
近年、深刻な保育士不足から、保育士の給料の安さが注目されています。子どもを預ける保護者から「あんなに大変なのに、そんなに給料が安いなんて!」と同情されたという話もよく聞かれます。
そうなんです、保育士の給料って本当に安いんですよ。「好きじゃなければやってられない」とよく聞きますよね。
でも、労働条件の悪さや、仕事の大変さに見合わない給料の安さから「好きでも続けられない」というのが本当のところではないでしょうか。それでは、一体どれぐらい安いのか、実際のところを詳しく見ていくことにしましょう。
保育士の平均年収は?全産業の平均年収との比較
厚生労働省が発表した平成27年の平均年収が323.3万円、平均月収が21.9万円、平均年間賞与が60.3万円です。これは高いのでしょうか?低いのでしょうか?
全産業の平均年収は、489.2万円です。これと比べると、保育士の年収は、165.9万円も低いのです。月収でみても、全産業は33.3万円ですから、11.4万円も低いのです。保育士の給料は他の職種と比べて、かなり安いと言えるでしょう。
ちなみに、職種として一番近いと考えられる幼稚園教諭と比べるとどうでしょうか。幼稚園教諭の平均年収は340.9万円、平均月収は22.9万円、平均年間賞与は64.4万円です。
幼稚園教諭も決して年収が高いとは言えませんが、保育士と比べると年収で16.8万円の差がありました。やはり、保育士の年収は低いですね。
保育士の年齢別年収は?新卒の年収の平均額は?
保育士の年収が低いことはわかりましたが、年齢別にみるとどうでしょう。低いながらもしっかりと昇給するのでしょうか。20歳から5年ごとの平均年収が発表されていたので見てみましょう。ここでは女性保育士のものをとりあげます。
25〜29歳 293.9万円
30〜34歳 306.2万円
35〜39歳 326.9万円
40〜44歳 351.8万円
どうでしょうか。20年たっても100万円もアップしていません。勤続しても大きな昇給は期待できないというのが、現実のようです。
また、新卒の初任給は月給約17万円で、年間賞与から年収を計算すると、245万円程度です。月の手取り額は13〜14万円といわれています。
※参考資料 保育士等に関する関係資料 保育士等確保対策検討会 厚生労働省 平成27年12月
保育士の年収が高い県、低い県ってあるの?全国平均は?
保育士の年収は、実は都道府県によって大きく異なります。一般的に都市部では年収が高く、地方になるほど年収も低くなります。家賃などの生活費も、それに比例するので当然ですね。
では、保育士は一体どうでしょうか。厚生労働省による調査結果が発表されていたのでご紹介しましょう。
(※「きまって支給される給与月額×12か月分」に「年間賞与額」を加算して算出したもの)
その結果、全国平均は332.5万円でした。都道府県別に見ると、最高額は和歌山県の382万円、最低額は佐賀県の220万円でした。その差は162万円です。
1位 和歌山県 382万円
2位 愛知県 372万円
3位 東京都 369万円
4位 兵庫県 356万円
5位 京都府 351万円
43位 青森県 264万円
44位 沖縄県 260万円
45位 山形県 259万円
46位 福島県 243万円
47位 佐賀県 220万円
最高額が和歌山県というのに驚きました。和歌山県は、決して大都市というわけではありませんよね。和歌山県の全職種の平均年収は418万円です。保育士の平均年収は、全職種の平均年収の91%になります。和歌山県は、保育士取得に力を入れている、もっと言えば、子育て支援に熱心な県だと言えるでしょう。素晴らしいですね!
それに対して、東京都はどうでしょうか。平均年収こそ3位の369万円と、他の都道府県に比べると高めですが、東京都の全職種の平均年収の613万円の60%にしか達していません。物価の高い東京都で働く保育士にとって、決して十分な額とは言えないでしょう。単純に平均年収だけでは、高いか低いかは計れませんよね。
そういう観点からみると、全職種に対する保育士の平均年収が80%を超えている 和歌山県(91%)、長崎県(87%)、秋田県(86%)、高知県(82%)、愛媛県(80%)は、保育士にとっては比較的働きやすい県であるといえるでしょう。
反対に、全国平均に満たない割合の、佐賀県・福島県(58%)、神奈川県・岐阜県(61%)、山梨県(63%)、茨城県・栃木県・三重県(64%)、富山県・福井県(65%)、群馬県・埼玉県(66%)、静岡県・滋賀県(67%)は早急な対策が望まれます。
ただ、東京都は保育士処遇改善で、国の補助とは別に保育士の月給を2.1万円アップさせる補助制度を開始したので、このデータがとられた当時よりは、大幅に改善したと、評価できるでしょう。
※参考資料 保育士等に関する関係資料 保育士等確保対策検討会 厚生労働省 平成27年12月
公立保育士と私立保育士の年収の違いは?
