IT業界の人手不足もあり、ここ数年でプログラミングスクールが急激に増えています。Web業界やSlerを中心に未経験者を積極的に採用する企業も少なくありません。
しかし、プログラマーは、AIの台頭で将来がなくなる仕事の代表格に挙げられています。他業種ではコロナの影響で採用活動を中止した企業もあるので、今でもプログラマーの求人数が多いのか気になるところです。
今回は、最新のプログラマー求人の動向やプログラマーの将来性で不安なところ、市場価値を高めるために身につけるべきスキルを紹介します。
結論を言うと、プログラマーの求人数はコロナ禍の影響を受けていません。転職サイトdodaで最新のITエンジニアの有効求人倍率を調べてみると、8.64倍と高水準を保っているからです。全業種の有効求人倍率が2.03倍なのに対し、ITエンジニアの求人数は4倍以上あるので、プログラマー求人もコロナ禍で減ってないと判断して問題ないでしょう。
経済産業省の調査によると、2020年の時点でIT人材は約30万人に不足しており、10年後の2030年には45万人の不足が予測されています。現にギークリーやFindyなどIT業界専門の転職サービスが登録企業に「コロナ禍における採用活動」に関するアンケートをとったところ、約9割の企業が採用活動を継続しています。オンライン面接にも積極的で、採用時のオファー年収を下げる企業もほとんどありません。
IT業界全体で人材が不足しているため、当面はプログラマーの将来性はあると考えてよいでしょう。
新聞やニュースでIT人材の不足は叫ばれているものの、なぜプログラマーの将来性はないと言われるのでしょうか?プログラマーの将来性で不安なところを3つ紹介します。
IT業界は人手不足の業界なので、他業種と比べて40代でも積極的に採用する企業が多い傾向にあります。しかし、プログラマーの採用を積極的に行うWeb系企業やSlerが求める人材は人件費の安い20~30代の若手であり、40代のベテランプログラマーではありません。特にWeb系企業は会社全体の平均年齢が若いので、「年上は扱いづらい」という理由で40代以上のプログラマーは敬遠されるでしょう。
また、40代になると体力が低下し、20代の若いプログラマーと比べて最新の技術をキャッチアップするのが難しいと言われています。
AIによるプログラミングの自動化も、プログラマーの将来性を不安に思う理由の1つ。設計したいWebサイトの画像から、AIがHTMLで自動生成し、Webサイトを完成させた事例がすでにあるからです。ただし、現時点でAIが得意なことは、人間が決めたルールに基づいた一定の作業や大量のデータ処理です。まだ、人間のように自分の頭で考えて作業はできません。あらゆるWebサイトをAIが自動生成するには、もう少し時間がかかるでしょう。
ただし、プログラミングの基本処理は「順次処理」「繰り返し」「分岐」の3つの作業しかありません。プログラム言語により文法の違いはあるものの、基本処理は変わりません。技術が発達すれば、AIによるプログラミングの自動化が進み、人間の手でコーディングする機会は一気に減るでしょう。
近年、ノーコードツールやローコードツールと呼ばれるコーディング不要のシステム開発ツールが増えています。ローコードツールは一部機能でコーディングが必要になるものの、高度な開発スキルを必要としません。ツールに組み込まれたパーツをドラッグ&ドロップで配置すれば簡単に開発できるため、開発スケジュールを大幅に短縮できます。日本初のノーコード・ローコードツールのBOLTでは、発注から最短3週間でシステムが完成します。
コーディングが不要なので、システム完成後にコーディングミスによるバグが発生しません。ツールに標準搭載されたパーツを組み合わせて使うため、不具合もほとんどないと言われています。
特にローコードツールは、既存のクラウドサービスとの連携が可能で用途も制限されていません。自社業務に合わせて柔軟にカスタマイズができるので、今後、様々な用途で活用されると個人的に予想しています。
今後、ノーコードツールやローコードツールがどれだけシステム開発の現場で活用されるかわかりません。しかし、IT技術は常に進化するので、そう遠くない未来にコーディングなしのシステム開発が主流になる可能性は十分に考えられます。今後のキャリアを考え、コーディング以外にスキルも身につけておいた方がよいでしょう。
AIやノーコードツール・ローコードツールの発達で、コーディングをする機会は減ると紹介しました。しかし、専門家の意見を見ると、技術が発達しても完全にコーディングがゼロになるわけではないようです。他のスキルも身につけつつ、需要があり汎用性の高いプログラム言語を勉強しておくとよいでしょう。
レバテックキャリアの調べによると、各転職サイトで求人数が多いプログラム言語は、下記5つと判明しています。
AI開発で重要な役割を果たすことから、2020年以降の基本情報技術者試験から午後問のプログラム言語の出題範囲がCOBOLからPythonに変更されました。そのため、Pythonの需要は将来増えると予測できます。
