看護師資格は、看護学校に3〜5年通い、様々な知識と経験を身に着けた上で、国家資格である『看護師国家試験』に合格しなければ取得することができません。2021年の合格率は、全体で90.4%とかなり高い数値となってはいますが、経験者によると勉強と実習で寝る間もなく、かなりの体力と精神力を必要とします。
そんな極限状態で取得する資格ですから、取得したらしっかりと活かして仕事をしたいと思うのは当然です。しかし、病院の仕事もまた看護師にとっては過酷な環境となることも多々あります。昨今では世界的パンデミックにより、病院関係者の職場環境はかなり厳しいものになっています。
病院で働くことに疲れたので、転職したい。でもせっかくの看護師資格も無駄にはしたくない。病院以外で看護師資格を活かせる転職というのは可能なのでしょうか。病院以外の転職先はどれくらいあるの?
そんな悩める方々に、看護師資格が活かせる病院以外の転職先をご紹介します!
目次
看護師資格を生かして、病院以外に転職したい!
看護師資格を無駄にしない働き方
昨今、新型コロナによる世界的パンデミックで、日本国内でも東京都や大都市圏では医療崩壊を懸念されるほどの事態になりました。医療従事者は、コロナ病棟にヘルプに出されたり、ワクチン接種の非常勤を要請されたり、県内外の他病院への派遣を余儀なくされたりと、かなり過酷な状況にあるのが現状です。
ただでさえ病棟勤務は、患者の病状急変、急な入院・手術などで時間外勤務が起こりやすく、命を預かる特殊な専門職であるだけに、心身にストレスがかかりやすい職種と言われます。
他に代えがたい職種の看護師なので、大変な状況ほど「つらい」「辞めたい」と言い出しづらい状況にあるかもしれません。しかし、看護師といえど人間です。
とはいえ、大変な思いをしてまで取得した看護師資格。資格もスキルもすべて無かったことにして、全く無関係の他業界に行くのもまたもったいない……。病院以外の仕事でも、資格を活かすことはできるでしょうか?
看護師資格は病院以外でどう活かせる?
看護師資格、病棟勤務が花形というイメージはありますが、実のところ病院以外でも資格を活かせる仕事はたくさんあります。むしろ、看護師資格は国家資格で、この資格を持っていなければできないことはたくさんあるのです。ということは、持っているだけでかなり泊が付きます。更に病院勤務の経験があると来れば、信用度は爆上がりです。
病棟勤務の忙しさに嫌気が差しただけで、ゆるくでも医療には携わっていたい。という方には医療系クリニックなどをおすすめしますが、今回は病院以外ということで、治療行為にあまり関わらないような、施設や変わり種の転職先を重点的にご紹介していきます!
意外と多い!病院以外で看護師資格を活かせる仕事
高齢者施設編
老人ホーム
特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの、高齢者が入居する形式の施設です。老人ホームでは医師が常駐していることはほとんどなく、入居者の健康管理は看護師の判断のもとで行われます。
看護師の仕事内容は、バイタルチェックや血圧測定、服薬管理、生活介助、介護職員の指導などになります。
デイサービス
老人ホームは利用者が施設に入居するのに対し、デイサービスは通いで利用する施設です。施設によっては完全介護を必要とする方が利用している場合もあり、仕事内容は施設の種類によって介助レベルも大きく変わってきます。
こちらも利用者の健康管理をするのが、看護師の仕事となります。
訪問看護
こちらは老人に関わらずですが、病状によって自分で病院に通えない人のために、患者さんの家に訪問して健康管理を行う仕事です。医師が同行することはほとんどなく、看護師のみで訪問し問診を行うため、看護師の見立てが重要になります。
医師の指示に従って、バイタルチェック、血圧測定、服薬管理、点滴などを適宜行い、生活介助や褥瘡ケア、リハビリ介助、また医療機器の管理なども仕事内容に入ります。その他、患者さんの家族からの相談や、介護のアドバイスなどを行う場合もあります。
子ども・学生施設編
保育園
