日本では、3月になると企業説明会が各地で活発に行われ、大学生が本格的に就職活動を始めます。
多くの方は新卒としてそのまま企業に就職しますが、一部の方は何らかの理由で卒業後も就職活動を続ける「就職浪人」の道を選んでいます。
就職浪人になる道を選んだ方は、就職を成功させるにはどうすべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、就職浪人と留年・第二新卒との違いや、メリット・デメリット、就職を成功させるためのポイントなどを詳しく解説します。
就職浪人とは、新卒で就職先が決まらなかった人や、希望する就職先に内定がもらえなかった人で、大学卒業後も就職活動を続けることを指します。
学校卒業後も就職活動を続けることになり、一般的には新卒ではなく既卒として扱われます。
就職浪人とよく似ており、混同されやすい言葉に「就職留年」があります。
就職留年とは、就職活動で「新卒」というブランド価値を維持するため、大学を卒業せずに留年することです。
他にも、大学の就職サポートを受けられるというメリットもあり、就職留年を選択する学生もいます。
ただし、あくまで学校を卒業せずに在学中になることから、1年分の学費支払い義務は生じる点には注意が必要です。
企業によっては就職浪人も就職留年も、同じように扱う企業も多くなってきています。
そのため、学費を支払ってまで新卒ブランドを大事にすべきかどうかについては、個人の価値観によるところが大きいでしょう。
第二新卒とは、新卒入社から3年以内に転職する人のことです。
新卒や就職浪人が正社員経験のない人材であるのに対し、第二新卒は少ない期間であっても正社員としての労働経験があります。
第二新卒は正社員として一定の教育を受けており、基本的なビジネスマナーを身に付けている方が多いです。
そのため、就職・転職市場においては教育コストが少なく、即戦力になりやすい人材と見られます。
また、若手で成長への期待があることから、新卒に負けないほど企業からは人気があります。
第二新卒は正社員経験がある点が、就職浪人との大きな違いと言えるでしょう。
就職浪人になる人は、およそ10人に1人ほどです。
文部科学省発表の「令和4年度学校基本調査(確定値)について」によると、大学卒業後に何らかの仕事に就いている人は下記の割合となっています。
就職は4人中3人がしている一方、就職・進学・留年などをしていない「上記以外の者」が9.4%となっています。
この9.4%が就職浪人と考えられ、およそ10人に1人が就職浪人という結果です。
就職浪人になる人は多いとは言えないものの、毎年一定数の方が卒業後も就職先を探しているようです。
参照:文部科学省『学校基本調査-令和4年度 結果の概要-「令和4年度学校基本調査の公表について」』
就職浪人という道を選ぶ場合、新卒とは違ったメリットがあります。
就職浪人ならではのメリットについて詳しく見ていきましょう。
在学中とは違い、就職浪人になると自分の自由な時間が増えます。
その分自分の就きたい仕事、働きたいと思える会社選びにじっくり時間をかけられます。
大学ではレポートや論文など色々なことに時間が取られ、多くの学生は少ない時間をやりくりして就職活動をしなければなりません。
就職浪人なら企業分析にも時間を使えるので、本当に自分と合った職場を探せます。
就職後のミスマッチを防ぐ意味でも、自由時間の多い就職浪人は就職活動で有利な立場です。
就職活動で時間を使えるということは、自己分析や履歴書の添削、面接対策もブラッシュアップできるということです。
学生時代は勉強や研究で時間を取られやすいため、自己分析や履歴書作成が上手くできないこともあります。
就職活動の軸になるのが自己分析や履歴書ですから、その点が不十分では就職活動も上手くいきません。
就職浪人という自由な時間を活かして、就職活動で自分に足りなかった点を見直せるのがメリットです。
就職浪人は大学生時代とは違い、一度就職活動を経験しています。
そのため、他の就活生に比べると経験値がある分、あまり緊張せず、効率的な就職活動ができる点がメリットです。
就活生の多くは初めての就職活動のせいで、緊張して上手く自己アピールできず、失敗してしまうことも多いです。
その点、就職浪人なら過去の経験がある分、他の就活生よりもリラックスして就職活動に臨めます。
