「やりがい搾取」と言う言葉を聞いたことはありますか?
”やりがい(遣り甲斐)‥物事をするに当たっての心の張り合い。しがい。”
”搾取(さくしゅ)‥階級社会において、生産手段の所有者が生産手段をもたない直接生産者から、その労働の成果を無償で取得すること。資本主義社会では、資本家が労働者から剰余価値を取得する形で表れる。マルクス経済学の基本概念の一。”
※引用:三省堂 大辞林
「やりがい搾取」は、東京大学教授であり教育社会学者でもある本田由紀氏が2007年頃に提唱した概念です。いわゆるブラック企業をはじめ様々な企業で「やりがい搾取」が常態化してしている危険性があり、社会問題となっています。
「やりがい搾取」とはどのようなことなのか?陥りやすい人は?「やりがい搾取」が起こりやすい業界とは?
ここでは「やりがい搾取」について詳しく解説していきたいと思います。
“やりがい搾取‥経営者が金銭による報酬の代わりに労働者に「やりがい」を強く意識させることにより、その労働力を不当に安く利用する行為のこと。”
※引用:Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/やりがい搾取)
これから就職を目指す若者や転職希望者は仕事に希望する条件として「やりがいを感じられる仕事」を挙げる人が多く居ます。もちろん「やりがい」のある仕事に就けることは大切なことであり、多少大変なことがあっても「やりがい」が活力となり困難を乗り越えることができるかもしれません。
また、たとえ給料が高くても“給料が高いから”と割り切って働くことが出来ない人は「やりがい」を求めて転職を選んでしまうと思います。
しかし、その「やりがい」を強く求めてしまう人ほどやりがい搾取という事態に陥りやすいのです。
“社会的に意義がある” “誰かの役に立っている” “お客様の笑顔のため” “成長できる仕事” “充実感のある仕事”など、これらは働く上で重要なことですが企業側の巧妙な口車に乗せられ正当な賃金・休暇などの労働条件を満たしていないにも関わらず、「やりがい」を盾に不当に働かせることが問題となっています。
海野つなみさんの漫画作品『逃げるは恥だが役に立つ』。
2016年に新垣結衣さん主演によりテレビドラマ化され大ヒットしたことも記憶に新しいと思いますが、テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の10話で新垣結衣さん演じる森山みくりの台詞がネット上で話題となりました。
「人の善意につけ込み、労働力をタダで使おうとする行為は“搾取” です!」
まさしく、やりがい搾取に断固反対した意見に「精神論を語るブラック企業に聞かせたい」「サビ残多かったな」「ノーギャラで仕事を頼んでくるのはおかしい」「教員業界にも言えること」など、ネットを中心に賛同する声が多く寄せられました。
これらの意見は2016年の放送直後だけでなく、現在でも再注目され広く使われています。
「東京オリンピック・パラリンピック」のボランティア募集要項案(2018年3月下旬公開)
ブラック企業よりも酷いと批判が集まる。
これを受けて、6月に一部変更が見られました。
一部変更は見られたものの批判の声はなかなか収まる気配がありません。
ボランティアで働くということはもちろん無償。東京オリンピック・パラリンピックに携われ貴重な体験ができることは素晴らしいのですが、これではやりがい搾取に当たるのかもしれません。
制作進行を務めていた当時28歳の男性社員が過労自殺。
アニメが好き、自分が手掛けたアニメが放送される‥やり遂げたときにやりがいを感じる仕事であるが故、長時間労働や休みが取れないなど過酷な労働環境&低賃金でも無理をしてしまう人が多い業界の典型です。
真面目な人、仕事に情熱を注ぎすぎてしまう人ほどやりがい搾取に陥りやすい傾向にあります。
人手不足で倒れるキャストが続出?労働時間以外にも練習などで拘束時間は長くなる一方で、アルバイトの掛け持ちをしていかないと生活が出来ない。
一度は夢の国で働いてみたいと憧れを持つ人も多いと思います。
夢や希望があふれる雰囲気の中働く自分の姿に酔いしれてしまう、“ゲストの笑顔のため” “ゲストに幸せになってもらいたい”そのためには自己犠牲もいとわない‥
低賃金でも夢の国で働くことが「やりがい」と感じ無理をしてしまう人が多い職場の典型といったところでしょうか。
もちろん納得し満足な気持ちで働いている人も多いのですが、1年でアルバイトの約半数が退職している事実がやりがい搾取を物語っているのでは?
やりがい搾取の具体例で挙げた3つはどれも異なる業界で起こったものですが、やりがい搾取が起こりやすい業界があることも確かです。
やりがい搾取の具体例で挙げたものを当てはめてみると、東京オリンピック・パラリンピックは②奉仕性が強い業界、アニメ制作会社は①趣味が関係している業界、夢の国は①・②に加え④も多少当てはまるような気がします。
これらの業界が悪いわけではなく、「やりがい」を盾に不当な労働を強いている個々の企業の問題です。
やりがい搾取に陥りやすい人
充実感や満足感といった「やりがい」を感じ働いていることは確かなのですが、不当な労働を強いられていることに気付かない、もしくは「やりがい」されあれば給料や休みは関係ないと考えるようになってしまうこともあります。
また、肉体的・精神的にダメージを受けて来ていることに気付き同僚や上司に助けを求めても「考えが甘い」「このくらいで弱音を吐いていたらどこでも通用しない」と言われたり、「もう少し頑張ればもっとやりがいを感じられる」等と言われ抜け出せなくなることも。
自分自身ではよく分からなくなってしまった場合は、仕事とは関係のない友人・知人・家族などに相談をし客観的な意見を聞いてみると良いでしょう。
就職・転職の際には求人募集を必ず見ると思います。実際には求人票や企業のホームページだけではその企業の本質は見えてこないかもしれませんが、チェックしておきたいポイントはあります。
「やりがいを感じられる仕事」「社会的に意義がある仕事」「誰かの役に立つ仕事」「お客様の笑顔のため」「成長できる仕事」「充実感のある仕事」
企業のココを見よう!
【ポイント】に関しては企業のホームページや求人票で確認することが可能ですが、【企業のココを見よう!】は実際に確認することは難しいかもしれません。
結局は入社してみないと実態は分からない‥それでは意味がありません。
入社前にやりがい搾取を行っているような企業なのか?を知るためには、転職支援サービスなどを活用することも一つの方法です。
転職支援サービスでは、社内での厳しい審査によりブラック企業の求人をそもそも取り扱わないところも多く、紹介企業の内部事情をしっかりと下調べしてからの求人紹介となるため、やりがい搾取を行っているような企業の求人に出会ってしまうリスクを事前に回避することが出来ます。
求人紹介以外にも入社まで様々な転職サポートを受けられるので、後悔のない就職・転職を実現させたい人は転職支援サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか?
仕事をしていく上で「やりがい」を感じ働くことはもちろん大切なことです。
しかし、「やりがい」だけではなく、人として正当な扱いを受けているのか?今一度考えてみてください。
やりがい搾取の被害に遭っていませんか?企業からの洗脳を受けていませんか?
しっかりとした労働環境があってこそ、その先に夢や目標を叶えることが出来るのではないでしょうか。