特別な資格や専門性なしで働けることから、新卒に人気の職種が「事務職」です。
毎年多くの学生が事務での就職を目指しますが、新卒で事務職になるのは難しいとされています。
なぜ新卒で事務職になるのは難しいのか、人気の理由と難しいとされる理由、事務職のおすすめ資格などを詳しく解説します。
なぜ新卒に事務職がそれほど人気なのか、その理由について確認しましょう。
日本の会社は長時間の残業や休日出勤もあり、ワークライフバランスが良くない企業も多いです。
特に、ブラック企業に就職してしまうと、肉体的にも精神的にもボロボロになることも珍しくありません。
その点、事務職は会社が動いている平日の勤務が基本で、残業も少ないことから、新卒の方から人気が高いです。
近年の若手は仕事へのやりがいよりも安定を重視する傾向が強く、ワークライフバランスの良い事務職が人気になったのは自然な流れと言えるでしょう。
事務職が人気になった大きな理由の1つに、資格なしでも働けるという点もあります。
例えば、医療事務であっても専門資格なしで採用されるケースは多く、事務職には資格や専門性をあまり求められないことが人気の理由です。
また、資格不要で働けることから、難しい作業や大きな責任を負うことも少なく、事務職は安定志向の新卒から人気があります。
もちろん、資格があれば専門性を発揮できる仕事もあるため、資格を持っているに越したことはありません。
事務職の仕事は、他の社員のサポートがメインになるため、基本的にマニュアル通りに動けば問題なく働けます。
例えば、資料作成や電話対応・取り次ぎ、受付事務など、ルーチンワークになることが多いです。
そのため、仕事に慣れるのも早く、誰でも即戦力になりやすい点も人気の理由です。
お客様に応対するシーンはあるものの、社会人としてのマナーが備わっていれば困ることはないでしょう。
ルーチンワークが多く、働きやすい点が事務職の魅力と言えます。
新卒に事務職が人気の理由には、学校で学んだ知識をそのまま活かせる仕事が多く、働きやすい点もあります。
例えば、資料作成や経理の業務は商業系の高校や大学を卒業すれば、すぐに知識を活かした働きができます。
商業高校や大学で経済学や経営学を学んでいれば、簿記検定を取得している学生も一定数おり、事務職を希望する人が多いからです。
また、学歴や資格が会社とマッチすれば、採用される可能性が高まるという点も大きいでしょう。
新卒が事務職を目指す理由は色々とありますが、実際は事務職になるのは難しいとされています。
なぜ新卒で事務職になるのが難しいのか、その理由を4つ紹介します。
新卒が事務職に採用されにくい背景には、事務職の競争率の高さがあります。
厚生労働省が毎月発表している「一般職業紹介状況」によると、令和4年12月の事務的職業の有効求人倍率は0.49倍、一般事務は0.39倍となっています。
事務職1人の募集に対して、2人以上の求職者がいる状態です。
つまり、事務職の求人を探す人数に対して、仕事の方が圧倒的に少ないのです。
いくら新卒で事務職を目指そうと考えても、少ない枠を何人もの競争相手と取り合いになることから、就職にこぎつけるのは難しい状況と言えるでしょう。
参考:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について』
近年は事務仕事のオンライン化が顕著で、パソコンさえあればインターネットに接続して、テレワークで事務仕事をできるようになっています。
また、AIの進歩もあって、ミスの多い人間に作業をさせるよりも、必要事項を入力するだけで正確に作業してくれるソフトウェアを利用し、コストカットが図られています。
経理の仕事も従来は一つひとつ手入力を行い、紙ベースで取り扱っていたものが、領収書の写真を撮影するだけの簡単なツールも誕生しました。
オンライン化とAIの進歩により、事務職を必要としなくなったことで、新卒の採用も少なくなっています。
そのため、新卒は事務で採用されるのではなく、オンラインの影響をあまり受けていない部門に配属されるケースが多いです。
事務職と聞くと、多くの新卒者はパソコンと向き合って、人と話すことがないイメージを持たれるかと思います。
しかし、事務職は窓口対応や電話対応、部署間のやり取りの調整など、対人関係の仕事が非常に多い仕事です。