子どもたちの健康管理を行う仕事です。子どものお世話をするのはもちろん保育士ですが、子ども特有の急な発熱や体調不良、怪我などに対応するのは看護師です。また保育園によっては、保育士と一緒に看護師も子どものお世話をすることもあるので、子ども好きにはおすすめです。
児童養護施設
入所している子どもたちの健康管理を行う仕事です。入所理由は様々ですが、中には怪我をしている子、何らかの理由から体調を崩しやすい子もいるため、繊細なケアを要する場合があります。
学校の保健室
いわるゆる『保健室の先生(学校保健師)』のこと。在学中の学生や教職員の健康管理、怪我の手当、最近ではメンタルヘルスケアにも重点を置かれています。
とはいえ、公立の小学校・中学校・高校については『養護教諭』の免許が必要なので、この資格を持っていなければなることはできません。
しかし私立の学校や大学では養護教諭を置く義務がないため、看護師資格のみでもなることができます。
企業編
産業看護師
企業の保健室といえば一番分かりやすいでしょうか。雇用主は企業で、オフィスに常駐して社員の健康管理を行う仕事です。基本的に仕事に出てこれるレベルの社員に対応するため、体調不良や怪我の手当といった業務もそれほど忙しくないと思われます。
最近では企業内でも、メンタルヘルスケアを重視し始めた風潮があります。仕事や人間関係のストレス、各種ハラスメントなどの相談に対応を求められる事も増えています。
治験コーディネーター
医療機関の医師を始めとする関係部署・製薬会社・被験者の仲立ちをし、治験を進める仕事です。医療機関に直接雇用されるか、民間の治験施設支援機関(SMO)に雇用されて、医療機関に派遣されます。
仕事内容としては、治験に必要な各種書類の作成、治験のスケジューリング、治験中の症状観察、副作用などの有害事象が起こった際には医師に報告、被験者への処置など各工程で多様で臨機応変な対応が求められます。
医薬品を扱うため、薬機法の知識も必要になります。
国家公務員編
厚生労働省
厚生労働省の『看護系技官』という仕事があります。厚生労働省管轄の法令に基づき、環境整備、体制整備のための企画・立案・運営、省内外の調整、講演による啓蒙活動など、配属部署によって様々な業務を行います。
やりがいは十分ですが、ただし看護師資格のみでは応募資格を満たすことができません。他に保健師免許または助産師免許のどちらかが必要になります。興味のある方は、一度厚労省HPをチェックしてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省HP『看護系技官採用情報』:https://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/kangokei/
刑務所
変わり種の仕事が来た!と思う方も居ると思いますが、こちらも立派な国家公務員です。仕事内容としては、一般刑務所の医務室勤務であれば、学校保健師や産業看護師と大差はありません。受刑者を相手にするため、恐怖や不安を感じるかもしれませんが、受刑者対応時には必ず刑務官が同行します。
また医療刑務所という選択肢もあります。こちらは病気などで治療を必要とする受刑者を収容しています。手術を行うこともあるため、勤務内容としては病棟看護師と大差はないと思います。
在宅ワーク編
メディカルライター
医療や医薬品などの分野に特化したライターをメディカルライターといいます。最新医療や医薬品に関する専門知識を必要とするものから、今読んでいるこの記事のような転職記事など、仕事の種類は依頼内容によって様々です。
最新医療に薬機法、専門用語など、あなたの知識次第でジャンルを選んで執筆できるという自由度があります。中には海外の論文翻訳と言った仕事もあり、手間がかかる分だけ給与も高くなる傾向があります。
コールセンター
製薬会社、保険会社、医療機器メーカーなどで、問い合わせ対応やアポイントメントなどを行います。コールセンターは内勤も多いですが、中にはテレワークOK、100%在宅ワークといった仕事もあります。
コールセンターとはいえど専門的な分野なだけに、専門用語や医療知識がないと難しい仕事です。それだけに、研修制度やマニュアルなどの教育体制がしっかりと整っているところが多いので安心です。
珍しい職場編
以上の仕事の他、珍しい職場もあるので紹介します!
