SE(システムエンジニア)は、リモートワークでも働ける柔軟性の高い仕事として人気の職種です。
一方で、SEは「難しそう」「理系しかなれない」など、難易度の高いイメージを持たれがちでもあります。興味はあるものの、「未経験だから」と一歩踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、未経験からSEになることは可能です。ただし、「稼げる」SEを目指すのであれば、正しい手順を踏んで努力する必要があります。
この記事では、未経験からSEを目指す人に向けて、現役エンジニアである筆者が「失敗しない手順」を徹底解説します!
「なんとなく大変そう」といったイメージで語られることの多いSEですが、実際にはどのような仕事をしているのか見ていきましょう。SEの仕事内容やSEを取り巻く状況を見れば、それほど難易度の高い仕事ではないことが理解できるはずです。
SEの仕事は、IT(情報技術)を駆使して、システムの開発や保守・運用、コンサルテーションや提案などを行うことです。また、それによって会社や社会、国家に新しい仕組みと付加価値を創造し、IT時代をけん引する役割を担っています。
SEとひとくちに言っても、
など、専門スキルや領域によってさまざまな種類があります。
また、携わるシステムには製造・金融・流通・サービス・公共など数多くの業界があり、大規模システムから小規模システムまで規模もさまざまです。
近年はインターネット技術の向上により、Web系エンジニアの需要が高まっています。未経験からSEを目指すのであれば、ウェブサイト構築をはじめとするWeb系エンジニアを目指すのが最も近道と言えるでしょう。
SEをはじめとするIT業界の職種は、「理系出身者のほうが有利」と言われることがあります。では文系出身者はSEになれないのかというと、まったくそんなことはありません。筆者は某私大の文学部史学科(日本史学専攻)出身で、大学時代にプログラミングなどやったこともありませんでしたが、現役SEとして10年以上問題なく働けています。
文系の皆さん、どうか胸を張ってSEを目指してください。文系だろうと理系だろうと、「SEとして生きていく覚悟があるか」「技術を習得する努力ができるか」がSEになるためのカギです。
また、よく勘違いされるのが、「SEにコミュニケーションスキルは必要ない」という考え方です。
SEは一日中パソコンとにらめっこしていることが大半ですが、仕事はプロジェクト単位のチームプレイであり、コミュニケーションスキルは必須です。逆に言えば、未経験者であってもコミュニケーションスキルが高い人は、技術を磨く努力をすればSEとして十分に戦っていけます。
未経験者の転職にも人気のSEですが、実際どのくらいの収入なのでしょうか。
参照:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、IT関連職種の平均月収、およびそこから算出した平均年収は以下のようになっています。
分類 | 該当する職種 | きまって支給する現金給与額(※1) | 年間賞与、その他特別給与額 | 想定年収額(※2) |
---|---|---|---|---|
システムコンサルタント・設計者 | システムコンサルタント、システムアナリスト、情報処理プロジェクトマネージャなど | 447,700 | 1,963,600 | 7,336,000 |
ソフトウェア作成者 | テクニカルスペシャリスト、プログラマー、CGプログラマー、社内システムエンジニア、クリエータ(情報通信産業に関するもの)など | 353,300 | 990,100 | 5,229,700 |
その他の情報処理・通信技術者 | ITサービスマネージャ、システム保守技術者、サーバー管理者、情報セキュリティ技術者、電気通信主任技術者、電気通信施設技術者、有線電気通信技術者、無線電気通信技術者など | 370,000 | 1147,800 | 5,587,800 |
「職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」内における「企業規模計」が10人以上の項目、および「役職及び職種解説」をもとに作成
※1:給与の総額。消費税や社会保険料などを控除する前の金額。
※2:「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与・その他特別給与額」で算出
SEは上記の分類では「ソフトウェア作成者」に該当し、年収の平均は530万程度となります。その他の職種はマネージャ職となり、SEよりやや高い年収を得ている実態が分かります。
*参照:国税庁『民間給与実態統計調査(2021年分)』によると、全体の年収平均は443万円。これをSEの年収と比較すると、やや多めであると言えます。
専門スキルや実績を積めば特別手当てなども期待できるため、努力次第でさらに高い年収を見込むことができるでしょう。
*参照:経済産業省『IT人材需給に関する調査(概要)』が2018年に出した試算によると、日本におけるIT人材不足は今後深刻さを増し、最悪のシナリオとして2030年までに79万人のIT人材が不足するとされています。
