不動産関係の国家資格には、宅地建物取引士(宅建)やマンション管理士などがあります。管理業務主任者もその中の1つです。
管理業務主任者はマンション管理会社で働く場合に重宝される資格で、不動産関係の仕事に就きたいと考えている人は取得しておいて損はありません。
そんな管理業務主任者、他の不動産関係の資格と比べて難易度はどれぐらいなのでしょうか。
この記事では管理業務主任者の仕事内容や資格取得のメリット、難易度などを他の不動産系資格と比較しながらご紹介します。
管理業務主任者の資格に興味がある人はもちろん、宅建やマンション管理士の資格を狙っている人もぜひ参考にしてください。
マンションの管理はマンション住民代表で構成されたマンション管理組合が行うものです。
しかしマンションの管理業務は設備の保守点検から大規模修繕の計画まで、と範囲が広い上大変複雑です。管理事務の専門知識がないマンションの住民には荷が重い役割なのです。
そこで多くのマンション管理組合ではマンション管理会社と契約を結び、管理事務を委託しています。
管理業務主任者はマンション管理会社に所属し、マンション管理組合に責任を持って受託契約の説明をする仕事です。また管理会社の管理業務が適切に行われているかチェックを行い、管理組合に管理状況の報告をします。
管理業務主任者はマンション管理会社とマンション管理組合をつなぐマンション管理の専門家なのです。
管理業務委託がいい加減に行われることがないように、マンション管理会社には「管理事務を委託された管理組合30につき1人以上」の管理業務主任者を設置する義務があります。
例えば68の管理組合から委託を受けているマンション管理会社では、(63/30=2.66..となるので)最低3人の管理業務主任者(小数点以下は繰り上げ)が必要になります。
また管理業務主任者は国家資格であり、有資格者しかできない以下のような独占業務もあります。
これらの独占業務を管理業務主任者という専門家が行うことで、マンション管理組合は安心して管理事務を受託することができるようになるのです。
管理業務主任者は有資格者のみが携われる独占業務を持っています。加えてマンション管理会社には一定数の管理業務主任者を設置する義務があります。
これらの理由から、マンション管理会社にとって管理業務主任者は必ず必要になる貴重な存在です。マンション管理会社に勤めているなら資格の取得は大きなキャリアアップに繋がるでしょう。
さらに管理業務主任者の資格を持っている従業員に資格手当を支給している会社なら、年収アップも狙えます。
不動産関係の仕事に就きたいなら、独占業務ができる管理業務主任者は大きなアピールポイントになります。
なお同じマンション管理業務関係の国家資格にマンション管理士がありますが、こちらは独占業務がありません。また、マンション管理会社とマンション管理組合の間で中立的な立場をとるマンション管理士は、独立開業のイメージが強くなります。
就職や転職でのアピールに資格をとりたいと考えているなら、管理業務主任者の資格の方が役立つといえるでしょう。
管理業務主任者の資格はマンション管理士の試験と出題範囲が重複している部分が多いです。加えて管理業務主任者の資格を取得してからマンション管理士の試験に挑戦すると、5問が免除されるという制度があります(逆にマンション管理士を取得すると管理業務主任者の試験で5問が免除されます)。
マンション管理会社に所属して管理業務を行う管理業務主任者と、マンション管理組合からの相談に応じるマンション管理士はともにマンション管理における重要資格です。
さらに、管理業務主任者の試験は宅地建物取引士(宅建)試験とも試験範囲の重複がみられます。
後述しますが、マンション管理士や宅地建物取引士の資格の合格率は低めです。それに対し、同じ不動産関係の国家資格でも管理業務主任者の合格率は比較的高くなっています。不動産関係の資格をダブル、トリプルで狙うための最初の一歩として、管理業務主任者の資格を目指すのは理にかなっているでしょう。
マンション管理の専門家である管理業務主任者の資格は、独立開業につなげることもできます。自分でマンション管理会社を立ち上げて、マンション管理組合から仕事を受託するという道です。
※ただし、資格を取得したからといってすぐに開業することはできません。管理のノウハウや営業力を身に着けるため、まずはマンション管理会社で独立開業にふみきれるまでの経験と自信を身に着けましょう。
