「手に職をつけたい」という理由で、未経験からネットワークエンジニアに転職したい人もいますよね。20代の若い人だけでなく、30代や40代の社会人経験が豊富な人が、「未経験から挑戦したい」と思うケースも珍しくありません。
このページでは、未経験者の年齢制限も含めたネットワークエンジニアの転職事情や、採用されやすい求人の種類、入社までに取っておきたい資格をお伝えします。「志望動機のまとめ方がわからない」と頭を抱える人も多いので、抑えておくべき大事な3つのポイントもまとめてみました。
30代未満であれば、異業種から未経験で転職してもネットワークエンジニアになれます。現役のネットワークエンジニアの中には、異業種転職に成功してバリバリ活躍する人も少なくありません。未経験でもネットワークエンジニアになれる背景は、IT業界全体でエンジニアの数が不足しているからです。
経済産業省によると2030年には、約59万人ものエンジニア不足の恐れがあると予測しています。エンジニア不足の原因は、少子高齢化によるベテランエンジニアの引退や、最新のIT技術に対応できる人材の不足にあります。
特にネットワークエンジニアが携わるインフラ部分は、クラウドが登場したことで従来と比べて複雑化しました。そのため、クラウドやオンプレミスと複数の環境をつなぐネットワーク設計・構築には、様々なクラウドサービスや物理サーバの仮想環境など幅広い知識やスキルが要求されます。
また、ネットワーク障害は業務インパクトが大きいため、原因を探し、早急に復旧しなければなりません。しかし、複数のインフラが混在することでネットワーク全体の可視化が容易にできないため、障害の原因調査と解決には高度なスキルが必要とされます。
こうした背景から、未経験者でも積極的に採用し、社内で育成する動きが活発化しているのです。
ネットワークエンジンアの転職市場で未経験者が歓迎されるのは、ポテンシャルが期待できる20代まで。30代や40代の未経験者の採用を控える傾向にあります。その理由は、30代以上の転職者にリーダーシップや管理職経験を期待しているからです。
採用企業の30代、40代の人たちは新卒からキャリアを重ね、プロジェクトリーダーや社内のネットワークグループ全体を統括するプロジェクトマネージャーであることも珍しくありません。自分より年上の人は、扱いづらいという理由で30代以上の採用を避けることも。
しかし、30代のうちは、未経験でも採用されるケースは少なからずあるものの、40代の採用はレアケースといっても過言ではありません。厳しい状況下でもネットワークエンジニアになりたい人は、実務で使えるIT資格の取得や夜勤も積極的に対応する姿勢など、若い人の何倍の努力と熱意が必要不可欠です。
ネットワークエンジニアの仕事は、上流工程の「ネットワークの設計・構築」と下流工程の「ネットワークの運用・保守」に分かれます。この2つのうち未経験者を積極的に採用するのはネットワークの運用・保守。ネットワークの運用・保守のは、主に以下の業務を担当します。
・ネットワークの死活監視やリソース監視
・ネットワーク機器のアップデート、パッチ適用やログ収集
・ネットワーク機器故障時のベンダーへの修理手配
・障害の一次対応
・ネットワーク機器やネットワークサービスの契約更新など
TCP/IPやOS、ルーターやスイッチなどの基礎知識があれば対応できる仕事なので、ほとんどの企業でネットワークエンジニアのキャリアは運用・保守からスタートします。
一方、ネットワークの設計・構築の未経験者向けの求人は、あまりありません。顧客企業の業務システムに最適なネットワーク環境の設計・構築には、ネットワーク以外にもOSやセキュリティ、クラウドなど幅広いITの知識とスキルが要求されるからです。
運用・保守で3年以上の実務経験を積んだうえで、設計・構築にステップアップするのが、ネットワークのエンジニアの一般的なキャリアパスだと思ってください。
