エンジニアへの転職に役立つ「ITパスポート試験」の難易度とは?

新型コロナウイルス流行による消費の落ち込みから、経済が縮小傾向にあります。現在、仕事をしている方の中には転職を考えている方もいるでしょう。

転職先として有望な業界の一つがIT業界です。IT業界は、テレワークに伴うインフラ整備やオンラインショッピングの需要増加から、コロナ禍においても安定した売り上げを維持しています。

ただし、ITエンジニアの経験がない方はどうやってIT業界への転職を目指せばよいのか分からない方も多いでしょう。そこでおすすめの方法がIT資格の取得です。

IT資格の中でも「ITパスポート試験」は、これからIT業界を目指す方に向けて特におすすめしたい資格です。今回の記事では、ITパスポートの概要や取得するメリット、難易度、勉強法を解説していきます。

「ITパスポート試験」の概要

ITパスポート試験は、独立行政法人であるIPA(情報処理推進機構)が実施する試験です。経済産業省が認定する国家試験であり、2019年度の総応募者数は117,923人と非常に高い人気を誇っています。本章では、ITパスポート試験の試験内容や出題範囲、受験の流れについて解説します。

「ITパスポート試験」の試験内容

ITパスポート試験は、コンピュータ上で回答するCBT(Computer Based Testing)形式で行われます。出題は四肢択一式の問題が100問で、試験時間は120分です。合格基準は総合評価点が1000点満点中600点以上、かつそれぞれの分野別評価点が1000点満点中300点以上を満たす必要があります。

「ITパスポート試験」の出題範囲

ITパスポート試験の出題範囲は、ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の3分野に分類されます。それぞれの分野の説明は以下の通りです。

・ストラテジ系:経営戦略やシステム企画、法務に関する知識
・マネジメント系:プロジェクトやサービスのマネジメント、システム開発技術に関する知識
・テクノロジ系:プログラミング、データベース、ネットワーク、セキュリティなどに関する知識

「ITパスポート試験」の受験の流れ

ITパスポート試験の受験は、以下の流れで行われます。
1.IPAのWebサイトにアクセスして、利用者IDを登録する
2.利用者メニューにログインし、利用者情報やパスワードを登録する
3.全国の会場から試験会場を選択し、希望する試験日と試験時間を申し込む
4.受験手数料5,700円(税込)を、クレジットカード、コンビニ、バウチャーいずれかの方法で支払う
5.試験当日、確認票と本人確認書類を提示し受験する
6.試験終了後2~3時間以降に、結果レポートをダウンロードする
7.受験月の翌々月中旬に、合格証書を受領する

「ITパスポート試験」を取得するメリット

ITパスポート試験は、これからITエンジニアを目指す方におすすめしたい資格です。では、ITパスポート試験を取得すると、実際にどのような利点があるのでしょうか。本章では具体的なメリットを3つ挙げて解説していきます。

ITエンジニアの礎となる基礎的な知識を身に付けられる

ITパスポート試験は、ITと経営全般に関する総合的な知識を問う資格です。プログラミング、データベース、ネットワーク、セキュリティなど、ITエンジニアに必要な基礎力を身に付けられるでしょう。

また、AIやIoT、ビッグデータなど最近注目されている最新技術の分野からも、問題が出題されます。近年、急速に進化するIT社会への対応力という意味でも力を発揮できるでしょう。

就職や転職において自分の知識をアピールできる

出題範囲には、ITの基礎的な知識だけでなく、法務や経営戦略、マネジメントの分野も含まれます。単純なIT力だけでなく、ビジネスマンとしての総合的なスキルをアピールできるでしょう。

ITパスポート試験は国家試験であり、取得することでスキルが一定水準以上に達していることを国が証明することになります。就職や転職においても、信頼度を高めるために役立つ資格と言えるでしょう。

将来的にIT系の上位資格を取得するための足掛かりとなる

IPAが実施する国家試験には、「ITパスポート試験」の他にも「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」など多くの種類が存在します。ITパスポート試験は、これらの中でもITの共通的知識を問う資格であり、他のIT系上位資格を取るための足掛かりとなるでしょう。

初心者が最初から上位資格を目指そうと思っても、難易度が高すぎてモチベーションが続かない可能性があります。まずは、入門的なITパスポート試験の合格を目指すことで、上手く学習を続けていけるはずです。

