土地家屋調査士を独学で目指す人へ。教材や勉強時間、勉強方法を具体的に解説!

土地家屋調査士の資格試験は、合格率が10%未満の難関です。とはいえ、独学で合格した人が全くいないわけではありません。学習コストが安い、自由にスケジュールを組めるなど、独学のメリットはいろいろあります。一方、独学は無計画だとすぐに挫折してしまう危険性もはらんでいます。

もし土地家屋調査士の資格試験に独学で挑戦しようと考えているなら、試験のことをよく知り、受験当日まで計画的に勉強を進めていくことが大切になります。
この記事では、土地家屋調査士の勉強を独学で行うために必要な教材、勉強方法、勉強時間等について具体的に解説しています。これから独学で土地家屋調査士を目指す人は、ぜひ参考にしてみてください。

土地家屋調査士の合格率

土地家屋調査士とは、不動産登記の表示に関する調査や測量、登記の代理申請などを行う不動産登記の専門家です。建設会社や不動産販売会社、土地家屋調査士事務所に勤務する他、独立して自分で事務所を構えるという働き方もできます。
土地国家調査士になるには、国家試験に合格する必要があります。
土地家屋調査士資格試験の合格率は次のようになっています。

年度 合格率
平成26年度 8.82%
平成27年度 8.82%
平成28年度 8.92%
平成29年度 8.69%
平成30年度 9.54%
令和元年度 9.68%

土地家屋調査士の合格率は、受験者の減少を背景に近年少し上がってきています。それでも合格率が10%を超えることはなく、非常に難易度の高い試験と言えます。

土地家屋調査士を独学で目指す人はいるか

土地家屋調査士試験は難易度が高いため、多くの人が通信講座や予備校を利用して合格しています。
では土地家屋調査士を独学で目指す人はいるかというと、実は一定数の人が独学での勉強を選択し、みごと試験に合格しています。

土地家屋調査士に独学で合格しやすい人の特徴

土地家屋調査士の試験に独学で合格しやすい人には、ある特徴があります。

類似資格の勉強をしたことがある人

土地家屋調査士の資格試験では不動産登記、民法、区分所有法に関わる問題が出題されます。これらの知識は日常的に触れる機会が少ないため、独学で学ぶ時には非常に難しく感じられるはずです。

しかし、行政書士、司法書士、マンション管理士など不動産関係、法律関係の資格をあらかじめ取得している人の場合は別です。あらかじめ基礎知識がある状態からのスタートになり、勉強がしやすくなります。

実務経験を持っている人

土地家屋調査士の資格は保有していないとしても、土地家屋調査士事務所での勤務経験がある人なら試験の内容に対するイメージが膨らみやすくなります。土地家屋調査士試験独特の用語や概念についても、理解が早くなるでしょう。試験で分からないことがあったら、職場内の土地家屋調査士に質問をすることができるのもメリットです。

ただし、実務での経験と試験内容は完全に一致するというわけではありません。「これは知っている」という内容が出てきても、ちゃんと試験向きのテキストで詳細を確認することが大事です。

数学と計算に自信がある人

土地家屋調査士の試験では、計算と作図の問題を解くことになります。この時、三角関数や複素数といった高校数学の知識が必要になってきます。また作図の問題では、定規を使って時間内に正確な図形を描くことが求められます。

学生時代に「数学が好きだった」「作図問題は大得意だった」という人は、土地家屋調査士の試験に対して抵抗なく臨める可能性が高いです。

マイペースな学習方法が向いている人

予備校や通信教育を使えば、効率よくスケジュールどおりの学習を進めることができます。しかし世の中には「誰かに作られたスケジュールをこなすのが苦手」という人もいます。さらに、独学で合格を目指すことでモチベーションが高まるタイプの人もいるでしょう。

特に今まで大学受験や他の資格試験も独学で乗り切ってきたという人は、すでに勉強のやり方が自分の中に蓄積されています。たとえ勉強の内容は違っても、その方法論を土地家屋調査士の試験にも生かすことができるはずです。

土地家屋調査士試験の独学勉強方法を解説

ここからは土地家屋調査士試験に独学で挑むための方法を、具体的に解説していきます。

まずは試験内容の確認をする

まず独学を始める前に、土地家屋調査士資格試験の内容を確認しておきましょう。
土地家屋調査士の試験は筆記試験(午前、午後の部)口述試験に分かれています。

  • 筆記試験
  • ・午前の部
    平面測量(択一式10問)+作図(記述式1問)