社内だけでなく社外の顧客と関わることもあるため、誰にでも対応できるコミュニケーション力と臨機応変な対応能力が求められます。
そのため、社会人経験のない新卒にそうした仕事をさせるよりも、別のところで活躍してもらおうと考える会社は多いです。
新卒ならではの社会人経験の少なさが、事務職の採用ではハードルとなっています。
新卒が事務職になるのが難しい最後の理由は、事務職は中途採用の方が多いからです。
事務職は多くの人が応募する人気職ですが、企業は新卒に細かな事務作業を教育するよりも、初めからある程度の能力を持つ中途採用を優先して採用します。
事務職は顧客への接客や電話・窓口対応、社内での橋渡し役など、気遣いを求められる仕事です。
社会人経験を積んでおり、広い視野を持って動ける人材の方が事務職に適しています。
中途採用であれば社会人経験を十分積んでいる人も多いため、新卒よりも優遇されやすいという事情が関係しています。
新卒に人気の事務職ですが、「新卒が事務職になるのはもったいない」「事務職はやめた方がいい」とも言われます。
なぜそのように言われているのか、その原因を3つ紹介します。
新卒で事務職になるのはもったいないと言われる1つ目の理由は、年収が上がりにくいからです。
例えば、営業職は契約件数や大きな案件を獲得すれば、仕事の成果として目に見える形で残ります。
しかし、事務職の仕事は基本的に裏方としてサポートすることで、目に見える成果が残りにくい業務です。
そのため、仕事を続けても年収が上がりにくいことに加え、専門性がいらないことで昇給の幅も小さめです。
長く務めるほど他の職種と年収に差がつきやすく、新卒で就職するにはもったいないとされています。
もったいないと言われる2つ目の理由は、キャリアアップのしにくさからです。
事務職は他の職種に比べて専門性という敷居が低く、パソコンが扱えれば最低限の仕事はこなせます。
そのため、キャリアアップに繋がりにくく、若いうちに色々な経験や知識を得て成長する機会を失ってしまうことから「もったいない」と言われます。
しかし、定時で帰りやすく、ワークライフバランスを取りやすいことから、空いた時間で資格を取得することは十分可能です。
キャリアアップを意識するなら、プライベートな時間を活用して資格取得を目指すのがよいでしょう。
近年はオンラインでのサービスやAIが発達したことで、事務職の仕事が少なくなっています。
元々専門性を求められることが少ないのが事務職ですから、仕事がロボットに置き換わる未来も十分考えられます。
また、専門性がいらないということは、特殊なスキルを磨かれる機会も少なく、仕事へのやりがいにも繋がりにくい点も大きな問題です。
社会人としての希望を持ち、新卒で働くのであれば、やりがいのある仕事をしたいと考える人も多いはずです。
そのため、新卒で事務職になるのはもったいないと言われることがあります。
新卒で事務職を目指す際に、就職活動中から就職後まで有利になるおすすめの資格を5つ紹介します。
マイクロソフトオフィススペシャリストはMOS資格と呼ばれ、Microsoft OfficeのパッケージであるWord・Excel・PowerPoint・Access・Outlookについて、一定の操作技術を持つ証明になります。
資格はスペシャリストとエキスパートの2種類があり、スペシャリストが一般資格、エキスパートが上位資格となっています。
通常の事務職であればスペシャリストでも十分ですが、より高度な知識と技術を必要とするならエキスパートの資格を狙いましょう。
簿記資格には日商簿記と全商簿記の2種類がありますが、事務職としてビジネスレベルで活躍するには日商簿記を取得しましょう。
また、日商簿記にも初級・3級・2級・1級という4段階があります。
一般的な事務レベルなら簿記3級を取得すれば十分ですが、経理の仕事まで視野に入れるなら簿記2級以上を狙うことをおすすめします。
簿記検定は誰でも受けられるため、学生のうちに2級以上を取っておけば、就職活動でも有利になるでしょう。
合格率は1級が約10%、2級が約20%、3級が約50%となっており、3級なら比較的取得しやすいです。
