不動産取引で必須の宅建資格…一発合格のために効率の良い勉強法を解説

不動産取引の際に必要とされるのが宅建士です。宅建は人気の資格の1つで、特に不動産業界で働く人にとっては必須の資格と言っても過言ではありません。

一方でその資格試験は年に1回しか行われず、難易度も高めとなっています。ここでは宅建試験に一発合格を目指す人のために、効率の良い独学での勉強法を解説します。

宅建の資格概要

まず、宅建士とはどのような資格を保持する者なのでしょうか。まずは資格の概要と、社労士の業務内容を説明します。

不動産取引における専門家を指す国家資格

宅建士は「宅地建物取引士」の略称です。宅地建物取引業法に基づく国家資格で、不動産取引業務を行います。宅地建物取引業者、つまり不動産業者会社は、事務所などに国土交通省令が定める数の専任の宅建士を置く義務があります。また不動産取引の際には、宅建士が行わなくてはならない手続きが存在します。ここからは宅建士の業務について説明します。

不動産取引では宅建士しかできない業務がある

宅建士の業務は、「宅地建物取引業法第35条に定める重要事項の説明」、「重要事項説明書への記名押印」、「宅地建物取引業法第37条に定める書面(契約書等)への記名押印」となります。これらの業務はいずれも不動産取引の際に必要な手続きで、これは宅建士のみが執り行うことができる独占業務となっています。

宅地建物取引業法第35条に定める重要事項の説明

不動産取引は金額が大きな取引となる一方で、顧客は取引経験が少ない、不動産の専門的な知識を持っていないという場合が多々あります。そのような顧客が不利益を被ることがないよう、不動産の専門家である宅建士が不動産の情報や取引条件などの重要事項を顧客に対して必ず説明します。

重要事項説明書への記名押印

上記の重要事項は口頭での説明だけではなく、書面にも記載され作成されます。この書面に記名押印することも宅建士の業務です。この手続きにより、顧客に対して重要事項を説明したことの証明となります。

宅地建物取引業法第37条に定める書面への記名押印

こちらは不動産取引の契約書などの書面となります。取引を行ったことの証明となる契約書への記名押印も宅建士が行います。

宅建士が活躍する業界

前述のとおり、宅建士は不動産取引には必要不可欠な存在です。ここからは宅建士の就職先などを見ていきます。

不動産業界

まずは不動産会社が宅建士の就職先として挙げられます。不動産取引の仲介・管理などを行う際には必ず宅建士が必要であり、さらに不動産事務所には5人に1人の割合で宅建士を置かなければならないと宅地建物取引業法で定められています。そのため不動産会社では就職後に宅建士の資格取得を推奨されるケースが多いです。

不動産業界でキャリアアップを考えている人にとって、宅建士はぜひとも取得しておきたい資格となります。また、これから不動産会社で働こうと考えている人も宅建士の資格を取得することをおすすめします。資格は不動産業界での就職で有利に働くでしょう。

金融業界

宅建士が活躍しているのは不動産業界だけではありません。金融業界では、融資の際に不動産を担保とする場合が多くあります。不動産価値を判断するために宅建士の知識が必要とされます。

建築業界

建築会社は、建物を建築するだけではなく、販売まで行っているところも多いため、その際に宅建士が必要となります。このように、不動産業界を始めさまざまな業界で宅建士は活躍できます。

宅建士は資格登録が必要

宅建士として働くためには資格試験に合格するだけではなく、試験を実施した都道府県知事の資格登録を受け、当該知事の発行する宅地建物取引士証の交付を受けなければなりません。宅建士としての登録には2年以上の宅地建物取引の実務経験、もしくは実務講習の受講が必要です。

宅建士試験の内容

ここまで宅建士資格の概要や仕事内容について解説してきました。ここからは実際に試験合格を目指す人に向け、試験や勉強方法を説明していきます。

試験は年に1回、10月に実施

宅建の試験は年に1回で、例年10月の第3日曜日に実施されています。

令和4年度の試験については以下のスケジュールとなっています(6月3日確定予定)。なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による試験会場不足のため、一部の受験者は12月に受験する可能性があります。

