PHPは、Webサイト開発で利用されるスクリプト言語の一つです。PHPを利用してHTMLソースコードを生成することで、様々な情報を反映してページ内容を変更する動的なWebサイトを作成可能です。また、サーバーサイドでコードを実行するため、データベースとの連携も容易になります。
PHPを勉強し始めた方の中には、PHPの資格について興味を持っている方も多いでしょう。PHPの資格取得は、Webサイト制作に関して自分の技術をアピールできるため、就職や転職において有利に働きます。
2020年7月現在、PHPに関する唯一の資格が「PHP技術者認定」です。ITやプログラミングに関する資格の中でも比較的新しい部類に入るので、ご存じない方も多いかもしれません。そこで今回の記事では、PHP技術者認定のカテゴリや難易度、勉強法について解説します。
PHP技術者認定試験とは、一般社団法人であるPHP技術者認定機構が実施する試験です。PHPの言語仕様やプログラミングに関する知識、実用的なプログラミング技術が問われます。
2012年5月に運営開始された比較的新しい試験のため、資格の概要についてご存じない方も多いでしょう。そこで本章では、PHP技術者認定試験の受験資格や申込方法、試験方式について解説します。
PHP技術者認定試験は、最上位のカテゴリである「PHP技術者認定ウィザード」を除き、応募資格条件は設けられていません。年齢や職業を問わず、誰でも受験できます。
「PHP技術者認定ウィザード」については、PHP技術者認定上級試験で90%以上のスコアを取得する必要があります。PHP技術者認定上級試験の合格ラインは70%以上なので、受験資格を得るだけでも相当大変です。
個人で受験する際は、試験会場のWebサイトから直接申し込みます。PHP技術者認定試験が実施される会場は、MOS試験(マイクロソフトオフィススペシャリスト)やACA(アドビ認定アソシエイト)などのIT資格試験を取り扱う「オデッセイコミュニケーションズ」のWebサイトから検索できます。試験会場は各都道府県から探せるため、自宅に近い会場も見つかるでしょう。
試験会場認定校の対策講座を受講している場合は、手続きをスクール側が進めてくれるためスムーズに申し込み可能です。また、PHP技術者認定機構に認定されたスクールの在籍者は学割価格が適用されるため、受験料も安く済みます。
PHP技術者認定試験は「PHP技術者認定ウィザード」を除き、コンピュータ上で試験を実施するCBT形式で実施されます。問題は全て選択式で、記述問題はありません。
試験会場では、まずパソコンに自分のIDとパスワードを入力しログインする必要があります。スムーズに受験できるように、自分で記憶しておくか紙にメモしておきましょう。スマートフォンの持ち込みはできないので注意してい下さい。
試験結果は、試験終了直後に合否が判定されます。試験結果レポートには合否の他、セクション別の正解率が記載されているので、理解している分野と理解していない分野が分かるでしょう。もし合格していれば、4~6週間以内に認定証が郵送されます。
PHP技術者認定には、「PHP5技術者認定初級試験」「PHP5技術者認定上級・準上級試験」「PHP5技術者認定ウィザード」「PHP7技術者認定初級試験」と4つの種類があります。それぞれのカテゴリについて受験料や難易度、出題範囲を詳しく解説します。
PHP5技術者認定初級試験は、PHPに関するプログラミングの基本知識を問う試験です。問題数は40問、試験時間は60分で、70%以上のスコアで合格となります。受験料は、一般価格が13,200円、学割価格が6,600円です。
合格率は約7割程度と言われており、難易度的にはそう難しくありません。同じITの資格で比較すると、国家資格「ITパスポート」と同等程度の難易度と言えます。普段、仕事でPHPをプログラミングする方であれば、特に勉強しなくとも合格できるでしょう。
出題範囲は、主教材であるオライリージャパン「初めてのPHP5」より出題されます。主な内容としては、判定、繰り返し、配列、関数、データベース、ファイル操作、正規表現等があります。各項目からまんべんなく出題されるので、PHPのプログラミングに関する基礎知識を広く身に付けておきましょう。