国家試験である管理業務主任者試験の難易度はそれなりに高いですが、他の不動産系資格と比べればやや易しいといえます。
管理業務主任者資格5年分の合格率を見てみると次のようになります。
実施時期 | 合格率 |
---|---|
令和元年 | 23.2% |
平成30年 | 21.7% |
平成29年 | 21.7% |
平成28年 | 22.5% |
平成27年 | 23.8% |
引用元:studying https://studying.jp/mankan/about-more/k-pass-rate.html
試験開始時の平成13年試験では合格率は58.5%だったものの、近年はだいたい20%をやや上回るレベルの合格率を推移しています。開始当初より難易度は上がっていますが、合格率が20%を下回ったのは平成16年の19.2%だけで、基本的に5人に1人が合格する試験であるといえます。
これは国家資格としては難易度が易しい方です。
試験の難しさを表す偏差値で例えると、55~58程度の難易度です。ちなみに偏差値は50が平均点と一致しますので、管理業務主任者の試験は平均よりやや難しいレベルといえるでしょう。
宅地建物取引士の資格は、管理業務主任者と同じく独占業務を持つ国家資格です。業者に設置義務がある点でも管理業務主任者と似ています。
宅地建物取引士が活躍するのは不動産仲介業(不動産の売買や賃貸契約を行う)であるのに対し、管理業務主任者はマンション管理会社でマンション管理事務に携わります。
宅建業者の中にはマンション管理業務を請け負っているところもあるので、どちらの資格も不動産関係の仕事では重宝される傾向にあります。
宅地建物取引士の5年分の合格率を見てみると次のようになります。
実施時期 | 合格率 |
---|---|
令和元年 | 17.0% |
平成30年 | 15.6% |
平成29年 | 15.6% |
平成28年 | 15.4% |
平成27年 | 15.4% |
引用元:フォーサイト https://www.foresight.jp/takken/column/pass-rate/
宅地建物取引士の資格は、おおむね10%後半の合格率を推移しています。この傾向は過去10年で変わっていません。20%越えの合格率が標準の管理業務主任者に比べれば難易度は高いといえます。偏差値で言えば55~60程度の難易度です。
マンション管理士は、マンション管理組合からマンション管理に関する相談を引き受ける仕事です。
マンション管理組合とマンション管理会社の間に立って仕事をし、管理会社の仕事が適切かどうかを監視したり、管理会社の変更などを行います。クライアントはマンション管理組合であり、不動産関係の資格の中でも独立開業を目指す人に人気です。退職後のセカンドキャリア目的に取得を考える人もいます。
なおマンション管理士は管理業務主任者や宅地建物取引士と同じ国家資格ですが、独占業務はありません。
マンション管理士の5年分の合格率を見てみると次のようになります。
実施時期 | 合格率 |
---|---|
令和元年 | 8.2%% |
平成30年 | 7.9% |
平成29年 | 9.0% |
平成28年 | 8.0% |
平成27年 | 8.2% |
引用元:フォーサイト https://www.foresight.jp/mankan/column/difficulty_m/
マンション管理士の合格率は10%を切っており、管理業務主任者や宅地建物取引士に比べて難易度が高くなっています。
マンション管理士を目指すなら、まず管理業務主任者の資格を取得してから5問免除制度を使うという方法を考えてはどうでしょうか。偏差値で言えば61~62程度の難易度です。
不動産関係の資格の中では難易度がやや低めの管理業務主任者ですが、試験に合格するためには計画的な勉強が欠かせません。管理業務主任者試験対策についてみていきましょう。
管理業務主任者の試験に合格するために必要な勉強時間は、200~300時間が目安です。この時間を日数に直して、具体的な勉強計画を立ててみましょう。
例えば社会人が働きながら資格勉強をする場合、平日仕事帰りに2時間、土日に4時間程度勉強できるとして、最短で約3か月ほどで試験対策ができることになります。平日3時間、土日に5時間頑張れるなら2か月で試験対策をすることも可能です。