インターネット申込み:7月1日から7月19日

郵送申込み及び試験案内配布:7月1日から7月29日

受験票発送日:9月27日

試験日:10月16日(12月18日)

合格発表:11月30日(2月8日)

受験手数料:8200円

試験の基準・内容

宅建の試験は、「宅地建物取引業に関する実用的な知識を有するかどうか」を判定することに基準が置かれています。試験は50問・四肢択一式による筆記試験で行われます。不動産適正取引推進機構のホームページに記載されている試験内容は以下の7つです。

・土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。

・土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。

・土地及び建物についての法令上の制限に関すること。

・宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。

・宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。

・宅地及び建物の価格の評定に関すること。

・宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。

試験には4つの科目がある

前述の7つの試験内容ですが、これらは4つ科目ごとに分けて考えることができます。それぞれの科目と出題数は次の通りです。

・民法(14問)

・宅地建物取引業(20問)

・法令上の制限(8問)

・その他関連知識(8問)

受験資格はなし

宅建の試験の受験資格には年齢、性別、学歴などの制約が設けられておらず、誰でも受けることができます。

合格率は15%~18%

宅建は難易度が高い国家資格試験の1つです。合格基準点は毎年異なるものの、出題50問のうち7割に当たる35点が合格ラインの目安です。令和3年度(10月試験/2021年度)の合格基準点は34点でした。また20万9749 人が受験し合格者が3万7579 人、合格率は17.9%となっています。合格率に関しては過去10年いずれも15%~18%の範囲に収まっており、難易度は高い試験と言えるでしょう。

効率よく勉強するためには順番・優先順位をつける

ここからは勉強方法を解説していきます。宅建は難易度が高く、試験は年に1回しかありません。そのため、なんとしても独学で合格したいという人は以下を参考に、効率の良い勉強をしていきましょう。

勉強は時間の目安は300時間程度

資格試験予備校の宅建講座では、4月開始となる半年のカリキュラムがメインとなっています。実際に「初めて宅建の試験を受ける」といった初心者の勉強時間は半年前後、合計300時間程度と言われています。短期集中で2~3ヶ月程度の講座もありますが、初めての受験でなおかつ独学での合格を目指す人は半年の期間を考えておきましょう。

半年で合計300時間の勉強とすると、1日平均2時間弱の勉強時間を設ける計算となります。無理のない範囲で試験勉強を進めることができるのではないでしょうか。

科目ごとで勉強の優先順位を付ける

先ほど、試験は4つの科目から出題されると説明しました。宅建の試験では科目ごとの合格基準点は設けられておらず、あくまでも全体の得点のみで合否が決まります。例年、合格基準点も7割程度です。そのため、最初からすべての科目を完璧にこなそうとせず、効率よく合格基準点に乗せることを目指しましょう。

試験問題の構成や各科目の特徴を知った上で対策することはとても重要です。まずはテキストを一通り読み、試験全体の内容を理解しましょう。科目ごとの対策は後述します。

インプットとアウトプットを繰り返す

次は実際に試験勉強に入っていきます。試験勉強では、インプットとアウトプットの両方を行うことが重要です。まずはテキストを読み各科目の知識を入れていく作業(インプット)から始めますが、必ず問題演習(アウトプット)も行うようにしましょう。問題集はテキストとセットで購入するとよいです。

問題演習は各々に合ったタイミングでこなせばよいですが、少なくても科目ごとにやりましょう。

アウトプットは知識を定着させるためには重要な行程です。自分にとって知識が一番定着しやすい方法で行ってください。

過去問を解く

宅建に限らず、資格試験では過去問に取り組むことは重要です。日々の勉強での問題演習だけでなく、過去問を解くことで出題のパターンなども理解できます。さらに自分がどこまで理解できているかを把握することもできます。そのなかで弱点も見つかるでしょう。

