セールスエンジニアは巷の噂通り、本当にきつい仕事なのでしょうか?
某大手有名企業に勤めるやり手技術営業(40歳)を例に、実際はどういう仕事なのか、現場の声を拾ってきました。
“あるコツ”さえ掴んでしまえば、キャリアパスが開けるセールスエンジニアの実態についてご紹介します。
IT系のエンジニアといえば、終日パソコンと向き合いながら長い時間机や椅子にかじりついて仕事をするイメージです。
しかしセールスエンジニアの場合は、ITエンジニアと同じく「エンジニア」という名前がつくものの、同じ場所で長時間作業をする業種ではありません。
セールスエンジニアの主な仕事は「顧客とやり取りすること」です。アポイントを取った顧客とミーティングをセッティングした後、交渉が成立した場合、諸々の資料(発注書や設計書)を準備して、最終的にはバグのないシステムを期日に合わせて納品する。ここまでの管理を担います。
シンプルにいうと「営業+プロデューサー」のような役割です。
セールスエンジニアは顧客と契約した案件について、設計書の大枠の部分を作成する工程までは会議に参加しますが、詳細について詰めるようになる頃からはフィールドエンジニアにバトンタッチします。つまりセールスエンジニアは技術的な部分、構築作業などには一切関わりません。
その点は気楽なのですが、だからといってセールスエンジニアにITの技術的な知識が必要ないのかというとそうではありません。理解していないと顧客に良い内容を提案することができないので、むしろコンサルティングができるくらいの技術力や知識を身につけていた方が有利です。
知識のあるセールスエンジニアは顧客から「こいつは使える」と重宝され、次々と契約を獲得することができるでしょう。
Point技術力や知識を身につけると有利
セールスエンジニアが担当する顧客にはどんな人がいるのでしょうか?IT技術に詳しい優秀な人たちばかりなのではないかと予想する人もいると思います。しかし実際は現場ごとに千差万別です。思っているよりも遥かに色々な方がいらっしゃいます。
例えば顧客が総務部の人だったというケースではほとんどITについて知識がないという場合があります。またそれとは逆に顧客がバリバリの技術担当者だったというケースでは、仕様や設計に関する詳細な質問が飛んでくるので、セールスエンジニアはそれに対抗できるプロフェッショナルな深い知識が求められます。
知識がない顧客には分かりやすい言葉で説明が必要だったり、逆にスキルの高い担当者の場合は専門用語やトレンドなどを織り交ぜながら匠に話を進めていかなければなりません。つまり相手のレベルに合わせた説明するスキルが求められるのです。
結局、セールスエンジニアは営業としてのコミュニケーション能力と、エンジニアと対等に会話ができる技術的な知識の両方が求められます。
Pointコミュニケーション能力と技術的な知識の両方が求められる
他にもセールスエンジニアには、細かい作業として見積書の作成など契約書を中心に資料を作成する仕事があります。実際に手を動かすのはアシスタントになると思いますが、基本的には顧客から依頼されたその日中に書類を作成しメールで添付するのが暗黙の了解になっています。
急いで作った見積書が実は後から実行不可能だったなんてことはご法度ですので、できるだけ早く対応するためには予め社内稟議が通った状態で待機しておかなければなりません。恐らくこういった内容の書類が必要になるだろうと予測できる力があるかどうか。そういった能力がセールスエンジニアの評価を左右するでしょう。
顧客の多くはできることなら最新の機器を使ってみたい、他の部署が導入していないテクノロジーをいち早く取り入れてみたいと思っています。実際はそんな予算もマンパワーもないため、実際に実行される割合は低いのですが、取り敢えず話だけでも聞きたいくらいの雰囲気で会議にやってきます。
そんな時はダメ元でも何か新しい情報を提供しなければなりません。その為には毎日、最新のトレンドや動向は何か、チェックしなければならないのです。
もしも顧客が新しい機器に興味を持った場合、次のような質問が嵐のようにやってきます。
