なぜ新卒がすぐ辞めてしまうのか?離職理由とできる対策を解説

「せっかく採用した新入社員がすぐに辞めてしまった」という経験は、ほとんどの会社で一度はあるかと思います。

社員の採用・育成には多くの時間とコストが掛かるにも関わらず、すぐに退職されては会社にとって大きな損失です。

早期離職してしまう理由はわかっていても、それによってどんな問題があり、具体的な対策を打つべきかわからない会社もあるでしょう。

そこで今回は、新卒がすぐ辞めることで会社に起こりうる問題、離職の防止策を詳しく解説します。

新卒が定着しやすくなる会社のポイントも紹介しますから、ぜひ参考にしてください。

新卒がすぐ辞めてしまう主な理由

新入社員がすぐに辞めてしまう理由として、厚生労働省の雇用実態調査結果も参考に詳しく解説します。

ワークライフバランスが良くない

厚生労働省が調査した「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、新卒で入社した社員の3割が「労働条件・休日・休暇の条件がよくなかった」としています。

求人条件には労働条件・休日・休暇について記載されていますが、十分にリサーチせずに入社したことが考えられます。

近年の新卒は、給与の条件よりもワークライフバランスを重視する傾向が強いです。

入社後に自分の理想とする労働条件・休日でなければ、ワークライフバランスを重視して辞めてしまうようです。

会社側としては、新卒が入社する前に労働条件で気になるポイントがないか、休日出勤の有無など、ワークライフバランスで行っている施策を伝えることが大事になります。

参考:厚生労働省『平成30年若年者雇用実態調査の概況』P21

人間関係が悪い

新卒がすぐ辞めてしまう理由として、人間関係の悪さもおよそ4人に1人が答えに挙げています。

上司や先輩、同僚とのコミュニケーションが上手くいかず、職場内で孤立してしまい、強いストレスを感じて離職に繋がるようです。

上司や先輩の視点では問題なくても、新入社員から見れば、「ハラスメント」に捉えられることがある点にも注意が必要です。

人間関係が悪いと、コミュニケーションで意図した内容が正確に伝わらず、悪意を持っているように捉えられることがあります。

新入社員側の問題だけでなく、管理者や同僚にもコミュニケーションへの理解を促進し、教育しなければ改善できません。

自分の考えていたよりも給料が安い

新入社員は大いに期待を持って会社に入りますが、給与をもらうと想像より安く、ギャップで退職に繋がるケースもあるようです。

また、新入社員の中には、給与の仕組みを理解しておらず、社会保険や年金、住民税等の負担を考慮していない人もいます。

また、賞与に対して過剰な期待を抱き、いざ支給されると金額の少なさにショックを受けて退職するケースもあります。

仕事そのものにやりがいを感じている場合は別として、給与を重視している新入社員は早期離職に繋がりやすいです。

会社側は入社前や面接の段階で、給与や昇給の仕組み、人事評価の制度などを説明しましょう。

仕事が自分に合わない

新入社員として働き始めたものの、「仕事が自分に合わない」と感じることも、すぐに辞めてしまう理由になっています。

新卒社員の場合、会社側が得手・不得手や得意分野を把握することは困難です。

せっかく新卒を採用しても、本人が希望していない部署や適性に合っていない仕事を任されると、自分に合わないと感じて早期離職に繋がります。

会社側で個人の適性やスキルを吟味したうえで、新入社員の能力を最大限発揮できる仕事を任せるのが理想です。

仕事のノルマや責任がプレッシャー

業種によっては、営業で案件を獲得したり、商品を売ったりすることをノルマにしている会社もあります。

努力目標であるなら問題は少ないですが、新入社員に過剰な期待を抱き、困難なノルマや責任を押し付ければ、早期離職に繋がります。

また、ノルマが重い会社は、目標数値だけを設定し、そこに至る過程の指導や教育を疎かにしていることが多いです。

満足に新人教育を受けられず、重いノルマだけを課されれば、新入社員の早期離職に繋がります。

新卒が辞めることで会社に起こりうる3つの問題

新卒の社員がすぐ辞めてしまうと、短期的にも長期的にも様々な問題が起こります。どのような問題が予想されるのか、3つの重要な問題を解説します。

会社の技術・ノウハウが次の世代に引き継がれない

新卒が早期離職するということは、残る社員がそれより上の年代になります。

会社として優れた技術とノウハウを持っていても、最終的に会社を支えるのは新しく入る社員です。

しかし、新入社員が早期離職すれば、せっかく教えた技術とノウハウが無駄になり、将来会社を牽引する人材が少なくなります。

短期的には影響が小さくても、中長期で見た時に会社の技術力が落ちていくでしょう。

また、新入社員が少なくなれば、成長してリーダーになる人材も少なくなるため、いつまでも技術やノウハウが引き継がれていきません。

会社の中長期戦略としても、新入社員の定着は重要な課題と言えます。

会社全体の士気が低下する

新卒を採用してもすぐに辞めてしまえば、残された社員達の士気が大きく低下します。

慢性的に人手不足の会社であれば、一人前として戦力になる前にいなくなると、多くの時間を掛けた教育が全て無駄になります。

採用担当者や指導者からすれば、「せっかく採用したのに」「丁寧に教育してきたのに」と裏切られた気持ちになるのは自然なことです。

特に退職の理由が会社の体制に問題がある場合は、残った社員の会社に対する不満だけが強くなるでしょう。

また、社員が減るということは、業務負担を別の社員が負うことになり、負担感が強くなります。

新入社員が早期に退職するということは、それだけ会社全体の士気に大きく影響するという点は理解しなければなりません。

採用活動に多大なコストと悪影響がある

新卒がすぐ辞めて問題になるのは、人材不足になることだけではありません。

会社が求人を出す際は、ハローワーク、大学、新卒向けの求人サイトなどに求人票を掲載します。

そして、求人票には過去3年間の離職率・定着率の数字が記載されるため、早期離職の多い会社は新卒採用で非常に不利な立場に置かれます。

また、今や求人サイトやSNSで、会社の評判・口コミをチェックするのは当たり前になっていることから、新卒求職者も応募する会社の評判を知っていると思ってよいでしょう。