    ・午後の部
    民法(択一式3問)+不動産登記法(択一式16問)+土地家屋調査士法(択一式1問)+土地(記述式1問)+建物(記述式1問)

  • 口述試験
  • 登記の申請手続き、審査請求手続き、土地家屋調査法に規定された業務について1人15~20分程度の面接試験

土地家屋調査士に独学で挑むなら免除制度を使うのがお勧め

土地家屋調査士試験の筆記試験午前の部は、以下の資格を持っている人の場合、受験を免除されます。

  • 測量士
  • 測量補
  • 1級建築士
  • 2級建築士

この中で最も簡単な試験は測量補(合格率は35~40%程度)です。初学者でも約3か月程度の勉強で合格できます。勉強範囲の負担をできるだけ少なくするために、まずは測量補の資格をとることがお勧めです(土地家屋調査士の試験に挑む人の多くは測量補に合格してから土地家屋調査士試験に申し込んでおり、筆記試験午前の部が免除になるようにしています)。
測量補が5月土地家屋調査士筆記試験が10月と試験日程も間が空いているので、2つの資格を目指す場合でも勉強しやすいはずです。

独学で合格するための勉強時間

土地家屋調査士試験独学合格のために必要な勉強時間は約1400~1800時間です。単純に1日3時間勉強するとしても1年半以上かかる計算です。
実際独学合格者の経験談では、2回・3回と試験を受けた上でやっと合格できたという人が多く見られます。
独学で勉強する場合、数年間諦めずに勉強をする覚悟が必要です。

独学で使える参考書・問題集

土地家屋調査士は司法書士などの類似資格と比べればマイナーです。その分参考書の数も限られています。
独学のために一通りそろえるなら、どのようなものが必要かを解説します。

※2020年12月現在の情報をもとに記載しています。

テキスト(全般)

まず、土地家屋調査士試験の全体理論をインプットするためのテキストが必要です。テキストには、以下のようなものがあります。

  • 「土地家屋調査士受験100講」シリーズ
  • 早稲田法科専門学院

  • 「土地家屋調査士 択一攻略要点整理ノート Ⅰ・Ⅱ[改訂版]」
  • 東京法経学院

  • 「土地家屋調査士 記述式合格演習テキストⅠ・Ⅱ【改訂版】」
  • 東京法経学院

「100講シリーズ」は市販されている手に入りやすいテキストです。一方「要点整理ノート」「合格練習テキスト」は一般販売されておらず、東京法経学院公式サイトから直接購入することでしか手に入りません。また時期によっては改定中などの理由から購入できないこともあります。
なお民法の内容については、宅建受験用の参考書を代わりに用いることもできます。

問題集(択一式)

基本的な内容をテキストでインプット出来たら、過去問集でアウトプットしましょう。過去問集は種類が豊富なので迷ってしまいがちですが、解説が読みやすいか、繰り返し挑戦できるちょうどよい問題数かどうかなどを基準に選んでください。
土地家屋調査士択一式試験問題集には次のようなものがあります。

  • 「土地家屋調査士 択一式過去問」
  • 日建学院

  • 「土地家屋調査士分野別 択一過去問題集」
  • LEC

  • 「土地家屋調査士 新・合格データベース」
  • 東京法経学院

  • 「土地家屋調査士 過去問セレクト(午後の部・択一)」
  • 土地家屋調査士受験研究会

日建学院版は、過去8年分の過去問が掲載されています。
LEC版は過去10年分の過去問が掲載されています。LEC公式サイトからのみ購入可能です。
東京法経学院版は過去55年分の過去問データを肢別に分類した3冊セットの過去問集です。東京法経学院公式サイトからのみ購入可能です。
土地家屋調査士受験研究会版は過去20年以上の過去問データから、良問をセレクトした過去問集です。問題数はやや少なめです。

記述式の基礎になる参考書

土地家屋調査士の試験では、通常の電卓ではなく「関数電卓」という数学に特化した電卓を使う必要があります。記述式の問題では、過去問を解く前にまず電卓の使い方を学ぶ方が効率的です。
説明書だけでは分かりにくい関数電卓の使い方を、土地家屋調査士試験向けに解説した参考書には次のようなものがあります。自分にあった物を一冊選んでください。