PHP5技術者認定上級・準上級試験は、PHPの言語仕様や実用的で高度なプログラミング技術を問う試験です。問題数は60問、試験時間は120分となります。受験料は、一般価格が15,000円、学割価格が7,500円です。
上級と準上級は同じ試験内容ですが、合格ラインが異なります。70%以上のスコアで上級合格、50~70%のスコアで準上級合格です。合格率は上級で1割程度と言われており、高い難易度を誇ります。同じITの資格で比較すると、準上級が「基本情報技術者試験」、上級が「応用情報技術者試験」と同程度の難易度と言えるでしょう。
出題範囲は、主教材であるオライリージャパン「初めてのPHP」より出題されます。初級と比較して、ロジックやオブジェクト操作に関する出題が多く、より実践的なプログラミングテクニックが問われます。上級合格を目指す場合はPHPプログラミングの実務経験に加えて、50時間程度の試験対策学習が必要でしょう。
PHP5技術者認定ウィザードは、PHP技術者認定試験の最上位資格です。受験資格として、まずPHP5技術者認定上級・準上級試験で90%以上のスコアを取得する必要があります。その上で所定の文章を提出し、PHP技術者認定機構から承認されると晴れて合格となります。
2020年7月現在、2名の合格者しか出ておらず非常に難易度の高い資格です。認定審査では、PHPの発展に貢献できる知識と発想力が求められます。合格するためには、高度でオリジナリティのあるPHPプログラムを構築する実力が必要でしょう。
PHP7技術者認定初級試験は、PHP5技術者認定初級試験と同様にPHPに関するプログラミングの基本知識を問う試験です。2019年に開始されたばかりのカテゴリで、PHPの最新バージョンである7に対応した出題範囲となります。
PHP7はPHP5と比較して新機能や新たな関数が追加されており、互換性を維持しながら2倍以上の実行速度を実現しています。約10年ぶりのメジャーアップデートで、今後はPHP7が主流となっていくでしょう。
これから試験に向けて勉強する方はPHP5技術者認定初級試験ではなく、最新バージョンに対応したPHP7技術者認定初級試験を受験することを強くおすすめします。
PHP技術者認定は設立からの歴史が浅く、企業からの需要について疑問視する方もいるかもしれません。しかし、PHP技術者認定試験は、経済産業省が定めるITスキル標準(ITSS)に掲載されており評価に値する資格と言えるでしょう。
PHP技術者認定試験を運営するPHP技術者認定機構も、株式会社オライリージャパン、ニフティ株式会社、日本マイクロソフト株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社と有名企業が特別協賛会社として名を連ねています。
ではPHP技術者認定を取得すると、実際にどのようなメリットが考えられるのでしょうか。資格の需要や将来性、向いている人について解説します。
PHPは今やWebサイト制作に欠かすことのできないプログラミング言語の一つです。日本国内でPHPを習得しているITエンジニアは10万人を超えています。そして、PHPの技術習得度合いを測る唯一の資格がPHP技術者認定です。
PHP技術者認定は、IT企業の中でも特にWebサイトを制作する企業からの需要が高い資格と言えるでしょう。実際にIT企業の中には、PHP技術者認定に関して受験補助や資格手当を設けている企業もあります。就職や転職においても、PHPのプログラミングスキルをアピールするために役立つはずです。
今後、情報化社会のさらなる発展に伴い、Webサイト制作の市場も大きくなるでしょう。WebサイトのサーバーサイドではPHPの採用率が非常に高く、PHPを習得したITエンジニアの需要も高まっていくことが予想されます。
また、PHPは簡単にWebサイトを制作できるWordPressとの関りが強く、ITエンジニアにとって非常に重要なプログラミング言語の一つです。今後誰もがインターネットを利用する社会において、WordPressと共に将来性についても期待できるでしょう。
PHP技術者認定の資格取得に向いている人は、大きく3パターンに分けられます。
1つ目は、Webサイトを制作する企業へ就職したい場合です。Webサイト制作でプログラミングを担当するITエンジニアにとって、HTML、CSS、JavaScript、PHPの習得は必須と言えます。特に、サーバーサイドの処理をプログラミングできるPHPの知識は業務で役立つでしょう。
