ここも他の職種と同じように、今まで事務で培ってきた経験やスキルを軸にして、それが応募企業の事務でどのように役立つか、どう活かせるのか、を具体的かつ詳細に語る必要があります。
もちろん、ここは応募企業の事務職の業務範囲をきちんと見定めてください。
一般事務なのか、営業事務なのか、OA操作なのか、受付業務なのか、それとも全てなのか等、幅広い事務の業務領域から、応募企業の業務内容の求めに合った回答が必要になります。
PRする貢献内容についてですが、業務処理量を求められているのであれば、スピーディな処理能力(例.前職では1日に約1,000件ものデータ入力をこなしていた)を。
もし数値化しにくい場合は、守備範囲の広さやマルチタスク力(例.現職ではお茶くみから社長のスケジュール管理、ウェブ対応まで、一人で対応しています)や安心感・安定感のある対応力(例.20年事務一筋でキャリアを積んできていますので、職場の空気を読み、今何をすべきか等、事務方のツボを知りつくています)をPRするとよいでしょう。
これらは一般的な1事務員としての貢献ポイント。
これに加えて、中級・上級の貢献PRがあったら、ぜひそれも盛り込んでください。
たとえば、事務フローの見直しの経験や業務マニュアル作成、後輩社員の育成・指導などです。
事例の前提となる人についての情報
38歳女性、短大卒。
今まで3社にて一般事務職として勤務。 今回は4社目で幅広い業務が求められる中小企業の同職種への応募。 |
NGな受け答え例
(高度なPC活用を求められているのに)
「長年の受付業務の経験と短期間ですが役員秘書の経験もありますので、最高級の接遇マナーが私の売りであり、この分野で御社に貢献していきたいと思っています。」
「私はエクセルで関数やマクロが使えますので、この点において一番御社に貢献ができると考えています。」
寸評:ズレが感じられる回答はNGです。
また、ミクロなPC操作のPRだけでは若年者に劣ってしまいますので、キャリアを強みと感じさせる付加価値を盛り込んでください。
OKな受け答え例
「はい、私は3つの点で御社に貢献できると考えております。
まず一つ目は、吸収力の高さです。
約18年の業務経験の中で、事務業務はもちろんのこと、経理補助や在庫管理、出荷管理など、幅広い業務を自分のものにしてきました。
次に二つ目。秘書検定に裏付けられた高い接遇マナーです。
履歴書に書きましたとおり、秘書検定を3級から1級まで約5年をかけて取得し、ビジネスマナーや接遇を知識として蓄え、これを現場で実践することで、間違いのない来客対応を行ってきました。
最後にスピードと正確さです。
苦手だったパソコン操作もタッチタイピング60words/min.まで上達し、入力においてミスらしいミスは今まで一度もありません。
御社では、電話受付から来客対応、データ入力、書類作成と幅広い業務を一人で行わなければならないと思いますので、これら3点の特長を活かして、無理・無駄のない事務業務を進めていきたいと思います。」
寸評:応募企業の事務の業務範囲をしっかりと捉えた上で、自身の培ってきたスキルや経験を合わせていくのは、好回答になります。
複数の職員がいる部署であれば、リーダー経験、マネジメント経験などを付加するのも効果的でしょう。
ここもキャリアチェンジ(異職種から経理職への応募)のケースは、年代的にレアなので、対象外とします。
まずは今まで経理で培ってきた経験やスキルを軸にして、それが応募企業の経理でどのように役立つか、どう活かせるのか、を具体的かつ詳細に語る必要があります。
同じ経理職でも、応募企業の企業規模や事業内容、それに業務内容で全然違ってきますから、これを見極めることが必要です。
たとえば、制度会計を問題なく進めてくれればいいと思っている中小企業に、大企業経験で養った管理会計での経験・スキルをPRしても、ピントがずれているのはおわかりでしょう。
だから業務内容の精査は非常に重要です。