- イベントナース:スポーツ大会、展示会、ライブなどのイベントに設置される救護所勤務です。
- ツアーナース:旅行に同行する看護要員のことです。
- リゾートナース:大型テーマパークや、有名観光地のホテル、休憩所などに常駐します。
- シップナース:クルーズ船に乗船し、乗員と乗客の健康管理を行います。
主に観光地に派遣されたり、長期滞在したり、移住したり……勤務体制は様々ですが、色んな場所に行ってみたい。固定の職場では息が詰まる。といった方にはおすすめかもしれません。
ただし、一見華やかに見えるかもしれませんが、これらの職場には医師が常駐していない場合、シフトで1人体制という場合も多くあります。突発的な病状に一人で対応しなければならず、患者の搬送や治療の判断をくださなければならない場面も少なくありません。
満足な医療設備もない中で、臨機応変な対応を求められる仕事なので、それなりのプレッシャーを感じる場面も多いと思います。軽い気持ちでいられる仕事ではなく、相応の覚悟は必要です。
看護師が病院以外に転職するメリット・デメリット
看護師が病院以外の職場に転職することで、デメリットはあるのでしょうか。次は病院以外への転職で起こるメリットとデメリットについて考えてみましょう。
看護師が病院以外に転職するメリット
・時間外勤務が減るので時間に余裕ができる
・患者の急変、急患、手術などのストレスが少ない
・生死に直結する患者が少ない分、プレッシャーも低くて済む
・朝から晩まで走り回る程の仕事量がない
・自分のペースに合った働き方を選びやすい
看護師が病院以外に転職するデメリット
・時間外勤務が減る分、給料が下がる
・最先端医療に関わらない分、スキルや知識が停滞・低下しやすい
・やりがいを感じづらい
・仕事内容が同じことの繰り返しになりがちなので、マンネリが起きやすい
何事にも、メリットとデメリットはあります。その内容が自分にとってメリットとデメリットに該当するかは、人によって違う場合もあるでしょう。自分の向き不向きを認識して、メリットとデメリットにしっかりと目を向けておくことが必要です。
例えば、趣味や遊びに時間を取りたい人、休みはそこまで重視せずにお金をためたい人、育児や家事のためにペース配分を考えたい人、スキルやキャリアは捨てたくないという人、人それぞれで転職の仕方も変わってきます。
・病院勤務で時短や育児休暇などの制度を利用して様子を見る
・残業がなくプレッシャーやストレスの低い職場に転職する
・育児や家事に重点を起きたいから、在宅ワークを始める
・今までの知識やスキルを活かして厚労省の看護系技官に転向する
メリットとデメリットを認識した上で、自分に合った働き方を模索してみてください。
看護師が病院以外で働いた場合の給料は?
看護師が病院以外の職場に転職した場合、大体の場合で給料が下がるというのはよく言われています。それはやはり何度も言うように、時間外勤務が減るという点と、医療の現場から離れることで仕事内容が病棟勤務より難しいものでなくなる、職能に関わるものだからです。
とはいえ、看護師資格を持っている看護師という専門職ですから、他業界の給料よりは高めに設定されていることが多いのは確かです。それもあり、やはり看護師資格をせっかく取得できているのなら、それを活かさない手はないでしょう。
応募要項に看護師資格が必要とされる案件の求人を比較すると、平均して時給では1,300円〜1,900円くらいが相場になるようです。中には2,000円以上になることも。月給だと初任給で22万円〜30万円ほど。
国家公務員である厚生労働省や刑務所などでは、勤続年数でしっかりと昇給が見込めるため、最終的に月給は40万円ほどまで上がります。給料を重視するのであれば、国家公務員が狙い目です。
病院以外の転職先はそんなに多くはない
とはいえ、やはり看護師のニーズは病棟勤務に集中しやすいといえます。看護師資格を取りはしたけど、病棟勤務に疲れたので、病院以外のいい転職先はないものか……と考える人は昨今かなり増えているようにも感じます。
そもそも、病棟以外で看護師を抱えるクリニックや施設、企業などは病院よりも圧倒的に規模が小さくなります。その分、募集枠が少なくなるのは仕方ありません。当然、条件が良い案件は人気があるので、競争率は上がってあっという間に募集枠が埋まってしまいます。
いざ募集に間に合って、面接までこぎつけることができても、多くのライバルに勝てるだけのキャリア、スキル、自己PRをするのは至難の業……。個人で探すのはかなり難しいと言わざるを得ません。そんな時に利用したいのが転職のプロ、転職エージェントです。
転職エージェントの活用も◎
転職エージェントは基本利用無料で転職先の紹介だけでなく、転職のノウハウを教えてくれて、転職後のアフターフォローまでしてくれるところが多くあります。無料なら試しに使ってみても損はありません。看護師に特化した転職エージェントもあるので、今回はそちらを紹介します。
医療ワーカー

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マイナビ看護師

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看護師の転職は、病院以外でも全然アリ!
看護師の転職先は病院以外にもあるの?と不安な方、病院以外でも転職先の選択肢は意外とあります。給与面は病棟でバリバリ働いて居た時と変わらない条件で、などとなると少々難しいかもしれませんが、そういう時は転職エージェントに相談してみるといいかもしれません。
まずは自分にとってどんな条件を重要視したいか、妥協できる点はどこか、どんな風に働きたいのかしっかりと考えてみましょう。
負担が減るとはいえ、人の命や健康を預かるという点では病院勤務と変わりはありません。そこをしっかりと踏まえているのならば、病院以外でも看護師資格を活かした転職は全然アリです!