内定式の準備や同期との交流は入社前の楽しみのひとつですが、中には「内定式後に辞退したい」と考える方もいるのではないでしょうか。
人生を左右する就職で、選択に迷いが生じるのは珍しいことではありません。
では、法律的には大丈夫なのか?どうやって伝えればいいのか悩みますよね。
この記事では内定式後の辞退について、辞退の理由や内定辞退の手続きやマナー、伝え方のポイントを詳しく紹介します。
内定の時期は企業によって異なりますが、多くは大学4年生の10月以降に内定式があり、内定承諾後に正式な「内定」が決まります。
内定式が終わると、“会社の一員” のようになり辞退するのは心苦しいと思ってしまうでしょう。
内定式後の辞退はできるのかどうかみていきましょう。
結論からお伝えすると、内定式後に辞退することは可能です。
内定式後は、内定承諾書を交わしているため「法律的にまずいのでは?」「損害賠償請求されたらどうしよう」と心配される方が多いです。
内定承諾書を取り交わすと労働契約が成立したものとみなされますが、以下、民法第627条の通り、解約することが可能です。
「第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」(*)
*参照:厚生労働省『労働政策審議会労働条件分科会 第49回資料 民法 <解雇・退職について>第627条』
内定式後に辞退できるといっても、企業からすると採用や入社に向けた手続きを進めており、来季の内定にも影響するため、一般的なマナーとして好ましくはありません。
企業は、採用コストをかけ選考し、内定式や研修の準備を進めている中で内定を辞退された場合、代わりの人材を改めて確保する必要があります。
内定辞退をした場合は企業側が損害を被るため、「内定辞退を受けない」「損害賠償を請求する」といったケースが生じることもあるでしょう。
民法上は問題ないとはいっても、以下の場合には内定辞退者が損害賠償請求を受ける可能性があることを理解しておきましょう。
状況をよく判断し、適切なタイミングで内定辞退を伝えましょう。
内定式後に辞退することはできるが、リスクはゼロではない
内定式後の辞退に多い理由を5つ紹介します。
内定式後の辞退には、「別の企業から内定が出た」ことが理由のひとつにあげられます。
新卒の就活では、1つの企業に絞ることは珍しく、多くは複数の企業を対象に選考を受けます。
内定式の後に他の企業から合否を受けることも多いため、もともと内定をもらっていた企業よりも、新しく内定が出た企業の方で働きたいと思うこともあるでしょう。
より魅力的だと思った方へ進みたいと思った場合に内定を辞退して他の企業の内定を受けるケースがあります。
内定式後に辞退する理由のひとつに、面接時の条件と実際の労働条件や待遇が異なっていたケースがあります。
例えば、「営業職に就きたい」と希望し、面接でも話が進んでいたにもかかわらず、内定後にマーケティング部署へ配属されていたなどです。
様々な部署を経験した後に、希望する部署へ配属する企業もありますが、自分が目指していたキャリアにつながらないと判断し、内定を辞退するケースも少なくありません。
また、給与やボーナス、福利厚生などが事前の情報と実際の条件が相違するため辞退したくなるケースもあります。
いくら企業研究を行っても、社風や雰囲気は、直接企業と関わらないと分からないものです。
内定式後に、その企業の社風や社員同士の人間関係を知って辞退することもあるでしょう。
例えば、風通しが良く活気ある社風だと感じて応募したにもかかわらず、実際は個性が発揮できないような堅苦しい社風だと分かった場合に、馴染めないと感じて内定を辞退するなどです。
内定式後に進路やキャリアプランが変化したことも、内定辞退の理由のひとつにあげられます。
例えば、大学院への進学や留学が決まった場合や希望する分野や業界が変わった場合などです。
このように、「内定はもらったけれど自分に合ったキャリアを進みたい」と、内定を辞退するケースもあります。
「働きたい!」と希望していても、内定式の後に突然の家族の病気や事故など家庭の事情や、自分自身の健康面など特別な事情が起きてしまう場合があります。
このような場合には、内定を辞退することもやむを得ない事情として理解が得られやすいです。
企業によっては、入社時期を検討してもらえる場合がありますので、早急に相談してみるとよいでしょう。
内定辞退を企業にどう伝えるかは、多くの人が迷うところでしょう。
結論から言うと、電話の方がより良いです。
まだ内定式前であれば、メールでも許されるかもしれません。
しかし内定式後であれば、人事や役員ともある程度話したり、交流を持ったはずです。その人たちの中には、メールだけの連絡では失礼だと認識する人もいるでしょう。
またメールの方がハードルは低いですが、メールを読んだ人事担当者から電話がかかってくる可能性もあるでしょう。
その場合、結局最初から電話した方がよかったと思うかもしれません。
内定辞退を電話で伝える際も、メールと同じような構成となり、内定をいただいたことへのお礼、内定を辞退する旨を伝えます。
担当者から内定辞退の理由を尋ねられた場合は、丁寧に理由を伝えましょう。
そして直接訪問できず、電話での連絡になってしまうことへの謝罪を行い、採用に至るまで対応していただいたことへのお礼を改めて伝え締めくくります。
緊張すると早口になってしまいがちですが、相手に誠意が伝わるようにゆっくり丁寧に話しましょう。
応募者:お世話になっております。□□大学の〇〇△(氏名)と申します。
お忙しいところ恐縮ですが、人事部の□〇様さんはいらっしゃいますか?