企業のエントリーシートの書き方もわかっており、面接対策もしやすいため、就職活動を有利に進められるでしょう。
また、就職浪人であっても経験を積むために、色々な企業の選考を受けておくと経験が増えるのでおすすめです。
就職浪人の場合、身近な友人や知人に就職した人も多いことから、実際に働いた人の体験談を聴きやすい立場です。
志望する就職先の裏事情や、会社で働く人の目線での会社選びのポイントも聞くことができます。
就職前に抱いていた会社のイメージと、現実とのギャップについても知ることができるので、視野を広げる意味でもメリットになります。
実際に働いた人からの話は何よりも有益ですから、身近な友人・知人からの情報は大事にしましょう。
就職浪人になるメリットがある一方で、デメリットもあります。
デメリットも理解したうえで、本当に就職浪人を続けるべきかどうかを考えてみましょう。
近年は就職浪人を新卒や第二新卒と扱う企業も増えつつありますが、一般的には既卒として扱われています。
また、既卒の場合は新卒採用ではなく、中途採用という扱いになる点にも注意が必要です。
新卒採用は社会人としての教育を全て受けられますが、中途採用の場合は教育を受けられないこともあります。
加えて、中途採用は即戦力としての能力を求められやすく、一定のスキルも求められるでしょう。
新卒採用よりも総じて高いポテンシャルを求められやすいので、就職へのハードルも高くなる点がデメリットです。
大学在学中の学生であれば、大学の就職支援として大学推薦やキャリアセンターを利用できます。
しかし、就職浪人はサポートを受けられず、全てを自分一人で行わなければなりません。
就職留年をすると大学のサポートを受けられるため、この点も就職浪人との大きな違いと言えるでしょう。
就職浪人が就職活動を進める場合は、ハローワークの就職サポートや、就職・転職エージェントのサービスなら無料で利用できるのでおすすめです。
就職浪人は他の就活生がいない分、楽になると思われがちですが、実はもっと厳しい戦いになります。
例えば、中途採用を目指す場合には、第二新卒やキャリアアップ目的の転職者との競争になり、自分が優れていることを証明しなければなりません。
また、翌年になれば後輩の新卒が続々と就活生として活動するため、多くのライバルと少ない枠を取り合うことになります。
就職浪人は就職活動に多くの時間を掛けられますから、ライバルとの差別化ができるかどうかが鍵になるでしょう。
日本では新卒の4人に3人は正社員として就職しているため、就職浪人という立場はネガティブな印象を与えやすいのが現実です。
もちろん、就職浪人になった理由によっては、そのようなマイナス評価を受けることはありません。
しかし、企業側からすれば、「就職できなかった問題があるのでは」「意欲がなくて就職できていないのでは」というイメージを持つこともあります。
そのため、就職浪人として企業に応募する場合は、なぜ就職浪人になったのかしっかりと理由を伝えることが大事になります。
決してネガティブな理由ではなく、ポジティブな理由があり、熱意を伝えることが大切です。
就職浪人中は自由な時間が大きく増えるため、色々なことに目移りしてしまいがちです。
浪人中に何をすべきか、優先してやるべきことを解説するので参考にしてください。
まず大切なこととしては、自己分析と企業研究を徹底的に行うことです。
新卒の就活生が上手くいかなかった理由には、自己分析の甘さと企業研究の浅さがあります。
自分という人間を志望先にアピールするには、自分がどんな人間で、どんな長所と短所があり、仕事に対してどんな価値観を持っているか、言語化することが大切です。
また、企業研究をしっかりと行うことで、自分のやりたいことや適性と企業のミッション・ビジョン・バリューが合っているか知ることもできます。
最近の企業は就活生に対して、ミッション・ビジョン・バリューを踏まえて、どんな貢献をしてくれるのか、どんな未来を思い描いているか語ってもらうことを重視する傾向にあります。
就職浪人が正社員として採用されるには、しっかりと準備をして臨むことが何よりも大切
就職浪人中の自由な時間を活かして、仕事で有利に働ける資格を取得することも大切です。
例えば、海外出張の多い企業やダイバーシティな組織であれば英語、ICTに取り組んでいる企業ならエンジニアやプログラミング、財務・会計なら公認会計士や簿記など、志望先に応じて資格取得を狙うべきです。
