2020年問題や若年層のIT離れで、ITエンジニアの人材確保に苦戦する企業が少なくありません。
人手不足なので、経験の浅い若手エンジニアや未経験者を積極的に採用する企業も増えきました。
私が現役で転職活動をした10年前と比べて、「ITエンジニアの転職の難易度は下がった」というのが正直な感想です。
ITエンジニアの人気職種である社内SEも以前と比べて、転職が間単になったのでしょうか?
社内SEは求人数の割に応募者が多い職種なので、ライバルに差をつけるために資格を取っておくべきか気になるところです。
この記事では、2020年1月時点の社内SEの需要や転職の難易度、転職での資格の重要度やおすすめ資格の難易度や身につくスキルなどを紹介します。
転職サイトdodaの調査によると2019年11月のITエンジニア全体の有効求人倍率は7.85%でした。全職種の有効求人倍率が2.81なので、他業種と比べてITエンジニアの求人数は多い傾向にあります。人気の高い社内SEの求人でも同じことがいえるのでしょうか?
社内システムの内製化や業務のIT化に伴い、以前と比べて社内SEを採用する企業が増えています。社内SEの求人数は増えても、採用人数は1社につき1~2名程度。
採用枠と比べて社内SEの転職希望者が多く、転職エージェントdodaに登録する67%のITエンジニアが、転職後は社内SEになることを希望しています。IT専門の転職エージェント レバテックでも登録者の半数以上が、第1希望の職種は社内SEと答えるようです。
しかし、希望者が多くても、転職者の5人に1人しか社内SEになれないのが現状です。
社内SEの求人数が増えても応募者が殺到するので、社内SEはITエンジニアのなかでも転職の難易度が高いと考えて間違いないでしょう。
転職サイトdoda調べによると、プログラミングや開発経験者を求める企業が多いとのことです。
一方、運用保守の経験を求める企業は減少傾向にあります。
そのため、Slerやベンダーで開発SEとして働いてきた人は、社内SEの転職で有利でしょう。
逆に運用保守の経験しかない人は、転職活動に苦戦するかもしれません。
プログラミングや開発経験者を求める求人が多くても、社内SEの仕事はシステム開発だけではありません。
システム開発も含めて、「社員みんなが効率よく働くため、社内のシステム環境を整えること」が社内SEの仕事です。
そのため、SlerやベンダーのSEと比べて、社内SEの業務範囲は多岐に渡っています。
ここで紹介した仕事内容はあくまでも一例です。社内SEの業務範囲は、職種や企業規模で大きく異なります。
「社内SE」と呼ばれていても会社が変われば、仕事内容がガラリと変わることも珍しくありません。
一般的に大企業では業務が細分化されるので、システムの企画や設計など上流工程に携われるケースが多いです。
運用保守業務は、下請けのベンダーや派遣社員に外注化します。
一方、中小企業だと社内SEが1人しかいない会社も多いため、これらの業務をすべて1人で行わなければなりません。
1社ごとに仕事内容が全然ちがうので、応募前は求人票の「業務内容」や「求めるスキル」をしっかり確認するようにしましょう。
結論からいうと、社内SEの転職では資格はあまり関係ありません。
ITの幅広い知識が求められる社内SEは、SlerのSEほどプログラム言語、サーバ、ネットワークなど特定の分野で深い知識を必要としないからです。
他部署の社員と協力して仕事を行う機会が多いので、資格よりもコミュニケーション能力が高い人が歓迎されます。
ただ、資格で学んだことが、社内SEの業務で活かせることがあります。
内定の決め手にはなりませんが、転職で評価されやすい実務で活かせる資格を6つ紹介します。
基本情報技術者試験は、経済産業省管轄のIPA(情報処理推進機構)が主催する情報処理技術者試験の1つです。
システム開発、ネットワーク、セキュリティ、企業の経営活動など総合的なITの基礎知識が身につく資格。勉強した知識は、社内システム全般を管理する社内SEの業務に活かせます。
基本情報技術者試験の難易度はレベル2。情報処理技術者試験の難易度は数字で4つに分かれていて、数字が大きいほど難易度が高いと思ってください。レベル2でITエンジニアの登竜門に位置付けられる資格なので、難易度はそこまで高くありません。実務経験のある人は、定時後や休みの日など空いた時間に勉強すれば1か月ぐらいで合格できるでしょう。
4月と10月の第3日曜日
第二新卒の若手エンジニア
応用情報技術者試験も社内SEの実務に活かせる資格の1つです。IPA主催の情報処理技術者試験で、総合的にITの知識が問われる資格と思ってください。
基本情報処理技術者試験と出題範囲が似ていますが、より実践的で深いITの知識が身につきます。IT業界だけでなく企業、省庁など幅広い職種で評価される資格なので、どの企業の面接でも持っていれば有利になるでしょう。
情報処理技術者試験の難易度はレベル3。特に記述式の午後の試験は難易度が高く、現役エンジニアでも4人に1人しか合格できません。現役ITエンジニアでも合格するには約200時間の勉強が必要といわれています。
4月と10月の第3日曜日
20代後半から30代前半の中堅エンジニア
プロジェクトマネージャーも情報処理技術者試験の1つ。システム開発の現役プロジェクトマネージャーや、プロジェクトマネージャーとしてキャリアアップしたい人向けの資格です。
プロジェクトの責任者として予算、スケジュール、人員確保、品質保持、意思決定などシステムの開発プロジェクトを円滑に管理・実行するための知識が身につきます。非IT企業ではSlerやベンダーに開発の実作業を委託して、社内SEはベンダーコントロールに専念することも珍しくありません。
