宅建といえば、不動産業界では花形ともいえる人気の国家資格です。不動産業界で仕事をするなら、取って損はないと言われるほどの実用的な資格ですが、国家資格であるだけに合格率は低い資格でもあります。
宅建試験に合格するには、実際にどれくらい勉強時間を費やせばいいのでしょうか?できるだけ最短時間で無事合格を果たしたい!最短合格への効率的な勉強法と勉強スケジュールはあるのか……そんな方に、最短合格への近道、ご紹介します!
不動産業界で働いている方、一度は「宅建を取っておいた方がいい」と言われたことがあるのではないでしょうか。宅建を持っていることで資格手当がつく事が多く、転職にも有利に働き、職場でも重宝されるという持って損はない資格です。
不動産販売を行っている企業では、企業規模によって定められた人数以上の宅建士を置くことが法律で義務付けられています。
不動産の販売を行う際には、『重要事項説明(法35条)』『最重要事項への記名・押印』『契約内容記載書(法37条)への記名・押印』という宅建士にしかできない独占業務が必要不可欠なため、繁忙期や企業規模が大きいところでは、宅建士が人手不足になるほど引っ張りだこになる場合もあります。
宅建試験は年一回、10月の第3日曜日に実施されており、受験科目は以下の5科目に分かれています。
・利権関係(14問)
・法令上の制限(8問)
・税その他(3問)
・宅建業法(20問)
・免除科目(5問)
全50問あり、すべての問題が4肢択一式のマークシート方式です。すべての問題が1問につき1点の配点ですが、上記を見て分かる通り、科目ごとの配点の偏りが大きくなっています。
最後の『免除科目』に関しては、『登録講習修了者』のみ免除資格が得られる科目となっております。『登録講習修了者』になるには、以下の条件が必要になります。
・宅地建物取引業に従事している方(従業者証明書をお持ちの方)
・受験する年の6月中旬までに『登録講習修了試験』を修了し、修了者データが『不動産適正取引推進機構』に送られている方
以上に該当するためには、受験する年の3月頃までに『登録講習』の受講申込みを行わなければ、その年の受験は間に合わないので注意が必要です。
(不動産適正取引推進機構『登録講習について』:https://www.retio.or.jp/exam/tourokukosyu.html)
宅建試験の合格ラインは毎年少しずつ違っているためはっきりとは言い切れないのですが、おおよそ35問前後となっています。50問中35問以上の正答を出さなければならず、登録講習該当者として免除科目分の5点を確実に取れるとなれば、可能ならば登録講習に申し込んでおきたいところです。
宅建資格を持っていると、不動産販売の現場では重宝されるのは言わずもがな。実際に宅建資格1つで、不動産業界以外にも様々な働き方をすることができます。
まず、正社員として重宝される業界を紹介します。
やはりメインは不動産業界。不動産業界であれば、宅建を持っていれば資格手当が付いたり、仕事の幅が広がったりと、宅建士のニーズがかなり高い業界です。
融資の部門では不動産を担保に取引を行うことが多く、その際には不動産関係の知識が必要になるため、宅建士は非常に重宝されます。
建設業と不動産業を両立させている企業では、やはり不動産販売の際には必ず宅建士の手が必要になります。そのため、不動産にも関係する建設会社では、宅建士の募集を多く取り扱っています。
不動産運用などを行う、個人や企業向けのコンサルタント会社でも、もちろん需要はあります。宅建士は不動産に関するスペシャリストであり、知識も豊富なため、コンサルタント業界で働く方も多くいます。
その他、不動産運用を行う企業では、やはり宅建士の知識は重宝されるので、意外と幅広い働き肩を選ぶことができます。また、正社員の他にも、副業として資格を利用するといういう手もあります。
普段は最低限の宅建士しか雇っていない企業でも、春などの不動産業界繁忙期には取引のための手が足りずに、一時的に宅建士を雇い入れることがあります。
