「こんなはずじゃなかったのに…」
辛い就職活動を乗り越え、やっと新卒で入社したにも関わらず、入社からわずかな期間で退職したいと思う人は少なくありません。
スキルアップ転職やチャレンジ転職など転職へのネガティブなイメージは薄まりつつありますが、まだ退職にはネガティブなイメージがつきものです。
しかし、新卒就職後の3年以内の離職率は30%を超えるとされており、早期離職を選ぶ若者がいるのも事実。
では新卒者の実際の退職状況はどうなのでしょうか。
今回は、新卒の退職者の割合や退職理由、退職の伝え方などについて詳しく紹介します。
退職を迷っている方や退職を伝えづらいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
新卒で入社した後、会社を辞めたいと思っても
「石の上にも3年だ」
「とりあえず3年は我慢しろ」
「すぐに辞めるなんて甘えだ」
と、上司や先輩から止められている方も多いのではないでしょうか。
では国が行った調査データを参考に、新卒の退職者の割合についてみていきましょう。
文部科学省による『平成30年度大学等卒業者の就職状況調査』によると、高卒者の就職率は98.2%、大卒者の就職率は97.6%と高水準が継続されています。
一方で厚生労働省が発表した『令和2年度の新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況』をみると、平成30年3月卒業者における就職後3年以内の離職率は、高卒就職者36.9%、大卒就職者31.2%とされています。
高卒者の約4割、大卒者の約3割が就職から3年以内に離職しているということが分かります。
さらに退職した期間を詳しくみていくと、以下のとおりです。
高卒就職者の離職率
大学卒就職者の離職率
例年に比べると離職率は低下していますが、コロナ禍での転職控えが背景にあると考えられています。
大卒者の就職率97.6%の内、1年目の離職率が11.6%ということは、だいたい8~9人に1人が1年以内に退職していることになります。
「早期退職している方は意外と多い」と思った方も多いのではないでしょうか。
さらに3年以内の大卒就職者の離職率は31.2%なので、3~4人に1人は退職しているため、新卒者の早期退職は珍しい選択ではないといえますね。
参照:厚生労働省『令和2年度の新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況』
参照:文部科学省『大学等卒業者及び高校卒業者の就職状況調査』
次は業界別の離職率をみていきましょう。
『令和2年度の新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況』から離職率の高い業界と低い業界を比べてみました。
業界別の離職率一覧
離職率の低い業界TOP5
離職率の高い業界TOP5
離職率が低い業界第1位は、電気・ガス・熱供給・水道業 (11.1%)となり、TOP5までそれぞれ大卒就職者の3年以内の離職率31.2%を下回っています。
いずれの業界も景気に左右されにくく、コロナ禍においても生活に欠かせない業界であることが分かります。
一方で離職率の高い業界をみると、いずれも大卒就職者の3年以内の離職率31.2%を超えています。
景気に左右されやすく、コロナ禍で打撃を受けた業界が多くみられます。
また、離職率が低い業界第1位の電気・ガス・熱供給・水道業の賃金が419.7千円なのに対して、宿泊業・飲食サービス業の賃金は257.6千円となっており、給料の低さも離職率に影響していることが考えられます。
令和3年3月に労働政策研究・研修機構が行った『若年者の離職状況と離職後のキャリア形成』をみると、新卒者の退職理由は以下のようにあげられています。
参照:労働政策研究・研修機構(JILPT)『若年者の離職状況と離職後のキャリア形成』
男性(28.0%)女性(27.4%)
男性(28.5%)女性(24.1%)
男性(26.2%)女性(15.8%)
男性(24.2%)女性(28.6%)
男性(26.7%)女性(24.4%)
男性(23.7%)女性(15.8%)
男性(25.4%)女性(20.8%)
男性(20.1%)女性(13.8%)
男性(13.5%)女性(15.0%)
男性(4.8%)女性(26.7%)
このように1年超3年以内に退職した人の理由と割合をみると、新卒3年以内の退職理由では、労働・賃金・人間関係・仕事のミスマッチが主な理由であることが分かります。
