司法試験予備試験、最短合格できる勉強法と対策とは

司法試験予備試験とは、司法試験の受験資格を得るために必要なルートの1つであり、一般的には「予備試験」と呼ばれています。

司法試験は、弁護士・裁判官・検察官になるためには必ず受験し、合格しなければならない国家資格試験ですが、予備試験もまた国家試験であり、法務省の管轄で実施されています。「予備試験」とはいうものの、司法試験並みに難易度が高いと言われる試験となっており、多くの人が対策に悩まされています。

予備試験に合格して、そこでようやく司法試験に挑む資格を得られるわけですから、できる限りの最短ルートでパスしておきたいものです。

司法試験予備試験とは

予備試験は司法試験の受験資格を得るためのルートの1つ

司法試験予備試験は一般的に「予備試験」とも呼ばれ、予備とはいえど国家試験となっています。司法試験を受験するためには2つのルートのどちらかで受験資格を得る必要があります。1つは法科大学院を修了していること。もう一つが予備試験を合格していることとなります。

分かりやすくフロー化すると、以下のようになります。

法科大学院ルート

大学などで法律の基礎知識を習得している人 法律の学習経験がない人
法科大学院、法学既修者コース(2年) 法科大学院、法学未修者コース(3年)
司法試験受験資格取得 司法試験受験資格取得

法科大学院は法律学習未経験者でも入学が可能です。ただし、専門職大学院という位置づけのため、勿論入試があり合格が条件となります。また、大学などで法律の学習経験がなくても、入試に合格さえすれば既修者コースに入学することは可能です。

予備試験ルート

予備試験「短答式試験」合格

予備試験「論文式試験」合格

予備試験「口述試験」合格

司法試験受験資格取得

予備試験合格とは言っても、予備試験は表のように3段階に分かれており、そのすべてを段階的に合格しなければ次のステージに進む事はできません。

また、短答式試験に合格しても、次の論文式試験で不合格となってしまった場合、また翌年に短答式試験から受験し直しとなるため、それぞれ一発合格をしなければ二度手間となってしまいます。

予備試験の概要

予備試験は上項で説明したように、3段階に分かれている試験となっています。次はそれぞれの段階について概要を説明します。

短答式試験

試験科目 憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法及び刑事訴訟法(以下「法律基本科目」)、一般教養科目(選択式)
実施日程 毎年5月中頃に1日で実施、6月頃までに合格発表
問題数 一般教養科目以外で各科目いずれも10問ないし15問
配点 一般教養科目以外で各科目いずれも30点満点
試験時間 憲法+行政法で1時間、民法+商法+民事訴訟法で1時間30分、刑法+刑事訴訟法で1時間、一般教養科目で1時間30分
出題形式 マークシート
試験地 札幌市又はその周辺、仙台市又はその周辺、東京都又はその周辺、名古屋市又はその周辺、大阪市又はその周辺、広島市又はその周辺、福岡市又はその周辺

一般教養科目は「人文科学」「社会科学」「自然科学」「英語」の4教科に分かれており、それぞれの分野に偏りが出ないよう全部で40問程度出題されます。受験者はその中から20問選択し、回答します。1問につき3点、60点満点となります。

「法律基本科目」の6科目については基本的な内容を出題するものであり、ひねりを加えたような特殊な問題は出題されません。

論文式試験

試験科目 法律基本科目、選択科目(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系)のうちあらかじめ選択する一科目)、法律実務基礎科目
実施日程 毎年7月ころまでに2日間で実施、10月頃までに合格発表
問題数 各科目いずれも1問、法律実務基礎科目のみ2問
配点 各科目いずれも50点満点、法律実務基礎科目のみ2問で100点満点
試験時間 憲法+行政法で2時間20分、民法+商法+民事訴訟法で3時間30分、刑法+刑事訴訟法で2時間20分、選択科目で1時間10分、法律実務基礎科目で3時間
試験地 札幌市、東京都又はその周辺、大阪市又はその周辺、福岡市

「法律実務基礎科目」は、「民事訴訟実務」「刑事訴訟実務」「法曹倫理」について出題されます。民事訴訟実務と刑事訴訟実務からそれぞれ1問ずつ出題され、法曹倫理については前述の2科目に含まれる形で出題されます。

予備試験ではこの論文式試験が最難関と言われており、かなりひねりの効いた難問が出題されると評判です。

口述試験

試験科目 法的な推論、分析及び構成に基づいて弁論、法律実務基礎科目について行う
実施日程 毎年10月頃までに実施、11月頃までに合格発表。受験者数によって1?2日程度
出題範囲 論文式試験の法律実務基礎科目と同様。民事及び刑事について実施し、法曹倫理は民事及び刑事の出題に含まれる
試験地 東京都又はその周辺

口述試験については短文式、論文式試験をパスする能力に達していれば大体合格できるくらいの高い合格率となっています。
(法務省「司法試験予備試験」:https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/shikaku_saiyo_index.html)

予備試験の難易度

これまで説明したように、予備試験は「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」の3段階となっているため、それぞれの試験で合格者数が法務省のHPで公開されています。合格点と合わせて、それぞれの合格率を法務省HPを参照に算出しました。(採点対象者と合格者から算出しています)(法務省「司法試験予備試験の結果について」:https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji07_00027.html)