そのため、プロジェクトマネージャーで学んだ知識は、実務で役立つこと多いでしょう。プロジェクトの管理経験やベンダーコントロールの経験を歓迎する社内SEの求人が多いので、取っておいて損はありません。
情報処理技術者試験で最高レベルの4に区分される資格なので、難易度はかなり高いと思ってください。受験者の多くは実務経験のある現役のITエンジニアです。特に難易度が高いのが、午後2の論述式試験。
2時間以内に約3000~4000字程度の文章を書かなければならないため、文章作成に慣れてないとかなり苦戦します。
4月の第3日曜日
30代半ばから40代のベテランエンジニア
ITストラテジストも社内SEの転職で有利になる情報処理技術者試験です。合格にはITと経営に関する高度な知識が求められるため、企業の幹部候補やITコンサルタントを目指す人向けの資格といえます。
企業の経営戦略に基づき、ITを活用した業務改善や事業計画、サービス開発などの策定・提案・遂行するための知識が身につきます。
社内SEの重要な役割の1つに、社員の生産性向上や会社の業績アップを実現するシステムの企画があります。
そのため、ITストラテジストの資格がある人は、多くの会社で歓迎されるでしょう。
ITストラテジストもレベル4の最難関の資格。ITの深い知識も必要とされますが、それ以上に欠かせないのが経営の知識です。
経営者と同じ目線で経営方針や経営戦略のアドバイスができるぐらいの知識が必要と思ってください。
経験豊富なITエンジニアでも7人に1人しか合格できないほど難易度が高い資格です。
10月の第3日曜日
30代半ばから40代のベテランエンジニア
情報処理安全確保支援士試験とは、2016年10月に新設された情報処理技術者試験です。旧情報セキュリティスペシャリスト試験を改定した資格だと思ってください。
合格すると企業で実施すべきセキュリティ対策全般の知識が身につきます。個人情報や機密情報の流出は、企業の社会的信用を失う原因となることも珍しくありません。
そのため、万全なセキュリティ対策を行うことは、社内SEの大事な仕事の1つと思ってください。
トラブルの原因となるセキュリティリスクの種類も年々増えているので、セキュリティに詳しい人は評価されるでしょう。
レベル4の最難関資格なので、しっかり勉強しないと合格できない難易度の高い資格です。
受験者の平均年齢は35~40歳前後。合格体験記を見ると、平均学習時間は50~100時間とのこと。
セキュリティの知識が乏しいとベテランでも合格には、200時間以上の学習時間が必要です。
10月の第3日曜日
30代以上の経験豊富なITエンジニア
AWS認定やMicrosoft Azure 認証試験といったクラウドサービスのベンダー資格も社内SEにおすすめしたい資格の1つです。合格するとAWSやAzureの知識を証明できます。
パブリッククラウドを利用する多くの企業がAWSとAzureを使っているので、覚えておいて損はありません。
最新技術なので資格を持っておくと転職先で評価される可能性が高いでしょう。最近、コスト削減と運用管理の手間を抑えるため、メインシステムを従来のオンプレミス(※)からパブリッククラウドに移行する企業が多いです。
そのため、社内SEの業務でもAWSやAzureの知識を活かす場面が増えるでしょう。
※オンプレミス
自社やデータセンターでサーバを構築し、運用管理すること。
AWS認定は、設計・運用・開発と職種別に「基礎」「アソシエイト」「プロフェッショナル」と3つの難易度に分かれています。
基礎やアソシエイトなら経験の浅い若手エンジニアや未経験者でもしっかり勉強すれば合格可能です。プロフェッショナルは、AWSを実務で使った経験がない人だと合格はむずかしいでしょう。
そのほかに分野別に専門知識が必要とされる試験が5つありますが、実務経験と深い知識がないと合格はむずかしいと思ってください。
Microsoft Azure 認証試験も日本語版は全部で9種類あり、「基礎」「アソシエイト」「エキスパート」と3つの難易度に分かれています。
言葉のとおり基礎の難易度が低く、エキスパートは実務経験や実機の操作経験がないと合格はむずかしいでしょう。
AWS認定と同じで運用管理者、開発者など職種別に受験科目が用意されています。
年齢や経験問わずクラウドサービスの知識を深めたいエンジニア
確実に社内SEの転職を成功させるなら、資格試験の勉強よりも面接対策をしっかり行ったほうがよいでしょう。
応募企業で活かせる経験やスキル、志望動機はどの企業の面接でも聞かれる質問です。似たようなスキル、経験、年齢の志望者が複数いた場合、志望動機が内定の決め手となることも珍しくありません。
競争率の高い社内SEの転職では1つの企業に50人以上応募が来ることもよくある話です。
ライバルに差をつけて、内定を勝ち取るためにも、面接では次の4つを明確に説明できるようにしておきましょう。
社内SEの転職では、資格は重視されません。むしろ、「活かせる実務経験」「志望動機」「応募企業の事業内容」「社内SEになりたい理由」を面接でしっかり説明できるようにすることが内定獲得には欠かせません。
社内SEの仕事は、技術力よりもコミュニケーション能力を必要とされる場面がたびたびあります。
面接ではスキルと一緒にコミュニケーション能力もチェックされているので、話下手な人はしっかり受け答えできるように準備しておきましょう。
面接対策にプラスアルファで資格とるとしたら、社内SEの業務で活かせる次の6つの資格を勉強してみてください。