不動産販売の契約時、重要事項説明と書類作成は宅建士にのみ許された独占業務なので、普段は不動産には関わらない仕事をしていても、土日のみそうした不動産業務の出張宅建士として働くこともできます。
宅建に合格するために必要な勉強時間は、もちろん個人差はあるものの一般的には約300時間必要だと言われています。一日あたりにどれくらい勉強に当てられるかは、人によって大きく違います。学生やフリーターなら1日6時間使うことができる方も居るでしょうし、社会人だと仕事終わりに3時間勉強できれば良い方、という方も多いでしょう。
例えば1日3時間勉強できるとすれば、ひと月30日として単純計算3か月かかることになります。6時間使えるとしたら、一か月半くらいになりますが、実際休みなく毎日その時間を維持することは難しいのではないかと思います。
一般的には、無理せずゆとりを持って、半年以上かけて勉強するという方が多いようです。
しかし中には予想外の猛者も存在します。一般的に合格には300時間は勉強が必要と言われるところを、2週間で合格できたというのです。それができるのならば大変に魅力ですし、その勉強法を知りたい!と思う方も多いでしょう。しかし、これはおすすめしません。
この方の体験談を元に、勉強スケージュールをフロー化すると
1、まずはざっくりテキストを読む
2、科目の出題数を把握し、出題割合が多い科目の過去問を重点的にひたすら延々何年分も解いて解いて解きまくる
3、試験当日。出題数が少ない勉強していないところは、マークシートの選択式なので勘で入れる
4、35点でギリギリ合格ライン達成
という、かなり博打的な勉強法を行っています。実際に出題数が多い科目を、重点的に過去問で繰り返し解く方法はかなり有効的です。とはいえ、その他の科目を完全に捨てるのは危なすぎます。
体験談を読む限りでは、自分に合った勉強法をしっかりと自覚した上でやっている印象ではありますが、この方のように集中力を自分でコントロールし、モチベーションを保った上で潔く試験に臨めるような精神力がない限りは、あまりおすすめはしません。
上項のように2週間で合格してしまう方がいる一方で、500時間費やしても落ちてしまうという方も居るくらい、宅建試験の勉強法には大きく個人差が表れます。試験科目には法令関係や税金関係の知識が必要で、日常で生活する上ではなかなか馴染みの薄い分野を突き詰めて勉強しなければなりません。
難しい内容であるだけに、テキストを読んでるだけで集中力がなかなか持続できないと悩む声も多く聞きます。毎年の合格率はかなり低く、15〜17%の難関試験なのです。そのため、勉強法を独学に限定するのではなく、スクールや通信講座を利用するのも選択肢の1つです。
○メリット
・テキスト代だけで済む
・自分の好きな時間に勉強できる
・自分に合ったペース配分ができる
○デメリット
・分からないことを聞くことができない
・集中力を持続しづらい人には難しい
・勉強中に孤独を感じやすい
○メリット
・分からないところを講師に質問できる
・相談できる仲間ができる
・ペース配分を授業として組み立ててくれる
○デメリット
・決まった時間を空けなければいけない
・通学する手間がかかる
・分からなくなっても先に進んでしまう
・受講費がかかる
○メリット
・自分のペースで進めることができる
・要点がまとまっているテキストで勉強ができる
・分からないことを質問できる
○デメリット
・勉強中に孤独感を感じやすい
・受講費がかかる
このように、どの勉強法でもメリットとデメリットがありますが、何を重視するのかは当然人によって違います。自分に合った勉強法が合格への一番の近道です。
独学で勉強した人の体験談を見ていると、受かる人と落ちる人にはある傾向があるように思えます。それぞれの特徴について考えてみましょう
【独学で宅建に落ちる人】
・ずっとテキストを読んで暗記しようとする
・すべての科目を満遍なく勉強する
・モチベーションを決めずに、とにかく時間だけかける
【独学で宅建に受かる人】
・テキストはざっと流して、過去問を解く