顧客は頭に思い浮かんだ質問をどんどんとセールスエンジニアに投げかけるので、システムに合わせて答えを用意しておく必要があります。だから技術営業はきついといわれてしまいがちなのですが、実は新卒でも乗り切れる技があります。
それは「全ての質問に完璧に答えようとしないこと」です。顧客からの質問はカテゴリー別に分けてざっくりと解釈し、自分の用意した答えに誘導していきます。それでも顧客が満足しない場合は、無理せずに「社内に戻ってメールでご回答差し上げます」と答えておけばいいのです。
そもそも全てのIT知識を網羅している人なんてこの世に存在しません。あのスティーブジョブスでさえも確認しなければ分からない部分もあるのです。新卒だからとか、プリセールスエンジニアならそれくらいできて当たり前などと頭でっかちになり過ぎず、結果、顧客ファーストになるよう誘導していけばいいのです。
経験が浅い内の勉強はつまらないかもしれませんが、仕事の契約が一つでも成功すると、どんどん面白くなるはずです。
一般的な営業職とは仕事内容が異なるセールスエンジニアですが実は一般的な営業職と同様にノルマや納期が課せられるケースがあります。セールスエンジニアにはセールスという名前が付くだけあって、できるだけ多くの案件や多額の契約を取れば取るほど評価は上がります。
セールスエンジニアがきついのは営業のノルマが達成できたからといって終了ではない点です。顧客に納品するまでのシステム設計・構築のスケジュールを管理しなければなりななりません。
想定外のバグが起きたり、構築途中で顧客のシステム構成と機器の仕様に問題があり、当初予定していたA案からB案に変更しなければならない、なんてケースもあります。そんな時は納期を遅らせても構わないか、顧客と交渉しなければなりません。
優秀なセールスエンジニアなら、最初から良い提案ができるので、その後の設計・構築もスムーズに進み、毎日残業なしで帰宅することができます。しかしそうでないセールスエンジニアなら、毎回トラブルが起きて、常に長時間労働を強いられるかもしれません。
ここまでの内容を想定してみるとセールスエンジニアはやはりきつい仕事なのではないかと思われるかもしれません。
しかし顧客とのコミュニケーションが苦ではない人や、毎日同じ時間に満員電車に乗って出社するのが苦手な人、ITの深い知識はないけれど浅くて広い知識なら持っているというタイプには意外と向いている仕事です。
というのも、セールスエンジニアはコツさえ掴んでしまえば、資格が必須でもありませんし、継続案件が貰える太い顧客ができ始めると、意外と悠々自適な時間が多くなります。直行直帰など自由な時間が増え始めるのです。
例えば「今日の夜は私用で遅くなるから明日の朝はゆっくり出勤したい」なんて日はフレックスを使います。会社には「顧客からの要望があって明日は直行します」などと理由付けしておけば問題ありません。社内では「あの人は優秀なセールスエンジニアだから忙しそうだね」くらいに思われ意外と自由な時間が作れるのです。
毎日同じ時間、12時から13時の間にランチに行くと、混雑した店内で慌ただしい食事になります。しかし営業後にゆっくりランチとなれば13時以降になる。空いている店内で時間に追われることなくゆったりと食事を楽しめます。
セールスエンジニアは全ての知識を網羅して頑張ろうとするとつらく、きつい仕事になってしまうかもしれません。しかし予め顧客からの質問内容を予想したり、社内に戻ってから返答するなど、時と場合によって何を話すべきかが使いわけられるようになれば、次第に楽になっていく仕事です。
浅くて広い知識は必須ですが、そこからキャリアパスを駆け上がるのに必要になるのは、要点を掴むセンスがあるかどうかです。ある程度のセンスがあれば、あとは見積書や保守の更新などの書類を正確かつ迅速に準備していれば評価は上がっていくでしょう。
もし自分はITの知識が十分ではないけれどもコミュニケーション能力があって仕事は常に正確だという方はセールスエンジニアが天職なのかもしれません。