数ある資格の中で人気が高い行政書士と宅建(宅地建物取引士)
行政書士と宅建のダブルライセンスを取得し、2つの知識を強みに活躍したい!と資格取得を目指している方も多いのではないでしょうか。また、一方を取得しこれからの仕事に活かしたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、行政書士・宅建それぞれの仕事内容や難易度、年収などを比較しながら両方取得するメリットなどもあわせて紹介します。
行政書士、宅建の資格取得で悩んでいる方、ダブルライセンスの取得を目指している方はぜひ参考にしてください。
行政書士と宅建、それぞれどんな資格なのか見ていきましょう。
官公署に対する許認可申請の代行や、遺言や相続に関する手続き、内容証明や会社定款、契約書、会社設立や店舗の営業許可などの文書作成を行う国家資格です。
法律に関する専門性の高い知識をもとに地域市民に寄り添った業務を行います。
社会保険労務士や司法書士を目指すステップアップ資格として目指している方が多いことが特徴です。
不動産の売買や賃貸などの不動産取引に必要な国家資格で正式名称を「宅地建物取引士」といい、不動産といえば“宅建”といわれるほど認知度が高い資格。
宅地建物取引業者の事務所には5人に1人の割合で宅地建物取引士の配置が必要となるため、不動産業界でのニーズが高いことが特徴です。
不動産会社での配置義務や重要事項説明や契約書への記名・捺印などの独占業務を担います。
土地や建物の構造、法令などの実践的なスキルを学び、不動産業界を目指す方や転職を考えている方は取得必須の資格でしょう。
POINT
行政書士と宅建のダブルライセンスを所持していれば、営業許可の代行手続きから物件紹介まで一貫した業務ができる
では、それぞれの資格の違いについて比較してみましょう。
行政書士の資格取得を目指す方法には3つあります。
・行政書士試験の国家試験を受験し合格する
・国家公務員または地方公務員になり、行政事務の17年~20年以上実務経験をもつ
・弁護士・弁理士・公認会計士・税理士資格のいずれかの取得
実際の業務を行うためには、行政書士会への登録が必要です。
一方で宅建の資格取得は、宅地建物取引士資格試験を受験し、合格することです。
実際の業務を行うには、2年の実務経験または登録実務講習の受講が必要です。
行政書士と宅建、それぞれのどんな業務を行うのか、それぞれ具体的な仕事内容の違いを見ていきましょう。
行政書士の仕事内容は主に3つ。
・「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
都道府県庁や市区役所、警察署などに提出する書類の作成や手続きの代理
許可認可(許認可)に関する書類が多く、行政書士が作成できる書類の作成について相談にも応じます。
・「権利業務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
遺産分割協議書、各種契約書、示談書、内容証明などの作成、および相談
・「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
会計帳簿、賃借対照表、損益計算書などの財務諸表などの作成、相談
出典:日本行政書士連合会
https://www.gyosei.or.jp/information/service/#:~:text=%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E5%AE%98%E5%85%AC%E7%BD%B2,%E8%B6%85%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%82%82%E8%A8%80%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
行政機関への書類作成や相談に応じ、事務作業を効率よくすすめるサポート役となります。専門性の高い書類は法律の知識がない場合、なかなかスムーズに作成できません。
行政書士がアドバイスをしたり、作成や手続きの代理をしたりすることで顧客の事務作業の負担軽減やトラブル防止につながるでしょう。
宅建の仕事内容は、一般財団法人 不動産適正取引推進機構に記載されている以下の通りです。
宅地建物取引士の業務
宅建業法第35条に定める重要事項の説明、重要事項説明書への記名押印及び同第37条に定める書面(契約書等)への記名押印は、宅地建物取引士が行う必要があります。
一般財団法人 不動産適正取引推進機構
https://www.retio.or.jp/exam/exam_detail.html
不動産取引の専門家である宅建士が、重要事項を説明することで不利益な契約や紛争を防ぐことができます。
また宅建業(宅地建物取引業者)を営む事務所には、宅建業に従事する従業者5人に1人以上の割合で専任の宅建士を設置しなければいけません。
行政書士、宅建ともに受験資格に制限はありません。
学歴や年齢、国籍に関係なく受験できるため、すべての方にチャンスがあります。
では行政書士と宅建の試験について、それぞれ試験内容、難易度を比較してみましょう。
行政書士の国家試験で出題されるのは以下の2科目です。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題)択一式及び記述式
「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題)択一式
