コロナ禍で採用活動を中止する企業が多い中、人手不足のIT業界はほとんど影響を受けていません。ネットワークエンジニアの求人にも同じことがいえるのでしょうか?リーマンショック以上の不景気といわれるコロナショックの中でも、未経験者を採用する企業があるのか知りたいところです。
ネットワークエンジニアの将来性や仕事内容、市場価値を高めるのに必要なスキル、未経験者からネットワークエンジニアになる方法を探ってみました。
少なくともこの10年間でネットワークエンジニアの需要がなくなることはありません。むしろ、将来、ネットワークエンジニアの需要は増えると予測されています。
クラウドが普及した当初は、サーバやネットワークの構築に物理環境を必要としないため、ネットワークエンジニアは将来仕事が減るといわれていました。しかし、今、各業界で業務システムのIT基盤をクラウドに移行する動きが進んでいます。
一口にクラウドといっても、AWSやAzureなどパブリッククラウドや自社のデータセンターに構築するプライベートクラウドと種類は様々です。多くの企業が、セキュリティや可用性などの問題で従来のオンプレミスと並行して各種クラウドを活用しています。
オンプレミスの物理環境と仮想化基盤、各種クラウドの基本設計はそれぞれ異なるため、企業のネットワーク設計や構築はひと昔前と比べて複雑になりました。社内ネットワークの構成が複雑なので、障害が発生した際の原因解明に高度なスキルが必要とされます。
また、2020年3月から大手キャリア3社が5Gを商用化しました。東芝やNEC、富士通など大手IT企業は、5Gを活用した企業向けシステムの構築支援に参入しています。5Gの基地局設置や対応機器のセッティング、運用保守などでネットワークエンジニアが必要とされる場面が増えています。
クラウドや5Gなど最新技術の発達で、ネットワークエンジニアの将来性は明るいと思って問題ありません。
将来性があるとわかったところで、ネットワークエンジニアは何をやる人なのか仕事内容を確認してみましょう。ネットワークエンジニアの仕事内容は、大きく分けて次の2つに分類できます。
事業会社の情報システム部門の依頼内容をまとめた要件定義書から、ネットワークの詳細設計を作成します。設計するにあたりWANやLAN、インターネットなどネットワークをはじめ、OSやセキュリティ、サーバなど幅広いITの知識が欠かせません。そのため、未経験者がいきなりネットワークの設計・構築に携わることはまずないと思ってください。
その後、設計書に基づき必要な通信機器を調達し、サーバルームやデータセンターで機器配置や配置した機器をケーブルでつなぐなどの作業を実施します。設計書通りに配置作業が終わったら、最後にネットワークの稼働確認を行います。
ネットワーク構築後の本番運用で、監視ツールを使ってネットワークの負荷や障害がないか定期的に監視します。特定の機器に負荷が集中したときは設定変更や機器を増設すると思ってください。
障害発生時はトラブルの原因を突き止めます。監視業務は手順に従って行うため、経験の浅いネットワークエンジニアが担当するケースが多いです。ただし、ネットワーク障害解決には高度なスキルが必要とされます。
doda、indeed、求人ボックスでネットワークエンジニアの平均年収を調べてみました。
・doda:457万円
・indeed:535万円
・求人ボックス:502万円
プロジェクトマネージャーの平均年収が650万前後で、SEが400~500万円前後なので、ネットワークエンジニアはITエンジニアの中でも平均的な年収といえます。経験の浅い20代のうちは平均年収が350~400万円前後。若手のSEとほぼ同じぐらいの年収です。
ただ、ネットワークエンジニアは、シスコ技術者認定資格で最も難易度が高いCCIE取得や英語力を身につければ、年収1000万円も夢ではありません。
市場価値の高いネットワークエンジニアになり、年収アップを狙う方法は、転職市場でニーズのある知識やスキルを身につけることが一番の近道といえます。ここからは、ネットワークエンジニアに必要とされるスキルを確認しましょう。
各業界でIT基盤のクラウド移行が加速し、業務システムやデータの内容により複数のクラウドを使い分けています。クラウドごとに基本設計が違うため、既存の環境にクラウドを追加する際のネットワーク設計・構築に課題感を持つ企業が少なくありません。そのため、クラウドの知識は身につけておくべきでしょう。
クラウドには様々な種類があります。その中でも需要が高いのが、AWS、Azure、GCPのメガクラウドです。それぞれ認定資格があり、参考書も充実しています。無料のハンズオンもあるので、お金をかけずに勉強したい人は試してみてください。
セキュリティの知識があれば、どの企業でも即戦力として歓迎されるため、市場価値を高いネットワークエンジニアといえます。IoTやクラウド、モバイル通信などの発達で、今やインターネットなしでは業務が成り立ちません。インターネットやIT技術の発達に伴い、サイバー攻撃の手法も多様化しています。
最新のサイバー攻撃の手法や、不正アクセスを防ぐゲートウェイやファイアウォール、暗号化通信や認証技術の知識を身につけるとよいでしょう。
5GやBluetooth、Zigbeeなど無線技術に詳しいネットワークエンジニアも需要が増えるでしょう。工場や建設現場、交通機関、農業など様々な産業分野でIoTの活用が拡大しているからです。無線通信で処理できる通信量や最適な距離、電波干渉など考慮したネットワーク設計ができるネットワークエンジニアは市場価値の高い人材といえます。
