金融業界では人気資格である証券アナリスト。難しいと聞きつつ、ネットで検索すると「そこまで難しくない」という声も多く聞かれます。実際の難易度は高いんでしょうか、それとも本当に簡単……?
スクールに通うと高くつくし、証券アナリストは受験手数料だけでも決して安いとは言えない資格です。独学で合格ができるレベルなら、独学でできるだけ金額を抑えたいところです。
果たして証券アナリストは独学でも合格可能?受かるコツや効率的な勉強法とは?大事なのは『勉強法の徹底分析』にありました!
証券アナリストは『公益社団法人日本証券アナリスト協会』が行う民間資格です。日本証券アナリスト協会のHPでは『CMA資格』という名称で資格試験が行われています。
医師や弁護士などの業務独占資格とは違い、『証券アナリスト』という専任の業務があるわけではないですし、この資格を持っていなくても同様の業務を行うことができます。
証券アナリストは一次試験・二次試験をそれぞれ合格しなければなりません。各試験の過去5年間の合格率は下記表のようになります。
【1次レベル】
【2次レベル】
日本証券アナリスト協会:https://www.saa.or.jp/cma_program/cma1/data/index.html、https://www.saa.or.jp/cma_program/cma2/data/index.html
一次試験、二次試験ともに合格率は50%ほどとなり、数字を見る限りはそこまで難易度が高い試験とは感じられないかもしれませんね。
しかし、実際に資格試験に挑んだ声を聞くと、理数系の方にとっては「そこまで難しくはない」けれど、文系の方には「ややこしくて難しい」と感じてしまう傾向があるようです。
微分や統計学をある程度理解でき、最低限、高校一年生レベルの数学知識は必要なようです。経理や財務経験があると有利と言われていますので、文系の方は覚悟が必要でしょう。
文系の人には難しいと感じる傾向あり。勉強時間をしっかりと確保して試験に臨もう。
証券アナリストは金融系に影響力がある資格です。しかし、逆に言うと金融系以外だと「持っていても使わないスキル」としてもったいなさを感じてしまうかもしれません。
新卒で一次試験を合格したので取得情報を履歴書に記載したら、経理に向いているかもしれないと配属されたが、実際まったく関係ない。といった体験談もネットで見られたくらいです。
経理や財務の経験が資格試験に活かすことができても、証券アナリストの資格が経理や財務に活かせるわけではないということでしょう。
証券アナリストをどんな仕事に活かしていくかではなく、「金融業界で働きたい」「金融業界でスキルアップ・キャリアアップしたい」という方にオススメの資格です。
前項でも言いましたが、証券アナリストは金融業界では信用のある資格です。この資格取得を推奨していたり、昇進の条件になっていたりするところも多く、また資格が評価対象としても扱われているようです。
証券アナリストはスケジュール的に1年で取るのは難しく、最短でも2年はかかると言われます。そのため、資格取得が意欲としても評価されるのです。証券アナリストは社会人の受験が多く、新卒でこの資格に挑む方自体が少ないので、新卒の方であれば一次試験の段階でも十分評価対象になり得ます。
業務独占資格ではないので、必ずしも取らなければいけないような資格ではありませんが、取得することで限定された業界内ではありますが、確実に評価対象として効力がある点については特徴的な資格です。
受験資格
日本証券アナリスト協会の講座(講座テキストで自主学習)を受講した方
試験内容
「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」「財務分析」「経済」の3教科。マークシート試験
「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」「コーポレート・ファイナンスと企業分析」「市場と経済の分析」「職業倫理・行為基準」の4教科。筆記試験。
試験日程
年2回(春4月下旬・秋9月下旬または10月下旬)
年1回(6月上旬)
第一次・第二次試験ともに講座受講から3年間の期限付きで受験可能。
資格取得にかかる費用
一般受講者56,500円、会員受講者50,300円、
受験料「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」6,300円、「財務分析」3,200円、「経済」3,200円(3教科すべて受験の場合は12,700円)
講座受講料53,500円、受験料8,400円
日本証券アナリスト協会入会費10,000円、年会費18,000円(満65歳以上の方は12,000円)
