【生活支援員監修】視覚障害者が活躍できる仕事の見つけ方

視覚障害者が活躍できる仕事

視覚障害をお持ちの方やそのご家族の方は
①視覚障害を持っていたら、就職が難しいのではないか?
②視覚障害を持っていたら、できる仕事はかなり限られるのでは?
と思ったり。
③仕事を探したいけど、どうしたらよいかわからない。
と迷われている人も多いでしょう。

①と②に対する答えは、「その通り」です。
しかし、あくまで「身体障害の中では」であり、イメージよりずっと敷居が低いでしょう。
③に対する答えは、「探し方は簡単」です。

今回は視覚障害者が働く仕事と探し方について、具体的な仕事例も交えて紹介させていただきます。

視覚障害とは

まずは、視覚障害について知りましょう。
視覚障害と一言で言っても、症状は様々です。

まず、「障害程度等級表」というものが存在し、1級~6級まであります。
これは、視力の数値によって定められるものです。

以下は、すべて「障害程度等級表」で等級として表すことができます。

  • 弱視(矯正視力※が0.04以上0.3未満で、拡大鏡を使えば文字が読める状態)
  • 強度弱視(矯正視力が0.02以上0.04未満で、ぼんやりと物の形はわかる状態)
  • 盲(矯正視力が0.02未満で、まったく見えず、明暗がわかる程度の状態)
  • 全盲(まったく見えず、明暗もわからない状態)

※矯正視力…メガネやコンタクトレンズなどで矯正した状態での視力

上記のような視力障害とは別に、視野障害、光の加減によって現れる症状もあります。これは、数値で表すことはできません。

視野障害の症状としては、新聞や本の文字は読める視力はあるが、見える範囲が狭い(視野狭窄)ケースや、視野の左(右)半分が見えない(半盲)ケース、視界にところどころ見えない部分がある(暗点)ケースなどがあります。

光の加減で見えなくなる、見づらくなるという症状もあります。
例えば、明るい場所では見えるが、暗くなると見えなくなるケース、その逆のケースもあります。

視覚障害者の就業状況は?

では実際、視覚障害の方の求人数、就業者数はどのくらいなのでしょうか?
厚生労働省が発表した「平成30年度 障害者職業紹介状況等」の資料をもとに見ていきましょう。

以下、身体障害者のデータです。

①新規求職申込件数 ②有効求職者数 ③就職件数 ④就職率(①/③)
61,218人 92,824人 26,841人 43.8%

ちなみに、身体障害者全体の求職者に対する就職率(②/③)は、約28%です。

次は、平成30年度 視覚障害者の職業紹介状況です。

①新規求職申込件数 ②有効求職者数 ③就職件数 ④就職率(①/③)
4,759人
(重度 2,781人)
7,326人
(重度 4,375人)
2,040人
(重度 1,167人)
42.9%
(重度 42%)

全体の求職者に対する就職件数(②/③)は、約27%です。

これらデータから見ると、視覚障害者の就職件数は、身体障害者のうちの約7.6%で、
就職率(①/③)、就職率(②/③)ともに身体障害者全体より割合も低めになっています。

引用:厚生労働省『平成30年度 障害者の職業紹介状況等』

視覚障害の方が就いている仕事

では、就職した 2,040人 (重度 1,167人)の視覚障害者をお持ちの方々は、どのような職種についたのでしょうか。
、厚生労働省障害者雇用対策課が日本盲人会連合に対して提供した、「平成30年度のハローワークにおける視覚障害者の就職状況」という資料をもとに見ていきましょう。

    視覚障害者の仕事例

    • 専門的・技術的職業975件(47.8%)、うち重度1167件(64.6%)
    • 事務的職業301件(14.8%)、うち重度135件(11.6%)
    • 販売の職業38件(1.9%)、うち重度13件(1.1%)
    • サービスの職業222件(10.9%)、うち重度90件(7.7%)
    • 保安の職業26件(1.3%)、うち重度5件(0.4%)
    • 農林漁業の職業18件(0.9%)、うち重度5件(0.4%)
    • 生産工程の職業63件(3.1%)、うち重度24件(2.1%)
    • 輸送・機械運転の職業12件(0.6%)、うち重度1件(0.1%)
    • 建設・採掘の職業2件(0.1%)、うち重度0件
    • 運搬・清掃等の職業383件(18.8%)、うち重度140件(12.0%)