5GやBluetooth、Zigbeeの書籍はたくさんあります。無線技術に興味のある人は、まずは書籍で勉強してみてください。
クラウドで稼働するサーバはプログラミングで制御、管理ができます。サーバサイドのエンジニアの不足でネットワークエンジニアがサーバ管理を担当するケースも珍しくありません。下記プログラム言語をマスターしておくと、様々な職場で重宝されるでしょう。
・Java
・PHP
・Python
Javaは未経験者には難易度が高いプログラム言語です。PHPやPythonは文法がシンプルで未経験者でも比較的マスターしやすいプログラム言語といわれています。初心者向けの書籍やオンライン教材が豊富にあり、開発環境も無償で提供されています。
ネットワークに限らず最新のIT技術の多くは、アメリカで開発されたものです。最新の技術書は、日本語訳されていないものも少なくありません。そのため、英語力のあるネットワークエンジニアも多くの企業で即戦力として活躍できます。
日系企業だけでなく外資系企業でも活躍できるため、転職先の選択肢の幅が広がりますよ。外資系企業は日系企業のように年齢制限がないため、中高年の転職でも年齢が不利になることはありません。
TOEICのスコアがなくても外資系企業へは転職できます。実際に私がそうでした。ただ、スコアが800以上あると選考に有利に働き、年収800万円以上のハイクラスの求人も夢ではありません。
ネットワークエンジニアは需要があり、コロナ禍でも他業種と比べて求人数の大幅な減少は見られません。ただ、大手転職サイトは経験者を募集する求人が中心となっています。未経験者の求人数は、2020年8月時点でdodaは8件、リクナビNEXTでは12件しかありません。
大手転職サイトだと未経験者でも募集できる求人数は少ないので、複数の転職サイトの求人を一括検索できるindeedや求人ボックスで探してみるとよいでしょう。今、調べてみたところ、indeedや求人ボックスでは未経験者でも募集できる正社員の求人がたくさんありました。
・indeed:3934件
・求人ボックス:6286件
indeedや求人ボックスの求人は転職サイトだけでなく、企業の採用ページの情報も検索結果に表示されます。企業の採用ページから直接応募する人が少ないため、転職サイトと比べて競争率が低いので狙い目といえます。
未経験者を応募する求人でも、ネットワークの基礎知識やCCNA相当のスキルを持つ人を優遇することに変わりありません。初心者向けの研修を設ける企業もありますが、入社前に独学で勉強しておいた方が、選考で有利に働くでしょう。何よりも基礎知識があるので、入社後にいち早く独り立ちできます。
ネットワークエンジニアを目指す未経験者向けの勉強方法を調べてみました。ネットワークエンジニアになりたい人、すでに転職活動中で書類選考がなかなか通らない人は参考にしてみてください。
CCNAとは、シスコ技術者認定資格の1つ。ネットワークエンジニア向けの資格の中で最も有名なIT資格といっても過言ではありません。CCNAの出題範囲は、ネットワークの知識を網羅的にカバーしているため、過不足なくネットワークの技術を学ぶことができます。
シスコ社のネットワーク製品を使う企業が多く、世界共通資格でもあるので勉強して損はありません。
実はCCNAは9種類も試験があります。試験科目が多いので、どれを受けるべきか迷う人もいるでしょう。初心者は最も実用性の高い「CCNA Routing and Switching」から勉強してみてください。
より実務に近い学習をするなら、自宅にネットワークを構築することをおすすめします。CCNAや書籍など座学でネットワークの知識を身につけることも大切ですが、実務では顧客企業のマシンルームやデータセンターで作業する機会も少なくありません。
実機を動かすことで機器の配線やラックマウントのコツが身につきます。OSがLinuxにせよWindowsにせよ、ネットワークの管理はコマンドラインで操作する機会が多いです。ネットワーク系のコマンドを実際に叩いてみて勉強したほうが座学で学習するよりも、理解度も早くなります。ITエンジニアの転職は職種に限らず、実機で勉強した経験のある人が評価されやすい傾向にあるので、CCNAの勉強と合わせて自宅にネットワークを構築してみてください。
下記があれば、基本的なネットワークの仕組みは検証できます。
・ルーター3台
・L3スイッチ3台
・LANケーブル
・電源タップ
シスコ製品を使う会社が多いので、ルーターは「Cisco2800」や「Cisco1812J」、L3スイッチは「Catalyst2960」「Catalyst 3560-8PC」などの中古品を購入するとよいでしょう。Yahooオークションや楽天、Amazonなどで1台3000~10000円前後で購入できます。
クラウドや5Gなど最新技術の発達で、ネットワークエンジニアの需要が増えています。こうした社会背景からネットワークエンジニアの将来性はあると思って間違いありません。
ただし、市場価値の高いネットワークエンジニアは、クラウドや5G、Bluetoothなど無線技術、セキュリティなど需要のある分野に強い人材です。従来のオンプレミスのネットワーク設計・構築、運用保守の技術しかないネットワークエンジニアではありません。
ネットワークエンジニアは人手不足なので、未経験者でも採用する企業が少しずつ増えてきました。ただ、未経験者を募集する企業の多くは、実務経験がなくても、ネットワークの基礎知識がある人を歓迎する傾向にあります。希望の会社から内定を獲得するためにも、転職活動と並行して独学でCCNAや自宅でネットワークの構築することでスキルを身につけましょう。