保育所には特定のクラスに所属し1年間同じ子供たちの成長を見守るクラス担任の保育士のほかに、フリー保育士と呼ばれる保育士がいます。
フリー保育士はどの保育園にも必ずある役柄ではなく、クラス担任とは違ってあまり目立たない存在かもしれません。しかしフリー保育士がいることで各クラスの保育業務はぐっと楽になるのです。
今回はそんな縁の下の力持ち、フリー保育士について取り上げます。
フリーの保育士とは?
フリー保育士は園全体のサポートが主な仕事
フリーの保育士とは、保育所での担任をもたない保育士のことですどこのクラスにも属さず、手が回らないクラスのサポートや園の行事関連の仕事をするなど園によって様々な仕事をしています。
ほとんどの園で1人~2人ほど配置されていることが多いですが、人員不足などでフリー保育士を配置していない園もあります。
フリー保育士が一人いるだけで忙しい時には手伝ってもらうことができると他の保育士たちからも力強いサポート役として頼りにされる存在です。
フリー保育士を担当する保育士はベテランが多い?業務内容は?
フリー保育士を担当するのは園によって違いますが、比較的経験がある中堅保育士やベテラン保育士が選ばれることが多いです。これはどこのクラスに入ってもすぐに仕事ができるからです。
園によってはまだ経験の浅い保育士が選ばれることもあります。まだ経験が浅いと何をしていいのか分からず不安になることもありますが、その時は補助に入ったクラスの保育士に聞いてみるなどして自分なりに頑張っていきましょう。
クラスの中でどこに手が足りていないのかをじっくり観察して掃除など自分にできることを探していくとだんだんとフリーの仕事にも慣れていきますよ。
フリー保育士の仕事内容
担任補助
フリー保育士の主な仕事は担任補助です。クラスの担任保育士が休憩に行く間クラスに入って子どもたちを保育したり、4月の入園当初で新入園児が多く大変なクラスのフォローをしたり、給食やシャワーなど忙しい時間帯に手伝いをするといった具合です。特に3歳児クラスでは前年度まで複数担任で見ていた子どもたちを1人で担任するという園も多く、そのサポートにフリー保育士が回るということもよくあります。
休暇の代替
クラス担任や補助の保育士が休暇を取った際に代わりにクラスに入るのもフリー保育士の仕事です。幼児クラスでは1人担任の保育士が休みを取ることもあり、その場合はフリー保育士が1人でクラスを担当することもあります。
行事関連
園全体の行事である運動会や発表会などの進行、司会などを任されることもあります。行事の際はクラス担任は自分のクラスの子どものことで手一杯になっていることが多いので、担任を持たないフリー保育士にその役目が回ってくることも良くあることです。
一時保育
園によっては一時保育事業を行っている所もあります。日によって人数が変動する一時保育にも預かる子どもの年齢や人数によってはフリー保育士が入ることがあります。
子育て支援
家庭保育中の保護者が子どもと遊びに来る子育て支援施設をフリー保育士が担当している園もあります。親子向けの遊びや製作などを行う親子教室なども担当する場合があります。
来客、電話対応
クラスの保育士の手が足りていると職員室にいることもあるフリー保育士。必然的に事務所での来客、電話の対応も行うことが多くなります。
教材、備品発注
保育で使う教材や備品発注をフリー保育士が行っている園もあります。クラス担任に必要なものを聞いたり、なくなりそうなものはチェックして買い物に行くこともありますし、業者に電話をして注文することもあります。
フリー保育士のメリット
書類が少ない
保育士が頭を悩ませる原因ともなっている月案や週案、育成記録や連絡帳。とにかく保育士の仕事には書類が多いですよね。書き方を上から注意されてやり直すなど、これを負担に感じる、書類が終わらずサービス残業や持ち帰って仕事をするといった保育士もたくさんいます。
フリー保育士はクラスに入っていないため、月案や週案といったクラスの運営に関わる書類はありません。この書類の山から解放されるというのはフリー保育士の最大のメリットともいえるかもしれませんね。
全てのクラスの保育を見ることができる
クラス担任になるとどうしても自分のクラスのことで精いっぱいになってしまい、他のクラス、保育士の保育を見る余裕がなくなってしまいます。しかし、フリー保育士は各クラスに補助として入る機会も多く、その際に他の保育士の保育のやり方や行事に向けた指導の仕方などを見ることができます。
ちょっとした待ち時間の持たせ方や子どもたちを惹きつける方法、上手な言葉がけの方法など他の先生から学ぶ良い機会になりますね。フリー保育士の経験は自分のキャリアップにもつながりそうです。
園長先生や主任とコミュニケーションがとりやすい
