国家資格である調理師。しかし調理師の就職問題として、パワハラやイジメが多い、勤務時間が長い、福利厚生がないなど様々な理由で離職率が高いことで有名な業界でもあります。
せっかく憧れて国家資格まで取ったのですから、職場選びは間違えたくないと考えるのは当然です。
調理師に人気の就職先ってどこ?と気になっている方に、職場別おすすめポイントを紹介します。
調理師の就職先として思い浮かべるものといえば、やはりレストランや有名ホテルや旅館、料亭などではないでしょうか。しかし、意外と世間での調理師の需要は高く、多様な就職先があります。どんな職場があるのか見てみましょう。
調理師の就職先として1番に思い浮かべる職場といえば、飲食店やレストランではないかと思います。職場の規模としては、10人以下の個人飲食店から数十人や数百人規模で働く一流レストランまで様々です。
規模が小さければアットホームな空気の中で仕事ができる場合が多いですし、規模が大きければ多くの同僚と切磋琢磨し合いながら料理人としての腕を磨くことができるでしょう。
ただし、10人以下の事業所等では事業者に社会保険を適用する義務がないため、福利厚生が満足にない職場も多いです。福利厚生にこだわりたい方は注意が必要です。
ホテルや旅館の厨房も、調理師の就職先として人気が高い就職先と言えるでしょう。飲食店やレストランより更に格上の料理を手掛けることも多いでしょうし、シェフや板前などの管理職を置いているところも多いので、昇進や昇給で年収アップを狙える職場です。
ただし、調理師の人数が多い傾向もあり、最初は見習い期間で皿洗いや野菜の皮むきなど雑用ばかりで調理ができないという職場も多いです。更に見習い期間は多くの場合給与設定が低い場合があります。
ファストフードやファミレスなどのチェーン店では、親会社による管理システムが整っていることが多いため、シフト制でしっかり勤務時間が区切られており、月給制で毎月安定した給与が入り、福利厚生も盛り込まれていることが多いです。
働き次第ではマネージャーや店長に昇進することも可能です。
学食や給食センターなどで働く仕事です。自治体が運営するセンターに就職できれば公務員となるので、給与や福利厚生は公務員規定に準じることになります。
民間の施設の場合でも、学食や給食の準備から後片付けまで、営業時間が決まっていることが多いため、残業はほとんどありません。
児童福祉施設や障害者支援施設、介護老人施設などの福祉施設で、朝昼晩三食の食事を準備します。入居施設ではなく一時預かりなどの施設によっては、お昼だけの場合などもあります。
入居施設では三食分の準備が必要になりますが、基本的にはシフト制になるため、あまり残業は発生せずに働けるでしょう。
病床ありの病院であれば、もちろん入院患者さんの三食分の食事が必要です。勤務環境としては福祉施設と似ているかもしれませんが、病院では様々な患者さんがいるため、患者さんの症状に合わせて流動食、軟食、常食といった食事の硬さのほか、糖尿食など病院食の管理が必須です。
間違えば病気の悪化や、命にまで関わることもある責任ある仕事です。
社員食堂で働く場合もありますし、食品メーカーで企画や製造、営業などの様々な職種で働く働き方もあります。
企業規模によって月給やボーナス、福利厚生に様々な差はありますが、企業規模が大きくなればなるほど待遇は良くなる傾向にあります。
他の職場よりも昇給や昇進の幅が広がり、チャンスも掴みやすいと思います。
自分でお店を出したり、独自のサービス提供ができる会社を興すという方も多くいるのが、調理師の特徴でもあるでしょう。独立資金に経営知識はもちろん必須になるため、最初から挑めるものではありませんが、働きながら修行を積む。最初はキッチンカーから始めて、だんだん規模を広げていくなど、工夫次第で自分の働き方を作り上げることが可能です。
一般的に調理師はどんな職業を選んでいるかも気になりますよね。調理師がどんな仕事に就いているのか、全体の割合を見てみましょう。
こちらは政府が平成30年に統計を取った調理師の就業割合から抜粋し、グラフにしたものです。
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450027&tstat=000001031469&cycle=7&tclass1=000001132823&tclass2=000001132824&tclass3=000001132825&tclass4val=0)
まずいちばん多いのはやはり飲食店です。続いて社会福祉施設、学校、病院が特に多い所になりますが、意外なのは飲食店、福祉施設、学校で働く人の割合にそれほど差がないという点です。
料理をするからといって、みんなが飲食店で働くわけではなく、調理師には広く様々な選択肢があるのだと改めて認識できる結果ではないかと思います。
『人気の職場』と聞けば、それじゃあさぞいい職場なんだろう、自分も働きたい!と考える方は多いかもしれませんが、実際のところ『人気=いい職場』とは限らないことは知っておくべきです。
そもそも人にはそれぞれ『適正』というものがあります。
元々人と接することが苦手で、賑やかなところでは気疲れしてしまうという人が、従業員数数十人を抱える一流レストランで、追い立てられるようにして仕事をせっつかれてしまえば混乱してしまうでしょう。
一度にいくつもの注文をマルチタスクで熟して、忙しくしている方がやりがいがあるという方が、裏方で伝票処理だけすることになってしまったらマンネリに嫌気が差してしまいませんか?