未経験者OKの求人でも、応募条件に「ITやネットワークの基礎知識がある人」と書く企業も少なくありません。OJTや研修制度があり、未経験者の採用実績が多数ある企業でも、業務に必要な知識を持つ人が歓迎されます。そのため、IT業界未経験者も、入社までに採用で有利に働く資格をとるべきでしょう。異業種からネットワークエンジニアを目指す人向けにおすすめの資格を4つ紹介します。
CCNAとは、アメリカの通信機器メーカーのシスコシステムズが主催するベンダー資格です。シスコシステムズのルーターやスイッチは、世界各国の企業で利用されています。
CCNAの取得は、世界で通用するネットワークの技術を持つエンジニアの証明と思ってまちがいありません。実際に未経験者向けの求人でも、実務経験はなくても「CCNAと同等の知識」を要求する企業が少なくありません。
9種類あるCCANの資格の中で、1番受験者が多く、勉強した知識を実務で活かせるのが「Routing & Switching」。まずは「Routing & Switching」の取得を目指してみてください。
LPICとは、世界共通のLinux認定技術者試験です。試験に合格するとLinux OSの技術を持つエンジニアとして証明されます。サーバエンジニア向けの資格ですが、ネットワークに関する問題も出題されるため、ネットワークエンジニアを目指す人が勉強して損はありません。多くの企業で業務システムのOSにLinuxを採用しているため、LPICを持つネットワークエンジニアは歓迎されます。
Linux認定技術者試験には、LinuCと呼ばれる日本の市場向けの資格もあります。試験範囲や需要、受験料、転職市場での評価はLPICと変わりません。どちらの資格をとっても問題ありませんが、個人的には、世界共通資格で認知度の高いLPICをおすすめします。
未経験向けの求人でもITの基礎知識が要求されるものが多いため、基本情報技術者試験に合格していれば、採用で評価されるでしょう。
基本情報技術者試験とは、情報処理技術者向けの国家資格。受験対象は、IT業界を目指す未経験者、入社2~3年目の若手社員となります。勉強すれば、ネットワークを含め、OSやシステム開発、データベース、セキュリティなど総合的なITの基礎知識が身につくため、これまでITに縁のなかった人におすすめですよ。
AWS認定資格やAzure関連のマイクロソフト認定資格、Google Cloud認定資格などクラウドベンダーの資格試験も、転職市場で歓迎されます。クラウドは物理サーバを必要としないため、低価格・短期間での業務システムの導入が実現し、ビジネスの拡大に合わせて柔軟に拡張できます。
こうしたクラウドの特性から、各業界でインフラにクラウドを採用する動きが加速しています。それにもかかわらずクラウドの技術を持つエンジニアが不足しているため、勉強しておくと様々な職場で重宝されますよ。
資格試験はルーターやスイッチなど通信機器を操作しながら勉強できないため、可能であれば自宅で小規模なネットワークを構築してみてください。顧客企業のデータセンターやマシンルームにルーターやスイッチの設置、ケーブル配線などの作業も、ネットワークエンジニアの仕事に含まれています。入社後に通信機器の設置や配線の作業にもたつくと、顧客企業の担当者が「この人に任せて大丈夫か?」と不安に思うでしょう。
いち早く現場の仕事に慣れるには、実際に通信機器の操作や設置するのが一番の近道です。実機に触れることで、資格試験で学んだ内容の理解も深まります。下記をそろえれば、自宅でもネットワークは構築可能です。
・シスコ製のルーター3台
・シスコ製のL3スイッチ3台
・LANケーブル
・電源タップ
新品のルーターやスイッチを買うと非常に高額なので、ヤフオクやAmazonなどのネットショップで中古品を探してみてください。1台につき10000円未満と比較的安価な値段で買えますよ。
事前にIT資格や実機で勉強をし、未経験歓迎の求人に応募すれば、ネットワークエンジニアになれます。高額な費用を出してまでスクールに通う必要はありません。未経験者向きの求人は、主に次の3つの求人媒体から探せます。
1.転職サイト:リクナビNEXT、doda、マイナビ転職、en転職など
2.転職エージェント:マイナビエージェント、ワークポート、ギーグリーなど
