税理士資格は日本の国家資格の中でもトップクラスの難易度を誇り、何年もかけて取得する人が大半の資格です。
そんな税理士ですが、「あまり稼げない」「中小企業が減って仕事がなくなる」など色々な噂を聞きます。
今回は本当に税理士の年収は低いのか、所得の現実について統計データも参考にしつつ、年収アップのポイントを解説します。
結論から言うと、税理士は年収1,000万円も余裕で狙える夢のある仕事です。
税理士で高収入を目指すにはどうすればよいのか、年収別のおすすめ職場も紹介します。
税理士の仕事が気になる方は、本記事で税理士の年収に関する悩みを解決してください。
税理士の年収は働き方次第で大きく変わります。
税理士は大きな区分として、開業税理士、社員税理士、補助税理士の3種類があるため、それぞれの年収について詳しく解説します。
多くの方や中小企業の経営者にとって身近な存在が、開業税理士かと思います。
開業税理士とは、税理士事務所を設置して委嘱契約により確定申告などの税理士業務を行う税理士のことです。
街中で見かける税理士事務所や公認会計士の事務所に所属しており、個人事業主の形で税理士業務をしています。
日本税理士連合会が平成26年に発表した「第6回税理士実態調査報告書」によると、開業税理士の総所得/給与収入は以下の通りです。
総所得/給与収入 | 割合 |
---|---|
300万円以下 | 31.4% |
500万円以下 | 16.7% |
700万円以下 | 12.0% |
1,000万円以下 | 13.5% |
1,500万円以下 | 11.0% |
2,000万円以下 | 5.0% |
3,000万円以下 | 3.4% |
5,000万円以下 | 1.5% |
5,000万円以上 | 0.5% |
無記入 | 5.0% |
表を計算すると、開業税理士の73.6%は年収1,000万円以下ということがわかります。
一方で、年収1,000万円を超えている方も少なくとも21.4%いることから、年収にはかなりのばらつきがあります。
気になる点としては、3割以上の方が年収300万円以下ということです。
開業税理士が必ずしも高収入になるとは言えない点は理解しましょう。
参照:日本税理士連合会『第6回税理士実態調査報告書』
※集計結果の無断転載は禁止されているため、独自で表を作成
社員税理士は一般の方にはあまり馴染みのない名前かと思いますが、「税理士法人」に所属して会社員のように働いている税理士のことです。
会社員との違いとして、社員税理士は「役員」という位置づけになり、登記も必要になります。
主なクライアントは企業となっており、大手の税理士法人は大企業のお抱えになっていることもあります。
社員税理士の総所得/給与収入は以下の通りです。
総所得/給与収入 | 割合 |
---|---|
300万円以下 | 9.4% |
500万円以下 | 12.0% |
700万円以下 | 14.8% |
1,000万円以下 | 23.4% |
1,500万円以下 | 20.7% |
2,000万円以下 | 8.9% |
3,000万円以下 | 5.6% |
5,000万円以下 | 1.9% |
5,000万円以上 | 0.7% |
無記入 | 2.6% |
開業税理士に比べると、社員税理士は平均して所得が多いことがわかります。
年収1,000万円以上が37.8%を占めており、就職先次第では日本の平均年収を大きく上回ります。
年収300万円以下の方もいますが、税理士は試験の合格に年数が掛かることに加え、経験によって収入が上がるシステムです。
若手の場合、最初は年収も低くなる点が影響しているようです。
補助税理士は、従事する開業税理士または税理士法人が委嘱を受けた案件で、補助者として税理士業務を行う方のことです。
基本的には税理士資格を保有しておらず、補助税理士として働きながら税理士試験合格を目指す方がほとんどです。
そのため、多くの補助税理士は若手で、年収も開業税理士や社員税理士よりも少なくなります。
補助税理士の総所得/給与収入は以下の通りです。
総所得/給与収入 | 割合 |
---|---|
300万円以下 | 12.0% |
500万円以下 | 28.1% |
700万円以下 | 31.7% |
1,000万円以下 | 18.8% |
1,500万円以下 | 6.0% |
2,000万円以下 | 0.8% |
3,000万円以下 | 0.6% |
5,000万円以下 | 0.02% |