日商PC検定は、日本商工会議所や自治体の商工会議所が実施している検定で、文書作成・データ活用・プレゼン資料作成の3種類があります。
3種類それぞれに1級から3級までの難易度があり、ビジネスレベルで活用するなら2級以上を取得しましょう。
試験は実務的な知識を問うテストと、実技を見るテストの2つがあります。
1級の合格率は30%台後半、2級は60%台後半となっており、他の検定に比べると合格率は高めです。
実務的な能力を磨くなら、日商PC検定を受験してみましょう。
社会人としてのマナーや一般常識を身に付けるなら、秘書検定もおすすめです。
名前の通り、秘書に求められる知識や技能を問う試験で、一般常識やマナー、敬語の正しい使い方、適切な電話対応の資料作成など、ビジネスに必要なスキルが一通り身に付けられる資格です。
秘書検定は3級・2級・準1級・1級の順に難易度が上がり、社会人としての基本を身に付けるなら2級以上を取得しましょう。
さらに上の準1級からは難易度が一気に高くなるため、取得できれば秘書として十分な技能を持つこと、高い専門性を有する証明にもなります。
新卒の就職活動で有利になるのは2級からですが、準1級を取得できれば、会社にかなりの好印象を与えられます。
参考:ビジネス検定 秘書検定
ITパスポートとは、情報処理技術者試験の1つで、比較的新しい国家試験です。
IT分野の基礎知識を有することを証明するもので、エンジニア系の学生・社会人、営業職、事務職などに人気があります。
2021年には受験者が20万人を超えており、盛り上がりを見せています。
IT初心者におすすめの国家資格として、民間資格のMOSとダブルライセンスを保有する人も多いです。
ITパスポートは誰でも受験できる敷居の低さと、50%前後の高い合格率が特徴です。
小学生の合格者も出ていることから、しっかりと勉強すれば取得しやすい資格と言えるでしょう。
参考:ITパスポート試験
新卒の方が事務職に就職するために、どのような学びをすべきなのか、どんなポイントを意識すれば採用される可能性が高められるか解説します。
事務職は当然のことですが、デスクワークが中心になります。
中でもPCと向き合う時間も非常に多いですから、PCの基本的な操作ができる必要があります。
加えて言うと、ブラインドタッチやセミブラインドタッチが入力できる位に扱えれば、実務的には問題はないでしょう。
さらに、Excelを利用した資料作成も仕事になることがありますから、Excelの取り扱いも学んでおくことをおすすめします。
最低限、Word・Excel・PowerPointを扱えることと、余裕があればAccessも学んでおくとビジネスレベルでは十分です。
事務系の仕事であっても、会社によっては英語力を求められることがあります。
特に外資系企業の場合、社内の公用語が英語というところもあるため、英語力を高めておくと就職活動の選択肢が増やせます。
英語力は履歴書や面接で把握するのが難しいため、TOEICや英検など基準になる試験を受けておきましょう。
ビジネスの世界ではTOEICの点数を基準にすることが多いですから、TOEICの点数でアピールするのがおすすめです。
事務職はデスクワークが中心ですが、電話対応や受付業務、部署間の連携も必要になります。
黙々と作業をしていればよいわけではなく、コミュニケーション能力も求められます。
また、取引先への連絡を行うこともあるため、相手が気持ち良く話せる雰囲気作りも重要です。
コミュニケーション能力が不足していると、資料作成でも依頼してきた相手の意図を正確にくみ取れないことがあります。
円滑な業務を遂行するためには、コミュニケーション能力を高めることを意識しましょう。
新卒で事務職を目指す人は非常に多く、採用されるには激しい競争を勝ち抜かなければなりません。
そもそも、事務職は新卒採用が少ない傾向にあるため、非常に厳しい就職活動になるでしょう。
希望通りに事務職として働くには、各種の資格を取得することに加えて、業界を絞らずに色々な分野に関心を持つことがポイントです。
これまで関心がなかった分野でも、調べていくことで面白さを発見できることもあります。
新卒で事務職を目指すのは簡単ではありませんが、色々な分野に視野を広げて、希望する職場への就職を成功させてください。