以上のデータを見て、どう思いましたか?
おそらく、「専門的・技術的職業」の割合が異常に多い、または「事務的職業」の意外な多さに驚かされた方も多いのではないでしょうか。

専門的・技術的職業が多い理由

専門的・技術的職業の主な内訳は、
「あんま・鍼・灸・マッサージ・ヘルスキーパー」が802件(39.3%)、うち重度647件(55.4%)です。

なぜこんなにも、「あんま・鍼・灸・マッサージ・ヘルスキーパー」を職業にしている方が多いのでしょうか。
それは、「視覚障害者は視覚以外の感覚が、一般人より優れているから。」です。

この強みを活かすため、盲学校や特別支援学校では理療師の国家試験合格のカリキュラムを設けているところがほとんどです。
視覚障害の「強み」を最大限に活かせる仕事であることは間違いないでしょう。

ちなみに、筆者が勤務している障害者支援施設には、重度の視覚障害+重度の知的障害の利用者がいます。

そんな重度の知的障害を併せて持った方であっても、目が不自由な分、手足の感覚はとても優れています。
この利用者に対しては、ADL※の維持向上のため、裁縫用の糸を細かな穴に通すという活動を支援方法の1つとして実施しています。
筆者や他の職員でもなかなかうまくいかない中、その利用者はほぼ毎回、一発で糸を穴に通しています。

このように視覚障害をお持ちの方は、目が不自由なぶん、他の感覚が優れています。

※ADL…日常生活動作。日常生活を送るための身体機能。

事務的職業が多い理由

次は事務的職業の多さについて解説します。

「視覚障害を持っている=事務的職業はできない。」と思っていた方は多いのではないでしょうか。
しかし実際は、データの通り、視覚障害をお持ちの方が就いている中で3番目に多い職業です。

なぜかというと、キー配列を覚えたり、視覚障害者用の支援ソフト(音声読み上げソフトなど)を使うことで、Excelを使用したデータ入力なども可能だからです。
そのため、重度の視覚障害の方であっても、事務的仕事は可能となります。

その他にも、電話オペレーターやプログラマーとして活躍されている方も多くいます。

就職・転職のポイント

では、次に就職・転職活動のポイントを3つ紹介させていただきます。

スキルを身につける

就職・転職活動中に、ほとんどの視覚障害者の採用枠がある企業との面接等で、
「できることはなにか?」と聞かれます。

その際に、答えられるようなスキルがないと、ほぼ確実に不採用となってしまうでしょう。
実際、説明できるスキルがない方はかなり苦労されています。

例えば、希望している職種が事務的職業の方の場合、PCの知識を得るために、独学や職業能力開発校に通って学ぶことが必要です。

前述の通り、視覚障害をお持ちの方は、就職するのが普通よりは難しいという事実があります。
そのため、希望した職種に合ったスキルを得ることが就職成功に最も重要な要素でしょう。

自分の視覚障害の特性を把握する

障害特性を把握した上で、自分のできること、できないことを説明できるようにしましょう。

就職後の一例として、自分が「強度弱視のため文字がまったく読めない。」という特性であるとします。
PC上のデータであれば、だいたいの文字は音声読み上げソフトで認識することができます。
しかし、紙の資料を読まなければならない場合は困ってしまいます。この際、同僚等に自分の障害特性を把握し説明できることで、負の感情を持たれずに、読み上げてもらったりデータで資料を渡してくれる等の手助けをしてもらえます。