このように、人それぞれで仕事内容にも職場環境にも適正というものがありますし、また生活パターンによっても働きやすい・働きにくいという違いがあります。
人と同じことをしても意味がないどころか、デメリットにもなりうるのが職場選びです。「いい職場=あなたにあった職場」であることを前提に選ぶことを心がけてください。
では「自分に合った職場」ってどんなところなんでしょうか?もちろん上で書いたように、自分の性格や能力、生活パターン、通勤時間などの要素で選ぶのも大事です。最初から自分に合わないところに、無理やり合わせてまで就職することはありません。楽しく仕事ができるのが1番です。
しかし、この他にも目を向けてみてほしいのは、『将来自分がどんな調理師になっていたいか』。
夢がある方は特に、できるだけ早いうちに夢に向かうためにどんなキャリアを積めばいいのか、キャリアパスをしっかり立てておくことをおすすめします。
まだまだ先は長いし、ゆくゆくでいいやと思っていると絶対に出遅れます。下手をすればキャリア構築のタイミングを逃して、結局夢を叶えられる見込みが無くなってしまうなんてことにもなりかねません。
できるだけ早く、自分がどうなりたいかのビジョンをはっきりさせ、それに向けて動き出す。そのために必要な職場を選ぶというというのも、職場選びのポイントです。
マイペースに働きたい。とにかく年収重視。安定した収入があればいい。料理人として成功したいなど…。ひとまずこんな職場で働きたいという希望は決まったものの、それが叶えられる職場はどこだろう?と悩んでしまった方に、それぞれの希望に沿った就職先を紹介します。
働くならとにかく収入。できるだけ年収が高い職場で働きたいという方が気をつけたいのは、事業規模です。
こちらの表は厚生労働省による『令和3年賃金構造基本統計調査』から事業規模別の収入を抜粋したものになります。
従業員数 | 平均月収 | 賞与関係 | 年収 |
---|---|---|---|
10~99人 | 250.500円 | 235,800円 | 3,241,800円 |
100~999人 | 244,300円 | 321,300円 | 3,252,900円 |
1000人以上 | 262,600円 | 357,900円 | 3,509,100円 |
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)
※年収=平均月収✕12か月+賞与関係で計算したもの
事業規模(従業員数)が上がるほど年収が上がっていることが分かります。平均月収欄では10~99人よりも、100~999人の方が下がっているのが気にはなりますが、賞与関係では100~999人方が85,000円ほども高くなっているのです。
これは、小規模の個人店ではボーナス自体が出ないところが多いためではないかと思われます。平均月収で数字だけ見れば少なく見えても、あくまで平均なので100〜999人規模の事業所では収入に大きな幅があると思われ、全体的に給与が低いとは限りません。
年収を重視するなら、昇給率が高く福利厚生がしっかりしている、事業規模が大きい職場を選ぶのがカギになります。例えば有名レストランや有名ホテル、老舗旅館、老舗料亭、上場企業などがおすすめです。
そこまで高い年収は求めないけど、安定した仕事と年収を得たいという方は、自治体が運営する福祉施設や給食センターなどがおすすめです。自治体が運営するということは、そこで働くとなれば公務員ということになります。
公務員は公務員規定により、収入、昇給、福利厚生などの待遇がしっかり規定されています。勤続年数に比例してしっかり収入が上がっていきますし、雇用も安定しています。ただし公務員は誰でもなれるわけではなく、公務員試験に合格しなければいけません。
また調理師の公務員求人もさほど多くはないので、競争率は高くなります。
その他で安定した職場となると、介護・福祉施設や総合病院になるでしょうか。今後も決して無くなることはなく、特に介護・福祉業界はこれから更に発展していく業界だと言われています。
料理をすることが好き。将来的に料理人として大成したいと考えるのであれば、やはり有名レストランや有名ホテル、老舗旅館や老舗料亭で修行を積み、シェフや板前、職人をめざすのが近道ではないでしょうか。
ただし、それらの職場では大抵最初は見習いから始める事になります。雑用ばかりで料理ができない、収入も生活ギリギリという低水準という場合も多く、かなりの忍耐が必要になるでしょう。
医食同源という言葉があるように、食は健康に大いに関わる大事な要素です。その食を通じて、病気の方や障害を持つ方を助けたい。子どもたちの健康を維持する食事を調理師として補助したい。そういう方には、介護・福祉施設や学校、保育園、病院がおすすめです。