フリー保育士はクラスに入らない時には事務所で仕事をすることも多くなります。そのため、園長先生や主任とも関わる時間も多くなります。
日常的にコミュニケーションをとることでしっかりとした関係を築くこともできますし、仕事の態度や保護者対応など自分のいいところを見てもらい、評価もしてもらいやすい立場だと言えます。もちろん、近くにいる分、悪いところも目立ってしまうので気を抜けないところもあります。
保護者に顔を覚えてもらいやすい
保護者からすると自分の子どもの担任保育士以外はあまり知らないということもよくあります。ですが、フリー保育士は色々なクラスに入り、送り迎えの時の対応もすることがあるためたくさんの保護者に顔を覚えてもらうことができます。
対応をする中で保護者の顔やどんな人なのかを知ることもできます。次年度に担任を持った時に保護者との関係が少しでも築けていると保護者としても保育士としてもちょっと安心な面もありますよね。
全園児と関わることができる
担任保育士は自分のクラスの子どもとは密に関わることができますが、他のクラスの子どもと関わることは少なくなってきます。しかし、フリー保育士は0歳児~5歳児まで各クラスに入ることがあるため全園児と関わることができます。
担任の次に身近な先生として子どもたちからも慕われやすい存在です。たくさんの子どもに名前も顔も覚えてもらうことができますし、次年度の担任になった時にすんなりと受け入れてもらうこともできます。
「ありがとう」と言ってもらえることが多い
フリー保育士は各クラスの手伝いに入ったり、園全体の行事の準備をしたりと様々な面で他の人の助けになっています。そんな中で「ありがとう」と言ってもらえることも多くなります。仕事をしている中で「ありがとう」と言ってもらえるのは仕事のやりがいにもつながりますよね。
担任としてのプレッシャーがない
担任を持っていると行事や気になる子ども、保護者への対応など担任であるが故のプレっシャーが大きくなってきます。このプレッシャーに押しつぶされて保育士を辞めてしまう人もいます。フリー保育士も保護者対応や子どもへの対応はありますが、担任よりはプレッシャーが少なくなります。
担任よりもたくさんの子どもと関わりが持てるフリーの方が楽しく仕事ができるという人もいます。自分がどちらに向いてるのかを知り、フリーの方が向いてると思うのであれば一度園長に相談してみるといいかもしれませんね。
フリー保育士のデメリット
子どもとの関係が担任保育士より薄い
フリー保育士は担任に入っていない分、子どもたちとの関係は担任保育士に比べると薄くなってしまいます。子どもたちはやはり自分のクラス担任の先生が一番好きと言う子が多いものです。子どもと密に関われないことを寂しく思うフリー保育士も多いのではないでしょうか。もっと子供と関わりたいという理由からフリー保育士を嫌だという保育士もいます。
しかし、時々来るフリー保育士は担任とはまた違う遊びをしてくれる、新しい絵本を読んでくれるからと子どもたちからもっとクラスに来てほしいと言われることもあります。時々しか会わない先生でも関わり方ひとつで子ども達は大好きになってくれるのです。
園全体のことを把握しておかなければならない
クラスの補助として入ることが多いフリー保育士は各クラスの子どものこともしっかりと把握しておかなくてはなりません。アレルギーや疾患、家庭問題で気になる子などへの対応は保育士として重要です。
また、担任保育士から他のクラスの子どものことや園の行事関連の流れ、進み具合などを聞かれることもあるのでしっかりと普段から園全体のことにアンテナを張っておく必要があります。
雑用など色々な仕事を押し付けられやすい
担任を持っていないため様々なことを押し付けられやすくなってしまうのはフリー保育士のデメリットです。クラスに入らない分、行事や園全体の仕事、倉庫整理などの雑用はどうしても手が空いているというイメージのフリー保育士にまわってくることが多くなってしまうのです。
園の行事だけでなく地域の行事への参加などを任せられたりもして手一杯になってしまうこともあります。負担に感じて辛くなってしまうこともありますが、そんな時は周りにしっかりと無理な理由を伝え手伝ってもらえるといいですね。
担任保育士から下に見られやすい
担任保育士の方がフリーの保育士よりも上ということは決してないのですが、中にはそういう考えの人もいます。仕事の大変さを理解してもらえない中で軽い扱いを受けることもあるかもしれません。
しかし、フリー保育士は色々な年齢の子どもたちと関わる必要がある重要な仕事です。決して楽な仕事ではありませんし、引け目を感じる必要もありません。経験が浅く、どうしたらいいかわからないという場合でもしっかりと自分の出来る仕事をしていけばいいのです。
フリー保育士がやりがいを感じる瞬間は、コレ!