自分に合った職場探しをする

視覚障害者の採用枠がある企業だとしても、視覚障害者に対してのサポートが少なかったり、周囲の理解が乏しい場合も大いにありえます。

就職・転職活動時は、

  • 音声環境が整っているか。
  • 視覚障害を持つ方が何人働いているか、または働いていたことがあるか。
  • 社員の視覚障害への理解はどのくらいあるか。

など、事前に質問しておきましょう。

一般の他の社員からすると「新入社員は視覚障害を持っている。」と事前に知らされていても、やはり多少戸惑ってしまうものです。
それを解消するために、自分から働きかけることは重要です。
しかし、前提として理解がなければ、打ち解けるのにも時間がかかってしまったり、最悪頑張っても改善すらされません。

視覚障害者の仕事の探し方

では、ここからは仕事の探し方について紹介させていただきます。
結論から言うと、以下の支援機関を使うことがメインになります。

ハローワーク

大多数の方は、ここで仕事を探すことがメインになると思います。
すぐに仕事を探すことができるでしょう。もちろん、障害者雇用枠での求人もあります。
ただし、障害者雇用で受け取れる助成金のみ目当ての企業もあるため、注意が必要です。そのような企業の場合、障害特性を理解していない、する気がないこともあるため、勤めることが苦しくなってしまう可能性が高くなります。

障害者就業・生活支援センター

ハローワークや行政機関、就労移行支援事業所等の福祉施設、特別支援学校などと連携し、障害をお持ちの方の就労支援・企業への雇用支援を行っています。

雇用前準備支援(就労相談、訓練、求職活動、企業とのマッチングなど)から、雇用後定着支援(本人・企業への定着支援、雇用契約の調整、就職後のフォローアップなど)まで手厚く支援してくれます。
事業所数は、全国に334センター(平成30年度)あるため、利用しやすいでしょう。利用料も無料です。

デメリットは、支援が手厚い反面、就職までに少し時間がかかることが挙げられます。

障害者職業センター

障害者の職業的自立を促進・支援するため、職業リハビリテーションの実施・助言・援助を行っています。
障害職業カウンセラーや相談支援専門員、ジョブコーチなどが配置されているため、専門性の高い手厚い支援を受けられることが特徴です。利用料も無料です。

デメリットは、事業所が全国52ヵ所と少ないこと、支援が手厚い反面、就職までに少し時間がかかることが挙げられます。

障害のある方専門の求人サイト

これは、上記で仕事探す+αとして活用されると良いでしょう。
活用することで、就職先の選択肢が広まります。

求人サイトの1つとして、dodaチャレンジという障害のある方専門の求人サイトがあります。

以下、視覚障害をお持ちで、dodaチャレンジを利用し、就職・転職に成功した方の感想や体験談です。

「キャリアアドバイザーの方が丁寧かつ熱心に支援してくれた」
「就職に苦労した苦い経験があるけど、キャリアアドバイザーの方のおかげで転職活動を前向きに行えた」
「自分に合った仕事があると、すぐに紹介してくれた」
「転職先で困らないようにと、『私の取り扱い説明書』を作ってくれた」

あくまで感想や体験談の一部です。実際はさらに多くの喜びの声があります。
仕事探しの+αとしてdodaチャレンジを利用することは、最良の選択になりえるでしょう。

また、首都圏・関西の地域にお住まいの方は、「マイナビパートナーズ紹介」も利用することをおすすめします。マイナビグループの障害者に特化した人材紹介サービスです。複数利用することで、自分に合ったサービスを比較・選択することができます。

【まとめ】けっして選択肢は少なくない。前向きに仕事探しをしよう。

今までの内容をまとめると、

・ハンデを強みに変えて、「あんま・鍼・灸・マッサージ・ヘルスキーパー」を職業に変える。
・視覚障害者用の支援ソフトを使ったり、キーの位置を覚えて事務的仕事やプログラマーになる。
・ハンデを弱みにしない電話オペレーターの仕事をする。

以上の紹介させていただいた職業だけでも、思っていたより選択肢があると感じていただけたでしょうか。
もちろん、今回紹介させていただいた仕事以外で働いている方も大勢いらっしゃいます。

支援機関や求人サイトを利用して仕事を探しをすることで、必ずあなた・視覚障害のご家族の方に合った仕事は見つかります。
視覚障害だからと悲観的になることなく、常に前向きで仕事を探してください。


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参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