「限定正社員」という働き方があることを知っていますか?
限定?と疑問に感じる人もいると思いますが、勤務地や労働時間に限定がある正社員のことを限定正社員と言い、アベノミクスの成長戦略の一つとして盛り込まれた働き方です。
一般的な正社員とは何が違うのか?
どのような人が限定正社員に向いているのか?
限定正社員のメリット・デメリットは?
これらの内容を解説していきながら限定正社員について深く掘り下げていきたいと思います。
限定正社員とは、仕事内容や勤務地、労働時間などが限定された正社員のことを言います。
正社員と非正規社員(アルバイト・パートなど)の中間的な雇用形態であり「ジョブ型正社員」「地域(エリア)限定正社員」「多様な正社員」と呼ばれることもあります。
※厚生労働省「多様な正社員の導入状況」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000036346.pdf
平成24年の資料ですが、厚生労働省の企業アンケート調査によると約5割の企業が限定正社員を導入しており、内訳は「職種限定:約9割」「勤務地限定:約4割」「労働時間限定:約1~2割」となっています。※職種・勤務地など複数を組み合わせている企業もある。
限定正社員はワーク・ライフ・バランスを重視した働き方を希望している人に適しており、子育て・介護など家庭の事情がある人でも仕事と両立させやすい点が特徴です。
・職務限定正社員
特定の職務にのみ就業することを前提としている。
運輸業、郵便業、医療・福祉などで導入される割合が多くなっています。
・勤務地限定正社員
1つの事業所での勤務、または転居の必要がなく通勤可能な範囲の事業所での勤務で就業することを前提としている。
製造業、金融・保険業、医療・福祉などで導入される割合が多くなっています。
・労働時間限定正社員
所定労働時間のみ就業することを前提としている。時短勤務や1日6時間や7時間など、シフト制で遅番のみなど勤務時間、勤務時間帯を限定する。
事情があり長時間労働が困難な場合などで活用されています。
ここに挙げた業種以外でも、小売業や接客業、サービス業などで多く見られます。
UNIQLO(ユニクロ)を展開するファーストリテイリングは、2007年4月1日に「地域限定正社員制度」の運用を開始しました。
ユニクロの店舗に勤務する契約社員・準社員の約5,000名を対象者として、導入後1年間を目処に約半数の2,500名を地域限定正社員に契約変更し、最終的には対象者全てを地域限定正社員とすることを掲げていましたが、実際に地域限定正社員となったのは約1,400名程であったと言います。
地域限定正社員は正社員と異なり転居を伴う転勤がないことで、地域に愛される店作り・長期的に安定した雇用を目的としていましたが、「土日勤務」「週40時間勤務」などの条件に無理が出てきてしまい地域限定正社員への契約変更は思うほど伸びなかった過去があります。
そして、2014年に国内のユニクロ店舗で勤務する全アルバイト・パートの約3万人を対象者として、半数以上の1万6千人を地域限定正社員とする方針を新たに打ち出しました。
今回はワーク・ライフ・バランスを考え、時短勤務や平日のみ勤務など一人一人と面談をした後にできる限り希望に対応していく旨を発表していました。
では実際に限定正社員としての働き方をしている人はどのような思いがあるのでしょうか?