市町村などの自治体が運営する公立保育所の保育士は、地方公務員になります。公務員と聞くとまず思い浮かぶのが『安定』ですよね。
公立保育所に勤める保育士の年収は私立保育所の保育士と比べるとどう違うのでしょう。厚生労働省の調査によると、役職のない公立保育士の給与(月額給与のほか、賞与の年額の1/12が含まれる)は28.7万円、私立保育士の給与は25.5万円ということです。
主任保育士になると公立保育士は49.6万円、私立保育士は38.3万円と大きく差が出てきます。
公立保育士の給料は毎年昇給するため、勤続年数が長くなる程差が大きくなってしまうのです。やはり、公立保育士の方が給与面でも待遇が良いですね。
※参考資料 幼稚園・保育所等の経営実態調査「職種別職員1人当たり給与月額」 厚生労働省
男性保育士の年収は?女性との差はどれくらい??
増えてはきているのものの、男性保育士の数はまだまだ少ないのが現状です。その原因には、男性が職場に一人しかいないこと、人間関係、保護者の理解を得られにくい(性的虐待を疑われたり、オムツ交換を嫌がられる)などがありますが、一番大きな原因は、給料が安いことからく生活への不安です。
男性保育士の平均年収は358.4万円(平均年齢 30.6歳)です。同世代の他の職種と比べると80万円ほど低くなっています。このことから、結婚に不利だと考える人が多いようです。
実際は、結婚している男性保育士は多く存在し、夫婦共働きで家庭を支えているようです。ただ、妻が出産により産休育休をとる間の生活に不安がある、というのをよく聞きます。一般的に、男性だからという理由で、女性よりも給料を高く設定しているところは、少ないのが現状です。
しかし、男性保育士は、妊娠・出産によるブランクがないため、長く勤めると役職に就くことも多いです。また、女性保育士が担当しないスポーツクラブやバスの運転手などを任される仕事によって、女性よりも給料をあげてもらう例も少なくないようです。それらもあり、女性保育士と比較すると5〜10%ぐらい高いのが相場のようです。
まとめ
- 保育士の平均年収は?全産業の平均年収との比較
- 保育士の年齢別年収は?新卒の年収の平均額は?
- 保育士の年収が高い県、低い県ってあるの?全国平均は?
- 公立保育士と私立保育士の年収の違いは?
- 男性保育士の年収は?女性との差はどれくらい??
平成27年の平均年収が323.3万円、平均月収が21.9万円、平均年間賞与が60.3万円。全産業の平均年収と比べると保育士の年収は、165.9万円も低い。
また、幼稚園教諭と比べても、年収で16.8万円低い。
20〜24歳 257.3万円、25〜29歳 293.9万円、30〜34歳 306.2万円、35〜39歳 326.9万円、40〜44歳 351.8万円
勤続しても大きな昇給は期待できないというのが現実である。
新卒の初任給は月給約17万円で、年収は245万円程度。
全国平均は332.5万円。都道府県別に見ると、最高額は和歌山県の382万円、最低額は佐賀県の220万円。その差は162万円。
一般的に都市部では年収が高く、地方になるほど年収も低くなるが、子育て支援に力を入れている都道府県は、全産業に対する保育士の年収も高く、働きやすいと言える。東京都は平成27年度から、独自に月給を2.1万円アップする補助制度を開始した。
役職のない公立保育士の給与は28.7万円、私立保育士の給与は25.5万円。主任保育士になると、公立保育士は49.6万円、私立保育士は38.3万円。
公立保育士の給料は毎年昇給するため、勤続年数が長くなる程差が大きくなる。
男性保育士の平均年収は358.4万円(平均年齢 30.6歳)。同世代の他の職種と比べると80万円ほど低くなっている。女性保育士と比較すると5〜10%ぐらい高いのが相場である。