希少性のある資格ほど他者との差別化になり、就職活動で有利になります。
逆に、就職浪人で勉強をしておらず、資格取得もしていなければ、不利な立場に立たされるおそれもあります。
就職浪人としての立場を最大限活用するなら、資格取得を目指しましょう。
既に志望する業界や就職先があるなら、アルバイトやインターンとして働き、業界での経験を積んでおくことも大切です。
なぜなら、人間は自分の目で見て、感じたものしか語ることはできないからです。
知識として業界の情報を持っていても、実際に働いてみるとイメージと違うことはいくらでもあります。
また、アルバイトでもインターンでも、実際に働いた経験があるのとないのとでは、語れる内容の重みが違います。
履歴書や面接で志望理由などを伝える際にも、働いた経験が生かせるはずです。
就職後に即戦力として働くためにも、アルバイトやインターンには積極的に応募しましょう。
就職浪人が就職を成功させるには、ポイントを押さえて活動していくことが大切です。
成功するための4つのポイントを解説しますから、就職活動中の方は参考にしてください。
就職浪人として活動していると、ほぼ毎回尋ねられるのが「なぜ就職浪人になったのか」という質問です。
企業側も慈善活動ではありませんから、問題のある人材はできるだけ避けたいと考えています。
就職浪人に対してはネガティブなイメージを持たれやすいため、なぜ浪人して中途採用枠などを狙っているのか、明確な理由を伝えることが大切です。
その答えに疑問を持たれるようであれば、採用の可能性が大きく下がります。
病気や怪我、家庭の事情など、嘘をつかずに事実をきちんと伝えることが大切です。
また、理由を伝えるだけではなく、理由から繋げて仕事への意欲や将来に向けた取り組みも語れると、面接官に好印象を与えられます。
新卒で志望業界の就職が上手くいかなかった方は、就職浪人中に志望業界以外にも視野を広げることをおすすめします。
志望業界を持つことは良いことですが、そこに固執してしまうと就職成功という観点では非効率です。
志望業界にも間接的に関係する仕事や、大企業以外の中小企業やベンチャー企業など、それまでよりも視野を広げてみることが重要です。
色々な企業をチェックしていく中で、「こんな仕事もあるのか」という気付きに繋がり、新しい興味が湧いてくることもあります。
志望業界を1つに絞るのではなく、自分の色々な可能性を見出してください。
就職活動が上手くいかず、なかなか採用に至らない場合は、履歴書の見直しと面接対策を行いましょう。
就活生が選考で上手くいかない理由の多くは、履歴書や面接で上手くアピールできていない点にあります。
自己分析で自分の適性や得手不得手を把握したうえで、企業に対してどうアピールするのが効果的か考えることが大切です。
また、選考で選ばれるためには、単に事実を羅列しただけでは上手くいきません。
面接官の心を揺さぶり、印象に残るためには、ストーリー性を意識することも大切です。
例えば、医師や看護師を目指す人に、幼少期や学生時代の入院や怪我の経験が多いことと同じです。
その仕事を希望するまでのストーリー性を履歴書に書き、面接でも伝えましょう。
就職浪人が活動していると、友人・知人は既に働いており、大学からのサポートもないので孤独を感じることもあります。
周囲に支えてくれる人が少ない就職浪人だからこそ、就活・転職エージェントの利用がおすすめです。
就職・転職市場に精通したプロから無料でアドバイスをもらえることに加え、エージェントでしか応募できない求人も数多くあります。
担当者からアドバイスをもらう中で、自分の新しい可能性に気付く人もいます。
自分の適性に合った企業を担当者が探してくれるので、自分は資格勉強やスキル磨きに集中できる点も強みです。
効率的に就職活動を進めるなら、就活・転職エージェントを利用しましょう。
就職浪人は新卒に比べて採用のハードルが高めで、ライバルとの差別化が必要な立場になります。
一方で、就職は必ずしも新卒である必要はなく、自分のやりたいことが明確なら、就職浪人という道も悪くありません。
就職浪人の間は自由に使える時間が増えますから、自分がどんなキャリアを積みたいのか、キャリアプランを明確にする時期と捉えましょう。
キャリアプランで何が必要になるか、求められるスキルや資格も考えて、就職活動の方針を決定してください。
自分の将来を考える意味でも、貴重な時間を大切に使いましょう。