3.求人情報検索エンジン:Indeed、求人ボックス
3つの中でおすすめは、転職エージェントと求人情報検索エンジンです。転職エージェントは求人情報の紹介だけでなく、無料で書類添削や面接対策などのアドバイスが受けられます。経験者しか相手にしないと思われがちですが、30代未満なら未経験向けの求人を用意する転職エージェントも少なくありません。初めて転職する人は、転職エージェントを積極的に使ってみるとよいでしょう。
求人情報検索エンジンは、複数の転職サイトや企業の採用ページなどインターネット上の様々な求人情報を一度に検索できて便利です。特にIndeedはに気になる企業で働いた経験のある人のリアルな口コミ情報を確認できます。社風やワークライフバランス、昇給制度など面接では聞きづらい情報が応募前に確認できるため、会社選びの参考にしてみてください。
未経験者の転職で注意しなければならないのが、SESや派遣業を行う企業の求人です。入社後の勤務場所は客先がメインで、自社勤務となることはほぼありません。エンジニアを客先に派遣する人件費が会社の利益となるため、ほとんどの企業がネットワークエンジニアをはじめ様々な職種を採用します。
エンジニアを自社勤務にさせると会社の売上にならないため、本人の希望に関係なく、人手不足の客先に常駐させることも。ネットワークエンジニアを目指して入社したにもかかわらず、ヘルプデスクやプログラマーなど別の職種で客先常駐せざるを得ない状況に陥ることもあります。客先常駐の期間は1年以上となる場合が多く、希望しない案件に配属されても、客先との契約の都合ですぐに常駐先を変えることはできません。
未経験者を歓迎する求人でも、システム開発やITサポートなど求人情報にネットワークエンジニアとは別の職種、仕事内容が書かれていたら応募は避けましょう。SESや派遣業でも、ネットワークエンジニアの案件しかない企業は、入社後にネットワークエンジニアになるのが確実なので応募して問題ありません。
資格試験や実機で勉強し、気になる求人に片っ端に応募しても、未経験からネットワークエンジニアを目指す理由の根拠がなければ内定は獲得できません。履歴書や職務経歴書の志望動機を書くときは、下記3つの点を必ず含めるようにしましょう。
ネットワークエンジニアに限らず、IT業界は人手不足なので各職種で未経験者を採用しています。エンジニアの中でも「ネットワークエンジニアを選んだ理由」をしっかり説明しましょう。「パソコンに触れるうちにネットワークに興味を持った」「ネットワークは生活に必要不可欠なインフラなので、自分の技術で社会貢献したい」など、自分なりの理由を考えてみてください。
ネットワークエンジニアを募集する求人はたくさんあります。その中でも応募企業を選んだ理由を明確にしましょう。志望動機を書く前に、気になる企業の採用ページや事業内容などを徹底的に調べ、その企業に入社したい理由を探してみてください。たとえば、「研修制度が充実しているのでスキルアップが見込める」「大企業の大規模ネットワークの設計から運用に携わる機会がある」など、自分がよいと思ったことを書きましょう。
未経験者だから入社後は上司や先輩に教わるので安心と、受け身の姿勢ではいけません。実務経験がなくても、スキルを身につけ1日も早く即戦力として活躍したい熱意を伝えましょう。具体的には、CCNAやLPICなど資格試験の合格を目指していることや、自宅でネットワークを構築し、実務に近い環境で勉強していることを伝えてみてください。
IT業界の人手不足からネットワークエンジニアは、多くの企業が30歳未満の未経験者の採用に積極的です。
しかし、未経験者を採用する企業でも、応募条件にCCNA相当の知識やITの基礎知識を求める傾向にあります。スムーズに転職活動を行うためにも、ネットワークやITの基礎知識を身につけ、明確な志望動機を準備しておきましょう。
そのほうが、採用担当者にやる気が伝わり、入社後も早い段階で独り立ちができます。ネットワークエンジニアを目指す人は、この記事を参考にして転職活動をはじめてみてください。