新卒が採用できなければ、それだけ膨大な時間とコストが必要で、会社にとっても大きな負担です。

優秀な新卒を採用するためにも、新入社員が定着できる職場環境を整えることが重要です。

新卒の早期離職への6つの防止策

新入社員の早期離職を防ぐために、具体的な離職防止策を6つ紹介します。

入社前後でのギャップを少なくする

新入社員の早期離職を防止するには、入社前の新卒時代に抱いているイメージと、入社後の働き方のイメージのギャップを少なくすることが対策になります。

新卒が求人に応募する際は、「こんな働き方ができそう」「得意分野を活かせそう」という好意的なイメージを抱きがちです。

しかし、実際に働いてみるとやりがいのある仕事ばかりではなく、地味な仕事や淡々とこなしていく仕事もあります。

華々しい未来をイメージしていたにも関わらず、現実とのギャップに苦しむ新入社員は少なくありません。

会社側にも新卒者にも責任のない問題ですが、会社側からより詳しい情報を伝えることでギャップを埋めることはできます。

必ずしも会社の適性に合う人材が来るとは限りませんから、新卒の求職者に「本当にこの会社で良いのか」を自ら判断してもらうことが大事です。

ワークライフバランスの改善

新卒の離職理由にもある通り、会社のワークライフバランス改善は離職防止に高い効果があります。

毎月の残業時間を減らし、休日出勤を少なくすること、長期休暇を取りやすいような施策を行いましょう。

また、労働者が個々で働き方や勤務形態を選べるようにすると、仕事へのモチベーションも高まりやすいです。

例えば、介護分野では慢性的な人手不足が続いていますが、新たに週休3日制を導入して、人員不足を解消できた福祉法人の事例もあります。

会社として労働時間の短縮の対策、働き方改革で労働環境を見直すことで、新入社員の離職防止に一定の効果が期待できます。

キャリアアップの仕組みを見直す

従来の日本社会は年功序列・終身雇用制が当たり前でした。

しかし、若手の社員からすれば、能力ではなく年齢でキャリアアップするのは不公平感が強いシステムです。

そのため、優秀な人材を確保するには、会社に貢献した人材を高く評価し、評価に応じた報酬を提供することが理想です。

キャリアアップでも能力を重視することで、キャリア志向の優秀な新卒を確保しやすくなるでしょう。

会社に貢献する新入社員を定着させるには、モチベーションが向上する評価制度、キャリアアップのシステムを構築することが必須です。

相談役になるメンターを選定する

新入社員が仕事の悩みを抱えている場合、会社内の誰に相談すべきかはっきりしていないと、相談できずに思いつめることがあります。

そのため、年齢が近く、コミュニケーション能力の高い先輩社員がメンターになると、新入社員が相談しやすくなります。

特に聴く力に優れた人材をメンターに選定すると、新入社員の言えない悩みを深掘りし、チーム内で共有してくれるでしょう。

新入社員の悩みが明確になれば、会社としても対策を立てやすくなります。

ただし、メンターは業務外に時間を使うことになるため、チームで業務を分担するなど、負担が分散するようにカバーしあうことも大事です。

メンター自身の相談役として、上司やOJT担当者もサポートに入るのがよいでしょう。

コミュニケーションしやすい雰囲気を作る

新入社員はもちろん、人材が定着しやすい職場は、円滑なコミュニケーションができているところです。

一部の社員の発言力が大きかったり、グループ化したりすると、新入社員にとっては居心地の悪い空間になります。

思ったことを遠慮なく言える雰囲気を上司や先輩が作り出し、チームや部署内で自由な意見交換ができる環境を作りましょう。