5,000万円以上 | 0.02% |
無記入 | 2.6% |
表からもわかる通り、年収1,000万円を超える補助税理士はほとんどいません。
大手の税理士法人に勤める方以外は、まず年収1,000万円を超えることはないでしょう。
若手が中心で経験が少ない点も影響しており、税理士資格を取得するまでの準備期間と考えるべきです。
税理士の資格は年代によって平均年収にかなりの差が出る仕事です。
20代・30代・40代の平均年収の違いについて、それぞれ解説します。
税理士試験は11の科目の中から、必修の2科目と残り3科目を選択する仕組みです。
一つひとつの科目が膨大で、何年もかけて合格する方がほとんどです。
そのため、20代では税理士資格を取得できていない方も多く、年収は下がってしまいます。
今回調査したのは厚生労働省発表の「令和3年賃金構造基本統計調査」です。
残念ながら、税理士と公認会計士がまとめられているため、完全に正確なデータとは言えませんが参考として見てください。
20代税理士・公認会計士の総所得
20代は経験が浅い方がほとんどということもあり、年収は他の年齢層よりも低めです。
しかし、全職業の20代前半の平均年収が269万円、20代後半が371万円であることから考えると、十分高い水準と言えます。
参照:e-Stat 賃金構造基本統計調査/令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
次に30代の税理士の平均年収を見ていくと、20代から大幅に上がっています。
30代前半・後半とも平均年収が600万円を超えており、30代の平均年収と比べても高い水準です。
全国平均では30~34歳が413万円、35~39歳が449万円となっており、税理士の平均年収とは200万円以上の差があります。
30代税理士・公認会計士の総所得
30代以降は税理士として一定の経験を積んでいることに加え、転職でキャリアアップする方も少なくありません。結果として年収が上がっており、中には独立して大幅に収入アップに繋がる方もいます。
独立を目指す方は、30代のうちに将来を見据えた人脈作りを進めましょう。
40代以上の平均年収は以下の通りです。
40代税理士・公認会計士の総所得
40代になると税理士としてのキャリアによって、年収にも差が出やすくなります。
社員税理士なら安定した高収入を得る方もいる一方で、開業税理士としてやりがいを求める方も多いです。
税理士法人なら役職に就くことで年収1,000万円超えも可能です。
独立開業でも経験と人脈を生かして働けることから、どちらを選ぶかによって収入は大きく変わるでしょう。
税理士は一般企業に比べて高収入を得やすく、中には年収5,000万円以上の方もいます。
本項では年収1,000万円・2,000万円・5,000万円で分けて、就職先や働き方のおすすめを解説します。
税理士として年収1,000万円を目指すのなら、中堅以上の税理士法人で長年働くのがおすすめです。
税理士の年収は30代から一気に高くなり、40代後半にはピークに達します。
つまり、長年1つの事務所で働くほど昇給していき、年収も大きく上がる形です。
ただし、個人経営の事務所では、クライアントが特定地域だけに限られており、大幅な年収アップは難しいでしょう。
そのため、狙うならいくつかの事務所を展開しており、中小企業のクライアントが多い中堅以上の事務所です。
日本の産業は99%が中小企業で成り立っており、多くの中小企業をクライアントに持つ事務所は安定した収入を得やすい職場です。
年収1,000万円以上を狙うのであれば、中堅以上の事務所でできる限り長く働きましょう。
年収1,000万円を超えて、2,000万円を狙うなら税理士法人のBIG4に就職、また転職を目指しましょう。
税理士法人のBIG4とは、具体的に次の4法人のことです。
BIG4と呼ばれる税理士法人は、いずれも従業員を数千人規模で抱える大規模な法人で、クライアントも日本の名立たる大企業ばかりです。
「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、従業員数1,000人以上の法人の平均給与と賞与は以下の通りです。
平均値として見ても、年収が785万円と非常に高収入です。
加えて、勤続年数や資格、勤続年数によっても大きく変わります。
特に給与に大きな影響を与えるのが役職で、BIG4で役職に就けば役員報酬も加算されて年収の大幅アップに繋がります。