短答式試験の合格点と合格率

平成29年 平成30年 平成31年 令和2年 令和3年
合格点 160点以上(270点満点) 160点以上(270点満点) 162点以上(270点満点) 156点(270点満点) 162点(270点満点)
合格率 21.5% 24.0% 23.0% 23.9% 23.3%

論文式試験の合格点と合格率

平成29年 平成30年 平成31年 令和2年 令和3年
合格点 245点以上 240点以上 230点以上 230点以上 240点以上
合格率 21.4% 18.1% 19.2% 19.1% 18.2%

口述試験の合格点と合格率

平成29年 平成30年 平成31年 令和2年 令和3年
合格点 119点以上 119点以上 119点以上 119点以上 119点以上
合格率 94.6% 95.1% 96.3% 95.6% 98.1%

前項で短答式試験はひねりがない基礎的な問題が出題されると言いましたが、とはいえそれは「簡単」という事でないのは、合格率を見て分かると思います。「予備」試験とはいえさすがの国家試験。まだ第1段階だというのに、短答式試験で例年25%弱ほどしか合格できていません。

そして第2段階が最難関と言われる論文式試験です。ここでは例年更に20%に満たない低い合格率となっており、ここまででかなりの人数が不合格となります。
しかし口述試験まで行けばあとはほとんどの人が合格するほどの難易度となるため、とにかく論文式試験までなんとか合格できる事が目標となります。

最終的に、予備試験を終えて司法試験受験資格を得られるのは、受験者全体の3〜4%ほどの果てしなく難易度が高い試験なのです。

予備試験に合格するために必要な勉強時間

予備試験に合格できる勉強時間とは

一般的に予備試験に合格するために必要な勉強時間は、3000〜10000時間と言われています。とはいえ、総時間を上げられてもイメージが湧かないと言う方もいると思うので、学生と社会人で一例として一年間の勉強時間を算出してみましょう。

学生の場合

アルバイトをしていないと仮定して、1日6時間勉強できる事とし、土日は10時間。1週間で50時間になります。月30日とし200時間。夏休みや春休みの長期休暇をまとめて4か月と仮定して1日10時間で計算すると、10時間×30日×4か月=1200時間。

これを先に出した月の合計時間200時間に残りの8か月を掛けて、200時間×8か月+1200時間=2800時間。学生の場合は年2800時間となります。

社会人の場合

毎日残業なしの定時上がりと仮定して平日仕事終わりに3時間、土日に10時間。1週間で35時間。月にすると140時間です。夏休み・冬休み・GWを2週間ずつとして10時間×42日=420時間。
140時間×11か月+420時間+35時間=1995時間。
社会人の場合は年1995時間になる計算になります。

とはいいながら、実際にこんなに無茶な勉強の仕方を継続できるとは思えません。この無茶な計算でも1年で3000時間に及ばないということは、3〜5年ほどかけて勉強するのが一般的だといえるでしょう。

勉強時間を達成しても予備試験に合格できるとは限らない

とはいえ、この勉強時間を達成したからといって合格水準に達することができるわけではありません。
司法試験及び予備試験は、特殊な資格試験と言われています。なぜなら用語や法律、判例などを丸暗記したからといって、試験に受かることはきっとできないからです。

司法試験及び予備試験は、インプットをした上でアウトプットができる能力がなければいけません。論文式試験では独特な答案の書き方をまず学ばなければならず、更に法律を理解し、提示された事例の分析を行い、持っている法知識を運用して論文として表現するという応用力が試される試験方式となっています。

予備試験に向けて効率よく、適切な方法で勉強しなければ、どれだけ勉強をしても時間の無駄になりかねないのです。

予備試験合格に効果的な勉強の順番は?

予備試験に合格できない人がやりがちな失敗、それは専門的な用語の暗記や法律の条文をひたすら読み込むなどのインプットに必死になってしまうことです。もちろん用語を覚えていなければ、問題の内容を理解するのも難しいので、理解の深いインプットは必要です。しかし、そこに集中しすぎてしまうと、最難関の論文式試験の対策に割く時間が足りなくなって、そこで躓いてしまったという例も多いのです。
予備試験はある程度のインプットを終えたら、早々にアウトプットに切り替えるというのがどこのスクールでも推奨されている勉強法です。基礎的な用語を一通りインプットしたら、あとは潔く論文式試験の対策に移るのが得策です。

論文式試験の対策では、とにかく過去問を解いて解いて解きまくるのが一番です。試験科目の概要で紹介したように、試験では科目によって厳しく時間管理が行われます。少しでも時間を超えて書き込みを行ったら、そこで不正として失格になるほど時間管理が徹底されています。

論文式試験の勉強は、実際に試験と同じかそれよりも短い時間設定で実際に答案を作成してください。どれだけ答案を作成したかにかかっていると思って差し支えありません。答案作成に慣れるくらい過去問を解き、だめだった部分を確認、検討、修正を重ねましょう。

100問200問と答案を実際に作成していくと、実地として用語や法律に関する知識、応用力や分析力などが自然と身についていきます。
論文式試験の答案が作成できるようになってから短答式試験の対策に移ると、きっと最初はよく分からなかった基礎知識も身についているはずなので、短答式試験の過去問も解きやすくなっているはずです。

とにかく予備試験は何度も何度も繰り返し過去問を解き、間違っているところを確認、修正を繰り返すのが大事です。

予備試験は独学で合格できる?

