新卒社会人になると、学生時代とは大きく変わり、社会人としての責任を求められる場面が一気に多くなります。
初めのうちは慣れない仕事で失敗し、上司から注意を受けることもあるでしょう。
そして、色々な悩みを抱え、1年目で退職を決意する社会人も多いです。
今回は、新卒社会人は1年以上仕事を続けるべきなのか、新卒でも退職すべきケースはどのようなものかを解説します。
新卒社会人でも転職を成功できる人は、どのような対策を行っているのかについても紹介します。
新卒の1年目で退職する人はどれくらいいるのか、退職理由はどのようなものか紹介します。
また、退職するにしても1年以上我慢した方が良いため、その理由についても解説します。
まず、新卒1年目の方が毎年どの位退職しているのかを見ていきましょう。
参考にするのは厚生労働省発表の「学歴別就職後3年以内離職率の推移」です。
データは令和2年の1年目の離職者の割合となっており、学歴によって4パターンに分類されています。
1年目の離職率は中学卒の方が下がっている一方で、高校・短大等・大学卒は35年前からほぼ横ばいで、大きな増減もありません。
この結果からわかるのは、新卒から1年以内に、中学卒なら10人中3人、高校・短大等卒なら約7人に1人、大学卒が10人に1人退職しているという結果です。
つまり、毎年一定数は退職しており、新卒の退職は珍しくないということです。
ただし、新卒で退職するにしても、問題となるのは理由でしょう。
次に、新卒の退職理由についても確認します。
新卒1年目で退職する人が、退職を決意した理由については、厚生労働省が調査した「平成30年若年者雇用実態調査の概況」が参考になります。
この調査では、「初めて勤務した会社を辞めた理由」として、新卒から3年目までの社会人に調査が行われました。
その結果、多かった理由は以下の通りです。
労働条件や人間関係、賃金などが主な退職の理由として挙げられました。
また、仕事が自分に合わないという理由も、長く仕事を続けるうえでは心理的な障害となります。
総じて言えることは、「自分の考えていた理想との違い」が根底にあります。
仕事に対して理想と現実のギャップを感じている方は、1年目で退職を選ぶことが多いです。
参照:厚生労働省『平成30年若年者雇用実態調査の概況』P21
実際の問題として、1年目に退職するとどのような弊害があるのか確認しましょう。
新卒1年目で転職を成功させる方もいますが、現実としては1年以上同じ仕事を続けた方が、その後の転職成功率にも大きな違いが出ます。
その理由としては、以下のポイントがあるからです。
一年は続けた方がいい理由
まず、1年間は続けた方がいい理由として、「中途半端な時期に退職すると、中途採用として正社員になりにくい」点があります。
日本の会社は毎年9月~10月と3月~4月に、決算と職員採用を行っています。
中途半端な時期に退職すると、採用時期とズレが出てしまい、正社員採用されにくくなるでしょう。
二つ目に、企業側の心理としては、「若手には長く働いて会社に貢献してほしい」と考えています。
しかし、1年未満で退職されると、採用の費用や教育費が無駄になります。
そのため、転職希望先の企業も1年未満で退職した方には、警戒心が強くなってしまうのが問題です。
また、1年目での転職は専門性のあるスキルが育っておらず、転職後に即戦力として期待しにくい点も問題です。
この3つのポイントから考えて、新卒でも1年以上は仕事を続けることをおすすめします。
新卒ですぐ辞めるのではなく、1年以上続けた方が良いのは事実ですが、退職した方が自分のためになるケースもあります。
どのようなケースが当てはまるのか、5つの例を見ていきましょう。
仕事は労働基準法により、週40時間以内という労働時間が決められています。
しかし、企業の中には労働時間をオーバーしても働ける会社や、タイムカードを切った後に残業を強要するブラック企業もあります。
近年は残業時間の過労死ラインも低くなってきており、ワークライフバランスは重要な社会課題です。