「ITパスポート試験」の難易度

ITパスポート試験は、IPAが定める試験制度でスキルレベル1に設定されています。これは、スキルレベル1~4の内で最も易しい難易度です。
では、他資格との難易度比較において具体的にどのくらい簡単な試験なのでしょうか。本章では、ITパスポート試験の合格率や偏差値、勉強時間について解説します。

「ITパスポート試験」の合格率

2020年4月から8月までのデータによると、受験者数34,216人に対して合格者は22,307人であり、合格率は65.2%となっています。
また、社会人と学生の合格率を比較してみると、社会人が71.1%に対して学生が51.7%となっており、社会人の合格率が高い試験と言えます。

さらに、社会人の中でもIT系と非IT系に分けて合格率を見ると、IT系が65.1%に対して、非IT系が74.6%となっています。この結果から、特にITエンジニアに有利な試験ではなく、社会人が知っておくべき情報技術の知識を広く問う試験であることがうかがえます。

「ITパスポート試験」の偏差値

ITパスポート試験の偏差値は45程度と言われており、IPAが実施するIT系資格の中では、最も低い偏差値となっています。IPAが実施する代表的な資格の偏差値は以下の通りです。

・ITパスポート試験:偏差値45
・基本情報技術者試験:偏差値49
・応用情報技術者試験:偏差値65
・情報処理安全確保支援士試験:偏差値67

「ITパスポート試験」の勉強時間

ITパスポート試験の勉強時間は、初心者が一から勉強する場合、100時間程度が目安と言われています。ただし、この勉強時間は当人のIT習熟度によって大きく変化するでしょう。

例えば、パソコンを全く触ったことがないような方であれば、100時間の勉強時間では足りないでしょう。逆に、ITエンジニア未経験者であっても普段からパソコンに触れている方や地頭がいい方であれば、勉強時間は100時間より少なくなるはずです。

「ITパスポート試験」の勉強法

ITパスポート試験は、全ての社会人を対象とした資格であり、ITエンジニア未経験の初心者でも合格を目指せます。ただし、学習を進める際にはそれぞれの人に合った勉強法を選ぶことが大切です。本章では、独学、通信講座、パソコンスクールの3種類に分けて勉強法を解説します。

独学の場合

独学による勉強法は、IT知識の下地があり、時間に余裕がある方におすすめしたい方法です。合格にかかるまでの費用が少なく、お金を節約できるメリットがあるでしょう。

ITエンジニア未経験の方は、まずITパスポート試験の参考書を購入して、繰り返し読んでいくことをおすすめします。1回の読み込みで全て覚えようとは思わずに、少しずつ理解を深めていきましょう。他の分野を覚えることで理解できる内容もあるからです。

その後、過去問を解き、分からない分野があればまた参考書に戻って勉強します。過去問は、インターネット上で無料公開されている「ITパスポート試験ドットコム」の過去問道場がおすすめです。

通信講座利用の場合

通信講座による勉強法は、合格をより確実にしたい方におすすめしたい方法です。図や表、イラストを多く取り入れたオリジナルテキストを使用するため、初心者にも分かりやすいメリットがあるでしょう。

また、多くの通信講座ではスマートフォンやタブレットを利用する学習システムが採用されているため、通勤時間やスキマ時間でも勉強しやすいでしょう。現在仕事をしている方で、勉強時間が多く取れない場合でも、効率よく学習を進められるはずです。

パソコンスクールに通う場合

ITパスポート試験は有名な資格であり、多くのパソコンスクールが試験対策講座を実施しています。パソコンスクールに通う一番のメリットは、勉強のモチベーションを維持しやすいことです。

一緒に学ぶ仲間がいるため、競争や助け合いの意識が芽生えやすく、集中力が少ない方でも学習を継続できるメリットがあるでしょう。

さらに、講師が対面で授業するため、分からない点があればすぐに質問できます。特にITの知識に疎い方にとっては、最適の勉強法と言えるでしょう。

「ITパスポート試験」取得をきっかけにエンジニアへの道を切り開こう

ITエンジニア未経験の初心者が、一から「ITパスポート試験」資格の取得を目指す方法について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。ITパスポート試験の難易度は高くなく、非IT系の職業に就く方でも合格できることがご理解いただけたかと思います。

ただし、ITパスポート試験は全ての社会人を対象とした資格であり、IT業界での評価はそれほど高いとは言えません。ITパスポート試験の合格をきっかけとして、さらに上位の資格取得を目指していきましょう。

また、ITエンジニアは継続的な勉強が必要となる職業でもあります。資格の取得だけで満足することなく、プログラミングやシステム設計など、様々なスキルを身に付ける努力を怠らないことが肝心です。

参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