  • 「土地家屋調査士試験のための関数電卓パーフェクトガイド 」
  • 遠藤雅守

  • 「土地家屋調査士試験 関数電卓必勝活用術 」
  • 日建学院

  • 「土地家屋調査士 測量計算と面積計算」
  • 土地家屋調査士受験研究会

また申請書や図面の書き方の基礎を身に着けたい人は、次の本を参考にしてください。

  • 「土地家屋調査士試験 登記申請書と添付図面」
  • 土地家屋調査士受験研究会

問題集(記述式)

記述式の基礎知識が身についたら、次は過去問で実践演習をしましょう。記述式の過去問集には次のようなものがあります。

  • 「土地家屋調査士分野別 土地書式過去問題集」
  • LEC

  • 「土地家屋調査士分野別 建物書式過去問題集」
  • LEC

  • 「土地家屋調査士 記述式過去問」
  • 日建学院

  • 「土地家屋調査士 書式過去問マスター」シリーズ
  • 東京法経学院

LEC版は過去10年分の過去問が掲載されています。LEC公式サイトからのみ購入可能です。
日建学院版は過去8年分の過去問が収録されています。
東京法経学院版は平成29年度に至るまでの平成試験全問+昭和の出題問題から厳選した過去問を収録しています。

土地家屋調査士六法

土地家屋調査士向けの六法も1冊手元に置いておきましょう。問題を解いたとき、法律内容の詳しいチェックに活用します。受験はもちろん実務にも使える法令や判例が載っていますので、合格後にも役立つはずです。
なお最新版の土地家屋調査士六法を発行しているのは、東京法経学院だけです。

文房具を揃えよう

土地家屋調査士試験では作図を行うため、鉛筆以外の文房具が必要になります。独学を始める前に、必要な道具は揃えておきましょう。
土地家屋調査士試験に必要な文房具は、以下のようなものです。

  • 三角定規(東京法経学院やLECオンラインショップで発売されている土地家屋調査士試験向けの物が使いやすい)
  • 書式練習用紙(申請書と図面用紙)
  • 関数電卓
  • ボールペン
  • 三角スケール
  • 分度器(半円ではなく、全円のものが使いやすい)

無料で使える教材を利用しよう

独学で頼りになるのは参考書だけではありません。現在は動画サイト、ホームページ、アプリとたくさんの無料教材が展開されています。これらネット上の教材を使えば、スキマ時間にコストをかけず勉強することが可能です。

ただしネット上の無料教材は、専門講師が責任を持って監修している参考書や問題集と比べて質的に劣る可能性が高いです。情報が分散しており、体系的に学びにくいのも難点です。
そこで無料教材を使うときは、参考書や問題集と併用するのが良いでしょう。外出時は動画やアプリで学び、家にいる時は机に向かって問題集を解くといったように場所を分けて使う方法もあります。

独学での勉強の進め方

では独学での勉強の進め方の一例を具体的にご紹介します。

まず、択一式の勉強から始めます。最初はテキストを読むことから始めます。テキストは詳細に読む必要はありません。まずはざっと読んで内容を大雑把に把握します。その後、過去問で知識を固めていきます。

なおなじみのない内容のテキストだと、なかなか読み進められない場合もあるでしょう。どうしても読む気がしないというときは、過去問や1問1答から手を付けるという方法をとってみてください。過去問集を繰り返し解き、間違えやすい問題はチェックや付箋をつけるなどして集中してつぶしていきます。

なお、土地家屋調査士試験において条文はとても重要なものです。過去問によく登場する、あるいは過去問の解説だけではわかりにくい条文については六法を引いて、内容を確認して下さい。
択一問題の過去問を何周か解くと、基礎知識が身に着いてきます。そこからは記述対策にはいります。

記述対策では、やはり量をこなしていかなくてはいけません。基本は1日1題解いていくことです。

ただし、記述式の過去問は1問解くのにかなり時間がかかります。学習時間を確保することはもちろん大事ですが、働きながらではなかなかまとまった学習時間が取りにくいこともあるでしょう。ある程度過去問の数をこなしたあとは、問題の一部のみを解く(申請書のみ、作図のみ等)といったピンポイントの学習で弱点を消していくといった工夫をすると、学習時間を節約できます。

また記述式対策をしている間にも、択一式の問題を平行して勉強していくようにしてください。といっても択一式の方はある程度知識が身についている状態ですので、必ずしも記述式と同じだけの勉強時間をとる必要はありません。受験勉強後半は記述式対策をメインに据え、その間に択一対策の勉強をするという形でよいでしょう。