労働時間と残業時間が長すぎる会社は、長く続けていると身体の不調に繋がるおそれがあります。
判断基準としては、「やるべき仕事が残業をしなければ終わらないか」で考えましょう。
残業ありきで働き、会社や上司のサポートもないのであれば、新卒でも退職した方がよいでしょう。
新卒社会人は3年以内に3割程度が退職するという結果もあり、若手が退職すること自体はそれほど珍しくありません。
しかし、入社してきた人が1週間から1カ月以内にすぐ辞めてしまう、または元々いた社員も次々に退職するなら、早期に退職しましょう。
従業員の満足度やエンゲージメントの高い会社であれば、結婚・出産・子育て、病欠などでない限り、退職という決断をすぐには下しません。
退職者が次々に現れるということは、企業の体制に疑問を持っている、またはついていけない人が多いということです。
社員が減れば自分にかかる責任や業務負担も大きくなるため、早期に退職を決断した方がよいでしょう。
仕事に強いストレスを感じていると、次のような症状が出ることもあります。
こうした症状が出ているなら、ストレスが原因で体調不良を起こしている可能性が高いです。
会社に申し出て、すぐにでも休職または転職を考えましょう。
軽度なら仕事から離れれば改善しますが、悪化すると心療内科や精神科への通院も必要になります。
仕事が原因の体調不良が出ているなら、自分の人生を大切にするために休職・転職する勇気を持ちましょう。
近年、色々な企業や機関で話題になるセクハラ・パワハラがある場合も、退職した方がよいケースの代表例です。
自分が直接パワハラ・セクハラに遭っているなら、別の上司や同僚に相談しましょう。
別の人がパワハラなどに遭っているなら、会社の人事部等に相談することをおすすめします。
それでも改善が見られないなら、被害が拡大しないうちに退職してください。
セクハラ・パワハラを我慢したとしても、自分自身が得るものは何もありません。我慢していつまでも会社に残るより、早めに退職・転職しましょう。
新卒時代の経験は非常に価値のあるもので、将来のキャリアにも大きく関係します。
しかし、誰でもできる仕事やキャリアアップにならない仕事は、何年続けても自分の力にはなりません。
新卒という限られた時間を有効に使うなら、自分がやりたい仕事のために、キャリアアップできる会社に転職しましょう。
新卒で働いていて、「この会社じゃキャリアアップにならない」と感じているなら、思い切って転職を考えてみてください。
新卒の社会人が1年以内に辞めると、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
1年以内で辞めた際に、考えうるデメリットを3つ紹介します。
退職する時期にもよりますが、中途採用を目指すなら、正社員採用がされにくくなります。
非正規雇用ならチャンスは多いですが、正社員採用を目指すなら3月・4月の新卒採用を狙って、第二新卒として活動した方がよいでしょう。
1年未満で退職すると、一般的な企業からは「長続きしなさそう」と見られがちです。
偏見の目で見られやすいことから、覚悟を持って転職活動を行ってください。
ただし、最近はスタートアップも増えていることから、スタートアップ企業ならその点を気にしない傾向もあります。
新卒で退職した場合、大きな不安要素がアピールできるスキルの問題です。
専門性の高い資格を持っている方を除いて、自分が転職活動でアピールできる武器が少ないということになります。
他の人にはない特技やスキルがあれば、その点をアピールして転職活動を有利に進めましょう。
もしスキルがない場合でも、入社後の未来予想や学習意欲などをアピールすれば、成長性を見込んで採用される可能性はあります。
転職理由について伝える際も、どのように伝えるかが課題になります。
社会人としてある程度の経験を積んでいれば、「キャリアアップのため」「挑戦したい分野だった」などの理由も思いつきます。