ただしこれは宅建やマンション管理士など、別の不動産系資格の勉強を経験済みの場合です。宅建やマンション管理士の試験と管理業務主任者の試験には範囲の重複が見られます。基礎知識をすでにもっているなら、勉強がはかどりやすいというわけです。
さらにマンション管理士合格者得点の5問免除制度を使えば、試験対策の負担も減ります。
一方不動産系資格について全くの初学者の場合は、勉強時間も長くなります。なじみのない言葉をたくさん覚えなければならないため、テキストや問題の理解がどうしても遅くなるからです。
初学者の場合に想定したい試験対策勉強時間は約500時間程度です。平日仕事帰りに2時間、土日に4時間程度勉強できるとした場合は、7か月程度の勉強期間が必要になります。
勉強時間の計画を立てる際に注意したいのは、試験が年1回しかないことです。国家試験としては合格率が高く、基本的な知識が中心の試験ではありますが、一度失敗すると受験の機会は来年までありません。
ここで紹介した勉強時間はあくまで目安で、人によって勉強のはかどり方には差があります。また、「毎日これだけ勉強しよう」と勉強時間を計画しても、働きながら資格の取得をするのは大変です。
残業が続いたり、疲れがでたりなど様々な要因でうまくいかないこともあります。試験日から目安となる勉強時間を算出する際には、できるだけ余裕をもって計画を立て、早目に勉強に取り掛かるようにしましょう。
管理業務主任者の勉強方法には次の3つの方法があります。
管理業務主任者試験についてはテキストや過去問題集、予想問題集など様々な対策本が出版されています。これらを使えば、独学で合格を目指すことができます。
独学で学ぶメリットは受験費用を安く抑えられることです。特に実務経験が2年未満の場合、管理業務主任者試験の受験料だけでなく登録実務講習の講習費もかかってきます。学費を抑えたい人にとっては、独学は魅力的な勉強方法です。
ただし、独学には
などのデメリットがあります。そのため、不動産関係資格初学者には難易度の高い方法といえるでしょう。
独学よりも効率の良い学習をしたいけれど、学校に通う時間がないという人に便利なのが通信講座を利用した試験対策です。
通信講座なら厳選された教材が自宅に届くので、自分で書店に行って参考書を選ぶ手間がかかりません。
また添削問題や質問サポートが利用できるため、学習上のつまづきをプロの手を借りて解決することができます。eラーニングを取り入れている通信講座なら外出先でも学習ができるので、忙しい社会人でもスキマ時間を使った勉強が可能です。
さらに、通信講座の多くが管理業務主任者試験とマンション管理士のダブル合格をねらったコースを設定している点にも注目です。
例えば、ユーキャンのマンション管理士・管理業務主任者合格講座では7か月の勉強時間で2つの資格試験対策が可能です。マンション管理関係の資格をまとめて揃えたいという人にはもってこいです。
管理業務主任者対策の通信講座は数多く展開されているので、価格やサービスを比較しながら自分にあった物を選ぶことが大切です。
ただし極端に価格が安い通信講座は教材の質がイマイチである可能性もあるため、内容をよく確認してください。
独学や通信講座はマイペースな学習が可能ですが、性格によっては自宅での学習はさぼりがちになってしまうという人もいるでしょう。
そんな人には通学生の対策講座の方が向いています。学校に通うことで勉強時間を確実に確保することができますし、生の講義は集中力を高めてくれます。疑問点をその場で講師に質問できる点もメリットです。
さらに同じ目的を持った仲間と勉強を進めることは、モチベーションを維持する一助になるでしょう。学校によっては公開模試なども開催しているため、試験本番の予行練習をしたいという人はぜひ試してみてください。
ただし、通学生のスクールを利用するには自宅や職場から通える範囲に校舎があることが前提になってきます。最近の資格対策講座はいつでもどこでも学べる通信講座が人気になっているため、通学生のスクールを見つけるのが難しいという問題点はあります。
コロナ禍の現在は、通信講座が主流です。代表的な3社について、講座費用についてまとめましたので参考にしてみてください。
管理業務主任者試験における受講生の合格率は 70%!
