就職活動や転職活動で有利に働くということもあり、取得を目指す方も多い「秘書検定」。秘書検定とは正式名称を「秘書技能検定試験」と呼び、文部科学省後援の民間資格に該当します。主に一般常識やビジネスマナーが学べるとあって、社会人のみならず学生からの人気も高いビジネス系の検定です。
2020年度「日本の資格・検定」AWARD「総合アクセスランキング部門」(https://jpsk.jp/article/award2020.html)においても第1位に輝くなど、知名度・注目度ともにトップレベル。
これから取得を目指すという方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はそんな秘書検定の難易度や合格率から、どの級を受ければいいのかなど、合格に向けての役立つ情報をまとめました。受験を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
秘書検定は、社会人としての常識、マナー、身だしなみや振る舞い方など、“相手に良い印象を与えるため”に必要な知識を習得することを目的としています。また業務面でも、上司への気配りやスケジュール管理など、仕事を円滑に進めるための広義な“秘書”スキルを学ぶことができます。秘書検定には3級、2級、準1級、1級があり、それぞれ求められる基準が実務技能検定協会によって定められています。
各級に求められる基準
以下は、実務技能検定協会のホームページ(https://jitsumu-kentei.jp/HS/guidelines/contents)より引用した各級位において期待される技能の程度(難易度)です。
基本的な職場常識を問われる級です。上司が効率よく仕事を遂行するためには、秘書はどんなことに気を利かせる必要があるか、またどのように対応すれば感じがよいと思ってもらえるかの基本部分を問う級です。主に高校生が多く受験しています。
3級より少し複雑な場面設定になります。上司の身の回りの世話や手助けを適切に行うための優先順位も考えることが必要になってきます。感じのよさだけでなく効率のよい仕事の仕方も問われる級で、就職を意識した大学生の受験が多く、社会人の受験も目立ちます。
上司から相談を受けたり後輩へのアドバイスを求められたりと、物事の判断力や対応力が求められる中堅の秘書像が準1級のレベルです。この級から筆記試験合格の後は二次試験(面接試験)があり、人柄の表現力が問われます。大学生と社会人の受験者がほぼ同数を占めていますが、就職面接対策としてはかなり有効でしょう。
上司が携わっている仕事を理解して、秘書が今何をしなければならないかを判断する。上司が常に動きやすいように、先を読んでサポートするといった上級の秘書の能力を求められるのが1級です。現役秘書の方や社会人の方は日ごろの仕事の仕方を振り返るために受験しているようです。
3級~1級すべての級で筆記試験があり、以下の5つが共通の出題範囲となっています。
筆記試験の出題範囲
合格するには<理論>と<実技>の両方で60%以上正解する必要があり、バランスの良い勉強が求められます。
また準1級および1級は、筆記試験に加えて面接試験があります。試験当日に渡される課題(応対・報告について)をその場で覚え、ロールプレイングで表現します。
面接試験の審査基準
上記事項を“きちんとしているか、丁寧であるか、明るく生き生きしているか”の観点で審査されます。課題が事前に分からないため、かなりの実践力と柔軟力が求められます。
準1級・2級・3級の問題はマークシート方式と記述式で構成されており、1級はすべて記述式です。
そのためどの級を受けるかによって勉強方法が変わります。
秘書検定のレベルについて簡単にまとめると
といった具合に表現できます。
それでは、各級の合格率と難易度を見ていきましょう。
図1)秘書検定 2019年11月実施 第119回試験 各級の受験者数と合格率
(公益財団法人 実務技能検定協会HP参照:https://jitsumu-kentei.jp/HS/totalize/contents)
受験者数 | 一次合格者 | 最終合格者 | 合格率 | |
---|---|---|---|---|
3級 | 11,858名 | – | 6,220名 | 52.5% |
2級 | 25,629名 | – | 12,523名 | 48.9% |
準1級 | 4,515名 | 2,770名 | 1,992名 | 44.1% |
1級 | 1,044名 | 443名 | 264名 | 25.30% |
3級
3級は学生(大学生、高校生、短大生等)の受験者も多く、合格率も5割以上と高いです。社会人経験があって基礎知識があれば比較的合格しやすいレベルと言えます。
2級
2級は全クラスの中で一番受験者数が多く、3級を飛び級して2級から受験するという方も多数いらっしゃいます。社会人だけでなく、就職活動を意識した大学生の受験が目立ちます。
準1級