【女性・30代】
結婚後は家庭との両立を考えると正社員として働くのは難しいと考えていましたが、転勤がなく勤務時間が限定されている限定正社員は私にピッタリでした。
限定正社員にはメリットだけではないこともちゃんと理解しているので、私とって理想的な働き方です。
【女性・20代】
私は地域限定正社員として働いていますが、給料が安いので今の会社を辞め次の仕事が決まるまではアルバイトとして繋ごうかと考えています。
【男性・30代】
勤務地限定正社員ですが、正社員と同じ仕事をしていても給料の差は歴然であり、正社員への転換も難しい状況です。
そして、現在は次々と入社してくる正社員の教育を任されています。未来の上司を教育しているような環境で嫉妬してしまいます。
実際に限定正社員として働く人の声を見ていただくと、理想的な働き方と感じる人もいれば「正社員ではないので仕方のないこと‥」と思いながらも不満を感じている人がいることが分かります。
ここで、限定正社員のメリット・デメリットをそれぞれ挙げていきたいと思います。
【メリット】
・転勤がない
・ワーク・ライフ・バランスの取れた働き方が出来る
・正社員同様の福利厚生(無期雇用、各種手当、賞与など)
・非正規社員よりも安定しており、住宅ローン等の借り入れもしやすい
・職種限定にすることで専門性が高まる
※第一生命経済研究所「限定正社員という働き方の導入効果」
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2018/wt1810.pdf
上記の調査は企業側が感じるメリットですが、正社員同様の福利厚生のもと働ける限定正社員は非正規社員よりも安定しワーク・ライフ・バランスの取れた働き方が叶いやすいため、結果として「人材の定着率が高まった」「社員のワーク・ライフ・バランス」が向上したとの回答が多くなっています。
企業側の考え、働く人の考えが一致する場合はメリットの大きい働き方と言えます。
【デメリット】
・正社員より給料が低い
・解雇されやすいことも(契約した職務がなくなる、勤務地の閉鎖に伴う解雇の可能性)
・変化が少なく、昇進スピードに差がある(職務・勤務地が固定され変化がない)
※第一生命経済研究所「限定正社員という働き方の導入効果」
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2018/wt1810.pdf
一方で、限定正社員として働く人が不満を感じる事柄として「不合理な賃金差」「情報がしっかり共有されない」「昇進スピードの差」などが挙げられています。
正社員とは異なる賃金体系が設けられている、転勤や残業がないことで出世コースからは遠ざかると言った懸念もあります。
メリット・デメリットを良く理解した上で、自分が仕事をする上で何を最優先としているのか?自分に合った働き方なのかをしっかりと検討する必要があります。
正社員として働きたい気持ちはあっても、転勤や残業がある可能性を考えると正社員として就業することが難しい人は非正規社員よりも安定している限定正社員を目指してみてはいかがでしょうか?
デメリットとなる部分を容認できることが一つの条件とはなりますが、ワーク・ライフ・バランス最優先と考える人にはピッタリの働き方です。
インターネットで「限定正社員 求人」と検索すると、地域限定正社員の求人はヒットしやすい傾向にありますが個人で探していくのにも限界があります。
また、「○○限定正社員」とワードに惹かれ求人内容を良く確認せずに応募し採用された後に、話と違っている‥ということにならないように事前にしっかりと内容を確認することも大切です。
もちろん求人・転職サイトの検索機能を駆使し自分で限定正社員の求人を探していくことも可能ですが、一番効率良く安心して求人を探していく方法として転職エージェントを活用することをおすすめします。
あなたの希望条件に合った限定正社員求人を紹介してくれることはもちろんのこと、限定正社員に限らず地域密着型の企業や事業所が一つしかない企業の正社員求人の提案をしてくれるなど就職・転職の可能性を広げてくれるメリットがあります。
限定正社員”に限らず幅広い視野であなたの働き方にあった求人紹介をしてくれる転職エージェントは心強いパートナーとなってくれるはずです。
◆転職エージェントのサポート内容◆
・転職相談を含むカウンセリング
・希望条件にマッチした求人紹介
・応募書類作成サポート
・面接日程調整、面接対策
・雇用条件交渉 など
求人紹介だけでなく、内定をもらうまでの様々なサポートも一貫して行ってくれるので効率良くスムーズな就職・転職活動に期待できます。
限定正社員が広がった背景には、多様な雇用形態を設け「優秀な人材の確保・定着」「ワーク・ライフ・バランスの向上」「女性の社会進出」「地域に根付いた事業」などが挙げられます。
今まで正社員として働くことを諦めていた人、職種転換をせずに職種の専門性を高めたい人、この先転勤や残業のある正社員として働いていくことに難しさを感じている人など、限定正社員は様々な働く人・働きたい人の受け皿となってくれる働き方の一つとしてより浸透していくのではないでしょうか?
まずは働く上で一番重視している部分は何なのか?を明確にしておき、その働き方が限定正社員にマッチしているのであれば転職エージェントなどを活用しピッタリな職場を見つけてみましょう。