人口が減少する一方、IT化はさらに加速の一途をたどるため、IT人材はさらに必要になります。従来のままの市場構造では人材の供給が追い付かず、日本のIT革新が止まってしまう可能性すらあるのです。
とりわけシステムの中核を担うSEは重要な役割を果たすため、国を挙げての人材育成が大きな課題になっています。
SE業界は今「超売り手市場」とも言うべき状態で、数に限りのある優秀な人材を複数の企業が奪い合っています。そのため、ある程度のスキルと実績を有したSEが転職活動をすれば、希望に沿った企業の内定を獲得することができます。
筆者は結婚・出産のためにSEを一度引退しており、やや長いブランクがありますが、数年前に転職活動を始めたところ、面白いくらいの数のオファーが来ました。
「ブランクがあっても経験者が欲しい」という市場ニーズ、それほどまで深刻にSEが人材不足であるという事実を物語っています。自らの転職活動に可能性を感じた瞬間でもありました。
求人情報サイトdodaが発表している2022年9月の有効求人倍率を見てみると、IT・通信業界は5.97となっています。
全体の求人倍率が2.11であることと比較すれば、IT・通信業界はその倍以上の差があることが分かります。
もちろんこの中にはSE以外の職種も含まれますが、IT業界全体が人材を欲している現状が見て取れるのです。
未経験者がSEを目指すための手順について解説します。3つの手順に沿って進めましょう。
技術職であるSEは、技術力があってこそ価値が高まります。SEを目指すなら、まずは最低限のプログラミングスキルを身に付けましょう。
プログラミングスキルは、独学でも習得可能ですが、継続する自信がないというならプログラミングスクールという方法もあります。スキルは一朝一夕には身に付かないものなので、自分が継続して学習するためにはどの方法が有効かをよく考えて検討するとよいでしょう。
近年のSE業務の多くは、ウェブに関連した内容です。初心者にも習得しやすいものが多いので、未経験からSEを目指す人にはおすすめです。
バージョン管理システムプラットフォームであるGithubは、毎年世界で人気のプログラミング言語を*参照:GitHub『Top Language Over The Year』として発表しています。2021年の最新トレンドを見てみましょう。
第1位:JavaScript
第2位:Python
第3位:Java
第4位:TypeScript
第5位:C#
第6位:PHP
第7位:C++
第8位:Shell
第9位:C
第10位:Ruby
第1位のJavaScriptは、ウェブサイト制作のために必要なHTML/CSSとペアで必ず習得しておきたい言語です。
第2位以降のPython、Java、C#やPHPなど、他の言語と組み合わせて利用されることが多く、Web業界では基本の知識とされています。近年はスマートフォン向けのアプリ開発に利用されることが多いため、習得しておけばフロントエンドエンジニアとして活躍できる道もあります。
初心者が学習しやすい言語としておすすめしたいのは、第6位のPHPです。
サーバサイド言語でありながら、他の言語と比べると構造や環境構築が容易なので、初心者でも挫折しにくいとされています。
また、ウェブサイトを作成できるCMS(コンテンツマネジメントシステム)として人気のWordPressは、PHPで作られています。PHPを習得すれば、WordPress案件に関わることもできるのです。
システム開発において、プログラミングスキルと同等に必要なのが、データベースに関する知識です。
PHPなどのサーバサイド言語は、データベースと組み合わせて利用されるのが一般的なので、最低限の知識を身に付けておきましょう。
具体的には
などです。
データベース管理システムの中にはMySQLやPostgresSQLのように無料のものがあるので、学習の一環として習得しておくことをおすすめします。
プログラミング学習を進めながら、学習成果としてのポートフォリオを作成しましょう。
SEの転職活動において、大切なのはスキルと実績です。しかし未経験者にはSEとしての実績がまだないので、代わりに学習成果をポートフォリオで示す必要があるのです。
転職活動で示すポートフォリオは、「家でちょっと勉強しました」レベルのものでは実績として意味を成しません。商品レベルに近いポートフォリオほど担当者の目に留まりやすく、SE転職への近道になります。企画力や技術力、プレゼンテーション力を発揮して、精度の高いポートフォリオを完成させてください。
SEは技術職ですが、実はコミュニケーションスキルが必要です。プロジェクトに入って業務を進めるにあたってはチームのメンバーと、上流工程に携わるなら顧客とコミュニケーションを取らなければなりません。
相手に応じて適切な距離を保ってコミュニケーションを取れるよう、日ごろから意識的に訓練しておきましょう。
コミュニケーションと聞くと「対面での直接のやり取り」を思い浮かべますが、新型コロナ禍の外出自粛期間を経て重要度が増しているのが、テキストコミュニケーションです。
テキストコミュニケーションとは、ChatworkやSlackなどのビジネスチャットを利用したテキストベースでのやり取りを指します。メールとは異なり、リアルタイムで手早くやり取りすることができ、実際に会話をしているかのようなスピード感を味わうことができます。