日常の仕訳伝票起票、未払金・買掛金業務といった一介の職員レベルの業務から、連結決算、監査対応、有価証券報告書作成、金融機関との融資交渉といった高度なスキルを要する業務まで、一言で経理と言っても大きく幅があります。
経理職の場合は他の職種と違い、求人情報の内容を見れば大体のことがわかりますので、それに合わせたかたちで自身の経験やスキルを重ね合わせていくことが求められます。
これに加えて、更なるスピードアップなどの業務改善策の企画・立案・実行や経営者が求める各種レポート作成の経験といったアグレッシブな取り組み、年代ゆえのマネジメント経験は、どこであっても付加価値として売りになりますので、あればぜひ盛り込むようにしてください。
事例の前提となる人についての情報
40歳男性、大卒。
今まで新卒入社した中小企業1社にて経理職として勤務。 今回は同じ規模の同職種(管理職候補)への応募。 |
NGな受け答え例
(中小企業に対して)
「私は上場企業で、連結決算や国際会計基準といった高度な経理に従事しておりましたので、この点を~。」
「まず御社が現状どのような経理をされているかを確認し、そこから貢献できる点を提案したいと思います。」
寸評:そこまで高度な経理スキルは不要とみなされるでしょう。
また、入社してみないとわからない的な回答は、企業研究不足とみなされます。
OKな受け答え例
「はい、私は同じメーカーにいましたので、原価計算を含め、メーカーでの経理は一通り対応できます。
これに加えて、私は退職前の2年間、少額融資については私の方で対応していましたので、ある程度の金額内であれば、金融機関との融資折衝・調整ができます。
また、社長に提出するための、部門別管理データや設備投資の経済性計算レポート、新規の設備投資の採算評価レポートなどをほとんど私が作成していたため、製造業の経営で求められるレポートの作成ノウハウを習得できましたので、御社でまだこういった帳票類の作成が未整備であれば、ぜひ私が主体となって取り組んでいきたいと思っています。
このような経験と強みを活かして、管理職候補からできるだけ候補が取れるように頑張りたいと思います。」
寸評:経理業務の中でも応募企業にマッチした経理ができる旨をPRした後、その後に融資交渉や経営レポートなどのプラスアルファの売りを貢献ポイントとして語るのは、非常にいい回答構成と言えます。
ここもキャリアチェンジ(異職種から人事職への応募)のケースは、年代的にレアなので、対象外とします。
まずは今まで人事で培ってきた経験やスキルを軸にして、それが応募企業の人事でどのように役立つか、どう活かせるのか、を具体的かつ詳細に語る必要があります。
同じ人事職でも、採用、育成、人事考課、規程整備、労務管理、給与・社会保険などの手続き等のいずれかの業務だけなのか、それとも全て対応しなければならないのか、その中でもどこに比重があるのか、これを見極めることが必要です。
たとえば、人事部ミッションとして中途の大量採用を優先課題としている企業に、大量の給与計算の実績をPRしても、的外れなのはおわかりでしょう。
ここも業務内容の精査は非常に重要になります。
たとえば、採用一つをとっても、対象を新卒人材や中途人材、海外人材を完全に分けている求人情報もあります。
この細分化した求人内容にきちんとベクトルを合わせて回答する必要があります。
ただ人事業務は全てつながっていますから、メイン業務への貢献度を詳細に語った後に、他の業務を付け加えるのは、有効と言えます。
たとえば、中途採用業務がメインであっても、中途人材を教育して自社にフィットさせることができる、関連部署の採用ポジションに関する情報収集や要件確認ができる、といった感じです。
事例の前提となる人についての情報
41歳男性、大卒。
今まで2社にて人事職として勤務。 今回は新会社設立に伴う人事マネージャーへの応募。 |
NGな受け答え例
(中途採用が主業務であるにもかかわらず)
「私は社員教育に一番強みがあります。前職では約500名規模の社員に対して~」
「私は人事だけでなく、総務業務もできますので、この2点で貢献できると思います。」