また、栄養補助食品や健康食を開発するような食品メーカーで、企画や開発などに携わるという選択肢もあります。
家事や育児もしっかりと熟したいけど、せっかく取った調理師という資格も活かしたいというワークライフバランス重視の方は、学食や給食センター、保育園や社食などの、営業時間がしっかりと決まった職場が働きやすいと思います。
フルタイムで働く職場は少なく、残業もあまりないので収入的には他の職場に比べて低い傾向にあるため、既婚者で共働きの方におすすめの職場です。
その他ではファストフードやファミレスもシフト制で働けて、残業はあまりなく、しかしマネージャーや店長への昇進があったりするので、収入の低さが気になる方にはこちらもおすすめです。
人に使われたくない。自分のペースで働きたい。自分が考えたメニューや商品を売り出したい。そういう方には独立開業がおすすめなのですが、調理師よりも『食品衛生責任者』と『防火責任者』の資格が必要な点には注意です。
また、多額の開業資金が必要であり、経営知識などがなければ成功を収めることは難しいので、しっかりとした下調べ、準備期間を働きながら設ける必要があると思います。
調理師の就職先として、選択肢の幅が広いのはこれまで説明してきました。就職したい職場に的を絞ったところで、いざ就職活動となるわけですが、就職活動にも様々な方法が溢れている昨今。調理師に向いている就職活動とはどんな方法でしょうか。それぞれのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
各自治体が運営を行っている、職業紹介事業です。公的機関が運営しており、すべての人が無料で利用できます。現在では利用登録もオンライン上でできるので、直接ハローワークに足を運ばなくても求人紹介を受けることができます。
直接窓口に足を運べば、キャリア相談ができるほか、応募書類の添削や面接練習も行ってくれるサービスがあるので、積極的に使ってみるといいでしょう。
各自治体が運営しているため、求人は該当地域のものとなります。また求人の傾向として、地元密着型の中小企業求人が多くなっているため、地元で働きたいという方には向いていますが、他市や他県などの地域外、大企業の求人を探すには向いていません。
また、求人を出す企業も無料で利用できるために、空求人やブラック企業の求人が混じっている恐れがあるので、見極めが大事になります。
マイナビやリクナビNEXTなどの求人サイトは、手軽でいつでもどこでも求人を検索して応募できるので人気です。
とはいえ、求人サイトではサポートしてくれる人がいない点が、利用に向き不向きが出る要因となります。
求人の応募、日程調整、条件交渉、応募書類の準備に面接対策などすべて自分で行わなければならず、就職活動に自信がない方だと多くのライバルたちとの競争になかなか勝てず、就活が長引く可能性が高くなります。
自分のスキルや自己アピールに自信があり、就活にも余裕を持って臨めるというタイプの方ならマイペースに就活ができて使い勝手のいいツールですが、そうでない方には実はあまりおすすめできない方法です。
また、求人サイトは求人を出す企業が利用料を払うことになりますが、そこまで多額でもないために、空求人やブラック企業の求人が混じっていることがあります。ハローワーク同様、自分で見極める目が必要です。
担当者がついて、キャリア相談、求人紹介、応募書類の添削、面接対策、条件交渉、アフターフォローまですべてのサービスを基本的に無料で利用することができます。また多くの転職エージェントでは、担当者が直接企業に足を運んで内情を確認しており、企業側が多額の紹介料を払うシステムになっているために、人材を大事にする優良企業の求人が多いと言われています。
飲食店やレストラン、ホテルや旅館、チェーン店、企業などの調理師求人は、総合型就職エージェントにも多くあると思います。
学校、保育園、病院、福祉施設などの求人は、調理師特化型就職エージェントで専門的に扱っているところが多いので、自分が目指す職場ごとに使い分けるといいでしょう。
人気の就職先やおすすめの就職先を知りたいという気持ちも分かるのですが、さすがに就職先は「人に言われたから」で選ぶべきではありません。今後の人生にも関わる可能性がある就職先ですから、しっかりと自分に合った職場を探してほしいのです。
就職活動でいつもおすすめししているのは『自分自身の棚卸し』です。これまでどんな経験をして、どんな事に自信があるのか、逆に自信がないのか。自分の性格や好んでやりたいこと、逆にやりたくないこと。とにかくできるだけ細かい自分自身の事を色々自己分析して書き出し見てください。
それらの中に『あなたの適正』が隠れています。もしやり方が分からなければ、就職エージェントでキャリア相談をすれば、第三者の目線であなたの適正を見出してくれます。あなたに合った就職先をぜひ見つけましょう!