どんなクラスの子からも声を掛けられる
フリー保育士はさまざまなクラスに出入りするため、園全体の子どもと関わることができます。普通特定のクラスの担任をしていれば、1日中1つのクラスにいることになります。よそのクラスの子と一緒にいるのは早朝や夕方の合同保育の時ぐらい。
1年間同じ園にいても自分のクラス以外の子どもには顔も名前も覚えてもらえていない…ということも。逆に保育士の方でも担任外のクラスの子については名前と顔が一致しないことがあります。しかし、フリー保育士なら、どのクラスの子からも覚えてもらう機会があります。たくさんの子どもから「〇〇先生!」と声をかけられるのはとても嬉しいことです。
「助かりました」「また来てください」と感謝される
フリー保育士が各教室にお手伝いに入るのは、担任のが休みの時など人手不足のタイミング。人での足りない保育現場は子どもは大泣き、掃除は遅れ遅れ、と大惨事になっていることが多いです。
そこに駆け付け、仕事を手伝ってくれるフリー保育士はとても頼もしい存在。ひと段落した後は「助かりました」「また来てください!」と感謝してもらえるでしょう。
いろいろな先生と親しくなれる
いろいろな教室に出入りして、親しくなれるのは子どもだけではありません。連携して保育を行う各クラスの先生との距離感も近くなります。フリー保育士がある程度経験を積んでいる人間なら、クラス担任からクラス運営上のアドバイスを求められることもあります。
自分が経験したことのないクラス運営の仕方を学べる
同じ保育園に勤める保育士でも、0歳児のクラスと4歳児のクラスではクラスの運営の仕方は全く別物。例えば長年低年齢児の担任ばかりを担ってきた保育士は以上児クラスがどうやって一日を過ごしているのかよく分からない場合があります。
その点フリー保育士は様々な年齢のクラスに出入りするので、各クラスにおいてどんなタイムスケジュールで動いているのかを学ぶことができます。タイムスケジュール以外にも0歳児と4歳児のしかり方の違い、発育の違いなど様々な「異年齢」の違いを勉強することができるのがフリー保育士のよさなのです。
フリー保育士としての目標は?成長の為に心がけること
園全体の子どもや保護者の顔を覚える
フリー保育士はいろいろな教室に出入りしますから、園全体の子ども、そしてその保護者の顔と名前を覚える機会にあふれています。フリー保育士になったらまずできるだけたくさんの子どもと保護者の顔を覚えることを目標にしてみましょう。
顔を覚えるのが苦手な人は子どもに何度も「名前」で呼びかけてみるとよいですよ。
クラス運営の問題点や反省点を発見し、改善案を探す
フリー保育士はクラスから離れられない担任保育士と違って、ある意味部外者です。そのため外部からクラスを客観的に観察することができます。クラス内からは見えないクラス運営上の問題点がないかを考察することができるのはフリー保育士ならでは。
ただし、問題点を発見してそれを担任にただただダメ出しするだけでは反発を買うのは目に見えています。こうした方がいいのではないかという改善案も一緒に考えて、クラス担任と話し合いの場を持つようにしてみましょう。
どの年齢の子どもにも対応できる知識をつける
フリー保育士はいろいろな年齢の教室に出入りします。その中で年齢ごとに起こる様々なトラブルや病気、けがなどの知識を学ぶことになるでしょう。例えば1歳児では噛みつきがよく起こりますが、4歳児では悪口による人間関係のトラブルがあります。
それぞれのクラス担任はどのように対処しているでしょうか。またおなじ遊具で遊ぶ場合も、1歳児の子が遊ぶ場合と4歳児が遊ぶ場合では補助の仕方に違いがあります。1歳児ならばバランスを崩さないよう手を添えてあげなければなりませんが、4歳児にあまり手を貸しすぎると遊びの面白さがそがれてしまします。
1年のうちに多様な年齢と関わるフリー保育士は、保育園に通うすべての年齢の子どもたちについて知識を身に着ける機会があります。クラスの担任のかかわり方をしっかり観察し、分からないところは質問したり本で勉強して自身の成長につなげましょう。
フリー保育士求人の探し方
求人情報だけで、フリー保育士になれるかはわからない?