1年目で転職する際は、採用担当者がなぜ転職理由を訊いているのか、立場や見方を変えて考えましょう。
採用担当者が確認したいのは、感情的な理由や愚痴ではなく、「なぜこの会社を志望したのか」という疑問が背景にあります。
転職理由をポジティブな方向に切り替えつつ、なぜ会社に魅力を感じたのかを伝えて、転職先にアピールしてください。
たとえ新卒1年目でも、1度退職すれば第二新卒と同じ扱いになります。
新卒1年目で転職を考えている方向けに、成功させるための5つの秘訣を紹介します。
転職先との面接では、ほぼ間違いなく志望動機は質問されます。
履歴書にも志望動機を書く欄がありますから、転職先の企業分析を行ったうえで記入しましょう。
最低限必要な情報として、企業の理念・ビジョン・ミッション、従業員数、主な事業内容は確認しておくことです。
企業分析を深めていけば、志望動機もブラッシュアップされ、採用担当者に好印象を与えられます。
地味な作業ですが、転職先への理解を深めるのにも役立ちますから、企業分析は行ってください。
新卒1年目で転職活動を進めている人は、採用担当者から「またすぐに辞めてしまうのでは」と不安視されやすいです。
不安を払拭するには、転職後のキャリアプランを明確にしておくことをおすすめします。
意欲だけを伝えても、中身が伴わなければ意味がないため、将来はどんな活躍をしたいのか、具体的な計画を伝えてアピールしましょう。
将来をきちんと考えたうえでの転職であれば、第2新卒だとしても大きな障害になりません。
キャリアプランにも通じる部分ですが、自分が転職先でやりたい仕事を明確にしておきましょう。
前の職場ではできないことが、転職先で実現できるのであれば、その点をしっかり伝えることがポイントです。
例えば、スマートフォンに代わる新しいデバイスの開発、空飛ぶ車の開発に携わりたい、前の職場ではできない挑戦をしたいなど、自分なりの意欲を伝えてください。
ネガティブな転職理由を伝えると、採用担当者に悪い印象を与えてしまいます。
ポジティブに伝えられるように、自分のやりたいことを言葉にする練習をしておきましょう。
仕事へのやる気と成長意欲、学習意欲はイコールです。
転職後にどんな社会人になりたいのか、どんなことを学び、資格を身に付けるのかなど、仕事に対する意欲をアピールすることも大事です。
また、社会人は言われたことだけではなく、周囲の状況も見て仕事を進める協調性も求められます。
将来的にリーダーや管理職を目指したいなら、コミュニケーション能力やマネジメント能力も必要になるでしょう。
自分のキャリアプランも考えながら、社会人としての成長への意欲、真摯に学ぶ姿勢をアピールすることが転職活動では大切です。
新卒1年目で転職する場合、ほとんどの方は初めての転職となるはずです。
転職活動の方針や進め方を自分で考えるのは難しいでしょう。
新卒1年目でも転職を成功させるなら、転職エージェントの利用をおすすめします。
転職エージェントは担当アドバイザーと共に、自己分析や企業分析、スキルの棚卸しなど、転職活動を進めるうえで充実したサポートが受けられます。
自分の希望に合わせた求人を紹介してくれますから、仕事が忙しくてプライベートな時間を十分取れない方にもおすすめです。
新卒1年目で転職活動を効率的に進め、理想の職場に転職するなら、転職エージェントを利用しましょう。
近年はスタートアップやベンチャー企業も増え、長く同じ会社に勤務するのが当たり前という価値観は変わってきています。
しかし、あまりに短期間で退職すると、履歴書の応募時点で落とされる可能性があります。
社会人として信頼を得るには、1年以上仕事を続ける根気が求められるでしょう。
絶対的な条件ではないものの、仕事を続けた時間も転職活動では重要な要素です。
もちろん、自分の本当にやりたいことが見つかり、そのための転職であれば、1年も待たずに転職するのもアリです。
そうでないなら、新卒入社から1年を区切りに転職を検討してみてはいかがでしょうか。