50代を過ぎると会社でのキャリアを積みあげ、一定の立場や安定した地位を築き、仕事にやりがいを感じている方も多いかと思います。
一方で、年齢を重ねるとともに定年が近づき、早期退職を視野に入れ始める方も少なくありません。
今回は早期退職制度を利用することで、どんな人生が待っているか、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
早期退職する前にしておきたい準備も解説しますから、これから会社に意思を伝える方、早期退職予定の方はぜひ参考にしてください。
早期退職制度とはどのような方を対象にしているのか、制度の目的などについて解説します。
早期退職制度は、本来の定年を迎える前の50代以降の従業員が、自主的に定年退職を選択できる制度です。
年齢に制限があるわけではないため、早い人では40代後半の社員も早期退職ができる企業もあります。
企業側が希望者を募る希望退職と、従業員が自ら名乗り出る早期退職は、一括りに早期退職とすることが多いです。
早期退職には企業側・従業員側の双方にメリットがあり、取り入れている企業も増加しています。
一例として、早期退職は企業にとっては人件費の削減、従業員側には割増退職金などのメリットがあります。
組織の若返り施策として導入している企業もあり、大手企業でも希望退職と早期退職を併用しているところが増加中です。
日本ではこれまで終身雇用と年功序列制が常識とされてきました。
しかし、経済成長が停滞する中で、日本企業にとって勤続年数が長いために多額の人件費がかかり、生産性の低い人材は負担となっていることは事実です。
そのため、早期退職制度を導入することにより、人件費のかかる人材に対して増額した退職金を渡し、人件費を削減することが企業の主な目的です。
定年まで毎月継続して給与を支払うよりも、経営の安定化につながりやすいことから、早期退職制度を取り入れる企業が増えていると考えられます。
早期退職制度では、従業員側に金銭的なメリットもあります。
早期退職を選択した場合、企業は通常の退職金よりも多く退職金を支払うことが多く、退職後の生活資金が手に入ります。
退職後に問題となるのが生活資金ですから、割増退職金が支払われることを理由に、早期退職を選択する人も少なくありません。
セカンドキャリアを考える場合でも資金は必要ですから、早期退職には大きなメリットがあると言えるでしょう。
早期退職者にどのような人生が待っているのか、考えられる末路をご紹介します。
早期退職後にやりたいことが見つからず、人との交流も少ないと孤独感から心を病んでしまうことがあります。
趣味や特技がなく、仕事だけに打ち込んできた方は仕事以外の人脈が少なく、孤独になりやすいため特に注意すべきです。
退職後に心の病にならないためにも、仕事以外でやりたいことを見つけ、人間関係も大切にしておくことをおすすめします。
早期退職は早い人なら40代後半で決断するため、その後の人生は30年40年以上続くことがあります。
しかし、早期退職後に一切収入がなくなれば、生活が立ち行かなくなるでしょう。
そのため、早期退職後に再就職が必要になり、結果的に仕事で苦労するケースもあります。全く違う業種に再就職すれば、苦労することもあるので注意が必要です。
仕事に打ち込んだ人に多いケースとして、趣味や興味のあることが少なく、自宅で引きこもりがちになるパターンです。
外出する機会が少なくなると気分の浮き沈みが激しくなり、体力も低下していきます。
疲れやすくなるためさらに外出しなくなり、体力が低下するという悪循環です。
早期退職後にやりたいことがない方は、休日を利用してやりたいことや趣味を見つけ、意欲的に日々を過ごせるようにしましょう。
早期退職後は毎日の仕事がなくなるため、生活リズムを乱す人も少なくありません。
働いていた時は毎日夜10時に寝て、朝6時に起きる生活だったにもかかわらず、退職後は夜型の生活になる方もいます。
生活リズムが乱れると自律神経のバランスも悪くなり、体調不良を起こす可能性が高いです。早期退職後こそ自己管理をしっかりと行い、病気にならないように注意しなければなりません。
実際に早期退職した結果、退職してよかったと感じている方の声をご紹介します。
正直に言います! 私は54歳で早期退職しました。だれでも会社からはいずれは離れてしまい、私にはそのタイミングが早まっただけ、離れる縁だったと割り切っています。そしてそのうちに新しい人生がやってきます。お互いのことを大切にした人たちの出会いを期待しつつ交流をはかっています。 pic.twitter.com/CoRx6mvCfn
— まえだ|サラリーマン投資家の味方 (@okanehataraku) October 17, 2023
50代で早期退職し、新しい人生へと踏み出せた方の意見です。早期退職で前職との縁は切れたものの、新しい人生に歩み出したことに肯定的な声です。
早期退職者の多くは退職後にやりたいことを見つけ、第二の人生をポジティブ思考で歩んでいます。早期退職する方は40~50代ですから、様々な経験を積んできた年代だからこそ新しいことにチャレンジする方も多いようです。
引用:X(旧Twitter) 「まえだ」のポストより
遂に昨日「来春、早期退職したいと思っています」と上司に伝えました。
主な反応は驚きと心配。
ありがたやありがたや。
でも、自分は晴れやかな気持ち。
と同時に、次の段階に入ったことへの不安も。
行動力でなぎ倒して乗り越えます。
楽しみです。#セミリタイア準備#ダウンシフト#早期退職— たつし@セミリタイア準備 (@tatushi_kakugo) October 12, 2023
早期退職によって、自分のやりたいことや進みたい道に向かっていけた人の意見です。自分の夢や目標があっても、仕事をしている間はできないこともあります。
早期退職には職場の理解も必要ですが、理解があれば前向きな気持ちで次のステージへと進んでいけるでしょう。
早期退職を検討中の方は、退職の希望を伝える前に「退職後に何をやりたいか」について考えておくことが重要です。
引用:X(旧Twitter) 「たつし」のポストより
57歳で早期退職、今フリーランスになったけど…..