2つ目は、PHPプログラミングに関して実務経験豊富なITエンジニアが転職を考えている場合です。資格はプログラミングに関して一定の技量を証明できます。特に準上級や上級は取得が難しく、貴重な人材であることをアピールできるでしょう。
3つ目は、現在勤めている企業で年収アップに繋がる場合です。IT企業の中には資格手当を設けている企業も多く、収入の増加に繋がる可能性があります。自社の資格手当について把握していない方は、一度チェックしてみましょう。
実務でPHPをプログラミングしている場合、PHP技術者認定初級は問題なく取得できるはずです。しかし、PHPの実務経験がない場合やPHP技術者認定上級・準上級を取得する場合には勉強が必要となるでしょう。
PHP技術者認定に向けての勉強法としては、主に独学、通信講座、プログラミングスクールと3つの方法に分類できます。それぞれの勉強の進め方や費用について詳しく解説します。
PHP技術者認定試験は、主教材としてオライリージャパン「初めてのPHP」が指定されているため、独学でも勉強を進められます。オライリーのコンピュータ技術書籍はITエンジニアの間でも定評があり、実践的なプログラムを組むうえでも役立つでしょう。
ただし、オライリージャパン「初めてのPHP」は初心者にとって難しく、初めてPHPを学ぶ場合は苦労するかもしれません。勉強を進めていて難しいと感じた場合は、もっと簡単な参考書を選んでみましょう。さらにもう一冊、試験対策として問題集を購入することをおすすめします。
独学は出費がテキスト代と受験料だけで済むため、費用の面では最も安くなります。自分の理解していない項目だけ勉強することも可能なので、働きながら資格を得たい方に適した方法です。
インターネット上には多くのオンラインプログラミング学習サービスが存在します。PHPはメジャーなプログラミング言語であり、オンラインプログラミング学習サービスでも勉強を進めることが可能です。
しかし、PHP技術者認定試験対策に特化して学習できるサービスはほとんどありません。資格取得を目指す方は、通信講座でPHPを勉強した後に独学での試験対策が必要でしょう。
オンラインプログラミング学習サービスは、月額1,000円前後から受講できるため、費用面ではプログラミングスクールに通うより安く済みます。プログラミング初心者がWebサイト制作の基礎を勉強する際におすすめできる方法です。
プログラミングスクールは、教室で講師が授業する形式です。プログラミングスキルを確実に身に付けるためのテキストやカリキュラムが用意されているため、プログラミング初心者でも受講できます。さらに、同じ内容を勉強する生徒が集うため、負けられないという気持ちを持つことでモチベーションの維持にも繋がるでしょう。
プログラミングスクールの中には、PHP技術者認定試験の認定スクールが存在します。認定スクールは認定インストラクターによるPHP技術者認定試験対応コースが設置されており、試験対策のための勉強を効率的に進められます。
また、PHP技術者認定機構の認める学校に在籍する生徒は、PHP技術者認定試験を学割価格で受験できます。学割価格は一般価格の半額となっており、受験料に関して安く済みます。資格取得を主たる目的として考える方におすすめの方法です。
PHP技術者認定試験の概要や難易度、勉強法について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。PHP技術者認定初級の取得はさほど難しくないことや、ITスキル標準(ITSS)に掲載された評価に値する資格であることがご理解いただけたかと思います。
PHPの学習を始めたばかりの方であれば、まずは「PHP7技術者認定初級」の取得を目指すことをおすすめします。PHPに関する幅広い知識が求められるため、項目別の習得度合いを把握できるでしょう。また、PHP7はこれから普及が進むことが予想されており、ITエンジニアとしての需要も期待できます。
資格取得の勉強は大変ですが、試験に合格すれば確実に結果として残ります。IT業界は急速なスピードで進化していくため、ITエンジニアとして取り残されないように、常に新しいスキルを身に付けていきましょう。