ただし、何でも好き勝手言ってよいわけではなく、社会人としての節度は守らせることも大切です。

ストレスに対するフォローを行う

人間は慣れない環境に強いストレスを感じやすく、新入社員にも同じことが言えます。

新入社員は慣れない仕事内容、環境、目標、人間関係など、多くの不安を抱えながら仕事をしています。

新入社員自身すら気が付かないうちに、強いストレスを感じていることも少なくありません。

周囲で仕事している上司や同僚が気を配り、不安や悩みがないかという声掛けや仕事をフォローしましょう。

周囲から気に掛けてもらっているという安心感があるだけでも、新入社員にとっては大きな力になるはずです。

新卒が定着しやすい会社になるには

新卒で入社した社員に、その後も長く同じ会社で働いてもらうためには、会社としてやっておきたいポイントがあります。

どのようなポイントがあるのか、意識すべきところを紹介します。

社会人としての基礎教育体制の整備

新卒から社会人になると、最も大きな変化はサービスを受ける立場から、サービスを提供する立場に変わることです。

学生時代は周囲がお膳立てしてくれていたことも、社会人では自分から率先して行う意識が重要になります。

社会人としての「当たり前」に適応できないと、気持ちが折れてしまう新入社員もいます。

そこで、会社は新入社員に社会人としての基本的なマナー、心構え、一般常識など基礎教育を行うことがポイントです。

基礎教育を通して会社のマインドが浸透し、新入社員の定着にも繋がります。

新人教育には多くの時間が必要ですが、定着してもらえれば、会社の発展にも貢献してくれるでしょう。

育児・介護休暇や家賃等の手当を充実させる

会社に定着してもらうには、社員にとって働きやすい環境であることが重要です。

職場の雰囲気やワークライフバランスも大切ですが、いざという時の育児・介護休暇や家賃の補助・手当もポイントです。

若手の社員は子どもを産み、育てながら働くこともあります。

会社が社員の生活を支える姿勢を見せれば、社員も「会社のために働こう」というエンゲージメントが高まります。

エンゲージメントを高める手法は、休暇や手当だけではありませんから、会社の風土やビジョンに合わせた方法を検討しましょう。

成果・業務内容に応じた評価制度

新入社員がすぐ辞めてしまう背景には、「こんなに頑張っているのに評価されない」という思いが隠れていることもあります。

上司や同僚からの評価は、仕事へのモチベーションにも大きく関係します。

業務内容は部署によって異なるため、同じ評価尺度で考慮するのではなく、業務内容と成果に応じた評価制度を採用しましょう。

数値化すると評価方法が明確になりますが、同僚同士で仕事を評価しあうなど、客観的視点での評価方法を取り入れる方法もあります。

仕事の頑張りを評価してもらえる会社なら、社員のやりがいにも繋がり、会社の定着率も高まるでしょう。

まとめ:新卒の離職防止は会社からの対策も重要

新入社員は、学生から社会人という急な変化に戸惑い、3年以内に3分の1は辞めてしまいます。

会社にとっては、せっかく採用・育成してきた人材が流出すれば、それまでの時間とコストが無駄になります。

新入社員がすぐ辞めないように、会社は離職防止対策を行い、社員から愛着を持たれる会社にならなければなりません。

今回紹介した内容は、具体的な離職防止対策の例として、どのような会社でも活かせるポイントがまとまっています。

新卒が会社に定着し、長く貢献してもらうために、できる施策は積極的に行ってください。


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参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