SEは仕様やプログラミングで考えることが山積みなので、コミュニケーションは「なるべく手早く済ませたい」ものです。それゆえ、テキストコミュニケーションを活用することで時間を有効に活用できるようになります。
テキストコミュニケーションも含めたコミュニケーションスキルは、実際に業務で使っていく中で少しずつ磨かれていくものです。転職活動を終え無事SEになれたあかつきには、積極的にコミュニケーションスキルを養っていきましょう。
SEがコミュニケーションにおいて抑えておくべきポイントは、「相手に対して配慮する姿勢を持つこと」です。
特にテキストのみのやり取りはこちらの意図が相手に伝わりにくく、何気ない一言でも「怒っているのかな?」と勘違いされることがあります。どうやったらこちらの意図が相手に伝わりやすくなるか、コミュニケーションを円滑に取れるかを考え、努力することが大切です。
SEとリモートワークは、親和性の高い組み合わせです。実際にリモートワーク中の筆者の体験をもとに、SEとリモートワークについてご紹介します。
新型コロナ禍の外出自粛要請を受け、多くの企業はリモートワークという新しい働き方への切り替えを余儀なくされました。
*参照:総務省『令和3年版テレワークの実施状況』によると、緊急事態宣言発令後、全体の25%程度の企業が業務をリモートワークに切り替えたとされています。なかでも突出してリモートワーク率が高かったのが、情報通信業の55%でした。
IT業界の多くは「パソコンさえあれば仕事ができる」状況のため、このような結果になったと考えられます。つまり、SEとリモートワークは非常に相性がいいということに他なりません。
現役SEである筆者も、緊急事態宣言発令が決まった日に「明日からリモートワークにして」と言われ、在宅で働くようになった一人です。
SEがリモートワークをするうえで必要なものをご紹介します。人によって必要なものは異なりますが、最低限必要なものを集めました。
通常、会社から貸与されるものです。
ノートパソコンのモニターは小さめで見にくいため、在宅での作業であれば大きめのモニターがあると作業しやすくなります(置く場所があれば、ですが)。
筆者は出勤時に2つのモニターで作業をしていたため、ノートパソコンに加えてモバイルモニターを貸与してもらっています。
リモートワークではビデオチャットや音声チャットを使用してコミュニケーションを取るので、ヘッドホンとマイクが必須です。
筆者はリモートワーク当初、ヘッドホンを会社から持ってくるのをすっかり忘れてしまい、仕方なく家にあった安物を使っていました。しかし、使用頻度が高いためか、すぐに壊れてしまい、慌てて会社からLogicoolのヘッドホンを支給してもらったという経緯があります。
安物のマイクは雑音が多く聞き取りにくいので、もし自分で用意する場合には製品選びにも気を付けたいところです。
在宅での作業にはインターネット環境が不可欠です。リモートワークのタイミングで、使っているWi-fiルーターとインターネット回線を見直してみるとよいでしょう。
ルーターは、一度購入すると意外と買い換える機会が少ないものです。しかし、インターネット回線速度が進化しているのと同様に、ルーターも進化しています。古いものを使っている場合は、買い替えを検討してください。
在宅ワークで最も重要な課題かもしれないのが、作業場所です。仕事とプライベートをうまく分けるために、できるだけ生活と切り離したスペースを確保することをおすすめします。
仕事用の部屋を用意できないというなら、パーティションで区切るなどして「部屋っぽい」スペースを作るとよいでしょう。筆者はリビングの一角を仕切って仕事スペースにしています。
一日中座っていることが多いので、イス選びにも配慮が必要になります。やや値段は張りますが、ゲーミングチェアは長時間座っていても負荷が少なくておススメです。
一日中パソコンに向かっていることが多いSEは、もともと心が病みやすい仕事です。
そのうえ、納期前などは一時的に激務になることもあり、残業や休日出勤で体調を崩してしまう人もいます。
リモートワークは集中力を維持しやすい働き方ですが、同時に人とコミュニケーションを取る機会が極端に減ってしまいます。職業柄、とくにSEは注意が必要です。
厚生労働省は、「テレワークにおけるメンタルヘルスのための手引き https://www.mhlw.go.jp/content/000917259.pdf」というガイドラインを設定し、企業に対しても対応を呼びかけています。
メンタルヘルスを崩さないためには、たとえば業務の中で
といった行動を取るとよいでしょう。
家から一歩も外に出ない、誰とも会わない・話さないといったことを続けていると、メンタルヘルスに不調をきたしてしまいます。適度にストレスを外部に出してやることが大切です。
未経験からSEを目指すための手順は、
の3つであることをご紹介しました。
スキルを磨き、企業に認められれば、リモートワークなど自由な働き方を手にすることも可能になります。
未経験という不利な立場をうまく乗り越え、「稼げる」SEを目指していきましょう。