最近「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を頻繁に聞くようになりましたね。「ワーク・ライフ・バランス」とは、仕事と生活を両立し調和させること、つまり仕事と個人の生活のバランスが取れた社会を創ろうという考え方です。
仕事は、働くことで収入を得て、生きがいにもつながるものですが、仕事に追われて休みが取れず、家庭での時間がとれない、心身を疲労してしまう、といった問題を抱えている人は少なくありません。
決められた労働時間よりも多く働き、さらにその労働についての賃金も支払われない「サービス残業」では、仕事もするのも生活をするのも苦しくなる一方になってしまいますね。
転職を考えている人にとって、残業時間については、会社や自分のこれからの働き方を決める大きな判断材料の一つ。今回は残業のなかでも賃金が払われない「サービス残業」について、お話していきたいと思います。
労働者の労働時間や休憩時間、残業、休日・休暇などの労働条件について定められているのが労働基準法です。雇用主はこの法律を守らなければならず、すべての職業の労働者が対象になります。
労働基準法では、「1日に8時間」「1週間に40時間」を超えて労働させてはいけないといように定められています。休憩時間についても、労働時間が6時間を超える場合は「45分以上」、8時間を超える場合は「60分以上」というように、労働者が最低限とらなければいけない時間が決まっています。
また、少なくとも「毎週1日の休日」か「4週間を通じて4日以上の休日」を与えなくてはいけない、としています。
繁忙期など、時間外や休日労働については、労働基準監督署長への届け出により、限度内で上記の労働時間を超える労働が認められていて、労働者には割増賃金が支払われます。
「サービス残業」は労働基準法に定められていない労働のことで、雇用者に文字通り「サービス」で行っている労働です。サービスなので賃金は支払われませんが、もちろんこれは違法です。
当日中に片づけなければいけない仕事がある、などの理由でやむを得ず、労働者自身がサービス残業を行っている場合のほか、会社によっては、労働時間を過少申告させる、残業を申請することでボーナスの査定に関係する評価を下げる、などの圧力をかけている場合もあります。
サービス残業が発生する理由は、企業側の意識の低さが一つの原因です。「みんなやっている」という理由で、サービス残業を当然のようにしている業界も中にはあります。企業の業績が悪化した場合には、一番コストのかかる人件費を見直す会社が多く、結果的に少ない人数で前と同じ業務をこなさなければいけない=サービス残業の増加という悪循環に陥っている企業も少なくありません。
日本では「就業時間内に終わらなかった分を残業」とするのに対し、海外の先進国では「就業時間内に与えられた仕事をいかに効率よくこなすか」という点が重視されているので、残業は少ない傾向にあります。
日本ではかつてのバブルの時期に、残業代が基本給よりも多かった、などの話もあるくらいなので、残業をして会社を大きくしたという“残業に肯定的な上層部”と、若い世代とではそもそも「残業」のとらえ方が違うのかもしれません。
日本労働組合総連合会による「労働時間に関する調査(2014年度実施)」によると、サービス残業をせざるを得ないことがあると答えた人は4割強、一か月あたりのサービス残業時間について役職別に見てみると、一般社員が18.6時間、課長クラス以上は28.0時間という結果になっています。、「コンプライアンスの意識が低い企業では管理職にすると残業代を払わなくてもよい」という間違った解釈をしている場合があり、労働者にとっては厳しい現状となっています。
転職を考えている人の中には、前職の離職理由にサービス残業の多さを挙げている人も多いですよね。次に働く業界を決める上での判断材料として、一般的に残業の多い業界について知っておきましょう。
過剰な残業が問題となり、大手広告代理店に強制捜査が入ったのは記憶に新しいところ。所属する部署にもよりますが、クリエイティブや営業などの職種は特に忙しく、締切り間近の案件を抱えている場合は、終電ぎりぎりの退社になることも多くあります。最近では大手広告代理店でも労働時間改善の取り組みが始まっています。
企業や団体が抱える課題や問題について改善策を提案し、業務のさらなる発展の支援をするコンサルティングですが、ハードな勤務としても有名。専門性の高い業務のため、必然的に仕事量が多くなっています。
ハードな仕事の割に賃金が低く、人手不足に悩む保育・介護業界。責任ある業務内容に加え、日誌作成などのデスクワークも多く、サービス残業のほか、家に持ち帰って仕事を続ける場合もあります。
建設や土木工事については、納期があり、何か途中でトラブルがあったとしても期日までに間に合わせなければいけない、というのが大前提の業界。現場での作業に加え、帰社した後にデスクワークや会議などがある場合も。
業績を上げるためには、繁盛期の多少の残業は致し方のないこと。会社側が労働にみあった給料と残業代を払う姿勢があれば、当然仕事へのモチベーションも上がります。上記にも挙げたように残業が多い傾向の業界に転職を考えているならば、業界研究はもちろん、会社研究もしっかり行い、実際はどれくらいの残業があるのか、自分が抱いているイメージとの差はないのか、ということを確認しておきましょう。
とはいえ、面接の場でいきなりサービス残業の有無について質問するのも勇気が要ることですよね。そんな時に利用してほしいのが、転職エージェント。企業には直接聞きづらいことも、転職エージェントの担当者になら聞くことができます。企業の残業に関する考え方を聞くことで、どれだけコンプライアンスを重視しているか、企業体質はどのようなものか、ということについて知ることができるでしょう。
転職をして、仕事にやりがいを感じながらプライベートも充実させたいと思う、人として当然の希望をかなえつつ、企業の成長に大きく貢献する人材となるには、考え方に共感できる企業を選ぶこと、がまずは大切。ぜひ転職エージェントを使って、転職成功への道のりを歩んでくださいね。