましょう。

動画学習コンテンツは学べるのは、あくまでも基礎知識だけ。それだけでは実務で通用するスキルは身につきません。書籍を買って自分のパソコンに開発環境を構築したり、応用知識を学んだりする必要はあります。

余力がある人は、JavaScriptと一緒にjQueryを勉強しておくこともおすすめします。jQueryとは、JavaScriptのライブラリです。実務で使う機会が多く、初心者でも操作しやすいのでぜひチャレンジしてみてください。

CMS構築

CMSとは、HTMLやCSSなど専門知識なしでWebサイトを構築・管理できるツールです。代表的なCMSがWordPress。WordPressは、お名前.comやロリポップなどレンタルサーバ事業者でドメインを取得し、月額1000円程度でサーバを借りれば、Webサイトが開設できます。

テーマと呼ばれる簡単な操作でサイトデザインを設計できるテンプレートもたくさんあるため、予算の少ない中小企業の公式サイトや小規模なWebサイトをWordPressで作ることも珍しくありません。個人ブロガーがWordPressで自分のサイトを作ることもしばしば。転職前に勉強を兼ねて、WordPressで自分のサイトを作ってみるとよいでしょう。

バックエンド系のプログラム言語

Webサイトの仕組みは、ユーザーが直接操作するフロントエンドと、ユーザーが操作しないバックエンドに分かれています。バックエンドを担当する技術者は、「バックエンドエンジニア」と呼ばれ、Webサイトの土台を支えるサーバ側の処理やデータベース設計、セキュリティ対策などを担います。小規模なプロジェクトでは、フロントエンドエンジニアがバックエンドの業務を兼任することも少なくありません。

HTMLやCSS、JavaScript、jQueryをマスターし、余力がある人はRuby、PHP、Pythonなどバックエンド系のプログラム言語も勉強してみてください。

Photoshopやillustrator

Photoshopやillustratorはデザイン用のソフトなので、フロントエンドエンジニアに必須のスキルではありません。しかし、フロントエンドエンジニアにデザインスキルを求める企業もあります。デザインソフトを操作できるフロントエンドエンジニアは、転職市場で歓迎されるので、時間を見つけて勉強しておくとよいでしょう。

コーダーとしてキャリアをスタートするのも1つの手段

フロントエンドエンジニアになる手っ取り早い方法は、必要なスキルを勉強したうえで、「未経験OK」の求人に応募することです。リクナビNEXTやマイナビ転職など大手転職サイトは、未経験者歓迎の求人はほとんどありません。indeedや求人ボックスなど求人検索エンジンや、マイナビ転職エージェントやワークポートなどIT系の転職エージェントと様々な方法で求人を探してみてください。

しかし、勉強する範囲が広く、専門知識を必要とするものが多いため、「独学で勉強するのが難しい」と思う人もいるでしょう。独学だと挫折しそうな人は、KENやTECHACADEMYなどスクールに通うのも1つの手段です。これらのスクールでは受講後に転職サポートを受けられるので、確実にスキルを身につけ、希望の会社から内定をゲットしたい人におすすめですよ。

高額なスクールの授業料を払うのがもったいなく感じる人は、まずは未経験者を積極的に採用するコーダーを目指してみてください。コーダーとフロントエンドエンジニアを兼務する企業も多く、このような会社では未経験者はコーダーからキャリアをスタートします。社内で経験を積み、将来、フロントエンドエンジニアに成長するとよいでしょう。

結論:未経験歓迎=ITの知識がゼロでOKではない

モバイルデバイスの利用拡大によりWebサイトの数が増えたので、これから数年程度は、フロントエンドエンジニアの需要があるでしょう。こうした背景から、実務経験のない未経験者を積極的に採用する企業も少なくありません。

ただ、フロントエンドエンジニアには、Webサイトの画面設計・構築に関する幅広い知識が必要とされるため、ITの知識がない素人に務まる仕事ではありません。未経験者でもポートフォリオを作成できる程度のプログラミングのスキルは必要不可欠です。

フロントエンドエンジニアになりたい未経験者は、この記事で紹介したスキルを勉強してから転職しましょう。独学で勉強するのが難しい人は、未経験者を採用する企業が多いコーダーからキャリアをスタートしてみてください。


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参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