合格判定
3教科それぞれの得点が一定水準に達すること。
4教科総合得点方式。ただし「職業倫理・行為基準」の得点が一定水準に達しない場合は不合格。
https://www.saa.or.jp/cma_program/index.html
以上のように、証券アナリスト(CMA資格)を取得するには少々複雑な手順をクリアすることが必要になります。第一次試験は3教科あり、それぞれの教科に申し込んでそれぞれを合格しなければなりません。
第一次試験の前期(春)で得意な科目2教科、後期(秋)で苦手な科目1教科を受験するなどして、分割で勉強と受験の効率化を図る方が多いです。
日本証券アナリスト協会の資格取得フローでは、第一次試験および第二次試験ともに協会が行う講座を受講しなければならないと規定されています。
しかし、この受講はテキストが送られてくるのみで提出物などの規定はありません。
講座とはいえ自主学習と変わらないため、すべての方が独学で勉強するか、スクールを利用して受験に挑んでいます。
理数系の方に有利と言われるだけあり、文系の方はまずテキストの言っている意味を理解することから苦労する方が多いようです。
とはいえ、第一次試験の試験内容は基礎的な内容となっているので、過去問題集をひたすら暗記できるレベルで繰り返し勉強すれば、理解できるレベルです。
第二次試験は第一次試験の応用となっているので、基本的には第一次試験の内容を理解できていれば一定レベルまでの得点は可能です。
ただし、第一次試験がマークシートなのに対し、第二次試験は筆記となっているため、しっかりと論理的に回答できなければ得点に繋げることができません。
もしも第一次試験の時点でうまく飲み込めない、過去問題集をうまく解くことができないと感じた方は、高くついてしまいますが、将来への投資としてスクールなどの利用をおすすめします。
証券アナリストの試験は金融業界で評価対象になるだけに、かなり専門的な知識に踏み込みます。科目も多く、試験は一日がかりで行われる問題量になります。テキストの内容をすべて読み込み、すべて理解しようと思うとかなり膨大な時間を要してしまうでしょう。しかし、受験には期限があり、受講申込から3年間と決められているのです。
何度か落ちて、3回目や4回目で合格したという方も居るくらいなので、ギリギリまで粘って勉強をしたのでは時間切れになりかねません。
あくまで証券アナリストは資格試験です。目的は知識を得ることではなく、試験に合格することなのです。
証券アナリストに合格できた方は、効率的に合格点を取れる勉強法を見出した方たちです。
対して、落ちた方は片っ端からテキストを読み込み知識を詰め込み、逆に知識が散らかってまとまった点数が取れないなどのミスをしています。
どの教科でまとまった点数が取れるのか、合格しやすい効率的な勉強法を実践できているかが合格できる人とできない人の違いとして現れています。
では、証券アナリストで点が取れる勉強法というのは、どういうものなのでしょうか。
まず、効率的に勉強できる人気の参考書を紹介します。
証券アナリストの講座に申し込むと、日本証券アナリスト協会からテキストが届きます。
しかしこちらは証券アナリストとして知っておくべき知識などを網羅したものになっており、合格のために効率よく勉強するテキストとしては向いていないのが正直なところです。
証券アナリストの合格を目指す人の多くは、残念ながらこのテキストを使って勉強をしません。実際に使用するものとしては、TAC出版が発行する過去問題集と総まとめテキストがオススメ。
こちらは効率よく勉強できるように編集されており、とても分かりやすく解説されています。
また、勉強法としてはまず過去問をひたすら解く。そこで分からないことがあれば、総まとめテキストで解説を読む。そしてまた暗記するくらい何度も過去問を解く。これが1番効率のいい勉強法になります。
それでは次は試験ごとの科目についての勉強法を解説します。
第一次試験の受験科目は、以下の3教科です。
公式として発表されているものではありませんが、過去受験した方の経験談を見る限り、合格ラインは全問題のおよそ6割程度の正答率。その中で過去問が出題される割合は、およそ6割程度だと言われています。
ということは、過去問を100%回答できれば合格ラインには届くということになります。もちろんそう簡単にいくものでないのは分かります。しかし、割合として過去問が多くを占めているのは確実なので、とにかく過去問を繰り返し解いて、解答を頭に叩き込んでおくことで、合格に近づくことは間違いありません。
第一次試験はあくまで基礎的な範囲になるので、難問奇問はほぼないと考えていいでしょう。過去問を繰り返し解き、余裕ができたら総まとめテキストで、その他の知識の穴を埋めていく感じで勉強すれば問題ないと思います。