保育士を募集している求人情報はたくさんあります。しかし、ただの「保育士募集」だけではクラス担当になるか、フリー保育士になるかはわかりません。
中には「フリー保育士募集」と明確にしている求人もありますが、圧倒的に数は少なくなります(転職情報サイトindeedにて「保育士 フリー」のキーワードで検索をかけた場合のヒット数は、「保育士」で検索をかけた場合のヒット数の約4%にとどまりました)。
時短・パート勤務ならフリー保育士になる可能性がある
実はフルタイムで働く場合だけでなく、時短勤務やパート勤務の保育士がフリー保育士として配属される場合もあります。保育園では午前中の遊びの時間や給食の時間が忙しく、お昼寝中は余裕がある等忙しい時間をある程度予想できます。また早く帰ってしまう子が多い園では午後からは人手が余ります。
そのため短時間勤務の保育士を人手が足りない時間だけフリーとして各クラスに配属するという形態をとることがあるのです。時短・パート勤務でもフリー保育士になれる可能性があることを覚えておきましょう。
保育転職サイト「ヒトシア保育」を使ってコンサルタントに相談してみよう
自分で求人情報を調べるだけではフリー保育士への転職はなかなか難しいかもしれません。そんな時は保育転職サイトを使ってみてはどうでしょうか。転職サイト「ヒトシア保育」に登録すれば、担当の転職コンサルタントが様々な転職上の要望を聞き取って、あなたにぴったりの保育園を探してくれます。
コンサルタントにフリー保育士として活躍したいというあなたの気持ちをしっかり伝えて就職活動を始めてみましょう。
フリー保育士の求人を探す
直接は言いずらい給料交渉もコンサルタントに対応してもらう
給料面によって、働くモチベーションは大きく変わるもの。求人票だけではわからない実際働いている人の年収や、昇級でどのくらいお給料が上がるのかなど、企業に直接聞きづらいことはコンサルタントに対応してもらいましょう。
フリー保育士として大切なこと
クラスごとの状況を把握しておく
1日の中でもクラスごとに手伝いを必要とする時間帯は違います。例えば乳児であれば、給食から着替え、お昼寝までの時間は毎日本当に忙しい時間帯です。幼児クラスであれば製作などの時には少し手伝ってもらうと全体の進みがまとまり助かります。行事が迫ってくるとその練習の時間帯にも手伝いに入ってもらえると助かります。
また、行動が気になる子がいるクラスでは、担任がその子とじっくり関わることができるようにクラス全体を見ていたり、逆にその子についてみたりとその時に必要なサポートができる存在になりましょう。
園全体のまとまりを意識する
行事等の準備ではクラス担任は自分のクラスのことで精いっぱいになってしまうことも少なくありません。そのため、他のクラスの進行状況などが気になってもなかなか聞くこともできず、気づけば遅れてしまっていたなんてこともあります。そんな時にフリーの保育士が全体を把握しておくと遅れているクラスの手伝いや担任に声をかけるということができます。
園の行事は担任にとってもプレッシャーが大きいものです。そんな時にそっと声をかけてもらえると肩の力も抜けて安心できるものです。園全体のことをしっかりと把握できているかというのも良いフリー保育士のポイントですね。
時には担任保育士の相談役になろう
各クラスに入るフリー保育士は子どもの様子、保護者の様子を担任の次によく知る存在です。クラス担任が子どもや保護者のことで悩んでいる時には相談役として話を聞いてあげることも大切です。少しでも状況を知っている人の方が話しやすいですし、情報を共有できる人がいるのは心強くもあります。
相談された時には自分の経験や知識を活かしてアドバイスができるように日ごろから勉強したり、子どもたちをしっかりと観察しておくことも大切ですね。
「かゆいところに手が届く」フリー保育士になろう!
日々たくさんの子どもたちと関わるフリー保育士。子どもたちも他の保育士もフリー保育士が毎日サポートしてくれることで安心して保育所で過ごすことができている部分もあります。
まだまだフリー保育士は保育園の雑用係だと思っている人もいるかもしれませんが、そんなことは気にする必要はありません。
皆さん、自分の仕事に自信を持ちましょう!フリーとしての経験はきっとこれから先役立ちます。
その経験は質の高い保育にもつながります。
保育士は毎年、小学生の将来なりたい職業ランキングトップ10に入る人気の職業です。
担任もフリーも同じ保育士という存在であり子どもたちの憧れなのです。
これからも子どもが困っている時、他の保育士が困っている時に助けて欲しいという気持ちに寄り添い、こんな時はどうしたらいいのか、どうして欲しいのかに気付くことができる保育士になってくださいね。