年収2,000万円を目指したい方はBIG4に勤務し、役職に就くことを目指すのがおすすめです。
税理士の中でも、年収5,000万円に到達するのはごく一握りです。
日本税理士連合会の調査でも、開業税理士の0.5%、社員税理士の0.7%、補助税理士の0.02%だけが年収5,000万円以上となっています。
統計データから考えると、年収5,000万円以上を目指すなら高収入を得やすいBIG4か、独立開業にしかチャンスはないでしょう。
BIG4で年収5,000万円以上を狙うなら、経験年数や役職だけでなく、自分だけの大口のクライアントが必要です。
大企業とのプロジェクトやコンサルティングなど、専門の担当者として仕事を獲得できれば、年収5,000万円に届く可能性があります。
また、独立開業は計画的に事務所をアピールするとともに、大口のクライアントを獲得できるかどうかが鍵になります。
小さな取引ばかりでは、時間を掛けても大きな収入には繋がりにくく、年収アップにはなりません。
開業して年収5,000万円を目指すなら、自分の経験やスキルを営業し、マネジメントしていくことがポイントになるでしょう。
税理士が年収をアップするには、大事な4つのポイントがあります。
4つのポイントを参考にして、大幅な年収アップを目指しましょう。
既に税理士として働いている方で、「もっと年収を上げたい」とお考えの方は、社員税理士として大手の税理士法人に転職を目指しましょう。
大手税理士法人は経験年数やスキル次第で高収入が得やすく、年収1,000万円以上も狙えます。
収入に見合う仕事量と専門性も求められますが、ほぼ間違いなく年収はアップします。
また、長く働けば役職に就くチャンスもあり、更なる高収入を得られるでしょう。
社会的な立場も安定しており、不安を抱えずに働くなら大手の税理士法人への就転職がおすすめです。
社員税理士も開業税理士も、自分だけのクライアントを獲得できれば、継続的な仕事を得ることができます。
クライアントとの信頼関係を築けば、税理士の資格を活かしてコラムを作成したり、本を監修したりすることで収入も得られることがあります。
近年はSNSで事務所のブランディング化を成功させた方もおり、通常の業務以外にも活躍の場を広げるチャンスです。
また、税理士の資格を取得した時の勉強法について、本やブログにまとめる方法もあります。
メディアを通して興味を持ったクライアントから声が掛かり、リピーターを得ることもできます。
税理士の業務をこなすだけでなく、自分自身をブランディングしていくことがポイントです。
十分な経験とスキルを有していれば、独立開業する方法もあります。
企業で働いていると、案件を獲得しても手数料が取られてしまい、全額が自分の収入にはなりません。
また、役職や経験年数によっても給与に差が出るため、高収入を得にくいこともあります。
一方、独立開業なら収入はそのまま自分の事務所の収益となり、自分の得意分野で売り込めます。
近年は、経営者が自分で会計できるクラウド会計ソフトも出ていますが、細かい財務諸表や株式会社の確定申告は素人には困難です。
外資系企業やベンチャー企業をクライアントにできれば、コンサルティング料も発生する可能性があります。
独立開業はスキルと経験を蓄積し、独自のクライアントを開拓しましょう。
税理士が求められる分野の中でも、特に需要が高いのはコンサルティング・事業承継・相続分野です。
こうした分野に特化した税理士は貴重で、クライアントから必要とされる可能性が大幅に上がります。
近年はベンチャー企業も増えており、コンサルティングの需要も高まりを見せています。
何より、ベンチャー企業は経験の少ない若手が中心となっているため、税務や財務に詳しい人材が必要です。
その点でも、税理士がコンサルティング・事業承継・相続分野を強みとすることで、多くのクライアントから求められるでしょう。
税理士として活躍したいなら、需要の高い分野の知識を深めるのが重要です。
今回は税理士の年収について、どのような現実になっているのかを解説しました。
税理士の平均年収は一般企業の水準と比べても、かなり高いレベルです。
今回は平均年収に着目しましたが、上を目指せば年収5,000万円以上の方も実際にいます。
社員税理士でも開業税理士でも、経験を積んでスキルを磨けば、高収入を得るチャンスは十分にあります。
大切なことは経験とスキルを磨く努力と、明確なキャリアプランを設計することです。
将来を見据えて就職・転職・開業を計画し、税理士として長く活躍してください。