試験はマークシート方式になります。もし分からない問題があったとしても、とにかく勘でもいいのでマークシートを埋めるようにしてください。
問題は第二次試験にあります。受験科目は以下の4教科です。
科目名を見ただけで意味が分からなくて、尻込みしてしまう方も居るかもしれませんね。しかし、基本的には第一次試験で受験する3教科の応用となります。
各科目それぞれが6割程度の正答を出さなければならない第一次試験とは違い、第二次試験は4教科すべての合計式です。
過去受験した方の経験談によると、4教科すべての合計で合格ラインはおよそ5割程度。過去問の出題率は全体の6割程度。となれば単純計算をすると、こちらは過去問の網羅で合格ラインに達してしまうということになります。
ただし、注意が必要なのは「『職業倫理・行為基準』で一定水準の得点がないと合格ができない=足切りがある」という点です。それだけでなく、証券アナリストの試験はこの『職業倫理・行為基準』が大きく合格に関わって来ます。では効率的な勉強法を詳しく説明しましょう。
第二次試験もとにかく過去問を解いて解いて解きまくるという勉強法には代わりがありません。その上で、各教科の得点比重に大きく差があることを認識しておきましょう。内訳は以下の通りになります。
見て分かる通り、『証券分析とポートフォリオ・マネジメント』の点数比重が圧倒的です。ではこの科目を重点的にやればいい?しかし、実は比重が多い分だけ範囲が広く、その分難問奇問が多い科目です。こちらで合格ラインを狙うと、逆に混乱して知識が散らばる恐れがあります。
分かりやすく、優先したい教科とそれぞれの特徴を書き出してみましょう。
足切りがある教科なので、まずは確実に得点が必要です。それはそれとして、この教科は過去問を解くことでカバーができる教科でもあります。楽な教科と言われているので、とにかくここで正答率9割〜満点を出しておきたいところです。
第二次試験の中で最も簡単という声もあるくらい、こちらもほとんど過去問を解きまくることでカバーができる科目です。特に『財務諸表』や『企業評価』の問題を優先させるといいでしょう。
出題割合と配点が高いため、重要度で行くと2の『コーポレート・ファイナンスと企業分析』とさほど差はありません。得意分野によってはこちらに重点を置いてもいいかもしれません。出題範囲が多く、中には難問奇問も混ざっています。苦手分野と難問奇問に拘って引きずってしまうと効率は下がります。他の問題で合格ラインさえクリアできていれば、潔く捨てたほうが身のためです。
出題傾向を分析している受験経験者の声は、ちょっと検索してみればたくさん出てきます。証券アナリスト試験は毎年同じ範囲が出題されていたり、2種の問題を交互に出していたりと、出題傾向が分かりやすいようです。
経験者の声を聞くととても参考になりますし、過去問を解きながら出題傾向をチェックして、自分なりに対策を立ててみても良いでしょう。
難問奇問が多い傾向があり、多くの人がここで躓きがちのようです。解けないからと拘ると、ここで痛い目に遭うようなので、分からないと思ったら潔くさっと流す程度にしておく方が良いでしょう。
過去合格した方の傾向としては、できる問題で正答率50%を出せれば合格できると割り切って受験しています。完璧主義者ですべて網羅しないと受験ができない。負けず嫌いで分からない問題があるのが嫌。そういう人ほど落ちているという声が多いです。
第二次試験は論述式で、答えだけ分かっていても、なぜそうなるかの過程も書けなければ完全解答として点数がつきません。けれど、部分的に説明が為されていてば、部分点を獲得することができます。例えばここで的外れな答えを書いたとしても減点されることはないので、とにかく書く。
落ちる人は、分からなかったら白紙のままにするという傾向もあります。それではまったく点数が入りません。とにかく書いて、あわよくば部分点だけでも取れるよう、努力を怠らないようにしましょう。
以上の通り、証券アナリストを独学で合格するには、とくかく過去問をどれくらい解いたかにかかっています。何度も解くうちに問題を理解する力が付き、暗記もできるだけでなく、出題傾向にも自然と気づくことができます。
ただダラダラやらずに、広い視点で勉強してください。理数系が強い資格とは言われますが、文系の方でも最初さっぱり分からなかったけど、何度も過去問を解いていたら意味を理解できるようになったという方は多くいます。
しかし、専門性が高く理解しづらい分野でありこともまた事実です。何度も過去問を解いてみたけど、やっぱりよく分からない…という方は、無理せずにスクールを利用するのも手です。自分に合った勉強法で合格を目指しましょう!