IT業界の深刻な人手不足を補うため、近年女性のシステムエンジニアを採用する企業が増えています。
技術職だから手に職をつけたいという理由で、システムエンジニアへの転職を考える女性もいるでしょう。
この記事では、システムエンジニアの仕事内容や業界特有の事情から考えた女性で働くメリット・デメリットを紹介します。
加えて未経験者の転職で有利になるスキルやおすすめの転職方法も解説します。
システムエンジニアとは、顧客の要望に基づきシステムの設計・開発を行うITエンジニアです。
システム開発の流れは大きく分けて6つの工程に分類できます。
上流工程
下流工程
所属する会社で業務範囲が異なるものの、システムエンジニアは要件定義や外部設計、内部設計といった上流工程やテスト以降を担当することが一般的です。
特に要件定義は、顧客の要望から業務課題を解決させるための機能や運用方法などを決める「システム開発の要」となる重要な工程。
要件定義を行うには、顧客の業務課題を正確に理解し、課題解決に向けてシステムで実現できることを考え、それを顧客に分かりやすく説明しなければなりません。
そのため、システムエンジニアには、IT全般の知識とコミュニケーション能力が求められます。
設計書やテスト手順書を作成しなければならないため、文章能力も必須のスキルといえます。
女性がシステムエンジニアになるメリットを「年収」「スキル」「働きやすさ」の3つの視点から解説します。
他の職業で働く女性と比べて、システムエンジニアは平均年収が高い傾向にあります。
厚生労働省が発表した「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、女性全体の平均年収は約366万円です。
それに対し、情報通信業で働く女性の平均年収は約475万円と、約100万円も年収が高くなります。
一部の古い体質の企業を除き、多くの企業でエンジニア職の給与水準と評価制度に男女の区別はありません。
そのため、女性でも成果を出せば昇給や昇進の機会に恵まれるので、年収アップが期待できます。
※年収の算出方法=所定内給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
他業界・他業種でも使えるポータブルスキルが身に付きやすい点も、女性がシステムエンジニアを目指すメリットの1つ。
システムエンジニアに必要な総合的なITの知識は、同業他社や異業種転職とどの会社にいっても通用します。
要件定義で重視されるコミュニケーション能力も、円滑に仕事を進めるのにどの業界・職種でも欠かせません。
また、システムエンジニアの下記の業務では、顧客への報告が必要です。
そのため、複雑で専門的な事柄をシンプルに説明できる論理的思考が求められます。
論理的思考は、さまざまな業界・職種で効率よく業務を遂行するのに不可欠な能力と考えられています。
システムエンジニアはリモート・時短求人が多いため、出産後に復職しやすいところも女性にとってメリットといえるでしょう。
IT業界ではコロナ禍を機に感染防止対策で、リモートワークを取り入れる企業が増加傾向にあります。
2022年7月18日時点のリクナビNEXTでは、システムエンジニアのリモートワーク求人が3,002件もありました。
また、近年子どものいる女性向けに、週3~4日勤務の時短求人を斡旋する人材紹介サービスも首都圏を中心に増えています。
IT業界の人手不足が深刻なせいかエンジニア職の時短求人も少なくありません。
これらの多くは、ブランクのある女性を歓迎しています。
加えてエンジニア職は他の職種と比べて、リモートワークや時短勤務、フルフレックス勤務のフリーランス求人も豊富です。
こうした特徴から、システムエンジニアは女性特有のライフプランに合わせた働き方ができる職業といえます。
ここからは、女性ならではの視点でシステムエンジニアになるデメリットを解説します。
突発的な仕事が多く、長時間労働になりやすい点が仕事と家庭を両立したい女性にとってネックになります。
システム開発の現場では、設計書どおりにプログラムが動かない、システムトラブル、顧客から仕様変更の依頼などと想定外の出来事がつきものです。
しかし、納期は決まっているため、納期の遅れは許されません。
顧客にシステムを納品してからの本番運用で、障害が発生することも珍しくありません。
本番運用後の障害は、顧客の業務に多大な影響を及ぼすため、早期解決が求められます。
こうした理由で、システムエンジニアは急なトラブル対応などで、残業せざるを得ない状況になりやすいため、子どものいる女性には負担の大きい仕事といえます。
出産や育児でブランクがあっても常に勉強しなければならない点も、システムエンジニアの厳しい一面です。
近年は深刻なエンジニア不足を解消するため、出産や育児などでブランクのある女性も積極的に採用する動きが進んでいます。
しかし、受け入れる企業としてはたとえブランクがあっても、これまでの経験を活かした活躍を期待しています。
それに加えて、技術の進歩が早いIT業界では、数年おきに需要の高いプログラム言語やフレームワーク(※)が変わることも珍しくありません。
離職前に主流だった技術が数年ぶりに復職すると時代遅れになることも。
こうした業界特有の事情から、家庭の都合で一時的に離職することがあっても、復帰後に即戦力として活躍できるよう常に勉強しておく必要があります。
※開発効率を上げるために、使用頻度の高い機能群を提供するソフトウェア。