独学での口述試験対策

土地家屋調査士の筆記試験に合格すると、口述試験に進みます。この口述試験に合格しなければ、土地家屋調査士の資格を取得できません。

10月に実施された筆記試験の合格発表が行われるのが1月6日、口述試験日が1月21日(令和2年度試験の場合)です。口述試験に進むと分かってから試験日まで、2週間程度しか間がありません。

しかし、土地家屋調査士の口述試験は出席さえすればほとんど落ちる人はいないといわれているぐらい合格率の高い試験です。不動産登記法関連や土地家屋調査士法関連の問題が口頭で出題されますが、知識を試されているというよりも人物評価をしている面が大きいと考えられます。常識外れの服装・行動・発言をすることなく、筆記試験で合格するほどの知識があれば、大抵は合格できます。

とはいえせっかく筆記試験に合格したのだから、口述試験も万全に対策したいと考える人もいるでしょう。独学でできる対策方法をご紹介します。

まず、テキストなどを読み返して知識を再確認します。筆記試験に合格している以上知識はちゃんと身についているはずですが、筆記試験から3か月程度経過しているので油断は禁物です。特に丸暗記している部分などは案外早く忘れてしまうものです。ざっと復習をするだけでも知識を思い出すきっかけになります。

次に、各予備校が提供しているサービスを利用します。

例えばLECでは「口述クリアブック」という口述試験対策本をWeb上で配布していますので、一通り目を通してみましょう。この「口述クリアブック」を使った予約不要の口述試験ガイダンスに参加することもできます。
さらにLECではマンツーマン方式の口述模試も実施しています。実際の試験形式を想定した15分程度の模擬試験です。こちらは予約制で定員数が少ないため、口述模試を狙っている人は早めに予約を入れるとよいでしょう。

※LECのガイダンス、口述模試は受験表持参・アンケート回答などの条件を満たした人なら無料で参加できます。

また早稲田法科学院では「口述試験対策資料」の配布(外部性は有料)を、東京法経学院では口述模試(有料)を行っています。
口述試験では、答えが分かっていても緊張すると言葉が出てこなくなる可能性があります。試験内容をしっかり確認し、模試で実践練習を積むことでより確かな口述試験対策ができます。

※ここで紹介したサービスは例年行われているものですが、最新試験で実施されるかどうかは各社のホームページでご確認ください。

独学に+αのサポートを望むなら、通信教育を利用してみよう

独学のメリットは、以下のような点です。

独学のメリット

  • 勉強費用が安い
  • マイペースで進められる(自分の苦手な分野を集中して解くなど)
  • いつでもどこでも勉強できる

一方、独学には以下のようなデメリットもあります。

独学のデメリット

  • テキストが合わないと、内容が頭に入ってこない
  • 質問できる人がいない
  • 記述式の採点が難しい
  • モチベーションが維持できない

独学のメリットを生かしつつ、デメリットを克服するためには通信教育との併用がお勧めです。通学生の予備校とは違い、通信教育ならいつでもどこでも学ぶことができます。また通信教育には質問サポートシステムがあるため、独学より効率の良い学習ができます。
土地家屋調査士試験対策ができる通信教育を展開している会社には、以下の5社があげられます。

  • アガルート
  • 東京法経学院
  • 日建学院
  • 早稲田法科専門学院
  • LEC

アガルートは値段が格安で、記述式対策、複素数計算のような分野別講座も充実しています。基本は独学、苦手な分野のみ通信講座に頼るという方法を取ることもできます。また一通り勉強を終えたと感じたら、日建学院や東京法経学院などの模試を受験してみるのもよいでしょう。実力試しをすることで、客観的な勉強の進捗状況を確認することができます。

※2020年12月現在、通信講座大手のユーキャンでは土地家屋調査士講座を開講していません。

まとめ 独学で土地家屋調査士を目指すなら、計画性と時間が必要

土地家屋調査士を独学で目指す方法を簡単にまとめると、次のようになります。

  • まず測量補の資格をとり、筆記試験午前の部免除制度を使う
  • 自分に合ったテキスト、過去問集、六法、文房具を揃える
  • 択一式問題で基礎知識を固めたあと、記述式問題に取り組む
  • 口述試験対策は各予備校のサービスを利用する
  • 苦手な分野は通信講座で補強することもできる

土地家屋調査士の資格を目指すには、試験当日までに難しい専門知識を身に着ける計画性が必要です。また独学の場合どうしても効率が悪くなりがちなので、合格まで1年以上かける覚悟で挑みましょう。


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参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