いま充実の毎日を過ごしている私からお伝えしたい、退職後を豊かに過ごすコツは
酒は隔日
読書は毎日
素直に即行動
若者からも学ぶ
インプットは重要
朝活の習慣オススメ
目標は手帳に書き出す
進捗も定期的に管理する
バランス摂れた食事と運動…— みらいのびた | 50代の希望 (@mirai_nobita) October 17, 2023
早期退職後にフリーランスとなり、充実した日々を過ごせている方の意見です。早期退職後のルーティンや生活についても紹介しており、仕事以外の人生を楽しんでいるようです。
早期退職後に再就職を目指すか、フリーランスになるか、趣味に時間を費やすかは人それぞれですが、自由で充実した日々を過ごせている方は一定数おられます。
仕事は体調が悪い時や気分が乗らない時も働かなければなりませんが、早期退職でそうした緊張やストレスから解放されます。目的を持って日々を過ごしている方は、早期退職後も充実した人生を送れるでしょう。
引用:X(旧Twitter) 「みらいのびた」のポストより
早期退職を選ぶと3つのメリットがあります。メリットを理解して、早期退職を選択する際の判断材料にしましょう。
早期退職制度を導入している企業の多くは、早期退職者に割増退職金を支払っています。
割増退職金がない企業もありますが、有給休暇の買い上げや再就職支援サービスなどの制度も用意しているケースが多いです。
定年前に退職する以上、早期退職するメリットがなければ希望者が現れないからです。そのため、定年までに時間が残っており、現在の会社を退職して別のことにチャレンジしたい方には、資金面で大きなメリットになるでしょう。
ただし、会社によって金額や制度は異なるため、自分の会社にはどんなルールがあり、早期退職するメリットが大きいかどうか確認してから決断することが重要です。
早期退職制度を設けている企業では、同時に再就職支援サービスを用意しているところもあります。
例えば、職業紹介所での再就職先の紹介、関連企業への再就職あっ旋など、様々な優遇措置を用意している企業があります。
40代・50代で再就職するには様々な障害があるため、企業からの再就職支援は重要なポイントです。
就業規則や社内のルールに明記されていない場合でも、人事課や総務課などに尋ね、再就職支援を行っているか確認しましょう。
早期退職の年齢まで働いてきた方は、1つの会社で20年以上働いてきたケースが多いです。
業種にもよりますが、会社員なら土日祝日以外は休みがなく、平日は仕事で自由な時間がほとんどありません。
そのため、長年働いてきたことで自分の時間を作れなかった方も、早期退職を機に自由な時間が生まれるメリットがあります。家族サービスや地域貢献、旅行、趣味などに自分の時間を活用できるでしょう。
早期退職を選ぶことでデメリットもあるため、3つのポイントをご紹介します。
最も大きなデメリットは、継続的な収入源がなくなることです。早期退職で退職金は支払われますが、副業や再就職に成功しなければ、収入なしで生きていかなければなりません。
そのため、早期退職したら終わりではなく、その後の人生をどう生きるか考えることが非常に重要です。
現在の状況を分析して預貯金が厳しいのであれば、再就職や投資などを行い、新しい収入源の確保を考慮しましょう。
早期退職は40代後半から50代の方を中心としており、年代的に再就職が難しい点もデメリットになります。
一般的な転職市場では、20代や30代の需要が高く、40代・50代以降は需要が大きく落ち込みます。
早期退職の年代は需要の少ない年代と重なるため、再就職先探しが難航しやすい点は理解しましょう。
再就職を目指す際は、前職の再就職支援サービスを利用するか、中高年向けの転職エージェントに登録するなどの対策が必要です。
年齢は再就職のハードルになりやすいですが、経験とスキルを武器にして職場探しをすることがポイントです。
年金は在職中の給与と加入期間によって受給額が変わるため、早期退職すると減額される可能性が高いです。