採用担当者:お電話代わりました。□〇です。
応募者:大変お世話になっております。□□大学の〇〇△(氏名)です。
本日は、先日いただいた内定通知の件でご連絡させていただきました。
今お時間よろしいでしょうか?
採用担当者:はい。大丈夫です。
応募者:この度は内定のご連絡をいただき、ありがとうございました。
大変申し上げにくいのですが、一身上の都合により、御社の内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。
採用担当者:それは残念です。よろしければ辞退の理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
応募者:自身のやりたいことや適性を考えた結果、他社とご縁がありまして入社を決めました。
採用担当者:大変残念ですが、分かりました。
応募者:本来ならは直接お伺いしお詫びしなければいけないところ、お電話でのご連絡となってしまい申し訳ありません。
採用担当者:いいえ、大丈夫ですよ。他社でもご活躍してください!
応募者:ありがとうございます。
選考で貴重なお時間をいただきながら、このような形になってしまい申し訳ありませんでした。
それでは、失礼いたします。
「電話で怒られたらどうしよう」と、不安になる方も多いですが、担当者にとっても内定辞退は想定内のことです。
過度に怖がったり、緊張しなくても大丈夫です。
事前に伝えたい内容を書いておき、ゆっくり丁寧に話しましょう。
内定辞退の連絡は、メールよりも電話で伝えることが望ましいとされています。
最近ではメールでのやり取りが主流になり、「エビデンスが残る」というメリットから内定辞退の連絡もメールで行う場合もあります。
しかし、メールだけでは見逃されてしまったり、連絡がないと伝わったかどうか不安になりますよね。
「内定辞退を確実に早く伝える」という点において、電話で伝えることをおすすめします。
内定辞退をメールで伝える際は、本文の構成が大切です。
まずは、内定をいただいたことへのお礼を伝え、内定を辞退する旨を簡潔に記載します。
そして内定辞退の理由や辞退してしまったこと、メールでの連絡になってしまうことへの謝罪を述べます。
そして文末に締めの挨拶文を添えることが、基本的な流れになります。
内定辞退の理由については、伝えにくい場合は「一身上の理由」と記載して構いません。
しかし、担当者から改めて問われることがありますので、以下のように明記しておくとスムーズでしょう。
メールを送信してから返信や連絡がない場合は、改めて電話をして内定辞退が伝わったかどうか確認しましょう。
【例文】
宛先 | saiyo-team@●●-japan.co.jp |
CC | |
件名 | 内定辞退のご連絡【〇〇△(氏名)】 |
〇〇株式会社 人事部 採用担当者 □〇様 お世話になっております。〇〇△(氏名)です。 先日は、採用内定の通知をいただき、誠にありがとうございました。 選考に対しまして、貴重なお時間を割いていただき、丁寧に対応いただいたことへ感謝申し上げるとともに、このような形になってしまったことを心よりお詫び申し上げます。 本来であればお伺いし、お詫び申し上げるべきところではございますが、メールでの連絡になりましたことを、何卒ご容赦いただきたく存じます。 末筆ながら、貴社のご発展を心よりお祈り申し上げます。 〇〇△(氏名) |
内定辞退をメールで伝える際は、分かりやすい件名と自分の名前・連絡先を記載することを忘れないようにしましょう。
採用担当者は、毎日多くのメールを受信していますので、分かりにくい件名だと見逃されてしまうリスクが考えられます。
見逃されないようにパッと見て「内定辞退のメールであること」が分かる件名にすることが重要です。
また、誰からのメールなのか、連絡する際はどこにすればいいかが分かるように氏名と連絡先も忘れずに書きましょう。
例文のように、件名にあわせて氏名を記載すれば、誰からどんな内容のメールが来たのか分かりやすいですね。
複数の企業と並行して選考を進めている場合や将来のキャリアを考えた場合、内定式後に辞退したいという気持ちが出てくるかもしれません。
内定式後の辞退は、法律的に問題ない場合が多いとはいっても、採用活動を進めてきた企業に迷惑をかけるため、やむを得ない事情がある場合を除いては避けたいものです。
特に、内定式後の10月以降に辞退することは、企業や同期にとってはもちろん、今後の応募者にも影響があることを忘れてはいけません。
内定辞退を決意した場合は、電話やメールで丁寧に感謝と謝罪を伝え、誠意ある姿勢を示しましょう。