Pythonは海外で非常に人気の高いプログラム言語で、GoogleやYouTube、Yahooなど大手IT企業のシステム開発に使用されています。AI以外にもWebシステム、デスクトップアプリ、組み込み開発などにも使用される汎用性の高いプログラム言語です。文法も簡単でライブラリが豊富にあるので、勉強しておいて損はないでしょう。
Web開発の場面でよく使われるPHPやRubyもしばらく需要があると予測されています。2つとも未経験者がとっつきやすいプログラム言語なので、Web開発に携わりたい人は勉強することをおすすめします。
今、国の方針であらゆる業界でDXへの取り組みを急ピッチで進めている状態です。DX推進に必要とされる技術を身につけておくと、将来、仕事に困ることはないでしょう。また、IT人材の中でも特に人手不足の分野のスキルを身につけておくと、年齢が上がっても仕事探しに困ることはありません。
今後、プログラマーが身につけておくと、長く活躍できるスキルを5つ紹介します。これからプログラマーになりたい人はぜひ参考にしてみてください。
DX推進には、業務データの分析が必要不可欠です。業務データを分析する際に使用するIT技術がAI。AIが注目されているのは、データベースに保存できない文書、画像、音声、動画など非構造型データも業務分析に利用できるからです。しかも、一度に大量のデータが分析できます。
AI開発ではPythonやRと呼ばれるプログラム言語が使用されます。PythonやRと合わせてAI開発に必要な下記スキルも身につけておくとよいでしょう。
IoTもDX推進に欠かせない技術の1つ。IoTとはモノのインターネットです。パソコンやスマートフォンだけでなく、家電、健康機器、車などあらゆるものをインターネットに接続し、AIで業務分析するのに必要なデータを収集します。
IoTはモノに搭載したセンサーや通信チップからデータを収集するため、CやC++、Javaなど組み込み系システムで使われるプログラム言語をマスターしておくとよいでしょう。また、インターネット経由で通信するため、ネットワークの知識も欠かせません。
DX推進のため、メインシステムをAWSやAzureなどクラウドに移行する企業が増えています。クラウドの知識があると、将来、活躍の場が増えるでしょう。
AWSやAzureなどクラウドは、従来のオンプレミスと違いサーバを調達することなく、短期間でシステムを構築できます。システムが不要になったらボタン1つで削除可能です。負荷が集中したら自動でリソースを拡張、縮小する機能もあるため、常にシステム構成やリソースが変化します。また、APIによるインフラの制御も可能です。
こうしたクラウドの特性から、今、SEやプログラマーなど開発エンジニアは、開発の際に常に変化するシステム構成やリソースの動きを考慮したシステム設計が必要とされています。そのため、クラウドと合わせてインフラの知識も一緒に勉強しておきましょう。
セキュリティ人材も不足しているため、セキュリティの知識があるプログラマーも転職市場で歓迎されます。IT技術の進化やDX推進により、企業が扱うプラットフォームの種類が、パソコンやサーバ以外にモバイルやSNS、クラウドと増えてきました。それに伴い、サイバー攻撃の種類も多様化したからです。コンピューターウイルスは、プログラムやモジュールの脆弱性をついて攻撃してくるケースが多いです。セキュリティを意識したシステム設計や実装ができるプログラマーは、どの職場にいっても重宝されるでしょう。
今、プロジェクトマネージャーのスキル不足も深刻な問題となっているので、マネジメントスキルのあるプログラマーも需要があります。
プロジェクトマネージャーは技術力以外にも、コミュニケーション能力、マネジメントスキル、プレゼンスキルなどヒューマンスキルも欠かせません。
リサーチ会社のネオマーケティングが実施した「プロジェクト推進に関する意識調査」によると、プロジェクトマネージャー経験者の38%が「自分が原因でプロジェクトが迷走・炎上した」と回答しています。
炎上理由を詳しく聞いてみると、「プロジェクトメンバーとの合意形成ができなかった」「進捗を見える化しなかった」「計画・目標設定能力が足りなかった」など、自身のスキル不足が上位を占めています。
また、プロジェクトメンバーにも「プロジェクトマネージャーのスキル」を質問したところ、7割弱の人が「スキル不足の人が多い」と感じています。
マネジメントスキルを磨き、プログラマーからSEに、SEからプロジェクトマネージャーにステップアップすると、年齢が上がっても活躍できるでしょう。
IT人材が不足しているため、コロナ禍で景気が低迷しても、当面はプログラマーの将来性はあると予測されます。しかし、20~30代の若手プログラマーを希望する企業が多いため、人手不足のIT業界でも40歳以上のプログラマーは転職市場で不利なことに変わりありません。AIによるプログラミングの自動化やノーコード・ローコードツールの発達により、コードを書くだけのプログラマーは活躍の場が減る可能性も十分に考えられます。
そのため、プログラマーとして長く活躍するなら、DX推進に必要もしくは人手不足の分野の下記スキルを身につけておきましょう。