・得点割合を考えて、力を入れる科目を決め重点的に勉強する
・宅建を取ったらやりたいこと、自分へのご褒美などのモチベーションを設定
・勉強とプライベートのメリハリをつけて、集中できる時間に一気に勉強する
宅建に落ちた人がやりがちなのは、とにかくすべての科目を習得しようと生真面目にテキストを読み込むことです。すべての知識を習得しようというのは宅建士として大事なことですが、試験には向いていません。逆に知識が散漫になり、すべてが中途半端になり、最終的にいざという時に必要な情報を思い出せないという事態に陥りがちなのです。
宅建もあくまで試験。合格ラインに達していれば合格ができる、単純な仕様なのです。まずは合格さえしてしまえば、あとでいくらでも勉強はできます。試験勉強は潔く開き直って点を取りに行きましょう。
また、人間の集中力は15・45・90分と言われています。持って90分らしいので、ただ目標も決めずにだらだらと勉強しても時間の無駄になる場合もあります。
この時間まではしっかり勉強して、その後は美味しいものを食べる!試験が終わったら自分へのご褒美に欲しかったアレを買おう!など、なにかモチベーションを上げる理由付けをして、メリハリをつけて勉強するようにしましょう。
上項でも書いたように、テキストをただ読んでいる人よりも、過去問をやり込んだ人のほうが合格体験談としては多いです。テキストは知識の宝庫ですが、試験問題の要点としてはまとめられていません。それをまとめるのは、あなたの技量次第ということになってしまいます。
対して、過去問は要点の宝庫。問題になっている時点で、自分が何を覚えればいいのかとても分かりやすく明示されていることになります。実際、何年分もひたすら過去問を解き続けて試験に挑んだ方によると、「過去問と同じ問題が多数出題されている!」とのこと。
まずはテキストで宅建に必要な知識の概要を掴み、あとは過去問を解きつつ、その間によく分からないことや間違った問題をテキストで確認する。という事を繰り返してみてください。
試験前には、スクールや通信教育の企業が主催となって、宅建の模試が多数行われています。受験には費用がかかりますが、本受験前の力試し、試験の雰囲気を掴むためにも受けておくことをおすすめします。模試を受けることで、自分の苦手分野を本受験前に知ることができるのも大きなメリットです。
宅建の試験内容には法律が大きく関わっています。そのため、法改正があった時には、試験内容にも大きく影響してくるのです。スクールや通信講座では受講費がかかっている分、即座にテキストや受講内容もアップデートしてくれますが、独学となると自分で対応ができなければ間違った知識をインプットしてしまいかねません。
そしてちょうど2020年4月に行われた民法改正が、宅建の試験内容に大きく関わっています。明治29年に制定されそのままになっていた『債権法』が、この民法改正で大きく変更されました。他に『相続』に関しても小改正がされており、過去問の通りに書いてしまうと不正解になってしまう問題も多くあります。
2019年までの過去問はもう使えないと思ってください。2021年現在、使える過去問は2020年のもののみとなるため、独学の方はテキストおよび過去問の扱いには要注意です!
宅建に最短合格を果たした経験者の話は、かなり魅力的に感じてしまうことでしょう。とはいえ、合格者の勉強法があなたにも合っているとは限りません。
法律や税金など、これまで勉強や就業の経験があれば素地があるので独学でも十分かもしれませんが、もし今までそういった分野に関わったことがない方、また自分の集中力やスケジュール管理に自信がない方は、スクールや通信講座に頼ることも考えてみてはいかがでしょうか。
宅建試験は簡単なものではありません。時間が取れるのであれば、色々な方の体験談を元に勉強法を試してみても良いかもしれませんが、試験勉強が長くなればなるほどモチベーションを保つのも大変です。
無理なく自分のペースでできる勉強法を見つけることが、最短合格への一番の道です!