再就職した場合でも、前職よりも給与が低ければ、年金の受給額は減少します。
早期退職する場合は、現在の自分の年金加入期間もチェックし、将来的にどの程度の年金額がもらえるか計算しておきましょう。
そのうえで、再就職ではどのくらいの給与を希望するのかを考慮し、無理のないライフプランを設計することが大切です。
早期退職する前に、事前に準備を進めておかないとやばいとされる5つのポイントをご紹介します。
早期退職したら、その後の収入がなくなってしまいます。退職前には貯蓄が十分と思っていても、実際に生活していると予想以上に費用がかかることも珍しくありません。
そのため、具体的に支出の予測を立てて、財政計画に問題がないか確認しましょう。
上記は支出項目の例ですが、いくらかかるか計算したうえで、現在の貯蓄と退職金で何年程度生活できるか分析します。
年金受給年齢までに貯蓄が底をつくようであれば、再就職で収入源を確保することも考える必要があります。
また、それまでの年収や退職金の額によって、退職金の一部が所得税の課税対象になる点も注意すべきです。
翌年の住民税が大幅に高くなることもあり、生活の負担になる可能性があります。
早期退職後は生活に多少の余裕があっても、再就職や事業を開始して収入源を確保することも大切です。
計算上は家計に問題がなくても、大きな病気や災害が発生すれば、一度に大きなお金が必要になる可能性があります。
退職金と貯蓄だけでやりくりするのではなく、別の収入源も確保して生活を安定させましょう。
退職日が決まっているのであれば、退職日に合わせて新しい職場を探すか、独立して事業を展開するなど、あらかじめ行動指針を決めておくことが重要です。
定年退職や早期退職後に、燃え尽き症候群になって意欲がなくなる人は一定数います。精力的に仕事をしていた方ほど、退職後の反動は大きい傾向があります。
また、常に家の中にいると夫婦関係が悪くなり、喧嘩が増える家庭も多いです。
そのため、退職後に自分が楽しめる趣味を見つけ、生きる意欲を高めることも重要なポイントです。
例えば、退職後に夫婦で温泉旅行に出かけたり、ハイキングをしたりするなど、外の世界とつながる趣味を持っているのが望ましいでしょう。
退職後に人とのつながりを失うと、日常生活への活力が失われるだけでなく、自分の容姿にも気を使わなくなります。
働いている時は社会人としての振る舞いを意識していますが、退職すると身だしなみに配慮する必要がなくなるからです。
そのため、退職後も元気で楽しい人生を送るには、仕事とは違う人脈を構築することが大切です。習い事や地域の集会、イベントへの参加などを通して、様々な人との交流を持ちましょう。
同年代で話の合う人と交流するだけでなく、若年者とも交流して、若い感性に触れることも刺激になります。新しい刺激を受けることで、退職後の生活にも活力が湧いてきます。
会社員として働いている間は、健康保険の被保険者となっていますが、退職後は保険証を返却しなければなりません。
そのため、資格を失った後は、任意継続健康保険か国民健康保険に加入するか、家族の健康保険に入れてもらう必要があります。
40代・50代は年齢とともに健康維持が課題になるため、いずれかの方法で健康保険に加入しておくことをおすすめします。
病院への定期通院がある方は、特に重要なポイントと言えるでしょう。
早期退職という決断をする方は増加しており、近年のワークライフバランス重視の働き方にも少なからず影響を与えています。
しかし、早期退職は40代・50代で働かなくなるため、社会から遠ざかる孤立感や生活維持の資金などの問題があります。
自分の趣味や生きがいを見つけ、充実した時間を送るには、早期退職に向けた準備が欠かせません。
退職後の再就職やフリーランスなどで収入源も確保しつつ、生活の変化に向けて準備を進めましょう。
早期退職で人生を楽しむために、働きながら自分にできる準備を進めて「早期退職してよかった」と思える日々を手に入れましょう。