社会にITシステムが普及するにつれて、情報漏洩や不正アクセス、サイバー攻撃などのインターネットセキュリティ問題が増えています。企業はこれらの問題に対抗するため、セキュリティ対策を強化する必要に迫られていると言えるでしょう。
セキュリティ対策の中でも特に重要なポイントが、適切な情報管理意識を社員一人ひとりに徹底することです。そこで、役立つ資格が「情報セキュリティマネジメント試験」となります。
社員の方の中には、会社のセキュリティを強化するために頭を悩ませている方もいるでしょう。そこで今回の記事では「情報セキュリティマネジメント試験」について、ITエンジニアではない初心者向けに分かりやすく解説します。
情報セキュリティマネジメント試験は、IPA(情報処理推進機構)が実施する情報処理技術者試験の一種です。
2016年に新設された試験で、比較的新しい資格と言えるでしょう。まず本章では、情報セキュリティマネジメント試験の難易度や試験情報・会場、試験形式について解説します。
情報セキュリティマネジメント試験は、IPAが実施する情報処理技術者試験の中でもITの安全な利活用を推進する方を対象とした資格です。つまり、システムエンジニアやプログラマなど情報処理技術者以外の方の受験も推進されています。
IPAが定めるスキルレベル1から4までの難易度の中では、スキルレベル2に設定されています。ただし他試験との比較を見てみると、同じスキルレベル2である「基本情報技術者試験」よりも難易度は低めと言えます。近年の合格率は50パーセント前後で推移しており、ITエンジニア以外の方でも十分に合格を目指せるでしょう。
情報セキュリティマネジメント試験は1年に2回、春季と秋季に分けて実施されます。ただし新型コロナウイルス流行の影響により、2020年度春季の試験は中止されました。2020年秋季移行はスケジュール通りに実施される予定ですが、受験する際はIPAの公式サイトで最新の情報を確認することをおすすめします。
個人での受験は、IPAの公式サイトにアクセスしてインターネットで申し込みます。ただし、試験実施スケジュールによって決まっている期間にしか申し込めないので注意しましょう。受験料は5,700円(消費税込み)で、クレジットカード決済、ペイジー(Pay-easy)による払込み、コンビニ利用による払込みを選択できます。
試験会場は各都道府県にありますが、受験者の住所を参考に開催者側が試験会場を指定する仕組みとなっています。受験票が届くまで試験会場は分からないので注意して下さい。
情報セキュリティマネジメント試験は午前と午後の2部制です。午前試験は50問の4択問題で試験時間は90分、午後試験は3問の長文問題で試験時間は同じく90分となります。午前・午後試験共に100点満点で合格点は60点、両方の試験で合格点をクリアすると資格が認定されます。
過去の問題と解答に関しては、IPAの公式サイトで公開されています。問題傾向の分析や合格レベルに達しているかの確認に使えるため、ぜひ利用してみましょう。
情報セキュリティマネジメント試験の情報を調べていると、「取得しても意味ない」という意見を見かけることがあります。確かにセキュリティエンジニアとしてのスキルをアピールする資格としては、物足りない印象もあるでしょう。
しかし、情報セキュリティマネジメント試験はそもそもITの安全な利活用を推進する方を対象とした資格です。今の時代は、ほとんど全ての企業がパソコンやITシステムで個人情報を取り扱っており、セキュリティを高める対策は必須事項と言えるでしょう。
では、情報セキュリティマネジメント試験を取得すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。特に重要なメリットを3点に絞り解説し
ます。
情報セキュリティマネジメント試験は経済産業省が認定する国家試験であり、情報セキュリティに関して豊富な経験を持つ方が問題を作成しています。試験勉強を通じて、ITセキュリティに関する知識を効率よく学べるでしょう。
そして、企業がシステムのセキュリティを向上しても、情報を扱う人材のセキュリティ意識が低ければ意味がありません。情報処理技術者だけでなく情報を管理する人材が、情報セキュリティマネジメント試験を取得することで、企業全体のセキュリティ意識を高められるはずです。
セキュリティトラブルが発生しないように対策を施すことも大切ですが、セキュリティトラブルが発生した際の対処も大切です。情報セキュリティマネジメント試験では、セキュリティトラブル時にリーダーとして適切に行動するスキルが要求されます。
具体的には、Webサイトの閉鎖やデータの退避、システムの復旧など、セキュリティトラブルの種類に応じた判断が必要となるでしょう。予め対応手順や行動指針を情報セキュリティポリシーとしてまとめておくことで、セキュリティトラブルの被害を最小限に食い止められるはずです。
現代においてITの活用は、企業の業績を向上するために欠かせない手段と言えるでしょう。しかし、IT活用には情報漏洩やサイバー攻撃といったリスクも伴います。
情報セキュリティマネジメント試験の資格取得者がリーダーとなり、セキュリティ意識の向上やコンプライアンスの順守を周囲に徹底することで上記のリスクを抑えられるでしょう。企業はITセキュリティの安全性を確保することで、積極的にIT活用を推進できます。
情報セキュリティマネジメント試験の勉強時間は人にもよりますが、全くの初心者が合格を目指す場合の目安は100~200時間ほどと言われています。
他試験との比較を見てみると、ITパスポート試験よりもやや難しい難易度と言えるでしょう。本章では、情報セキュリティマネジメント試験の勉強法について、独学の場合と通信講座・スクールで勉強する場合の2通りに分けて解説します。
情報セキュリティマネジメント試験は、年間約3万人が受験する有名な試験です。試験対策に特化した参考書や問題集も多く出版されており、独学でも十分に合格を目指せるでしょう。
独学の場合は、まず情報セキュリティマネジメント試験専門のテキストで学習を始めましょう。特にエンジニア未経験の方は初学者方向けの内容をうたった参考書を購入することをおすすめします。
そうしてセキュリティマネジメントの基礎知識を学んだあとは、過去問題集や予想問題集での勉強へと移行します。合格基準点である6割以上を安定して取れるようになれば、合格は目の前です。
インターネット上で勉強できるオンラインスクールの中には、情報セキュリティマネジメント試験専門のWeb通信講座を開講する学校もあります。
Web通信講座の一番のメリットは、動画を通して講師が勉強を教えてくれる点でしょう。難しい内容であっても初心者に向けて分かりやすく解説してくれるため、効率的に学習を進められます。動画であればスマートフォンで見られるので、通勤時間や通学時間などスキマ時間を活用できる点も便利です。
また、オンラインスクールによっては個別に質問を受け付けているWeb通信講座もあります。分からない点を講師に質問しながら学習を進められるため、苦手な内容を理解する際に役立つでしょう。
これから社会のIT化が進むにつれて、情報セキュリティのマネジメント能力はますます重要度が上がっていくでしょう。技術者だけでなく、情報を取り扱う全ての人が会社のセキュリティポリシーを遵守しなければなりません。
そこで重要視される人材が、情報セキュリティマネジメントを推進できる案内役です。情報セキュリティマネジメント試験の資格取得は、企業に必要な人材であることをアピールできるでしょう。
さらに情報セキュリティマネジメントの学習は、業務におけるIT活用にも役立ちます。ITで業務効率化を図り、自分の能力を高めることで、会社からの評価も上がっていくはずです。