理解が足りていない科目や分野を洗い出すこともできるため、より効率よく合格を目指すためには、過去問に取り組むことも効果的なのです。

模擬試験を受ける

資格予備校では模擬試験を実施しています。独学で合格を目指す人も、この模擬試験を受けるようにしましょう。実際の試験と同じ雰囲気で受験できるため、時間配分などの対策にもなります。さらに最新の問題を解くことができます。自身の学習進度を知り、勉強計画を練り直すことにもつながるため、模擬試験は必ず受けましょう。

各科目の対策

効率よく勉強するためには、科目ごとで優先順位を付けることが大事だと述べました。ここでは実際に各科目の特徴や対策から、勉強の順番を解説します。

まずは民法から勉強する

科目ごとの優先順位を付けることが大事と説明しましたが、まずは民法から勉強することをおすすめします。民法は14問と出題数が比較的多いだけではなく、法律の基本が問われる科目になります。そのため民法を理解しておくことで、他の科目である宅地建物取引業や法令上の制限にもスムーズに取り組むことができ、効率的な勉強につながります。

民法では文章が長く、法律用語の苦手意識を持ちやすいことが特徴として挙げられます。宅建試験の基本的な科目にもなるため、特に法律の初心者はしっかりと時間をかけて勉強していくようにしましょう。

宅地建物取引業は暗記が多い

宅地建物取引業は20問と最も多い出題数となっており、その名のとおり宅建士の業務で重要な宅地建物取引業についての科目となります。問題は手続きや業務上の規制についての出題が多く、暗記が多い科目です。出題傾向が固まっているため、問題集や過去問を繰り返し説くことが有効な科目です。

法令上の制限は法改正に注意

法令上の制限は土地の利用に関する制限のことで、これらにかかわる各法律から出題されます。なじみの薄い法律が多い一方で、それぞれ深い内容の出題はありません。しかし法改正の影響を受けやすく、改正直後の法律は出題されやすい傾向があります。法改正には注意しておきましょう。

その他関連知識は税金制度を理解

その他関連知識は、税金制度からの出題になります。覚える内容は比較的少ないです。これらは確実に理解しておきましょう。その他、不動産にまつわるさまざまな知識からも出題されます。

 

参考書の選び方

効率的な勉強法を解説しましたが、独学で試験勉強を始めるにあたり、まずはテキストと問題集を揃えなくてはいけません。テキストなどは以下の点に留意して選びましょう。

必ず最新版を購入

一番気を付けてほしいことは、必ず最新版の参考書を選ぶことです。宅建の試験は特に法改正が行われた項目は出題されやすい傾向があります。そのため必ず最新のテキストを使いましょう。表紙に「○○年度版」などと書いてあるので、最新のものを選んでください。

わかりやすいテキストを選ぶ

宅建試験では法律に関して学習していきます。不動産業界で勤務経験がある人にとっては理解している内容もありますが、法律の初心者は理解が難しい部分も多くあるはずです。そのため用語や慣習などについてわかりやすく解説しているテキストを選びましょう。文章だけではなく、イラストや図などを用いた説明があるものは良いでしょう。

大手資格予備校は多くの情報を有しており、わかりやすく作られているものが多いので、独学で合格を目指す人にもおすすめできます。テキストを選ぶ際には、同じ出版元の問題集もセットで購入しましょう。

テキストや問題集はたくさん買う必要はない

テキストを買う際に、何冊も買う必要はありません。まずは選んだ1冊の参考書で勉強するようにしましょう。いくつもテキストを1つのテキストをしっかりと勉強することが、合格への近道です。

 

勉強の順番を整理して効率よく宅建士の資格を取ろう

宅建は不動産業界などで必要とされ、人気の国家資格となっています。一方で合格率は決して高くなく、難関資格に位置づけられるものです。しかし、科目ごとに優先順位・勉強順番を付けることで効率よく学習でき、独学でも合格を目指すことができます。まずは自分がどのくらいの期間勉強するか、また1日当たりどのくらい勉強できるかを考え、勉強計画をきちんと立てましょう。

 

参考URL:不動産適正取引推進機構 https://www.retio.or.jp/exam/exam_detail.html

参考URL:令和4年度schedule https://www.retio.or.jp/exam/index.html

参考URL:合格実績 https://www.retio.or.jp/exam/takken_shiken.html#topic3

 

参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