2級に比べ受験者数はぐっと減りますが、合格率は4割以上と高めです。準1級からは筆記試験のほかに面接試験があり、就職面接対策にも役立ちます。そのため就活生や転職活動中の求職者の受験者が多く見られるのも特徴です。
1級
他の級に比べて圧倒的に下がった合格率から、その難易度が伺えます。合格すれば秘書のエキスパートとして即戦力となるでしょう。
秘書検定は何級から受験すべきか悩んでいるという方は、“何のために受験するのか”をポイントに考えてみると良いでしょう。
前述した受験データを見ると2級の受験者数が最も多いですが、これは仕事上のメリットが2級に最も多くあることの裏付けでもあります。転職の際のアピールとして利用したい場合は、まずは2級取得を目指してみてはいかがでしょうか。
また資格を取得した後、スキルや知識を活用できなければ意味がありません。これらの情報を参考に、ご自身に必要なのは何級かをぜひ検討してみてください。
秘書検定でどの級を受験するか悩んでる方の中には、「どうせなら就職に役立つ2級を受けてみたい!でも3級と2級の差ってどれくらいあるのかな」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
「秘書検定」のホームページ(https://jitsumu-kentei.jp/file/hs.pdf)では、具体的な“秘書技能審査基準”が公開されています。ここでは3級と2級の審査基準をわかりやすく比較しましたので、ぜひご参考ください。
3級上司の簡単なスケジュール管理ができる。
2級上司のスケジュール管理が一般的にできる。
3級簡単な短い報告、説明ができる。
2級短い報告、説明、簡単な説得ができる。
3級人間関係について初歩的な知識がある。
2級人間関係について一般的な知識がある。
上記例を見て分かるように、3級と2級にはそれほど大きな基準差はありません。2級は3級より少しだけ実践的な内容となりますが、いずれも一般的なマナーや常識を問われています。そのため3級を飛ばして初めから2級を受験する方や、2級と3級を同時に勉強して併願するという方が多いようです。
秘書検定は、3級・2級が年3回、準1級・1級が年2回、毎年開催されています。試験概要は、下記の通りです。
秘書検定の受験資格は、特に設けられていません。何級からでも受験が可能なため、いきなり1級から受験することもできます。
3級・・・2,800円
2級 ・・・4,100円
準1級・・・5,300円
1級・・・6,500円
3級・2級・・・毎年6月/11月/2月
準1級・1級(筆記)・・・6月/11月
準1級・1級(面接)・・・5月~8月/10月~1月
3級・・・2時間
2級・・・2時間10分
準1級・・・2時間20分
1級・・・2時間30分
北海道から沖縄まで、全国100ブロック以上の地域でおこなわれています。ただし準1級・1級の二次試験(面接試験)は主要都市でしか実施されないので、受験の際はご注意ください。
2級と3級、2級と準1級で併願することが可能です。
秘書検定は、受験する級によって難易度や出題形式が変わるため、ご自身が受験する級に応じた勉強方法で取り組む必要があります。
勉強の取り組み方
どの級も勉強の取り組み方としては、下記の3パターンが考えられます。メリット・デメリットから、ご自身に合ったスタイルを選択しましょう。
最も費用を安く抑えられるのがメリットですが、勉強のスケジュール管理が苦手な人にはあまり向いていません。
学校で組まれたカリキュラムをこなすので計画的に勉強でき、分からない部分は講師に質問することでスムーズに解決できます。その分、費用(受講料)は高くなります。
計画的に一人で勉強したいという方におすすめです。低予算で講座を受けることができるので、独学と通学のいいとこ取りができる勉強方法です。
級ごとの勉強時間の目安
1ヵ月前に開始し、1日1時間程度勉強すれば十分合格できるレベルです。さらに多少社会人経験があれば、テキストを一からこなすよりも問題演習を解いて試験に慣れるほうが効率が良いでしょう。独学で受験に挑む方も多い級です。
2級に合格するには、およそ1~2ヵ月程度の勉強時間が必要です。3級と同様に試験は筆記のみのため、テキスト・過去問をしっかり解いて対策する必要があります。
これまでの経験や社会人歴の長さにもよりますが、およそ2~6ヵ月程度の勉強時間が必要と言われています。筆記試験の記述問題が難しいため、テキストの読み込み⇒演習・過去問⇒答合せを繰り返しおこなうことが大切です。面接試験は独学では対策が難しいため、独学や通信講座で勉強に取り組んでいる方は、セミナー等を活用すると良いでしょう。
秘書検定は民間資格でありながらも知名度や企業からの評価が高く、持っていれば就職や転職時に有利となる資格です。また秘書を目指す人だけに限らず、すべての社会人にとって役立つ仕事の姿勢やスキルが身につけられます。仕事をしながらでも短期間で合格を目指せるので、本記事を参考に是非挑戦してみてはいかがでしょうか。