【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】対策講座 2021合格カリキュラム
・管理業務主任者試験合格カリキュラム 43,780円(税込) 講義時間:58時間
・マンション管理士試験・管理業務主任者試験 ダブル合格カリキュラム 65,780円(税込) 講義時間:72時間
https://www.agaroot.jp/mankan/
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・マンション管理士/管理業務主任者 合格コース[2021年度試験対応] 39,600円(税込)
最後に、管理業務主任者の資格取得手順を解説します。
管理業務主任者になるためには、まず管理業務主任者試験に合格する必要があります。
試験に合格後、実際に管理業務主任者として業務を行う場合は、資格の登録を行い、管理業務主任者証の交付を受ける必要があります。
ただし管理業務主任者として仕事に従事しない場合、登録は任意です。試験の合格証明書に有効期限はありませんので、一度試験に合格しておけば管理業務主任者証が必要になった時に登録手続きを行うことができます。
一方、管理業務主任者証には5年間の有効期限があります。更新をするには「管理業務主任者交付講習」(1日約6時間)を受講する必要があります。
マンション管理業務の実務経験が2年以上ある場合は、試験合格後そのまま登録手続きをして管理業務主任者証の交付申請をすることができます。
ただし、試験合格日より1年を超えてから管理業務主任者証を交付しようとする場合は、申請前に「管理業務主任者証交付講習」を受講する必要があります。
マンション管理業務の実務経験が2年未満の場合は、登録前に「管理業務主任者登録に係る登録実務講習」を受講する必要があります。
登録実務講習は2日間約15時間程度で、修了試験があります。
修了試験に合格しなければ、管理業務主任者として登録はできません。
つまり実務経験が不足している場合は、
2つの試験に合格する必要があるということです。
なお、講習修了試験で不合格になった場合でも、管理業務主任者試験の合格は取り消されません。次回の講習修了試験で合格を目指しましょう。
また試験合格日より1年を超えてからの主任者証交付する場合は、登録実務講習とは別に「管理業務主任者証交付講習」を受講する必要もあります。
項目 | 費用 |
---|---|
管理業務主任者証交付講習 | 9,680円 (税込) |
登録実務講習 | 22,550円(税込) |
■受験資格
特になし
※試験合格後の登録には実務経験が必要
■試験内容
民法(「契約」及び契約の特別な類型としての「委託契約」を締結する観点から必要なもの)、マンション標準管理委託契約書等
簿記、財務諸表論 等
建築物の構造及び概要、建築物に使用されている主な材料の概要、建築物の部位の名称等、建築設備の概要、建築物の維持保全に関する知識及びその関係法令(建築基準法、水道法等)、建築物の劣化、修繕工事の内容及びその実施の手続きに関する事項等
マンションの管理の適正化の推進に関する法律、マンション管理適正化指針 等
建物の区分所有等に関する法律(管理規約、集会に関すること等管理事務の実施を行うにつき必要なもの)等
試験内容引用元:マンション管理業協会http://www.kanrikyo.or.jp/kanri/shiken_r02/shiken_detail_0803.html
■試験形式
4択式のマークシート 50問
■合格基準
50問中34問以上正解で合格(令和元年試験基準)
※年度によって合格ラインは32~38点と幅がある。おおむね7割以上正答で合格。
■試験時間
2時間
■受験費用
8,900円 (非課税)
管理業務主任者はマンション管理会社に一定数の設置義務があり、有資格者しかできない独占業務もあります。
そのため、マンション管理会社で働く上ではかなり重宝される資格で、就職や転職にも有利に働きます。
管理業務主任者は宅建やマンション管理士に比べて合格率が高く、難易度は低めで狙いやすい資格といえます。管理業務主任者として仕事をするためには、試験合格後登録が必要ですが、講習を受講することで実務未経験者でも主任者証を受け取ることができます。
管理業務主任者の試験範囲は宅建やマンション管理士と重複する部分が多くなっています。
そのため効率よく勉強すれば他の不動産系資格とのダブル、トリプル取得を狙うこともできます。
使いどころが多く取得もしやすい管理業務主任者の資格、不動産関係の仕事に携わるならぜひ目指したい資格です。