客先常駐という働き方を採用する企業で働くと、長時間通勤になり仕事と家庭の両立が辛くなる可能性があります。
客先常駐とは、自社ではなく顧客のオフィスに勤務するワークスタイルです。
システム開発の現場では、顧客の取引情報や財務情報など秘匿性の高い情報を扱います。
これらの情報漏えいを避ける目的で、IT業界では客先常駐という働き方が定着しています。特にSlerやSES企業に多い働き方です。
システムエンジニアのように開発に携わるエンジニア職は、開発プロジェクトの終了や縮小に伴い、短期間で常駐先が変わることも珍しくありません。
面接の際に勤務時間の希望条件を伝えれば、企業側はそれを考慮して常駐先を選んでくれます。
しかし、希望条件を出しても、自分のスキルとマッチし、人員が不足するプロジェクトが自宅から離れていれば、そこにアサインされるため通勤時間が長くなる可能性はあります。
昨今のエンジニア不足で未経験者の門戸は広がり、入社後に研修を行う企業が増えています。
しかし、実務経験がなくても、ITの基礎知識がある人が選考で有利なことに変わりありません。
ここでは、未経験者の転職で有利になる資格やITスキルを紹介します。
未経験者に勉強をおすすめするIT資格は、基本情報技術者試験です。
基本情報技術者試験とは、IPA(情報処理推進機構)が主催するIT技術者向けの国家資格です。
基本情報技術者試験に合格すると、ソフトウェアやハードウェア、セキュリティ、システム開発、プログラミングなどITエンジニアが業務を行う上で必要な基礎知識があることを転職先の企業に証明できます。
IPAのIT技術者向け資格の中でも、基本情報技術者試験の難易度はそれほど高くありません。
しかし、コンピューターにあまり触れていない人からすれば、耳慣れない専門用語が多いため難しく感じるでしょう。
そのような人は、イラストや図解でわかりやすく解説している試験対策本や、分野別に詳しく出題内容を解説しているYouTube動画などで学習することをおすすめします。
プログラミングも転職前に学習しておくことをおすすめします。
未経験者がシステムエンジニアで採用されても、総合的なITの知識が求められる要件定義や設計などの上流工程の業務に携わるスキルがないからです。
経験が浅いうちはプログラミングやテストなどの下流工程の実務経験を経て、上流工程に携わるケースが一般的です。
そのため、プログラミングはSEに必須のスキルといえます。
プログラミングを学ぶといってもプログラム言語はたくさんあるため、「どの言語を勉強すべきか」と疑問に思う人もいるでしょう。
需要があり、初心者でも学習しやすい記述がシンプルなプログラム言語を学ぶことをおすすめします。
以下のプログラム言語は、求人の数が多くて初心者でも学習しやすい傾向にあります。
初心者におすすめのプログラム言語
これらは日本語のナレッジが多く、学習用動画サイトや書籍などの教材が充実しているので、独学でも勉強しやすいでしょう。
また、需要の高さからほとんどのプログラミングスクールで、PHPやJavaScriptの講座を用意しています。
未経験からシステムエンジニアに転職する方法は、主に3つあります。
中でもおすすめなのは、転職エージェントを使って転職することです。
求人サイトやビジネスSNSは、自分のペースで自由に転職できるものの、職務経歴書の添削や面接対策などのサポートサービスはありません。
応募から面接日の調整、内定後の年収交渉をすべて自分でやらなければならないため、在職中で残業が多い人や初めて転職活動を行う人には、負担の大きい転職方法といえます。
その点、転職エージェントであれば、転職活動をサポートしてくれる専属のキャリアコンサルタントがつきます。
面談で話した希望条件をもとにキャリアコンサルタントが自分にあった求人を複数紹介してくれるので、ミスマッチが起きにくい転職方法といえるでしょう。
加えて、応募企業ごとに書類の添削や面接対策を行ってくれるため、万全な状態で面接に臨めます。
わずらわしい面接日・入社日の調整や年収交渉もキャリアコンサルタントが代行してくれるため、限られた時間の中で効率的な転職活動が実現します。
「システムエンジニアは専門職だから未経験だと求人を紹介してもらえないのでは?」と、心配な人もいるでしょう。
確かにそうした一面もありますが、dodaと就職カレッジは業界・職種未経験者でも積極的に求人を紹介してくれます。
特に就職カレッジは、社会人経験の浅い人向けの転職サポートに定評があり、「就職カレッジ(R)女性コース」という18歳~35歳までの女性に特化した転職支援を行っています。
しかも紹介しれくる企業は、産休や育休制度があり、女性の採用に積極的な企業ばかり。
これらはすべて書類選考が免除されるため、多くの選択肢から自分のライフタイルに合う会社が選べるでしょう。
システムエンジニアは他業種と比べて給与水準が高く、昇進や昇給の男女差も少ないため、女性でも努力すれば年収600万円以上の高年収を狙うことも夢ではありません。
しかし、技術の変化が激しいIT業界では、数年おきに需要のあるプログラム言語やフレームワークが変わります。
第一線で活躍するには常にアンテナを張り巡らせて、最新動向をキャッチアップしておかなければならない厳しい一面も否定できません。
とはいえ、他業種と比べてリモートワークに理解があり、時短求人も増えているため、働く意欲とスキルさえあれば育児中の女性でも活躍できる職業です。
これからシステムエンジニアを目指す人は、転職エージェントを活用して自分のライフスタイルにあった会社を探してみてはいかがでしょうか。