参照:一般財団法人 行政書士試験研究センター 試験科目と内容等
https://gyosei-shiken.or.jp/doc/abstract/abstract.html
合格基準は、300満点中180点の絶対評価で合否が決まり、合格率は10%前後です。
出題科目と合格基準がはっきりしていることが特徴。
合格率が10%というと難易度は高いですが、他の国家資格と比較すると効率の良い学習ができ合格を狙いやすい試験です。
行政書士試験合格に必要な勉強時間の目安は、500時間~800時間とされています。
行政法を中心に幅広く出題されるため、一般知識とともに法律に関する幅広い知識や記述式への深い理解について効率的な学習が必要です。
宅建業法施行規則第7条により、宅地建物取引業に関する実用的な知識を有するかどうかを判定することに基準が置かれた試験内容になっています。
土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。
土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。
土地及び建物についての法令上の制限に関すること。
宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。
宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。
宅地及び建物の価格の評定に関すること。
宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。
参照:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 試験の基準及び内容
https://www.retio.or.jp/exam/exam_detail.html
不動産取引に関する法令を網羅した内容が出題され、50問・四肢択一式による筆記試験になります。
合格基準は、50点満点の7割以上の得点が合格の目安となり、合格率は15~17%を推移しています。
難易度としては行政書士試験のほうが上といえるでしょう。
宅建合格に必要な勉強時間の目安は、200時間~400時間とされています。
宅地建物取引業法を中心に幅広い分野から法律問題が出題され、試験範囲が広いことが特徴です。
合格に向けて効率的な学習スケジュールをたてる必要があります。
POINT
行政書士・宅建ともに社会人受験など働きながら合格を目指す方は、万全の対策で試験に臨みましょう!
気になるそれぞれの年収事情です。
行政書士の年収は300万円~600万円と差が大きいことが特徴です。
独立開業し成功している行政書士の中には年収2000万円以上の高収入を得ている方もいますが、開業しても平均年収に満たない行政書士も少なくありません。
一方宅建の年収は400万円~700万円とされ、地域や企業、実際の仕事内容によって個人差があり、インセンティブがつくケースでは、基本給+営業成績に応じた成果報酬となります。
行政書士と宅建、スキルアップのためどっちを取得しようか悩んでいる方も多いかと思います。
企業で働く行政書士もいますが、多くは独立開業を目指しています。
一方で宅建は不動産会社で勤務される方が多く、転職のためやキャリアアップといった意味合いが強い資格となります。
将来のキャリアプランに合わせてどちらを取得するか選ぶのがおすすめです。
・行政書士がおすすめの人
将来、独立を目指している方
法律の知識で幅広い業務を行いたい方
・宅建がおすすめの人
不動産業界に就職・転職したい方
キャリアアップしたい方
安定して働きたい方
ここまで行政書士と宅建の資格についてみてきましたが、中にはダブルライセンスを目指す方も多くいらっしゃいます。
行政書士と宅建を両方取得するメリットは4つあります。
・効率のいい学習ができる
行政書士と宅建の試験内容に民法があります。
そのため資格取得に向けた学習に重複する部分があり、勉強時間の短縮につながります。
双方に共通している部分も多く学習の進捗がスムーズなので、ダブル受験する方も少なくありません。
・独立の強みとなる
行政書士と宅建のダブルライセンスを取得すれば、不動産売買から必要書類の提出まで一貫した業務が行えます。
共通する知識や業務も多いため独立開業したときの大きな強みとなり、顧客が増える可能性も大きいでしょう。
・ライフスタイルに合わせた働き方ができる
宅建は基本的に企業に勤務しますが、行政書士は独立開業を目指せる資格ですので、どちらの資格をメインに活用して働くか、働き方の選択肢が広がります。
・リスクに備えることができる
行政書士として独立が成功しなかった場合、ダブルライセンスを取得していれば働く場所がないと焦ることがありません。
宅建の資格を活用して働くことができるので、リスク回避のメリットもあります。
いかがでしたでしょうか?
行政書士・宅建の仕事内容や難易度、年収などを比較しながら両方取得するメリットについて説明しました。
それぞれの仕事内容は異なりますが、重複する部分が多く効率的な勉強や働き方の選択肢が豊富になるため両方取得するメリットは大きいといえます。
行政書士として独立開業する場合にも宅建の知識やスキルを活かして“強み”とすることができますし、宅建をメインに働く場合も法律知識は武器になるでしょう。
どっちを取得しようか迷っている方はご自身のキャリアプランと合わせ、ダブルライセンス取得も視野に入れてみてください。