基本的に予備試験の合格を独学で目指そうとするのは、やめておいたほうがいいです。例えば現役で法学部などの大学生で、勉強の素地がある。一緒に相談、確認しながら目指す同志がいる。教授などに分からないところは質問できるという環境であれば、独学も可能だと思います。

しかし、社会人で今まで法律に関する勉強もしていないという方は、独学ではなくスクールや通信講座などを利用することをおすすめします。
何度も言いますが、論文式試験は独特です。まずは答案の書き方から学ぶ必要があり、更に問題は独特な言い回しやひねりを聞かせた難問が必ず盛り込まれています。中には法律に精通したプロでさえ、解くのに難航するほどの問題が入っていることがあると聞きます。

スクールや通信講座を利用するには確かに費用はかかりますが、合格率3〜4%の超難関試験に挑む事を考えれば、決して安い出費ではないと思います。

予備試験を受験するメリット

司法試験を受験するには、法科大学院を受験する方法と、予備試験を合格する方法の2種類があります。法科大学院ではなく、予備試験を受験するメリットととしては

・最短ルートで司法試験を受験できる
・法科大学院入学のための試験勉強の時間と手間を予備試験に当てられる
・学費よりも安く抑えられる

と言ったものがあるでしょうか。
しかし、実際に法科大学院に通った場合と比較すると、あなたの現状によっては法科大学院に通ったほうが効率的な場合もあります。実際に法科大学院に通う場合と、予備試験を受験する場合を比較して、本当にあなたにとって予備試験の受験がメリットとなるか確認してみましょう。

法科大学院に通った場合

・法学未修者コースは3年かかる
・法学既修者コースは2年かかる
・国立の法科大学院の学費:入学金282,000円、年間授業料804,000円
・公立の法科大学院の学費:東京都立大学と大阪市立大学の2校
 東京都立大学:入学金(都民)141,000円(その他)282,000円、年間授業料663,000円
 大阪市立大学:入学金なし、年間授業料535,800円
・私立の法科大学院の学費:私立の法科大学院では学校によって金額が違う
 入学金:平均して10〜30万円程度。条件によって免除や半額になることも
 授業料:年間50〜150万円くらいまで大きく開きあり

奨学金制度や学費免除など、学校によって条件が合えば減額できる制度を利用できる場合があるので、色々比較してみると良いでしょう。学校に通うことで勉強に専念できる環境が整うというのが法科大学院に通うメリットです。

スクール・通信講座などを利用した場合

・自分で勉強する期間を設定できる。
・3年以上かけて勉強すると、法科大学院に通った方が効率が良い場合がある
・テキストのみでほぼ独学に近い通信教育や、基礎学習段階のみの講座では相場が8〜15万円程度
・講師による講座動画、オンライン講習が付く通信教育や、基礎編から応用編までの一貫した通信講座になると30〜50万円ほど
・スクールに通って直接指導を受ける形になると、60〜90万円程が相場
・1年で最短合格などを謳った徹底指導、マンツーマン指導になると100〜150万円ほど

スクールや通信講座だと、教育方法によって段階的に金額が上がってきます。テキストのみの通信教育でも効率的に学べるカリキュラムが組まれているので、一人でもコンスタントに集中して勉強ができるという方は一番安いプランでもいいかもしれません。

とにかく2年も3年もかけてられない!最短で予備試験を合格したい!と考えている方は、独学ではまず無理なので、スクールや通信講座などを利用することをおすすめします。

できるだけ費用を抑えたい気持ちも分かりますが、安ければ安いなりの教育しか受けることはできません。大事なのは質の良い教育であり、質は金額と比例することを忘れずに。
ただし、中には詐欺的なものもあるので、高ければ良いというものでもありません。相場はしっかり把握し、口込みなども確認して、自分に合った勉強法を探してみてください。

最短合格を目指したいなら、時間もお金も惜しまない!

予備試験は超難関試験です。しかし、だからこそ司法試験に向けての模擬試験として場の空気に事前に慣れておくことができますし、また知識を十全に得た状態で、問題の傾向も感覚として理解した上で司法試験に挑むことができるというメリットがあります。

予備試験の時点で勉強時間を節約している場合ではないですし、自分の大事な将来への投資を惜しんでいる場合でもありません。通勤や通学のスキマ時間や、休憩時間をいかに有効に利用できるか、自分に合った勉強法はどれなのか、しっかりと考えて自分に取っての最短合格を実現させましょう!

参考サイト
厚生労働省
内閣府
ハローワーク
職業情報提供サイト
日本経済連合会
転職コンサルタント
中谷 充宏
梅田 幸子
伊藤 真哉
上田 晶美
ケニー・奥谷