寸評:いずれもズレを感じます。
前者は応募業務に合わせていくこと、後者は幅を広く取り過ぎるのではなく、焦点を絞って回答する必要があります。
OKな受け答え例
「はい、私は前職のベンチャー企業で、人事部の立上げとその後の人事実務を担当しておりましたので、今回の御社の業務内容である、中途採用業務から人事制度設計、教育体制の構築まで一通り経験しております。
まず中途採用業務においては、採用計画の企画・立案からエージェントや求人掲載手配、応募者母数確保、選考、入社受入れまで、次に人事制度設計では、人事評価制度の構築、導入後の研修を、そして教育体制の構築では、入社オリエンテーションから、OJT研修支援、階層化研修までを対応しておりました。
既存制度の改訂や見直しを経験していらっしゃる方は多いでしょうが、全くのゼロから人事機能を立ち上げた経験のある方はそういない、と自負しております。
また私の経験上、制度は作ったけれども活用されない「絵に描いた餅」状態では、人事は機能しません。
制度構築後の運用こそ肝であり、いかに社員に根付かせていくか、ということの大切さは誰よりも認識しているつもりです。
この経験を御社でも活かしていきたいと思っています。」
寸評:求人情報上の業務内容を分解して、それぞれのお題目に対して、細分業務に落とし込む話し方は、ズレがないことをPRできますので、非常に効果的です。
またその中で自分が重要と体感した肝を経験ベースで語るとより訴求力が上がるでしょう。
「社内の受け取り手がない業務は全て総務の仕事」というくらい、業務範囲が広い総務ですから、まさしく求人情報の業務内容を綿密に見て、自身の経験やスキルをしっかりを重ね合わせて、ズレがない貢献ポイントを伝える必要があります。
また、通常総務はピンポイント業務(例.株主総会対応だけ、設備管理だけ)は皆無でしょう。
だから、自分に自信があるとしても、そこだけに固執してボリュームをとってしまうと、回答全体のバランスを欠いてしまいますので、注意が必要です。
また経験と応募業務の内容がオーバーラップしていない業務があったとしても、類似業務の経験や守備範囲の幅の広さをPRすることで、カバーする方法もあります。
たとえば、「会社の免許・許可の申請または更新」が業務内容にあって、仮に経験がない場合でも、類似業務として、各種契約書の作成や社会保険の手続きの経験をPRするといった具合です。
年代上、庶務・雑務の経験詳細を熱く語っても、面接官にとっては興ざめなだけです。
逆を言うと、IRや株主総会関連業務、経営企画・事業企画、会社法関連業務など、高度な部類の業務については、応募業務になくても、その経験を語ると、有能さをアピールできますので、サラッとでいいので触れるようにしておいてください。
事例の前提となる人についての情報
39歳男性、大卒。
今まで新卒入社した会社1社にて総務職として勤務。 今回は郊外にある営業会社の総務スタッフへの応募。 |
NGな受け答え例
「経営会議、取締役会といった会議の運営の経験が長く、円滑に進める運用ノウハウについては誰にも負けません。」
「私は郵送物管理や備品管理、社員の出張手配、慶弔手配といった業務で一定の評価をいただいておりましたので、これらのスキルを活かして御社に貢献します。」
寸評:確かに貢献できるのでしょうが、これだけではピンポイント過ぎます。
また庶務・雑務レベルだと別にこの年代でなくてもよい、との判断が動きます。
高度業務の経験といった、プラスアルファも語るようにしてください。
OKな受け答え例
「私は今回の業務内容の主業務である設備管理、いわゆるオフィスレイアウトから固定資産・リース資産の管理、業務車両の管理、事故対応までは難なくこなすことができます。
特に車両管理に関しては、約500台にもおよぶ業務車両を1人で担当し、それまではExcelによる手入力で行っていたものを、私主導で専用のデータベースソフトを使って一元管理システムに組み替えました。