男性女性問わず、職場環境や人間関係に悩み、やりたい仕事とのギャップを感じていること、そして心身の健康を損ねてしまう傾向があります。
キャリアアップを理由にしたポジティブな転職は、男性(26.2%)女性(15.8%)となり、他の理由と比べて多い理由ではありません。
入社して1年以内に退職したいという方も少なくありません。
このような場合の早期退職の理由で多いのは
と、いずれも企業の環境や待遇が大きな要因となっている傾向です。
「労働条件」と「人間関係」は、仕事をする上で重要なポイントです。
1日の内で最も長い時間過ごす職場で居心地が悪かったら…働く意欲や向上心は下がる一方でしょう。
多くの方がこのような内容に不満を抱え、退職したいと考えているのです。
「まだ新卒だから」といって我慢し続けていると、意欲低下やうつ状態に陥ることも。
退職や転職は若さが強みになるケースが多いので、我慢し続けて心身を壊す前に新しい一歩を踏み出した方が良いでしょう。
入社から5年を超えると、会社の将来性を見据えたキャリアアップを理由にした退職が多くなります。
共働きが当たり前の今ですが、特に男性は結婚やマイホーム購入などにより、条件の良い会社への転職を考えるようになるのでしょう。
また以前に比べると転職へのイメージがポジティブなものになり、転職方法の選択肢が増えてきたことも、早期退職が進む理由のひとつです。
コロナ禍でリモート・オンライン面接が発展し、スマートフォンがあれば全国どこでも、いつでも転職活動を進めることができる時代になりました。
これも若手人材の早期退職を加速させている要因のひとつとなるでしょう。
定年まで安定した雇用が保証される終身雇用制が少なくなり、主体的な労働を考えることが主流になりつつあります。
・自分で成果を出す
・キャリア形成を考えて行動する
・キャリアアップ転職を考える
など、退職、転職によって自分らしい働き方を追求することが当たり前の時代になり、特に新卒入社から5年を超えると、これからの人生を考えた理由で退職する方が増えています。
将来性が不安な会社で働き続けるよりも、キャリアビジョンを描き、より将来性のある会社で働きたいと思うのは当然のことですね。
退職理由にはキャリアアップなどポジティブなものから、労働環境や人間関係、賃金などネガティブなものまで様々あります。
しかし、せっかく新卒で入社した会社、さらに入社して何年も経っていない場合は、どちらの理由であっても退職は言いづらいものです。
円滑な退職を進めるためには建て前という、 「相手を不快にさせない」ビジネスマナーが重要になります。
ここでは新卒の退職者が覚えておきたい退職理由の伝え方について、説明していきます。
「給料が安い」
「サービス残業や休日出勤が辛い」
「人間関係にうんざり」
「会社の将来性が不安」
といったネガティブな退職理由。これをそのまま伝えるのはNGです。
正直なことは決して悪いことではありませんが、本音を伝えることでトラブルの原因や、せっかく採用してくれた会社に対して不快感を与える可能性があるからです。
そのため、本音はネガティブな理由だけど、建て前上はポジティブな理由を伝えることが大切です。
例えばネガティブな退職理由があっても、
など、会社が納得せざるを得ない理由を伝えることで、無理な在職強要などなく円満な退職を進めることができるでしょう。
「辞めたい」気持ちが先走り、突然「退職します」と伝えるのは、社会人として不適切です。
まずは先輩や上司に「退職したいと思っている」と相談からはじめ、退職が決まったら、会社や取引先に迷惑をかけないように引継ぎをしっかり行いましょう。
退職後、同業界や同職種で転職する場合は前職と関わりを持つ場合がありますので、トラブルのないよう円満退職を心がけることが大切です。
新卒の退職者の割合や退職理由、退職の伝え方などについて紹介しました。
新卒が退職を言いにくい理由は入社して日が浅く、初めての退職だからです。
「まだまだ新人なのに我慢した方がいいのかな」と考える方もいらっしゃいますが、年齢を重ねるごとに転職のハードルは高くなっていきます。
もし辞めたいという気持ちが強いなら早い時期に今後の選択を決断する方が、あなたの人生にとってプラスになる可能性が高いかもしれません。
辞める場合は、新卒であってもビジネスパーソンであることを念頭に、お世話になった会社に不快感を与えず伝えること、
そして新しい人生のスタートとして、前向きな気持ちで退職・転職を進めていきましょう。