また、このようなメイン業務だけでなく、昨年は震災後の社内対応の拙さから危機管理プロジェクトの一員に選抜され、関連部署や経営陣を巻き込んで非常事態発生時の緊急対策マニュアルを作成した経験があります。
先ほど申した総務としての主業務の業務改善力はもちろんのこと、東南海地震の発生確率が高まり、異常気象が常態化する中、この作成ノウハウも御社で活かせると考えております。」
寸評:業務内容の主な業務について、数字を用いるなどして定量的に語り、そこでの改善取り組みを盛り込むのは、定石と言えます。
また、応募企業で活かせるであろう高度業務に触れると、さらにアピール度は高くなります。
中高年の場合、技術職におけるキャリアチェンジ(異職種から技術職への応募)はほぼありえないと思いますので、ここでは対象外とします。
この年代向けの技術職の求人は、「必須条件」と「歓迎条件」の2つが明記されているのが一般的ですが、少なくともまともな応募者の大半が「必須条件」は満たしていると考えられるわけですから、大勢のライバル達に打ち勝つためには、「歓迎条件」についてのアピールをいかに具体的かつ詳細にわかりやすく伝えることができるかが最大のポイントとなります。
たとえば、「歓迎条件」に「関連部署との調整が可能な方」とあれば、この経験を有していれば追加でPRできます。
またこの2つ以外にも、追加情報として「求める人物像」といった項目があったりします。
ここでたとえば、「前向きな姿勢で業務に取り組める方」とあれば、抒情的な自己申告になりますので、ここも自分の想いを強く語ればプラスアルファのPRとなります。
技術職の求人は他の職種と違い、求人情報の中に仕事内容や要件定義がきちんとされていますから、求人情報の詳細をしっかり読み取って、自身の実務経験のPRを単調に繰り返すことのないよう、プラスアルファのPRができるようにしてください。
事例の前提となる人についての情報
38歳男性、大卒。
今まで新卒入社した1社にてネットワークエンジニア職として勤務。 今回は同業種・同職種への応募。 |
NGな受け答え例
「私の今まで養ってきたネットワーク技術の経験を活かして、安定した通信品質をお客様に提供することで、御社の発展に貢献したいと思います。」
「私ならば御社の通信インフラを隅々まで見て、前職との違いを見出し、どこで私の技術力が活かせるのか、しっかりと見極めた上で、貢献できることに携わりたいと思います。」
寸評:このまま終わるのではなく、自身の経験の内容がどう役立つのか、具体的かつ詳細に説明しましょう。
また、入社してみないとわからない的な回答は、経験が不足しているのではないか、と懐疑的に見られてしまいます。
OKな受け答え例
「はい、私は今まで、WANやLANといった顧客の通信回線の構築に約10年、社内システムサーバーの設計から保守に至る社内SE業務に約6年と従事してきましたので、御社が求めるネットワークエンジニアの経験は充分にあります。
また、「トラブルに対し論理的に対応できる方、ストレス耐性のある方」という歓迎条件も、今までおおよそ30社に及ぶネットワーク構築の現場で、システム障害解析と復旧作業を対応してきた実績から、こちらも充分に満たしていると自負しております。
御社のクライアントはIT企業がほとんどを占めるようですが、前職も同じIT企業であり、ここでの約6年の社内SEの経験から、IT企業が求めること、必要とすることを誰よりも理解しているつもりでいます。
このように即戦力として明日からでも御社業務に入っていける点が、私の貢献できることになります。」
寸評:「必須条件」である応募企業が求める専門的な技術経験を語るのは当然として、他のPRを語るとより効果的です。
いわゆる専門バカでは企業も採用を躊躇しますので、「望ましい経験」や「求める人物像」等にも目を配り、追加PRができないか、探ってみてください。
第12回「中高年の面接対策12~順応性を試す質問~」 へ続く
転職コンサルタント(中谷充宏)講師プロフィール
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